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'''高クロール |
'''高クロール血症(高塩素血症)'''(([[英語|英]])hyperchloremia)とは、血中の塩素イオン(クロール<ref group="※">医療関連では、塩素は、クロールと呼ばれることが多い。</ref>、Cl<sup>-</sup>)が異常に上昇している[[電解質異常]]である。高クロール血症が単独で問題になることは稀で、ナトリウムイオンや重炭酸イオンの値とともに評価する必要がある。 |
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塩素イオンは体内の陰イオンの70%を占め、その70%は細胞外液、残りは細胞内に存在する<ref name="nihon>クロール. 日本臨床 68巻増刊1 広範囲血液・尿化学検査 免疫学的検査(2) Page267-271(2010.01).</ref><ref name="bandak">[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5668919/ Chloride in intensive care units: a key electrolyte. Ghassan Bandak, Kianoush B. Kashani. Version 1. F1000Res. 2017; 6: 1930. Published online 2017 Nov 1. doi: 10.12688/f1000research.11401.1 PMCID:PMC5668919]</ref>。細胞外液のイオンとしてはナトリウムに次いで多く、細胞外液の陰イオンとしては最も多い。 |
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食事からは食塩という形で摂取される<ref name="bandak"/>。 |
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<ref name="yoshikawa">低クロール血症と高クロール血症の是正法と輸液管理. 吉川 桃乃, 内田 信一. Medical Practice 23(増刊): 231-234, 2006.</ref> |
<ref name="yoshikawa">低クロール血症と高クロール血症の是正法と輸液管理. 吉川 桃乃, 内田 信一. Medical Practice 23(増刊): 231-234, 2006.</ref> |
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<ref name="oota">血清Cl値の異常をどう読むか. 太田 昌宏, 伊藤 貞嘉. 診断と治療 93巻6号 Page897-899(2005.06).</ref> |
<ref name="oota">血清Cl値の異常をどう読むか. 太田 昌宏, 伊藤 貞嘉. 診断と治療 93巻6号 Page897-899(2005.06).</ref> |
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<ref name="nihon>クロール. 日本臨床 68巻増刊1 広範囲血液・尿化学検査 免疫学的検査(2) Page267-271(2010.01).</ref> |
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<ref name="guide">「臨床検査ガイド 2020年改訂版」. Page182-185. 大西宏明, Medical Practice編集委員会 編集. 2020年6月17日発行. ISBN:978-4-8306-8037-3 </ref> |
<ref name="guide">「臨床検査ガイド 2020年改訂版」. Page182-185. 大西宏明, Medical Practice編集委員会 編集. 2020年6月17日発行. ISBN:978-4-8306-8037-3 </ref> |
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== 症状 == |
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== 原因と機序 == |
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== 診断 == |
== 診断 == |
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塩素イオン(クロール)は体内の陰イオンの70%を占め、その70%は細胞外液、残りは細胞内に存在する<ref name="nihon>クロール. 日本臨床 68巻増刊1 広範囲血液・尿化学検査 免疫学的検査(2) Page267-271(2010.01).</ref><ref name="bandak">[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5668919/ Chloride in intensive care units: a key electrolyte. Ghassan Bandak, Kianoush B. Kashani. Version 1. F1000Res. 2017; 6: 1930. Published online 2017 Nov 1. doi: 10.12688/f1000research.11401.1 PMCID:PMC5668919]</ref>。細胞外液のイオンとしてはナトリウムに次いで多く、細胞外液の陰イオンとしては最も多い。 |
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高クロール血症は、血中のクロールが正常上限値を超えた状態である。 |
高クロール血症は、血中のクロールが正常上限値を超えた状態である。 |
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[[基準値#共有基準範囲|共有基準範囲]]では健常人の血清クロール上限は108 mEq/Lである。 |
[[基準値#共有基準範囲|共有基準範囲]]では健常人の血清クロール上限は108 mEq/Lである。 |
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クロールイオンは、ナトリウムイオンの増減と共に動く他、酸塩基平衡の異常に左右されるので、 |
クロールイオンは、ナトリウムイオンの増減と共に動く他、酸塩基平衡の異常に左右されるので、 |
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クロール単独では臨床的な解釈が困難であり、必ず、ナトリウムと比較して、酸塩基平衡異常の有無を評価する必要がある。 |
クロール単独では臨床的な解釈が困難であり、必ず、ナトリウムと比較して、酸塩基平衡異常の有無を評価する必要がある。 |
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診断のためには、必ず、ナトリウムと比較して解釈する必要がある。 |
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アニオンギャップ=[Na<super>+</super>] - [Cl<super>-</super>] - [HCO<sub>3</sub><super>-</super>] |
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健常人では、血中のナトリウムとクロールの差は36前後であり、それを外れる場合は酸塩基平衡の異常が疑われる<ref name="databook">「臨床検査データブック2021-2022」. Page192-193. 医学書院. 高久史麿 監修. 2021年1月15日発行.ISBN978-4-260-04287-1</ref> |
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。 |
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[[アニオンギャップ]] = [Na<sup>+</sup>] - [Cl<sup>-</sup>] - [HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>] = 12 mEq/L前後 |
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[Na<sup>+</sup>] - [Cl<sup>-</sup>] = アニオンギャップ - [HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>] |
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==症状== |
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= 12 mEq/L前後+24 mEq/L前後 |
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高クロール血症に特異的な症状はなく、原因となっている一連の病態([[脱水#高調性脱水]]、[[代謝性アシドーシス]]、など)の症状となる。 |
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= 36 mEq/L前後 |
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==原因と治療== |
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===高Na血症=== |
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高調性脱水などの原因により、Na濃度が上昇した際に、電気的中性を維持するためCl濃度が並行して上昇する。 |
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治療は、水分補充など、高Na血症の治療を行う。 |
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{| cellspacing="0" border="1" cellpadding="5" |
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===Clの多い輸液=== |
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{|class="wikitable" |
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!colspan="2"|正常時の血清の陽イオンと陰イオンの平衡<ref>ナトリウムイオン以外の陽イオン(K<sup>+</sup>、Ca<sup>2+</sup>、Mg<sup>2+</sup>など)、および、それに対応する陰イオン(アルブミン、リン酸、など)は図から省略している。</ref> |
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!colspan="2"|高塩素血症の原因 |
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<br/><br/> |
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Na<sup>+</sup>:138 ~ 145 mEq/L |
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アニオン・ギャップ:12 mEq/L前後 |
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HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>:24 mEq/L前後<br/> |
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Cl<sup>-</sup>:101 ~ 108 mEq/L |
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|} |
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高クロール血症が高ナトリウム血症(脱水)から二次的に生じた場合はナトリウムとクロールの差は大きくは動かないが、 |
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{| cellspacing="0" border="1" cellpadding="5" |
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!colspan="2"|高ナトリウム血症(脱水)に伴う高クロール血症 |
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| rowspan="3" style="background-color:LightPink;"| |
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Na<sup>+</sup>:> 145 mEq/L |
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|style="background-color:LightGreen;"| |
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アニオン・ギャップ:12 mEq/L前後 |
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|style="background-color:Cyan;"| |
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HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>:24 mEq/L前後<br/> |
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Cl<sup>-</sup>:> 108 mEq/L |
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|} |
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重炭酸減少に伴いクロールが増加している場合はアニオンギャップ正常代謝性アシドーシスを疑う。 |
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!クロールの投与 |
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*クロールの多い輸液 |
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!colspan="2"|アニオンギャップ正常代謝性アシドーシス |
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Na<sup>+</sup>:138 ~ 145 mEq/L |
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|style="background-color:LightGreen;"| |
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アニオン・ギャップ:12 mEq/L前後 |
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HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>:< 24 mEq/L前後<br/> |
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Cl<sup>-</sup>:> 108 mEq/L |
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==症状== |
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!水分の喪失 |
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高クロール血症に特異的な症状はなく、原因となっている一連の病態([[脱水#高調性脱水|高調性脱水]]、[[代謝性アシドーシス]]、など)の症状となる。 |
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==原因== |
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|valign="top"| |
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高クロール血症の主要な原因を以下に述べる。 |
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===高Na血症=== |
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水分が人体から失われてNa濃度が上昇した際に、電気的中性を維持するためCl濃度が並行して上昇する。 |
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腎からの水分喪失には、[[腎性尿崩症]]、[[利尿剤]]、[[浸透圧利尿]]、[[閉塞後利尿]]、などがある。 |
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腎以外からの水分喪失には、[[発熱]]、代謝の亢進、[[運動]]、[[下痢]]、[[熱傷]]、などがある。 |
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いずれも、水分補充など、高Na血症に対する治療を行う。 |
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【腎性】 |
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*[[腎性尿崩症]] |
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*[[利尿剤]] |
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*[[浸透圧利尿]] |
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*[[閉塞後利尿]] |
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【腎外性】 |
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*発熱 |
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*代謝の亢進 |
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*下痢 |
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*熱傷 |
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*運動、重度の脱水 |
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===代謝性アシドーシス=== |
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代謝性アシドーシスのうち、高Cl性アシドーシス(アニオンギャップ正常代謝性アシドーシス)では、重炭酸イオンが減少した分、クロールが増加している。 |
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主要なものを以下の表に示すが、詳細は、[[アシドーシス]]を参照されたい。 |
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!腎性 |
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腎からのクロール排泄の低下であり、[[尿細管性アシドーシス]]、[[アセタゾーラマイド]]投与、などが含まれる。<ref name="oota">血清Cl値の異常をどう読むか. 太田 昌宏, 伊藤 貞嘉. 診断と治療 93巻6号 Page897-899(2005.06).</ref> |
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!消化管性 |
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|下痢、胆道ドレナージによる重炭酸を含む消化液の喪失、腸瘻、膵液瘻、胆汁瘻、 |
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[[膀胱がん]]手術後の[[尿路変更術]]で[[回腸導管]]から尿に重炭酸が失われる例、などがあげられる<ref name="yoshikawa">低クロール血症と高クロール血症の是正法と輸液管理. 吉川 桃乃, 内田 信一. Medical Practice 23(増刊): 231-234, 2006.</ref> 。 |
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!輸液 |
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一部のアミノ酸輸液などクロールの多い輸液の投与で高クロール性代謝性アシドーシスがおきうる。治療は輸液組成の再検討(クロールイオンの代わりに酢酸イオンを採用した輸液など)である<ref name="oota"/><ref name="yoshikawa"/>。 |
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塩基性アミノ酸の多いアミノ酸製剤はクロールがナトリウムに比べて多いため、 |
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!腎尿細管のクロール再吸収増加 |
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輸液により、高クロール血症と代謝性アシドーシスを来すことがある<ref name="databook"/>。 |
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治療は輸液の電解質バランスの見直しである<ref name="oota"/>。 |
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<!--生理食塩水についても、重炭酸などのイオンを含まず血液と比較してクロールが多いので、大量輸液により高クロール血症と代謝性アシドーシスを来すことがある。--> |
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===呼吸性アルカローシスに対する代償=== |
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呼吸性アルカローシスでは、炭酸ガスの低下に伴い重炭酸イオンが減少し、その分、クロールが増加する<ref name="oota"/>。治療は呼吸性アルカローシスの原因となっている病態の治療である。 |
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===重炭酸濃度が正常な高クロール血症=== |
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*[[尿細管性アシドーシス]] |
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ナトリウム以外の陽イオンの増加(リチウム中毒、IgG型骨髄腫、など)、および、クロール・重炭酸以外の陰イオンの低値(低アルブミン血症)があげられる<ref name="yoshikawa"/>。 |
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*[[腎不全]] |
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*アセタゾーラマイド投与 |
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*尿路変更術 |
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*高炭酸ガス血症後 |
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== 偽の高クロール血症 == |
=== 偽の高クロール血症 === |
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血液中の塩素イオンはイオン選択性電極で測定するが、この電極は他の[[ハロゲン]]のイオンにも反応するため、 |
血液中の塩素イオンはイオン選択性電極で測定するが、この電極は他の[[ハロゲン]]のイオンにも反応するため、 |
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[[臭素]]イオンが血中に存在する<ref group="※">クロールの偽高値が出現する例としては、[[臭化カリウム]](小児の難治性のてんかんに使用)、[[ブロムワレリル尿素]](一般市販薬に含まれることがある催眠薬、依存性がある)などの服用がある。</ref>と、誤ってクロールが高値であるがごとくに表示されることがある。 |
[[臭素]]イオンが血中に存在する<ref group="※">クロールの偽高値が出現する例としては、[[臭化カリウム]](小児の難治性のてんかんに使用)、[[ブロムワレリル尿素]](一般市販薬に含まれることがある催眠薬、依存性がある)などの服用がある。</ref>と、誤ってクロールが高値であるがごとくに表示されることがある<ref name="databook"/>。 |
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医師の管理下での治療であれば特に問題ないが、[[ブロムワレリル尿素]]等の薬物濫用や誤摂取があれば対応が必要である。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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* [[臨床検査]] |
* [[臨床検査]] |
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* [[検査]] |
* [[検査]] |
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[[Category:医療検査]] |
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[[Category:検査]] |
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[[Category:診断]] |
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[[Category:診断と治療]] |
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[[Category:医学用語]] |
2021年6月28日 (月) 22:57時点における版
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高クロール血症 | |
---|---|
別称 | 高塩素血症 |
塩素 | |
概要 | |
診療科 | 腎臓内科 |
診断法 | 血中濃度 > 108 mEq/L |
分類および外部参照情報 |
高クロール血症(高塩素血症)((英)hyperchloremia)とは、血中の塩素イオン(クロール<ref group="※">医療関連では、塩素は、クロールと呼ばれることが多い。</ref>、Cl-)が異常に上昇している電解質異常である。高クロール血症が単独で問題になることは稀で、ナトリウムイオンや重炭酸イオンの値とともに評価する必要がある。
診断
塩素イオン(クロール)は体内の陰イオンの70%を占め、その70%は細胞外液、残りは細胞内に存在する[1][2]。細胞外液のイオンとしてはナトリウムに次いで多く、細胞外液の陰イオンとしては最も多い。
高クロール血症は、血中のクロールが正常上限値を超えた状態である。
共有基準範囲では健常人の血清クロール上限は108 mEq/Lである。
クロールイオンは、ナトリウムイオンの増減と共に動く他、酸塩基平衡の異常に左右されるので、 クロール単独では臨床的な解釈が困難であり、必ず、ナトリウムと比較して、酸塩基平衡異常の有無を評価する必要がある。
健常人では、血中のナトリウムとクロールの差は36前後であり、それを外れる場合は酸塩基平衡の異常が疑われる[3]
。
アニオンギャップ = [Na+] - [Cl-] - [HCO3-] = 12 mEq/L前後
[Na+] - [Cl-] = アニオンギャップ - [HCO3-] = 12 mEq/L前後+24 mEq/L前後 = 36 mEq/L前後
正常時の血清の陽イオンと陰イオンの平衡[4] | |
---|---|
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アニオン・ギャップ:12 mEq/L前後 |
HCO3-:24 mEq/L前後 | |
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高クロール血症が高ナトリウム血症(脱水)から二次的に生じた場合はナトリウムとクロールの差は大きくは動かないが、
高ナトリウム血症(脱水)に伴う高クロール血症 | |
---|---|
|
アニオン・ギャップ:12 mEq/L前後 |
HCO3-:24 mEq/L前後 | |
|
重炭酸減少に伴いクロールが増加している場合はアニオンギャップ正常代謝性アシドーシスを疑う。
アニオンギャップ正常代謝性アシドーシス | |
---|---|
|
アニオン・ギャップ:12 mEq/L前後 |
HCO3-:< 24 mEq/L前後 | |
|
症状
高クロール血症に特異的な症状はなく、原因となっている一連の病態(高調性脱水、代謝性アシドーシス、など)の症状となる。
原因
高クロール血症の主要な原因を以下に述べる。
高Na血症
水分が人体から失われてNa濃度が上昇した際に、電気的中性を維持するためCl濃度が並行して上昇する。 腎からの水分喪失には、腎性尿崩症、利尿剤、浸透圧利尿、閉塞後利尿、などがある。 腎以外からの水分喪失には、発熱、代謝の亢進、運動、下痢、熱傷、などがある。
いずれも、水分補充など、高Na血症に対する治療を行う。
代謝性アシドーシス
代謝性アシドーシスのうち、高Cl性アシドーシス(アニオンギャップ正常代謝性アシドーシス)では、重炭酸イオンが減少した分、クロールが増加している。 主要なものを以下の表に示すが、詳細は、アシドーシスを参照されたい。
腎性 |
腎からのクロール排泄の低下であり、尿細管性アシドーシス、アセタゾーラマイド投与、などが含まれる。[5] |
---|---|
消化管性 | 下痢、胆道ドレナージによる重炭酸を含む消化液の喪失、腸瘻、膵液瘻、胆汁瘻、 |
輸液 |
一部のアミノ酸輸液などクロールの多い輸液の投与で高クロール性代謝性アシドーシスがおきうる。治療は輸液組成の再検討(クロールイオンの代わりに酢酸イオンを採用した輸液など)である[5][6]。 塩基性アミノ酸の多いアミノ酸製剤はクロールがナトリウムに比べて多いため、 輸液により、高クロール血症と代謝性アシドーシスを来すことがある[3]。 治療は輸液の電解質バランスの見直しである[5]。 |
呼吸性アルカローシスに対する代償
呼吸性アルカローシスでは、炭酸ガスの低下に伴い重炭酸イオンが減少し、その分、クロールが増加する[5]。治療は呼吸性アルカローシスの原因となっている病態の治療である。
重炭酸濃度が正常な高クロール血症
ナトリウム以外の陽イオンの増加(リチウム中毒、IgG型骨髄腫、など)、および、クロール・重炭酸以外の陰イオンの低値(低アルブミン血症)があげられる[6]。
偽の高クロール血症
血液中の塩素イオンはイオン選択性電極で測定するが、この電極は他のハロゲンのイオンにも反応するため、 臭素イオンが血中に存在する[※ 1]と、誤ってクロールが高値であるがごとくに表示されることがある[3]。
医師の管理下での治療であれば特に問題ないが、ブロムワレリル尿素等の薬物濫用や誤摂取があれば対応が必要である。
脚注
出典
- ^ クロール. 日本臨床 68巻増刊1 広範囲血液・尿化学検査 免疫学的検査(2) Page267-271(2010.01).
- ^ Chloride in intensive care units: a key electrolyte. Ghassan Bandak, Kianoush B. Kashani. Version 1. F1000Res. 2017; 6: 1930. Published online 2017 Nov 1. doi: 10.12688/f1000research.11401.1 PMCID:PMC5668919
- ^ a b c 「臨床検査データブック2021-2022」. Page192-193. 医学書院. 高久史麿 監修. 2021年1月15日発行.ISBN978-4-260-04287-1
- ^ ナトリウムイオン以外の陽イオン(K+、Ca2+、Mg2+など)、および、それに対応する陰イオン(アルブミン、リン酸、など)は図から省略している。
- ^ a b c d 血清Cl値の異常をどう読むか. 太田 昌宏, 伊藤 貞嘉. 診断と治療 93巻6号 Page897-899(2005.06).
- ^ a b c 低クロール血症と高クロール血症の是正法と輸液管理. 吉川 桃乃, 内田 信一. Medical Practice 23(増刊): 231-234, 2006.