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「小田急2000形電車」の版間の差分

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'''小田急2000形電車'''(おだきゅう2000がたでんしゃ)は、[[小田急電鉄]](小田急)が[[1995年]]([[平成]]7年)から運用している通勤型車両である。
'''小田急2000形電車'''(おだきゅう2000がたでんしゃ)は、[[小田急電鉄]]が[[1995年]]([[平成]]7年)から運用している通勤型車両である。


小田急では、編成表記の際「[[新宿駅|新宿]]寄り先頭車両の[[鉄道の車両番号|車両番号]](新宿方の車号)×両数」という表記を使用している<ref>『鉄道ダイヤ情報』通巻145号 p.15</ref>ため、本項もそれに倣い「2051×8」のように表記する。また、特定の車両は[[鉄道の車両番号|車両番号]]から「デハ2400番台」などのように表記し、[[小田原駅|小田原]]方面に向かって右側を「山側」、左側を「海側」と表記する。
小田急では、編成表記の際「[[新宿駅|新宿]]寄り先頭車両の[[鉄道の車両番号|車両番号]](新宿方の車号)×両数」という表記を使用している<ref>『鉄道ダイヤ情報』通巻145号 p.15</ref>ため、本項もそれに倣い「2051×8」のように表記する。また、特定の車両は[[鉄道の車両番号|車両番号]]から「デハ2400番台」などのように表記し、[[小田原駅|小田原]]方面に向かって右側を「山側」、左側を「海側」と表記する。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[新宿駅|新宿]]発着の[[小田急小田原線#各駅停車|各駅停車]]8両編成化を推進する目的で、1995年に3編成が登場した<ref name="829-258">[[小田急2000形電車#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.258]]</ref>。その後は[[小田急2600形電車|2600形(NHE車)8両編成]]の置き換え用として<ref name="829-260">[[小田急2000形電車#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.260]]</ref>[[2001年]](平成13年)まで増備が続けられ、最終的には8両×9編成の合計72両が製造された<ref name="829-258" />。
[[新宿駅|新宿]]発着の[[小田急小田原線#各駅停車|各駅停車]]8両編成化を推進する目的で、1995年に2編成が登場した<ref name="829-258">[[小田急2000形電車#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.258]]</ref>。その後は[[小田急2600形電車|2600形(NHE車)8両編成]]の置き換え用として<ref name="829-260">[[小田急2000形電車#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.260]]</ref>[[2001年]](平成13年)まで増備が続けられ、最終的には8両×9編成の合計72両が製造された<ref name="829-258" />。


基本設計と意匠は[[小田急1000形電車|1000形]]に準じているが、[[鉄道車両の座席|座席]]数を確保しつつ客用扉の幅を拡大したのが大きな特徴となっている<ref name="342-86">[[小田急2000形電車#RJ342|『鉄道ジャーナル』通巻342号 p.86]]</ref>。
基本設計と意匠は[[小田急1000形電車|1000形]]に準じているが、[[鉄道車両の座席|座席]]数を確保しつつ客用扉の幅を拡大したのが大きな特徴となっている<ref name="342-86">[[小田急2000形電車#RJ342|『鉄道ジャーナル』通巻342号 p.86]]</ref>。
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=== 登場の経緯 ===
=== 登場の経緯 ===
小田急では[[1990年]](平成2年)から1000形の一部の車両で、乗降時間の短縮を図って客用扉の幅を2[[メートル|m]]に拡大した[[小田急1000形電車#ワイドドア車|ワイドドア車両]]を運用していた<ref name="679-216" />。乗降時間の短縮自体は効果があったものの<ref name="679-216" />、扉幅拡大による座席定員の減少が問題視された<ref name="679-216" />。[[1991年]]に1000形ワイドドア車両を増備した際に座席定員の増加を図る<ref name="679-216" />一方で、在来通勤車両と同等の座席定員確保と乗降時間の短縮を両立するために、[[木型|モックアップ]]による乗降試験も含めた検討が行なわれた<ref name="679-216" />。この結果、座席定員の確保には客用扉間の座席を7人がけとし<ref name="2002-48">[[#大幡2002|大幡 (2002) p.48]]</ref>、客用扉の幅は1,600[[ミリメートル|mm]]程度とすることが最適という結論となった<ref name="2002-48" />。
小田急では[[1990年]](平成2年)から1000形の一部の車両で、乗降時間の短縮を図って客用扉の幅を2[[メートル|m]]に拡大した[[小田急1000形電車#ワイドドア車|ワイドドア車両]]を運用していた<ref name="679-216" />。乗降時間の短縮自体は効果があったものの<ref name="679-216" />、扉幅拡大による座席定員の減少・ドアが大き過ぎるためドア部にも人が並び逆に混雑することが問題視された<ref name="679-216" />。[[1991年]]に1000形ワイドドア車両を増備した際に座席定員の増加を図る<ref name="679-216" />一方で、在来通勤車両と同等の座席定員確保と乗降時間の短縮を両立するために、[[木型|モックアップ]]による乗降試験も含めた検討が行なわれた<ref name="679-216" />。この結果、座席定員の確保には客用扉間の座席を7人がけとし<ref name="2002-48">[[#大幡2002|大幡 (2002) p.48]]</ref>、客用扉の幅は1,600[[ミリメートル|mm]]程度とすることが最適という結論となった<ref name="2002-48" />。


一方で、電子機器や走行装置のシステムについても、高性能かつメンテナンスフリーの機器類が開発されていた<ref name="679-216" />ことから、1000形をベース車両として車体構造の変更や各種機器の見直しを行なった<ref name="679-216" />。設計にあたって、[[騒音]]や[[振動]]の少ない「環境にやさしい車両」<ref name="342-86" />、快適に乗車できる「お客さまにやさしい車両」<ref name="342-86" />、旅客の案内や安全確保に専念できるように付随的な作業を自動化した「乗務員・駅員にやさしい車両」<ref name="342-86" />、熟練を要する機器の排除や機器のモニター監視などを可能にした「保守にやさしい車両」<ref name="342-86" />、といったテーマを掲げた車両として登場したのが本形式である。
一方で、電子機器や走行装置のシステムについても、高性能かつメンテナンスフリーの機器類が開発されていた<ref name="679-216" />ことから、1000形をベース車両として車体構造の変更や各種機器の見直しを行なった<ref name="679-216" />。設計にあたって、[[騒音]]や[[振動]]の少ない「環境にやさしい車両」<ref name="342-86" />、快適に乗車できる「お客さまにやさしい車両」<ref name="342-86" />、旅客の案内や安全確保に専念できるように付随的な作業を自動化した「乗務員・駅員にやさしい車両」<ref name="342-86" />、熟練を要する機器の排除や機器のモニター監視などを可能にした「保守にやさしい車両」<ref name="342-86" />、といったテーマを掲げた車両として登場したのが本形式である。
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前面は中央に[[貫通扉]]を配した貫通型で、1000形と共通の[[繊維強化プラスチック]] (FRP) 製成型品を使用した<ref name="2002-48"/>ため1000形とほぼ同じである<ref name="829-259">[[#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.259]]</ref>が、車両番号の位置と色が異なる、正面窓下部が裏側から補強されている<ref group="注">正面窓については1000形リニューアル車も同一形態となった。</ref>など細部が異なる。側面客用扉は各車両とも4箇所で、[[操縦席|乗務員室(運転室)]]に隣接する箇所のみ1,300mm幅<ref name="2002-48"/>、それ以外の箇所は全て1,600mm幅の両開き扉である<ref name="342-86"/>。扉はそれまでの骨組み構造から[[ハニカム構造|ペーパーハニカム構造]]に変更して軽量化を図った<ref name="342-86"/>ほか、扉の[[ガラス]]は指挟み防止対策として、二重構造([[複層ガラス]])とすることによって扉本体との段差を解消した<ref name="342-87">[[#RJ342|『鉄道ジャーナル』通巻342号 p.87]]</ref>。乗務員室の扉には、車庫内での開閉を容易にするために扉下部に手掛けを設けた<ref name="342-87"/>。車体側面を滴る[[雨|雨水]]落下の防止対策として、側面の客用扉・乗務員室扉とも上部には[[樋 (建築)|雨樋]]を設けた<ref name="342-86"/><ref name="342-87"/>。車両間の貫通路は800mm幅<ref name="342-88"/>で、妻面の窓は固定窓とした。
前面は中央に[[貫通扉]]を配した貫通型で、1000形と共通の[[繊維強化プラスチック]] (FRP) 製成型品を使用した<ref name="2002-48"/>ため1000形とほぼ同じである<ref name="829-259">[[#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.259]]</ref>が、車両番号の位置と色が異なる、正面窓下部が裏側から補強されている<ref group="注">正面窓については1000形リニューアル車も同一形態となった。</ref>など細部が異なる。側面客用扉は各車両とも4箇所で、[[操縦席|乗務員室(運転室)]]に隣接する箇所のみ1,300mm幅<ref name="2002-48"/>、それ以外の箇所は全て1,600mm幅の両開き扉である<ref name="342-86"/>。扉はそれまでの骨組み構造から[[ハニカム構造|ペーパーハニカム構造]]に変更して軽量化を図った<ref name="342-86"/>ほか、扉の[[ガラス]]は指挟み防止対策として、二重構造([[複層ガラス]])とすることによって扉本体との段差を解消した<ref name="342-87">[[#RJ342|『鉄道ジャーナル』通巻342号 p.87]]</ref>。乗務員室の扉には、車庫内での開閉を容易にするために扉下部に手掛けを設けた<ref name="342-87"/>。車体側面を滴る[[雨|雨水]]落下の防止対策として、側面の客用扉・乗務員室扉とも上部には[[樋 (建築)|雨樋]]を設けた<ref name="342-86"/><ref name="342-87"/>。車両間の貫通路は800mm幅<ref name="342-88"/>で、妻面の窓は固定窓とした。
[[ファイル:Outside LED Information Board of OER 2000.jpg|サムネイル|3色LED時代の側面表示器]]

側面窓の配置は、客用扉間には戸袋窓と2枚1組の一段下降窓を配し、車端部には戸袋窓のみが配置されている。下降窓にはスパイラルバランサーを内蔵し<ref name="342-87"/>、開閉を容易にすると同時に保守の軽減を図っている<ref name="342-87"/>。前面・側面とも[[方向幕|種別・行先表示器]]は[[発光ダイオード|LED]]式を採用した。登場時は、3色LEDであったが、2009年からフルカラーLEDに交換され、現在は全編成がフルカラーLEDとなっている。
側面窓の配置は、客用扉間には戸袋窓と2枚1組の一段下降窓を配し、車端部には戸袋窓のみが配置されている。下降窓にはスパイラルバランサーを内蔵し<ref name="342-87"/>、開閉を容易にすると同時に保守の軽減を図っている<ref name="342-87"/>。前面・側面とも[[方向幕|種別・行先表示器]]は[[発光ダイオード|LED]]式を採用した。登場時は、3色LEDであったが、2009年からフルカラーLEDに交換され、現在は全編成がフルカラーLEDとなっている。
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=== 内装 ===
=== 内装 ===
[[ファイル:OER 2000 inside LED.jpg|サムネイル|車内路線図案内機]]
座席はすべて[[鉄道車両の座席#ロングシート(縦座席)|ロングシート]]で、客用扉間に7人がけ、客用扉と連結面の間には3人がけの座席が配置される。小田急の通勤車両では初めて[[バケットシート]]を採用し<ref name="342-87"/>、着席位置を明確にすることによって定員乗車の促進を図った<ref name="342-87"/>。座席の表地は通常の座席は赤系統の抽象柄<ref name="342-87"/>、[[優先席]](シルバーシート)は青系統の抽象柄とした<ref name="342-87"/>。内装は「さわやかさと暖かみ」のあるものとし<ref name="PIC1995-10EX">鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1995年10月臨時増刊号新車年鑑1995年版記事</ref>、淡いピンク色を基調とした化粧板で構成している<ref name="DJ2007-6-23P"/>。床面は中央部が薄い青緑系の縞模様<ref name="342-87"/>、通路両側にあたる部分では石目模様とした<ref name="342-87"/>。扉脇の[[手摺|手すり]]については、それまで手すり下端の高さが床から800mmだったものを400mmに延長し<ref name="342-87"/>、[[幼児]]の戸袋への引き込み事故防止を図った<ref name="342-87"/>。各車両の客用扉上部には、[[車内案内表示装置|LEDフリーパターン式案内表示装置]]を千鳥配置に設置した<ref name="342-87"/>。(路線図案内式表示器は2051と2052のみ設置されたが停車駅変更の為廃止された)[[車内放送|放送装置]]は自動放送を主体とし<ref name="342-88" />、車内のどの位置でも最適な音量・音質となるように改良し<ref name="342-88" />、スピーカーを5個から9個に増設した<ref name="342-88" />。{{Double image aside|right|小田急2000形|180|小田急2000形LED.jpg|180}}先頭車の車端部<ref group="注">クハ2050番台では海側、クハ2450番台では山側。</ref>には小田急の通勤車両では初めて車椅子スペースを設け<ref name="342-87"/>、乗務員と対話が可能な[[車内非常通報装置|非常通報装置]]も設置された<ref name="679-217"/>。対話式非常通報装置は先頭車両以外にも設置されている<ref name="2002-50">[[#大幡2002|大幡 (2002) p.50]]</ref>。袖仕切りは、登場時、小型であったが、2010年頃から大型の物に交換された。袖仕切りの色は2種類あり、2051×8、2052×8は青緑色 2053×8以降に登場した編成は、ピンク色となっている。
座席はすべて[[鉄道車両の座席#ロングシート(縦座席)|ロングシート]]で、客用扉間に7人がけ、客用扉と連結面の間には3人がけの座席が配置される。小田急の通勤車両では初めて[[バケットシート]]を採用し<ref name="342-87" />、着席位置を明確にすることによって定員乗車の促進を図った<ref name="342-87" />。座席の表地は通常の座席は赤系統の抽象柄<ref name="342-87" />、[[優先席]]は青系統の抽象柄とした<ref name="342-87" />。内装は「さわやかさと暖かみ」のあるものとし<ref name="PIC1995-10EX">鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1995年10月臨時増刊号新車年鑑1995年版記事</ref>、淡いピンク色を基調とした化粧板で構成している<ref name="DJ2007-6-23P" />。床面は中央部が薄い青緑系の縞模様<ref name="342-87" />、通路両側にあたる部分では石目模様とした<ref name="342-87" />。扉脇の[[手摺|手すり]]については、それまで手すり下端の高さが床から800mmだったものを400mmに延長し<ref name="342-87" />、[[幼児]]の戸袋への引き込み事故防止を図った<ref name="342-87" />。各車両の客用扉上部には、[[車内案内表示装置|LEDフリーパターン式案内表示装置]]を千鳥配置に設置した<ref name="342-87" />。(路線図案内式表示器は2051と2052のみ設置されたが停車駅変更の為廃止された)[[車内放送|放送装置]]は自動放送を主体とし<ref name="342-88" />、車内のどの位置でも最適な音量・音質となるように改良し<ref name="342-88" />、スピーカーを5個から9個に増設した<ref name="342-88" />。{{Double image aside|right|小田急2000形|180|小田急2000形LED.jpg|180}}先頭車の車端部<ref group="注">クハ2050番台では海側、クハ2450番台では山側。</ref>には小田急の通勤車両では初めて車椅子スペースを設け<ref name="342-87"/>、乗務員と対話が可能な[[車内非常通報装置|非常通報装置]]も設置された<ref name="679-217"/>。対話式非常通報装置は先頭車両以外にも設置されている<ref name="2002-50">[[#大幡2002|大幡 (2002) p.50]]</ref>。袖仕切りは、登場時、小型であったが、2010年頃から大型の物に交換された。袖仕切りの色は2種類あり青緑色ピンク色となっている。また袖仕切り交換時に「座席間のスタンションポール」と「袖仕切りと一体化されたスタンションポール」が交換された。交換前は角張った形だったが交換後は「おうぎ形の孤」の様に丸い物になった。優先席付近のスタンションポールはオレンジ色の物になった

時期は不明だが全編成にて、室内灯がLED化(カバー付き)された。優先席以外が白色、優先席が電球色である。


=== 主要機器 ===
=== 主要機器 ===
運転台は、後述するように全電気指令式ブレーキを採用したことからデスクタイプとなった<ref name="2002-51">[[#大幡2002|大幡 (2002) p.51]]</ref>。[[マスター・コントローラー|主幹制御器]]と[[鉄道のブレーキ|ブレーキ]]設定器とも力行4ノッチ、常用8ステップ、非常ステップの水平回転式2ハンドル仕様である<ref name="2002-51"/>。[[速度計]]は千代田線の乗り入れに対応した[[車内信号]]対応タイプのものである<ref name="DJ2007-6-23P"/>。計器盤には光電タッチ入力式の[[鉄道車両のモニタ装置|モニタ装置]]を組み込んだ<ref name="2002-51"/>が、このモニタ装置は1000形の同装置に大幅な機能向上を加えたもので<ref name="PIC1995-10EX"/>、主要機器のモニタリング機能に加えて検修機能も有している<ref name="679-217"/>。検修機能は出庫整備の容易化を図るもので、集電装置の上昇や電動空気圧縮機・前照灯・蓄電池の充電状態の把握<ref name="679-217"/>のほか、インバータ制御装置やブレーキ装置については動作試験も可能である<ref name="679-217"/>。また、試運転時の加減速測定機能や停車駅予告機能も組み込まれた<ref name="342-88"/>。さらに、空調装置や車内外の案内表示、自動放送の集中管理を行なう<ref name="679-217"/>とともに、乗車率や温度・湿度の表示も可能である<ref name="342-88"/>。[[警笛]]は空気笛と共に電子笛が採用され<ref name="342-87"/>、八幡電気産業製のYA-95033型が搭載された<ref name="829-190">[[#中山829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.190]]</ref>。
運転台は、後述するように全電気指令式ブレーキを採用したことからデスクタイプとなった<ref name="2002-51">[[#大幡2002|大幡 (2002) p.51]]</ref>。[[マスター・コントローラー|主幹制御器]]と[[鉄道のブレーキ|ブレーキ]]設定器とも力行4ノッチ、常用8ステップ、非常ステップの水平回転式2ハンドル仕様である<ref name="2002-51"/>。[[速度計]]は千代田線の乗り入れに対応した[[車内信号]]対応タイプのものである<ref name="DJ2007-6-23P"/>。計器盤には光電タッチ入力式の[[鉄道車両のモニタ装置|モニタ装置]]を組み込んだ<ref name="2002-51"/>が、このモニタ装置は1000形の同装置に大幅な機能向上を加えたもので<ref name="PIC1995-10EX"/>、主要機器のモニタリング機能に加えて検修機能も有している<ref name="679-217"/>。検修機能は出庫整備の容易化を図るもので、集電装置の上昇や電動空気圧縮機・前照灯・蓄電池の充電状態の把握<ref name="679-217"/>のほか、インバータ制御装置やブレーキ装置については動作試験も可能である<ref name="679-217"/>。また、試運転時の加減速測定機能や停車駅予告機能も組み込まれた<ref name="342-88"/>。さらに、空調装置や車内外の案内表示、自動放送の集中管理を行なう<ref name="679-217"/>とともに、乗車率や温度・湿度の表示も可能である<ref name="342-88"/>。[[警笛]]は空気笛と共に電子笛が採用され<ref name="342-87"/>、2051×10,2052×10では八幡電気産業製のYA-95033型(トロンボーン音)が搭載された<ref name="829-190">[[#中山829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.190]]</ref>。2053×10以降は他の小田急車と同じ音色となった


[[主電動機]]は出力175[[ワット|kW]]の[[かご形三相誘導電動機]]である[[三菱電機]]製のMB-5061-A形を採用した<ref name="342-88"/>。[[主制御器|制御装置]]は[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]]3レベル方式の[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]装置<ref name="342-87"/>である三菱電機製MAP-178-15V49形(1700V/400A)を採用し、デハ2100番台とデハ2400番台の車両に設置した<ref name="679-217"/>。インバータ1基で主電動機4台を制御する (1C4M) ユニットを1群とし、1台の装置の中に2群のインバータを収めている<ref name="342-87"/>。駆動方式は[[WN駆動方式|WNドライブ]]で、[[歯車比|歯数比]]は99:14=7.07に設定した<ref name="679-217"/>。[[起動加速度]]は当初 2.7 km/h/sであったが<ref name="RandM2017-4"/>、1998年(平成10年)のダイヤ改正時に 3.3 km/h/sに引き上げられた<ref name="RandM2017-4"/>。[[鉄道のブレーキ|制動装置(ブレーキ)]]は小田急の通勤車両では初めての採用となる[[回生ブレーキ|回生制動]]併用[[電気指令式ブレーキ|全電気指令式電磁直通制動]] (MBSA-R) <ref name="2002-50"/>で、ブレーキの応答性を高めるために台車中継弁を設置している<ref name="342-87"/>。
[[主電動機]]は出力175[[ワット|kW]]の[[かご形三相誘導電動機]]である[[三菱電機]]製のMB-5061-A形を採用した<ref name="342-88"/>。[[主制御器|制御装置]]は[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]]3レベル方式の[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]装置<ref name="342-87"/>である三菱電機製MAP-178-15V49形(1700V/400A)を採用し、デハ2100番台とデハ2400番台の車両に設置した<ref name="679-217"/>。インバータ1基で主電動機4台を制御する (1C4M) ユニットを1群とし、1台の装置の中に2群のインバータを収めている<ref name="342-87"/>。駆動方式は[[WN駆動方式|WNドライブ]]で、[[歯車比|歯数比]]は99:14=7.07に設定した<ref name="679-217"/>。[[起動加速度]]は当初 2.7 km/h/sであったが<ref name="RandM2017-4"/>、1998年(平成10年)のダイヤ改正時に 3.3 km/h/sに引き上げられた<ref name="RandM2017-4"/>。[[鉄道のブレーキ|制動装置(ブレーキ)]]は小田急の通勤車両では初めての採用となる[[回生ブレーキ|回生制動]]併用[[電気指令式ブレーキ|全電気指令式電磁直通制動]] (MBSA-R) <ref name="2002-50"/>で、ブレーキの応答性を高めるために台車中継弁を設置している<ref name="342-87"/>。
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通常では各駅停車で運行され、[[新宿駅]]から[[秦野駅]](一部を除き[[本厚木駅]]まで)および[[新百合ヶ丘駅]]から[[唐木田駅]]の[[小田急多摩線|多摩線]]で運用されている。
通常では各駅停車で運行され、[[新宿駅]]から[[秦野駅]](一部を除き[[本厚木駅]]まで)および[[新百合ヶ丘駅]]から[[唐木田駅]]の[[小田急多摩線|多摩線]]で運用されている。


2022年11月現在、速達種別に使われていないが、2004年~2016年の間は[[区間準急]]でも運用された他、2005年頃までは[[準急列車|準急]]でも使用され、2018年~2019年には通勤急行にも使用、また2022年3月のダイヤ改正前までは[[急行列車|急行]]でも使用されていた。ダイヤが乱れると、速達種別に使われる場合があるほか、稀に小田原までの運用に入ることもある。
2022年11月現在、速達種別に使われていないが、2004年~2016年の間は[[区間準急]]でも運用された他、2005年頃までは[[準急列車|準急]]でも使用され、2018年~2019年には通勤急行にも使用、また2022年3月のダイヤ改正前までは[[急行列車|急行]],快速急行でも使用されていた。ダイヤが乱れると、速達種別に使われる場合があるほか、稀に小田原までの運用に入ることもある。


== 編成表 ==
== 編成表 ==

2022年12月15日 (木) 04:43時点における版

小田急2000形電車
小田急2000形電車 2056×8
基本情報
運用者 小田急電鉄
製造所 日本車輌製造(第1・5・8編成)
川崎重工業(第2・6・9編成)
東急車輛製造(第3・4・7編成)
製造年 1995年 - 2001年
製造数 9編成72両
運用開始 1995年3月4日
主要諸元
編成 8両固定編成[1]
軌間 1,067 mm(狭軌
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 100 km/h[3]
設計最高速度 120 km/h[4]
起動加速度 3.3 km/h/s[5](1998年のダイヤ改正前までは2.7 km/h/s[4][5]
減速度(常用) 4.0 km/h/s[4]
減速度(非常) 4.7 km/h/s[4]
編成定員 1,240名
車両定員 146名[4](先頭車)
158名[4](中間車)
全長 20,150 mm[2](先頭車)
20,000 mm[2](中間車)
全幅 2,860 mm
全高 4,145 mm[2](集電装置付車)
4,060 mm[2](集電装置無し車)
車体 ステンレス鋼
台車 住友金属工業 SS143[4](電動台車)
住友金属工業 SS043[4](付随台車)
主電動機 三菱電機 MB-5061-A[2]
かご形三相誘導電動機
主電動機出力 175 kW[4]
駆動方式 WN駆動方式[4]
歯車比 99:14=7.07[2]
制御方式 IGBT-3レベルVVVFインバータ制御
制御装置 三菱電機 MAP-178-15V49[2]
制動装置 回生制動併用電気指令電気演算式電磁直通制動 (MBSA-R)[2]
保安装置 OM-ATS, D-ATS-P
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小田急2000形電車(おだきゅう2000がたでんしゃ)は、小田急電鉄1995年平成7年)から運用している通勤型車両である。

小田急では、編成表記の際「新宿寄り先頭車両の車両番号(新宿方の車号)×両数」という表記を使用している[6]ため、本項もそれに倣い「2051×8」のように表記する。また、特定の車両は車両番号から「デハ2400番台」などのように表記し、小田原方面に向かって右側を「山側」、左側を「海側」と表記する。

概要

新宿発着の各駅停車8両編成化を推進する目的で、1995年に2編成が登場した[7]。その後は2600形(NHE車)8両編成の置き換え用として[8]2001年(平成13年)まで増備が続けられ、最終的には8両×9編成の合計72両が製造された[7]

基本設計と意匠は1000形に準じているが、座席数を確保しつつ客用扉の幅を拡大したのが大きな特徴となっている[9]

1995年(平成7年)に当時の通商産業省よりグッドデザイン商品に選定された[10]

登場の経緯

小田急では1990年(平成2年)から1000形の一部の車両で、乗降時間の短縮を図って客用扉の幅を2mに拡大したワイドドア車両を運用していた[1]。乗降時間の短縮自体は効果があったものの[1]、扉幅拡大による座席定員の減少・ドアが大き過ぎるためドア部にも人が並び逆に混雑することが問題視された[1]1991年に1000形ワイドドア車両を増備した際に座席定員の増加を図る[1]一方で、在来通勤車両と同等の座席定員確保と乗降時間の短縮を両立するために、モックアップによる乗降試験も含めた検討が行なわれた[1]。この結果、座席定員の確保には客用扉間の座席を7人がけとし[11]、客用扉の幅は1,600mm程度とすることが最適という結論となった[11]

一方で、電子機器や走行装置のシステムについても、高性能かつメンテナンスフリーの機器類が開発されていた[1]ことから、1000形をベース車両として車体構造の変更や各種機器の見直しを行なった[1]。設計にあたって、騒音振動の少ない「環境にやさしい車両」[9]、快適に乗車できる「お客さまにやさしい車両」[9]、旅客の案内や安全確保に専念できるように付随的な作業を自動化した「乗務員・駅員にやさしい車両」[9]、熟練を要する機器の排除や機器のモニター監視などを可能にした「保守にやさしい車両」[9]、といったテーマを掲げた車両として登場したのが本形式である。

車両概説

本節では登場当時の仕様を基本として、改造等による変更点は沿革の節で後述する。

全長20m級の車両による8両固定編成が製造された[1]。基本設計は10両編成であり[1]、中間の2両(M3車とT3車[12] )を除いた編成形態になっている[1]。形式は先頭車が制御車のクハ2050形で、中間車は電動車のデハ2000形と付随車のサハ2050形である。車両番号は、巻末の編成表を参照のこと。

車体

1000形の側面。扉幅は1300mm 2000形の側面。扉幅は1600mmが基本
1000形の側面。扉幅は1300mm
2000形の側面。扉幅は1600mmが基本

先頭車は車体長19,650mm・全長20,150mm、中間車は車体長19,500mm・全長20,000mmで、車体幅は当時の帝都高速度交通営団(営団地下鉄)千代田線への乗り入れを考慮して[11]、1000形と同じ2,860mmとした[11]。車体は1000形と同様にステンレス鋼製としたオールステンレス車両[9]、ステンレスの輝きを和らげるために表面をダルフィニッシュ(梨地)仕上げとしている[9]。車体断面形状や構成部材も1000形と同様にしたが、先頭車については後述する車椅子スペースを設置したことにより、全長が150mm長くなっている[9]。側腰板と側梁の接続部分には化粧板としてステンレス板を貼っている[11]。また、小田急では初めて転落防止幌を車体側面の連結面間に設置した[13]。車体は千代田線乗り入れ用機器の搭載ができるよう配線等が準備工事されている[12]

前面は中央に貫通扉を配した貫通型で、1000形と共通の繊維強化プラスチック (FRP) 製成型品を使用した[11]ため1000形とほぼ同じである[14]が、車両番号の位置と色が異なる、正面窓下部が裏側から補強されている[注 1]など細部が異なる。側面客用扉は各車両とも4箇所で、乗務員室(運転室)に隣接する箇所のみ1,300mm幅[11]、それ以外の箇所は全て1,600mm幅の両開き扉である[9]。扉はそれまでの骨組み構造からペーパーハニカム構造に変更して軽量化を図った[9]ほか、扉のガラスは指挟み防止対策として、二重構造(複層ガラス)とすることによって扉本体との段差を解消した[15]。乗務員室の扉には、車庫内での開閉を容易にするために扉下部に手掛けを設けた[15]。車体側面を滴る雨水落下の防止対策として、側面の客用扉・乗務員室扉とも上部には雨樋を設けた[9][15]。車両間の貫通路は800mm幅[4]で、妻面の窓は固定窓とした。

3色LED時代の側面表示器

側面窓の配置は、客用扉間には戸袋窓と2枚1組の一段下降窓を配し、車端部には戸袋窓のみが配置されている。下降窓にはスパイラルバランサーを内蔵し[15]、開閉を容易にすると同時に保守の軽減を図っている[15]。前面・側面とも種別・行先表示器LED式を採用した。登場時は、3色LEDであったが、2009年からフルカラーLEDに交換され、現在は全編成がフルカラーLEDとなっている。


内装

車内路線図案内機

座席はすべてロングシートで、客用扉間に7人がけ、客用扉と連結面の間には3人がけの座席が配置される。小田急の通勤車両では初めてバケットシートを採用し[15]、着席位置を明確にすることによって定員乗車の促進を図った[15]。座席の表地は通常の座席は赤系統の抽象柄[15]優先席は青系統の抽象柄とした[15]。内装は「さわやかさと暖かみ」のあるものとし[16]、淡いピンク色を基調とした化粧板で構成している[12]。床面は中央部が薄い青緑系の縞模様[15]、通路両側にあたる部分では石目模様とした[15]。扉脇の手すりについては、それまで手すり下端の高さが床から800mmだったものを400mmに延長し[15]幼児の戸袋への引き込み事故防止を図った[15]。各車両の客用扉上部には、LEDフリーパターン式案内表示装置を千鳥配置に設置した[15]。(路線図案内式表示器は2051と2052のみ設置されたが停車駅変更の為廃止された)放送装置は自動放送を主体とし[4]、車内のどの位置でも最適な音量・音質となるように改良し[4]、スピーカーを5個から9個に増設した[4]

先頭車の車端部[注 2]には小田急の通勤車両では初めて車椅子スペースを設け[15]、乗務員と対話が可能な非常通報装置も設置された[13]。対話式非常通報装置は先頭車両以外にも設置されている[17]。袖仕切りは、登場時、小型であったが、2010年頃から大型の物に交換された。袖仕切りの色は2種類あり青緑色とピンク色となっている。また袖仕切り交換時に「座席間のスタンションポール」と「袖仕切りと一体化されたスタンションポール」が交換された。交換前は角張った形だったが交換後は「おうぎ形の孤」の様に丸い物になった。優先席付近のスタンションポールはオレンジ色の物になった。

時期は不明だが全編成にて、室内灯がLED化(カバー付き)された。優先席以外が白色、優先席が電球色である。

主要機器

運転台は、後述するように全電気指令式ブレーキを採用したことからデスクタイプとなった[18]主幹制御器ブレーキ設定器とも力行4ノッチ、常用8ステップ、非常ステップの水平回転式2ハンドル仕様である[18]速度計は千代田線の乗り入れに対応した車内信号対応タイプのものである[12]。計器盤には光電タッチ入力式のモニタ装置を組み込んだ[18]が、このモニタ装置は1000形の同装置に大幅な機能向上を加えたもので[16]、主要機器のモニタリング機能に加えて検修機能も有している[13]。検修機能は出庫整備の容易化を図るもので、集電装置の上昇や電動空気圧縮機・前照灯・蓄電池の充電状態の把握[13]のほか、インバータ制御装置やブレーキ装置については動作試験も可能である[13]。また、試運転時の加減速測定機能や停車駅予告機能も組み込まれた[4]。さらに、空調装置や車内外の案内表示、自動放送の集中管理を行なう[13]とともに、乗車率や温度・湿度の表示も可能である[4]警笛は空気笛と共に電子笛が採用され[15]、2051×10,2052×10では八幡電気産業製のYA-95033型(トロンボーン音)が搭載された[19]。2053×10以降は他の小田急車と同じ音色となった。

主電動機は出力175kWかご形三相誘導電動機である三菱電機製のMB-5061-A形を採用した[4]制御装置IGBT素子3レベル方式のVVVFインバータ制御装置[15]である三菱電機製MAP-178-15V49形(1700V/400A)を採用し、デハ2100番台とデハ2400番台の車両に設置した[13]。インバータ1基で主電動機4台を制御する (1C4M) ユニットを1群とし、1台の装置の中に2群のインバータを収めている[15]。駆動方式はWNドライブで、歯数比は99:14=7.07に設定した[13]起動加速度は当初 2.7 km/h/sであったが[5]、1998年(平成10年)のダイヤ改正時に 3.3 km/h/sに引き上げられた[5]制動装置(ブレーキ)は小田急の通勤車両では初めての採用となる回生制動併用全電気指令式電磁直通制動 (MBSA-R) [17]で、ブレーキの応答性を高めるために台車中継弁を設置している[15]

電動台車 SS143 付随台車 SS043
電動台車 SS143
付随台車 SS043

台車は小田急では初めてボルスタレス台車を採用した[15]。電動台車が住友金属工業製SS143、付随台車は住友金属工業製SS043で、いずれも車輪径860mmで牽引装置をZリンクとした[17]モノリンク式軸箱支持形である[15]。防音リング付車輪とすることで走行音の低減を図った[15]ほか、準備工事としてヨーダンパ取り付け座を設けている[15]。基礎制動装置はシングル式(片押し式)である[17]集電装置東洋電機製造PT-4212菱枠パンタグラフをデハ2100番台・デハ2300番台・デハ2400番台の車両に1台ずつ設置した[4]

冷房装置については、11,500kcal/h(13.37kW)の能力を有し、オーバーヘッドヒーターを内蔵するCU-195E形集約分散式冷房装置を1両あたり4台搭載した[18](1両あたり46,000kcal/h(53.49kW)[16])。補助送風装置としてラインデリアを装備し、首振り角度を拡大した[4]上、風速を2段に切り替え可能な機能を持たせた[4]。補助電源装置は、200kVAの自動受給電装置付のIGBT素子式静止形インバータ (SIV) をデハ2000番台・デハ2300番台の車両に搭載した[4]電動空気圧縮機 (CP) はC-2000LA形をデハ2000番台・サハ2250番台・デハ2300番台の車両に搭載した[15]

沿革

松田駅で搬入を待つ2051×8(新宿側4両) 当初は準急運用にも投入された。通過標識灯が点灯している
松田駅で搬入を待つ2051×8(新宿側4両)
当初は準急運用にも投入された。通過標識灯が点灯している

1994年(平成6年)度末に1次車となる2051×8・2052×8の2編成が導入され[7]、1995年(平成7年)3月4日のダイヤ改正より営業運転を開始し[16]、新宿発着の各駅停車や準急での運用を開始した[注 3]

1998年(平成10年)には2次車となる2053×8の1編成が導入されたが、この編成からは側腰板と側梁の接続方法をインダイレクト方式に変更し[20]、前面の通過標識灯が廃止された[20]ほか、車内案内表示装置は全てLEDスクロール式に統一した[20]。なお、1999年5月から7月にかけてクハ2053に電気連結器を設置し[8]、ブレーキ読み替え装置の試験を行なった[21]。このとき通常の小田急では見られない12両編成での試運転となり[21]鉄道ファンから注目を集めた[21]。試験終了後に電気連結器は撤去され[21]、ブレーキ読み替え装置は2代目3000形で本格採用となった[21]

2051×8は1997年(平成9年)5月より編成中の2両の側窓ガラスに遮光フィルムを貼り付けして、その効果の試験を実施した[12]。その翌年1998年(平成10年)4月からは全車両の窓ガラスをUVカットガラスに変更した[12]。この試験結果は3次車に反映された。なお、同編成は現在巻上げカーテンを撤去した[8]

2002年(平成14年)には列車種別の増加に伴い、2051×8と2052×8に設置されていた路線図案内式表示装置は撤去された[8]

1998年の増備車(2053×8)から通過標識灯は廃止された 種別・行先表示器がフルカラーLEDとなった2052×8 帯色が変更された2051×8
1998年の増備車(2053×8)から通過標識灯は廃止された
種別・行先表示器がフルカラーLEDとなった2052×8
帯色が変更された2051×8

2000年(平成12年)の増備車からは、2600形を2000形によって置き換えることになった[8]が、この時最初に増備された2054×4では、2000年(平成12年)度に廃車となった2600形2666×8の編成[注 4]からの機器を流用した[22]。台車や補助電源装置・電動空気圧縮機等は当初から新製されたため、2054×4においては流用品は主電動機と制御装置のみで、限りなく完全新製車に近い。この増備車からは車内の7人掛け座席間に縦握り棒(スタンションポール)を設置し、客室側窓のガラスを遮光ガラスとして[8]、カーテンの設置を省略した[8]。そのほか、優先席部の荷棚高さとつり革の高さを100mm低くしたり(合わせて一般席部のつり革は50mm低下)、車椅子スペースの設置場所を乗務員室側に変更した[8]。機器面では電動空気圧縮機がレシプロ式からスクロール回転式に変更[8]されたほか、クハ2050形(両先頭車)に滑走防止制御装置を新設[8]、また屋根上の冷房装置カバーに車外スピーカーが新設され、車外放送機能を追加した[8]。入線当初は、集電装置は通常の菱枠パンタグラフであった[21]が、全車両シングルアーム式に交換された[21]

2007年(平成19年)度より、滑走防止制御装置[注 5]と新しい保安装置であるD-ATS-P装置の設置工事が開始され[23]、2009年度に全車両の対応が終了した[23]。同時にEB装置の搭載と防護無線の改良が実施された[23]。また、2009年2月から、前面と側面種別・行先表示器をフルカラーLEDに交換された[8]。2010年前半には2054×8の座席端の袖仕切を大形板へ交換する工事を実施した[24]。また、2052×8は2012年前半に袖仕切と握り棒を変更した[25]

さらに2012年(平成24年)2月には、2051×8と2052×8の帯色が、従来の「ロイヤルブルー」[注 6]から2代目4000形と同じ「インペリアルブルー」に変更された。現在は2059×8以外の車両が「インペリアルブルー」となっている。

運用

通常では各駅停車で運行され、新宿駅から秦野駅(一部を除き本厚木駅まで)および新百合ヶ丘駅から唐木田駅多摩線で運用されている。

2022年11月現在、速達種別に使われていないが、2004年~2016年の間は区間準急でも運用された他、2005年頃までは準急でも使用され、2018年~2019年には通勤急行にも使用、また2022年3月のダイヤ改正前までは急行,快速急行でも使用されていた。ダイヤが乱れると、速達種別に使われる場合があるほか、稀に小田原までの運用に入ることもある。

編成表

凡例
Tc …制御車、M …電動車、T…付随車、CON…制御装置、SIV…補助電源装置、CP…電動空気圧縮機、PT…集電装置
 
新宿
号車 1 2 3 4 5 6 7 8
形式 クハ2050 デハ2000 デハ2000 サハ2050 サハ2050 デハ2000 デハ2000 クハ2050
区分 Tc2 M5 M4 T2 T1 M2 M1 Tc1
車両番号 2451 2401 2301 2251 2151 2101 2001 2051
2452 2402 2302 2252 2152 2102 2002 2052
2453 2403 2303 2253 2153 2103 2003 2053
2454 2404 2304 2254 2154 2104 2004 2054
2455 2405 2305 2255 2155 2105 2005 2055
2456 2406 2306 2256 2156 2106 2006 2056
2457 2407 2307 2257 2157 2107 2007 2057
2458 2408 2308 2258 2158 2108 2008 2058
2459 2409 2309 2259 2159 2109 2009 2059
搭載機器   CON,PT SIV,CP,PT CP   CON,PT SIV,CP  
自重 28.0t 36.7t 35.9t 28.5t 26.9t 36.7t 35.8t 28.1t
定員 146 158 158 158 158 158 158 146

脚注

注釈

  1. ^ 正面窓については1000形リニューアル車も同一形態となった。
  2. ^ クハ2050番台では海側、クハ2450番台では山側。
  3. ^ なお、小田急では1994年10月より甲種車両輸送の授受駅を小田原駅から新松田駅に変更しているが、2000形は初めて新松田駅から搬入された車両である。
  4. ^ 2600形の8両編成化の過程で、余剰となった付随車を活用して、2000形と同型の主電動機と制御装置を使用してVVVFインバータ制御車としていた編成。
  5. ^ 2051×8 - 2053×8は両先頭車(制御車)と付随車、2054×8以降は付随車のみ設置。
  6. ^ マンセル記号「5B 4/6」[26]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.216
  2. ^ a b c d e f g h 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.313
  3. ^ PHP研究所「小田急電鉄のひみつ」34頁
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 『鉄道ジャーナル』通巻342号 p.88
  5. ^ a b c d 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2017年4月号研究と開発「2000形PS・MS刃形スイッチ動作不良防止について」22-25P内の25Pに記載。
  6. ^ 『鉄道ダイヤ情報』通巻145号 p.15
  7. ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.258
  8. ^ a b c d e f g h i j k l 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.260
  9. ^ a b c d e f g h i j k 『鉄道ジャーナル』通巻342号 p.86
  10. ^ “Gマークに5車種、2施設”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1995年10月16日) 
  11. ^ a b c d e f g 大幡 (2002) p.48
  12. ^ a b c d e f 交通新聞社「鉄道ダイヤ情報」2007年6月号21-23頁
  13. ^ a b c d e f g h 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.217
  14. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.259
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 『鉄道ジャーナル』通巻342号 p.87
  16. ^ a b c d 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1995年10月臨時増刊号新車年鑑1995年版記事
  17. ^ a b c d 大幡 (2002) p.50
  18. ^ a b c d 大幡 (2002) p.51
  19. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.190
  20. ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.218
  21. ^ a b c d e f g 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.261
  22. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.199
  23. ^ a b c 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.57
  24. ^ 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2010年7月号103頁Topic Photos「小田急2054編成の袖仕切を変更」
  25. ^ 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2012年7月号105頁「小田急2000形青帯に変化」記事
  26. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.191

参考文献

書籍

  • 大幡哲海『小田急電鉄の車両』JTBパブリッシング、2002年。ISBN 4533044697 

雑誌記事

  • 安藤英雄「小田急電鉄2000形」『鉄道ジャーナル』第342号、鉄道ジャーナル社、1995年4月、86-88頁。 
  • 大幡哲海「私鉄車両めぐり164 小田急電鉄」『鉄道ピクトリアル』第679号、電気車研究会、1999年12月、201-243頁。 
  • 岸上明彦「小田急電鉄現有車両プロフィール」『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、241-295頁。 
  • 岸上明彦「小田急電鉄 主要諸元表」『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、310-318頁。 
  • 丹克暁・大路弘幸・亀井進「車両総説」『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、49-58頁。 
  • 中山嘉彦「小田急車両 -音と色-」『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、189-191頁。 
  • 橋本政明「固定編成 組み換えの記録」『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、192-203頁。 
  • 交通新聞社鉄道ダイヤ情報」2007年6月号特集「小田急車両オールガイド2007(通勤車両篇)」
  • 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1995年10月臨時増刊号新車年鑑1995年版「小田急電鉄2000形」
  • 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2017年4月号研究と開発「2000形PS・MS刃形スイッチ動作不良防止について」22-25P

外部リンク