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「無閉塞運転」の版間の差分

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「無閉塞運転による事故」と統合
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'''無閉塞運転'''(むへいそくうんてん)とは、[[鉄道信号]]の[[鉄道信号#閉塞信号機|閉塞信号機]]が赤(停止)信号を現示した場合に、[[列車]]が長時間停車することを避けるための措置。なお、鉄道信号が故障している場合(消灯など)は、赤(停止)信号(停止信号が無い信号機では、最大制限の信号)とみなすものとされているため、通常は絶対停止(指令待ち)となる。
'''無閉塞運転'''(むへいそくうんてん)とは、[[鉄道信号]]の[[鉄道信号#閉塞信号機|閉塞信号機]]が赤(停止)信号を現示した場合に、[[列車]]が長時間停車することを避けるための措置。なお、鉄道信号が故障している場合(消灯など)は、赤(停止)信号(停止信号が無い信号機では、最大制限の信号)とみなすものとされているため、通常は絶対停止(指令待ち)となる。


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このように、「1閉塞1区間」の原則の例外となる重要な判断である割には、一運転士単独による判断および運行であり、また確認すべき作業も通常運転よりも増えるものであり、判断ミス([[エラー]])によって発生する危険は重大なものである。そのため事故の連続発生を教訓として、多くの[[鉄道事業者]]は無閉塞運転を行う際は、許容信号機である主信号機の停止信号で停止後1分経過した後、[[無線]]により[[運転指令所]]の指示を受け、運行を開始することを義務づけた。
このように、「1閉塞1区間」の原則の例外となる重要な判断である割には、一運転士単独による判断および運行であり、また確認すべき作業も通常運転よりも増えるものであり、判断ミス([[エラー]])によって発生する危険は重大なものである。そのため事故の連続発生を教訓として、多くの[[鉄道事業者]]は無閉塞運転を行う際は、許容信号機である主信号機の停止信号で停止後1分経過した後、[[無線]]により[[運転指令所]]の指示を受け、運行を開始することを義務づけた。


無閉塞運転を起因として発生した事故に関して詳しくは、[[無閉塞運転による事故]]を参照。
===無閉塞運転による事故===
*'''東海道線片浜列車追突事故'''
[[1997年]](平成9年)[[8月12日]] 23時18分頃、JR東海の東海道本線[[沼津駅]]~[[片浜駅]]間で、停車中の[[泉駅 (福島県いわき市)|泉]]発[[百済駅|百済]]行き下り貨物列車([[国鉄EF65形電気機関車|EF65形]]1139号機牽引)に下り普通列車が追突し、43名が負傷。さらに衝突のショックで貨物列車に積載されていたコンテナが落下、沿線の住宅の庭に転がり落ちている。
事故原因は、先行の下り貨物列車が[[踏切支障報知装置]]が作動したため停車中であったところ、後続の普通列車は赤信号によりいったん停車したあと規定の1分後に無閉塞運転を開始した。その後先行列車の運転士が踏切支障報知装置を復帰したため貨物に対する信号が進行を示し、後続列車がそれを自列車に対するものと誤認して加速したため停車中の貨物列車に追突した。

運輸省は各鉄道事業者に対応を求め、JR東日本ではこれを機に運転士単独判断での無閉塞運転を禁止して列車指令の指示を受ける「閉塞指示運転」に改めた。その後JR北海道・JR四国でも同様の処置がとられたが、追随しなかった[[九州旅客鉄道|JR九州]]では2002年2月に[[#鹿児島線列車追突事故|同様の事故]]を起こした。

*'''鹿児島線列車追突事故'''
[[2002年]](平成14年)[[2月22日]] 21時30分頃、[[福岡県]][[宗像市]]の[[九州旅客鉄道|JR九州]][[鹿児島本線]][[海老津駅|海老津]]~[[教育大前駅]]間で、[[門司港駅|門司港]]発[[荒尾駅 (熊本県)|荒尾]]行き下り普通列車([[JR九州811系電車|811系]]・[[JR九州813系電車|813系]]7両編成)が[[イノシシ]]に衝突し停止中、無閉塞運転で進行してきた後続の門司港発[[荒木駅|荒木]]行き下り快速列車(813系5両編成)が追突し、134名が重軽傷を負った。当該車両は全車廃車となったが、損傷のなかった部品はその後代替として新造された813系300番台に転用された。

後続の快速列車の運転士は赤信号を確認して駅間で停車、1分後に規定通りに15km/h以下での無閉塞運転を開始した。その際に先行の普通列車に対して現示された中継信号機の進行現示を自列車に対するものと誤認して加速し、カーブの奥で停車していた先行列車に直前で気付いて非常ブレーキを扱ったが間に合わなかった。

直接の事故原因は運転士のミスであるが、中継信号を誤認しやすい信号機を移設すると共に、運転士の判断だけで前進が可能な運転規則について、JR東海の[[#東海道線片浜列車追突事故|類似事故]]の教訓が生きていない点が指摘された。このため国土交通省鉄道局の指示により、運転士の判断で無閉塞運転を行っている28事業者は同年5月までに通信手段の確保を待って「運転指令の指示を受け、運行を開始する」方式に変更した。

また、破損状況の調査結果(全車両の両端部分がまんべんなく破損しており、結果として全車両が廃車となった)から、衝突時の車両の安全性向上に関する取組みの強化が指示された。



==関連項目==
==関連項目==

2006年12月2日 (土) 08:46時点における版

無閉塞運転(むへいそくうんてん)とは、鉄道信号閉塞信号機が赤(停止)信号を現示した場合に、列車が長時間停車することを避けるための措置。なお、鉄道信号が故障している場合(消灯など)は、赤(停止)信号(停止信号が無い信号機では、最大制限の信号)とみなすものとされているため、通常は絶対停止(指令待ち)となる。

本則として、無閉塞運転は、閉塞信号機などの許容信号機においてのみ許容されており、場内信号機出発信号機などの絶対信号機においては行う事はできない。

方法

具体的には、許容信号機である主信号機の停止信号で停止した列車は、停止後1分経過した後、運転士の判断で、時速15km以下で、ATSの電源を一時的に切って停止信号が現示されている当該閉塞区間(防護区間)の内方に進入する(この際に手旗を使用する場合もある)。

この場合、その防護区間内には通常他の列車が存在するため、前方の列車を確認した場合には即時に停止しなければならない。また、無閉塞運転とした区間内(無閉塞運転を開始した主信号機から、次の主信号機までの区間)においては、いずれの信号機がいかなる現示であろうとも、時速15km以下で進行しなければならない(ただし次の主信号機が停止現示なら無論その外方で停止しなければならない)。

すなわち、無閉塞運転をしている途中で、次の主信号機の(外方において)停止以外の現示を確認したり、中継信号機が停止以外の現示をしているのを確認したとしても、加速する事は許されず、時速15km以下で進行し、前方の列車を確認した場合には即時に停止しなければならない。

またATSの電源を一時的に切った場合には、入れ直すのを忘れてはならない。

無閉塞運転は基本的に正面衝突の危険がある単線では行われず、複線区間で行われる。また、自動閉塞方式以外の方式による区間では行う事ができない。なお現在の日本の法律においては、複線区間の閉塞方式は自動閉塞方式でなければならないとされている。

問題点

無閉塞運転は、長時間停車による旅客サービス低下防止の方法としては非常に有効であるが、1997年の東海道線列車追突事故や2002年の鹿児島線列車追突事故で、無閉塞運転時に中継信号機の進行現示を誤認して加速してしまうという、安全性に関する問題が浮上した。

このように、「1閉塞1区間」の原則の例外となる重要な判断である割には、一運転士単独による判断および運行であり、また確認すべき作業も通常運転よりも増えるものであり、判断ミス(エラー)によって発生する危険は重大なものである。そのため事故の連続発生を教訓として、多くの鉄道事業者は無閉塞運転を行う際は、許容信号機である主信号機の停止信号で停止後1分経過した後、無線により運転指令所の指示を受け、運行を開始することを義務づけた。

無閉塞運転による事故

  • 東海道線片浜列車追突事故

1997年(平成9年)8月12日 23時18分頃、JR東海の東海道本線沼津駅片浜駅間で、停車中の百済行き下り貨物列車(EF65形1139号機牽引)に下り普通列車が追突し、43名が負傷。さらに衝突のショックで貨物列車に積載されていたコンテナが落下、沿線の住宅の庭に転がり落ちている。 事故原因は、先行の下り貨物列車が踏切支障報知装置が作動したため停車中であったところ、後続の普通列車は赤信号によりいったん停車したあと規定の1分後に無閉塞運転を開始した。その後先行列車の運転士が踏切支障報知装置を復帰したため貨物に対する信号が進行を示し、後続列車がそれを自列車に対するものと誤認して加速したため停車中の貨物列車に追突した。

運輸省は各鉄道事業者に対応を求め、JR東日本ではこれを機に運転士単独判断での無閉塞運転を禁止して列車指令の指示を受ける「閉塞指示運転」に改めた。その後JR北海道・JR四国でも同様の処置がとられたが、追随しなかったJR九州では2002年2月に同様の事故を起こした。

  • 鹿児島線列車追突事故

2002年(平成14年)2月22日 21時30分頃、福岡県宗像市JR九州鹿児島本線海老津教育大前駅間で、門司港荒尾行き下り普通列車(811系813系7両編成)がイノシシに衝突し停止中、無閉塞運転で進行してきた後続の門司港発荒木行き下り快速列車(813系5両編成)が追突し、134名が重軽傷を負った。当該車両は全車廃車となったが、損傷のなかった部品はその後代替として新造された813系300番台に転用された。

後続の快速列車の運転士は赤信号を確認して駅間で停車、1分後に規定通りに15km/h以下での無閉塞運転を開始した。その際に先行の普通列車に対して現示された中継信号機の進行現示を自列車に対するものと誤認して加速し、カーブの奥で停車していた先行列車に直前で気付いて非常ブレーキを扱ったが間に合わなかった。

直接の事故原因は運転士のミスであるが、中継信号を誤認しやすい信号機を移設すると共に、運転士の判断だけで前進が可能な運転規則について、JR東海の類似事故の教訓が生きていない点が指摘された。このため国土交通省鉄道局の指示により、運転士の判断で無閉塞運転を行っている28事業者は同年5月までに通信手段の確保を待って「運転指令の指示を受け、運行を開始する」方式に変更した。

また、破損状況の調査結果(全車両の両端部分がまんべんなく破損しており、結果として全車両が廃車となった)から、衝突時の車両の安全性向上に関する取組みの強化が指示された。


関連項目