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2022年10月12日 (水) 13:31時点における版

『バトルスター ギャラクティカ』SF TVシリーズ『バトルスター ギャラクティカ』に登場する架空の通貨「キュービット」。

空想上の通貨(くうそうじょうのつうか)とは小説、映画、ゲームなどのフィクション作品で定義、描写、または暗示される何らかの形式での通貨のことを指す(仮想通貨とは異なる)。

空想上の通貨といえども、ほとんどの通貨の単位の名前は、現存する通貨または歴史的な通貨に基づいている場合が多い(「アルタイ"ドル"」「地球"円"」等がそれにあたる)。当然そうではなく、作者が自ら編み出したものもある。例えば、アイザック・アシモフファウンデーションシリーズに登場する「カルガニード」は、元となる現存通貨・歴史的に使われた通貨は無いとされ、発明されたものであるとされる。また、SFで特に一般的な通貨として、電子的に管理されることから「クレジット」という通貨を使うことが多い[1][2]

さらにいえば、お金ではないものを、交換媒体に使うことも有る。これは現実世界のお金を支払って対価を得る、という仕組みではなく、いわゆる物々交換システムで経済を成り立たせている。

創作における通貨について

映画「ハリー・ポッター」に登場する架空の通貨である、コインの小道具。

創作の世界において、その世界独自の社会・経済を創る際、架空の通貨の名前は大きくは無視できない要素となる。通貨の名前と国との関連性は当然0ではない。例えば、舞台設定が未来で、現実世界でも使われるような通貨単位を使用した場合、歴史がどのように動いているかを示す要素の1つとして読者が考察に使うことが可能になる。しかしながら、地球外生命体の存在する、地球でない場所で、「円」という単位が使われていた場合、とても違和感を覚える人もいるだろう。

現代から逆行した歴史小説(=過去を舞台にした小説)では、当然その時代背景、舞台設定に合わせて適切な通貨を設定する必要が生まれる。

空想上の通貨を作成する際、作者がその通貨が一体どのくらいの価値なのか、また、現代で実際に使用されている通貨でどのくらいなのかという、いわゆる「レート」を示す必要はほとんどない。

読者が、1単位ではマッチ一本も買えないが、それが100万単位では、大きな買い物もできる、というように、読者は直感的な把握を行うことがあるからである[3]

もう少し具体的に掘り下げていこう。

SFの世界では、現代よりも技術が進んでいることから、偽造が行いやすくなっているという問題が挙げられる。この考え方への対応として、例えば、映画『スタートレック』ではフェレンギ人が使う、複製ができない「ラチナム」で出来た通貨を登場させている。

ファンタジーの世界でも、魔法という超常現象によって偽造が行われることも考えられる。

この考え方の対応として、「ハリーポッター」シリーズから例を挙げると、魔術によって偽造することができるものの、魔法で出来た偽造通貨には時間制限がある、というようにして対応している[4]

ジャック・ヴァンス「魔王子」シリーズの中でも、空想上の通貨が用いられる。その通貨は「SVU」(Standard Value Unit = 標準貨幣単位)とよばれ、これらは紙幣による通貨である。(硬貨も存在するが、整数位未満の通貨で使用される)

紙幣は全て偽札判定機に掛けられることでそれが贋金でないことが証明される。なお、主人公はこの贋金の判定のメカニズムを見破り、機械を破壊して贋金を大量生産している。なお、1SVUは当時、小説が刊行された1960年代から1970年代の米ドルもしくは英ポンドと同等であるとされ、物語上は標準的な労働条件における単純労働者の一時間あたりの賃金と同等としている。

タイムトラベルや主人公の深い眠り、コールドスリープなどによってとても長期的な時間が経過した作品では、登場する通貨の価値の変動が問題になる。ダグラス・アダムスによる『銀河ヒッチハイク・ガイド』では、複利によって、少額のものが大きな額になる、といった表現がある[1] [5]。他にも、フレデリック・ポールの『プッシーフットの時代』のように、インフレによって過去よりも単位当たりの価値が大きく下がることもあるだろう[1]

他のプロット要因が通貨の価値に影響を与える可能性もあり得る。たとえば、ギャレット・P・サービズの『The Moon Metal』においては[6]南極で巨大な鉱床が発見されたため、それまで存在していた貴金属等の価値は下がってしまい、世界の通貨基準を金から謎の化学物質「アルテミシウム」にシフトせざるを得なくなってしまう、という表現がある[7]

仮想通貨の中には、「通貨そのもの」に価値があるよう設計されているものもある。現代の仕組みでは、例えば日本の1万円札は、1万円分の和紙を使って印刷されているから1万円である…というわけではない。しかし、 フランク・ハーバートの『デューン』シリーズでは、鋼のコインが主要な通貨であり、重量によって金よりも価値があるものとして扱われているように、通貨そのものが価値あるものである[8] [9]イアン・バンクスによるスペースオペラ作品のなかには、化学元素、土地、またはコンピューターに交換可能なコインも登場する[1]

ユートピアの世界では、お金のない経済だとしても、そこに交換単位を設ける場合がある。エリック・フランク・ラッセルの作品では、「obs」(義務)に基づいた好意交換を使用することがある。

描写の傾向

サム・ハンフリーズが「SF映画では、銀河系のどこでも、通貨は『クレジット』と呼ばれる」と常套句として指摘しているほど、未来的な作品では「クレジット」 という通貨単位が使われることが多く[2]、「クレジット」は、デジタル通貨の一形態として想定されることが多い[1]

とはいえ、近未来であれば、現代でも使われる通貨を用いることも多いのだが、遠い未来で「ドル」「ポンド」「円」などの馴染みある通貨を使うことは、歴史の展開に一役買っていることも考えられる。しかし、未知の宇宙人が自分にとって認知度の高い通貨を使うことに違和感を感じる人もいるだろう[3]

参考文献

  1. ^ a b c d e Gliddon, Gerald (2005). The Greenwood encyclopedia of science fiction and fantasy, Volume 2. Greenwood. p. 532. ISBN 0-313-32950-8 
  2. ^ a b Ebert, Roger (1999). Ebert's bigger little movie glossary. Andrews McMeel. p. 172. ISBN 0-8362-8289-2 
  3. ^ a b Athans, Philip; Salvatore, R. A. (2010). The Guide to Writing Fantasy and Science Fiction. Adams Media. p. 113. ISBN 978-1-4405-0145-6 
  4. ^ Gliddon, Gerald (2005). The Greenwood encyclopedia of science fiction and fantasy, Volume 2. Greenwood. p. 531. ISBN 0-313-32950-8 
  5. ^ Iverson (12 June 2009). “Top 25 Futurama Episodes”. IGN. 3 June 2011閲覧。
  6. ^ Stableford, Brian (2004). Historical dictionary of science fiction literature. Scarecrow Press. p. 310. ISBN 0-8108-4938-0 
  7. ^ Serviss (1900年). “The Moon Metal”. Project Gutenberg. August 20, 2010閲覧。
  8. ^ Weiss, Margaret; Hickman, Tracy (2000). Dragons of Autumn Twilight. Wizards of the Coast. ISBN 0-7869-1574-9. https://archive.org/details/dragonsofautumnt00marg 
  9. ^ Hickman, Tracy. Dragons of Despair. Module DL1. Renton, WA: Wizards of the Coast. p. 29 

関連項目

外部リンク