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「しなの鉄道SR1系電車」の版間の差分

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2022年3月12日のダイヤ改正より、運用を拡大し、全体の約4割が本形式に置き換えられた。なお、この時点での運行本数は明らかにされていない。
2022年3月12日のダイヤ改正より、運用を拡大し、全体の約4割が本形式に置き換えられた。なお、この時点での運行本数は明らかにされていない。

運行開始に先立ってJR東日本[[松本車両センター]]所属の[[JR東日本E127系電車|E127系電車]]による試運転が行われている<ref>{{Cite tweet|author=しなの鉄道株式会社|user=shinanorailway1|number=1179670642381094914|title=【松本から上田へ”こんにちは。”】弊社における新型車両の導入も、もう間もなく。本日はJR東日本・E127系を使用した、しなの鉄道線内での試運転が実施されました。沿線には、インバータの音が秋風に乗って、軽やかに響いていました…。|date=2019-10-03|accessdate=2021-04-06}}</ref>。


== 沿革 ==
== 沿革 ==

2022年6月6日 (月) 05:33時点における版

JR東日本E129系電車 > しなの鉄道SR1系電車
しなの鉄道SR1系電車
(共通事項)
SR1系100番台
(2022年5月 川中島駅 - 安茂里駅間)
基本情報
運用者 しなの鉄道
製造年 2020年 -
製造数 23編成46両(予定)
運用開始 2020年7月4日[1]
主要諸元
編成 2両(全車0.5M電動車
軌間 1,067 mm[2]
電気方式 直流 1,500 V (架空電車線方式[2]
最高運転速度 100 km/h[2]
全長 20,000 mm[2][注 1]
車体長 19,570 mm[2]
車体幅 2,950 mm[2]
車体高 3,620 mm[2]
パンタグラフの折りたたみ時:3,985 mm)[2]
車体 軽量ステンレス(sustina)
台車 軸梁式ボルスタレス台車
  • 動力台車:DT71C, DT71D
  • 付随台車:TR255D, TR255E
[2]
主電動機 かご形三相誘導電動機TDK6325-B型主電動機
主電動機出力 140 kW[3]
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 16:97=1:6.06[3]
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 東洋電機製造 RG6047-A-M(1C2M)
制動装置 電気指令式発電回生純電気式〕・抑速耐雪ブレーキ付き)[3]
保安装置
テンプレートを表示

しなの鉄道SR1系電車(しなのてつどうSR1けいでんしゃ)は、2020年令和2年)7月4日に営業運転を開始した、しなの鉄道鉄道車両である[1]

概要

2018年時点で車齢が約40年に達する115系の置き換え・ライナー列車の再有料化による収益の向上を目的に[4]導入された、しなの鉄道では初の新製車である。デザインは6社が参加したコンペによって決定した[5]

2020年に導入された100番台2021年に導入された200番台および300番台が存在し、それぞれで車内の構造が大きく異なっている[5]。本項では両番台の共通部分について述べたあと、双方の独自構造について記述する。

共通事項

東日本旅客鉄道(JR東日本)のE129系電車と同じ「sustina」S23シリーズの車体を採用しており、塗装以外の外観はほとんどE129系と同じである[6]。機器の面でもほぼ同型となっていることから、この節では主にE129系からの変更点について記述する。

形式

クモハSR111形 (Mc)
制御電動車。車体前位に運転台を備え、制御装置、集電装置などを搭載する。
クモハSR112形 (M'c)
制御電動車。車体前位に運転台、後位に身障者対応トイレ車椅子スペースを備え、補助電源装置、空気圧縮機などを搭載する。

走行機器など

パンタグラフは全編成クモハSR111形に取り付けられている。100・200番台は2基パンタグラフを装備しているが、300番台は前位側が省略され1基のみの装備である。

長野県県歌である『信濃の国』をアレンジした乗降促進用メロディとオリジナルのミュージックホーンを搭載している(作曲・編曲は福嶋尚哉[7][8]

内外装

E129系同様の3ドア車で、旅客用のドア開閉ボタンが設けられている。

フルカラーLEDによる行先表示や、車内に千鳥状に配置されたLED表示器といった旅客案内装置も基本的にE129系のものを踏襲している(115系やE129系の一部にあるドア上液晶モニターは未設置)。ただししなの鉄道ではワンマン運転が自由乗降方式(都市型ワンマン)のため、運転席後ろには運賃表の代わりに広告用のモニターが設けられていることが特筆される。

壁は白をベースとしているが、一部は薄い木目調となっている[5]

番台別概説

100番台(ライナー車両)

SR1系100番台
S103編成(牟礼駅 - 古間駅間)
基本情報
運用者 しなの鉄道
製造所 総合車両製作所新津事業所
製造年 2020年
製造数 6両
運用開始 2020年7月4日[1]
主要諸元
編成定員 229名[2]
車両定員 116名(クモハSR111形)[2]
113名(クモハSR112形)[2]
車両重量 39.2t(クモハSR111形)[3]
38.3t(クモハSR112形)[3]
編成重量 77.5 t[2]
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2020年3月に3編成6両が先行して納入された[9]番台区分で、しなの鉄道の形式名発表では「ライナー車両」と区分されている[5]。編成番号はS101 - S103。

デザインは長野市内に本社を置く総合広告代理店「アサヒエージェンシー」の案が採用された[5]。外装は高原の風をイメージした濃いロイヤルブルーをベースとし、側面には信州の山並みと千曲川の清流をイメージした緑と水色のラインと、115系のデザインを踏襲したシャンパンゴールドの4本線が引かれている[10]

クロスシート時の車内 ロングシート時の車内
クロスシート時の車内
ロングシート時の車内

ライナー列車のほか間合いの普通列車での運転も考慮した設計で、すべての座席がデュアルシートである[11]クロスシート時は座席が転換可能で、座席背面には電源コンセントとカップホルダーが設けられている(ロングシート時は使用できない)[12]。シートは転換可能だが、「軽井沢リゾート号」では軽食付きプランのために一部座席を向かい合わせに固定したうえで進行方向反対側の座席にテーブルを設置する形をとっているため、当該プランでは座席転換はできない。

座席には長野県特産のリンゴをデザインしており、は落ち着いた木目調のブラウンとした[11]

本番台のためのシンボルマークも制定され、しなの鉄道のロゴの「S」を沿線の11市町と長野県を象徴した12枚のリーフが取り囲んだものとされた(ゴールドバージョンとカラーバージョンの二種類があり、カラーバージョンでは信州の四季の移り変わりを表現している)[11][5]

このほかライナー・普通問わずフリーWi-Fiサービスを提供している[13]

200番台(一般車両)

SR1系200番台
S202編成(古間駅 - 黒姫駅間)
基本情報
運用者 しなの鉄道
製造所 総合車両製作所横浜事業所
製造年 2021年 -
製造数 8両(2022年2月時点)
運用開始 2021年3月13日
主要諸元
編成定員 270名
車両重量 37.6t(クモハSR111形)[3]
37.0t(クモハSR112形)[3]
編成重量 74.6 t[3]
テンプレートを表示

2021年1月から2月にかけて4編成8両が納入された[14]番台区分で、しなの鉄道の形式名発表では「一般車両」と区分されている[5]。編成番号はS201から200番台で付与されている。

デザインは長野市内に本社を置く印刷会社「カシヨ」の案が採用された[5]。外装はしなの鉄道のシンボルカラーでもある「情熱」と「温かさ」を表現した赤をベースとしており、側面の乗務員室側には「地域の未来へ挑戦していく姿勢」を表現した金色のラインが配されている[5]。両端の塗色は曲線的にすることで、利用客や地域を包み込む「やさしさ」を表現している[5]。腰部には沿線地域を一つに「つなぐ」・「力をあわせる」ことを表現した赤の二本線が引かれている[5]

運転席側から見た車内

座席配置はE129系を踏襲しており、前位側をロングシート、後位側をセミクロスシートとしている。座席の背面にはシンボルカラーの赤を使用し、座面は濃い灰色とした。

なお、100番台にあるフリーWi-Fiは本番台には設置されていない[14]

300番台(一般車両)

SR1系300番台
S303編成(2022年5月 川中島駅 - 安茂里駅間)
基本情報
運用者 しなの鉄道
製造所 総合車両製作所横浜事業所
製造年 2021年 -
製造数 6両(2022年2月時点)
運用開始 2021年12月11日
テンプレートを表示
300番台には霜取りパンタグラフが設置されていない

2021年11月に3編成6両が納入された[15]番台区分で、編成番号はS301から300番台で付与されている。内外装とも200番台とほぼ同一であるが、クモハSR111に装備されていた霜取りパンタグラフが当番台では省略されている。

編成表

形式
営業運転開始日
クモハSR112
クモハSR111
形式名 機器 CP SIV < < VVVF
ライナー車両 S101 クモハSR112
-101
クモハSR111
-101
2020年7月4日
S102 クモハSR112
-102
クモハSR111
-102
S103 クモハSR112
-103
クモハSR111
-103
一般車両 S201 クモハSR112
-201
クモハSR111
-201
2021年3月13日
S202 クモハSR112
-202
クモハSR111
-202
S203 クモハSR112
-203
クモハSR111
-203
S204 クモハSR112
-204
クモハSR111
-204
形式
営業運転開始日
クモハSR112
クモハSR111
形式名 機器 CP SIV < VVVF
一般車両 S301 クモハSR112
-301
クモハSR111
-301
2021年12月11日
S302 クモハSR112
-302
クモハSR111
-302
S303 クモハSR112
-303
クモハSR111
-303
  • <:シングルアームパンタグラフ
  • VVVF:VVVFインバータ装置
  • CP:空気圧縮機
  • SIV:補助電源装置(静止型インバータ)

運用

各番台とも自社のしなの鉄道線北しなの線の全線、および直通運転先の信越本線篠ノ井駅 - 長野駅間)で運用される。ライナー車両と一般車両を併結した定期運用は2022年3月現在行われていない。

100番台は2020年7月の運用開始以降、快速列車「しなのサンライズ号」・「しなのサンセット号」、及び「軽井沢リゾート号」の全列車で使用されているほか、間合いで料金不要の普通列車にも使用されている[16]

200番台は2021年3月改正で運用を開始し、この時点で38本の列車に使用されている。100番台と合わせると、全列車の約3割が本形式での運行に置き換えられた[17]

300番台は2021年12月から運用を開始し、この時点で27本の列車に使用されている[18]

2022年3月12日のダイヤ改正より、運用を拡大し、全体の約4割が本形式に置き換えられた。なお、この時点での運行本数は明らかにされていない。

沿革

導入までの経緯

しなの鉄道では開業時より有料のライナー列車「しなのサンライズ号」・「しなのサンセット号」を運行していた。

しかし車両は移管時点で車齢が30年近い169系であり、しなの鉄道はイメージアップも兼ねて2003年(平成15年)以降に新型のライナー用車両を導入する計画を複数回発表した[19][20]。だがいずれも実現しなかったばかりか、保安装置の課題により169系をライナー列車に充当できない事態となる。その後担当車両は一時JR東日本の189系となったが長続きせず、2015年以降は近郊型電車である115系での運行となりライナーの乗車整理券制度も廃止となった。

この頃になると169系を置き換えた115系も車両更新の時期となっており、中長期的な新型車両の導入や、リクライニングシート車の購入によるライナーの再有料化が模索されるようになっていた[21][22]2018年には「第四次中期経営計画」に基づき[23][24]115系の老朽取り替え用として新型車両を新造することを発表。2019年2月28日にはデザインと形式名が公表され[5]、足がけ約20年の新型車両導入計画がようやく結実した。

年表

今後の予定

2020年に導入計画が縮小されており、この時点で2027年までに最大23編成46両を導入することを予定している。ただし当初の計画時点で「毎年の補助金や利用状況により車両数や更新年数を必要に応じ見直し」としており[4]、今後も財政や利用状況によって導入予定に変動が生じる可能性がある。

脚注

注釈

  1. ^ 連結面間距離。

出典

  1. ^ a b c d “しなの鉄道に新型車両、長野 信州の山と清流イメージ”. 共同通信. (2020年7月4日). オリジナルの2020年7月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200704011253/https://this.kiji.is/651947482583139425 2021年4月6日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 『鉄道ファン』通巻721号、p.63
  3. ^ a b c d e f g h 東洋電機技報第142号 > しなの鉄道株式会社 SR1系電車用電機品” (PDF). 東洋電機製造. 2021年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月6日閲覧。
  4. ^ a b c "車両更新に係る導入予定車両について" (PDF) (Press release). しなの鉄道. 31 May 2018. 2020年10月29日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2021年4月6日閲覧
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m "新型車両のデザインについて" (PDF) (Press release). しなの鉄道. 28 February 2019. 2019年4月25日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年5月25日閲覧
  6. ^ "しなの鉄道株式会社向け新型車両の製造を担当します" (PDF) (Press release). 総合車両製作所. 13 June 2018. 2018年6月13日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2021年4月6日閲覧
  7. ^ しなの鉄道SR1系メロディ制作”. スイッチオフィシャルサイト. スイッチ. 2021年3月12日閲覧。
  8. ^ “濃い青色は「高原の風」 しなの鉄道が新型車両公開”. 信毎web (信濃毎日新聞社). (2020年6月20日). オリジナルの2020年6月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200629034110/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200620/KT200619GLI090003000.php 2020年7月4日閲覧。 
  9. ^ a b 地域の"想いと希望"を乗せて”. しなの鉄道 (2020年5月31日). 2020年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月3日閲覧。
  10. ^ 『鉄道ファン』通巻721号、p.60
  11. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻721号、p.61
  12. ^ 『鉄道ファン』通巻721号、p.62
  13. ^ 『鉄道ファン』通巻721号、p.64
  14. ^ a b c “しなの鉄道、赤色の「SR1系」一般車両が屋代駅に”. 信濃毎日新聞. (2021年1月24日). オリジナルの2021年1月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210124013951/https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021012300537 2021年3月21日閲覧。 
  15. ^ 株式会社総合車両製作所から弊社に向け発送された、新型車両SR1系(2021年度竣工分)3編成が昨日、無事到着しました。”. Twitter. 2021年11月8日閲覧。
  16. ^ 新型車両・SR1系による普通列車運転のお知らせ” (PDF). しなの鉄道. 2021年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月6日閲覧。
  17. ^ "しなの鉄道ダイヤ改正のお知らせ" (PDF) (Press release). しなの鉄道. 18 December 2020. 2021年2月4日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2021年4月6日閲覧
  18. ^ "新型車両導入による車両変更について" (PDF) (Press release). しなの鉄道. 18 December 2021. 2021年12月23日閲覧
  19. ^ 20の改革メニュー” (PDF). しなの鉄道 (2002年). 2003年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月11日閲覧。
  20. ^ 中期経営計画(全文)” (PDF). しなの鉄道 (2004年11月). 2007年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月21日閲覧。
  21. ^ "第三次中期経営計画(平成25年度 - 29年度)" (PDF) (Press release). しなの鉄道. 3 April 2013. 2015年1月6日閲覧
  22. ^ “「座席快適」通勤ライナー復活へ しなの鉄道が17年度中にも”. 信濃毎日新聞 (信濃毎日新聞社). (2016年1月6日). オリジナルの2017年1月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170112192252/http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170106/KT170105FTI090001000.php 2016年1月8日閲覧。 
  23. ^ 第四次中期経営計画- 自ら行動する新しいステージへ -2018年度-2022年度” (PDF). しなの鉄道 (2018年3月). 2018年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月20日閲覧。
  24. ^ “しなの鉄道、5年で設備投資103億円 車両更新など”. 日本経済新聞. (2018年3月28日). オリジナルの2018年3月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180330112654/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2869870028032018L31000/ 2018年3月30日閲覧。 
  25. ^ “しなの鉄道、車両更新計画を見直し 新型最大46両に縮小”. 日本経済新聞. (2020年11月26日). オリジナルの2020年11月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20201125183842/https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66625150V21C20A1L31000/ 2021年4月6日閲覧。 
  26. ^ "しなの鉄道SDGs配慮の車両更新ファンド組成へ ―第三セクター鉄道会社における新型車両設備投資へのファンド活用は日本初―" (PDF) (Press release). しなの鉄道/ミュージックセキュリティーズ. 6 January 2021. 2021年1月6日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2021年1月22日閲覧
  27. ^ 株式会社総合車両製作所から弊社に向け発送された、新型車両SR1系(2021年度竣工分)3編成が昨日、無事到着しました。”. Twitter. 2021年11月8日閲覧。

参考文献

  • しなの鉄道「しなの鉄道SR1系100番台」『鉄道ファン』第61巻第5号(通巻721号)、交友社、2021年5月1日、60 - 65頁。 

関連項目

外部リンク

  • SR1 - しなの鉄道