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「計量革命」の版間の差分

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計量革命初期のアメリカ合衆国での動向について加筆。
具体的な研究について加筆ほか。
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[[アメリカ合衆国]]では、1950年代末に[[ワシントン大学 (ワシントン州)|ワシントン大学]]にて計量革命が始まった{{Sfn|杉浦|1984|p=420}}。その後、[[アイオワ大学]]、[[ノースウェスタン大学]]、[[ウィスコンシン大学]]、[[シカゴ大学]]にも拡散し、計量革命の中心となった{{Sfn|杉浦|1984|p=420}}。
[[アメリカ合衆国]]では、1950年代末に[[ワシントン大学 (ワシントン州)|ワシントン大学]]にて計量革命が始まった{{Sfn|杉浦|1984|p=420}}。その後、[[アイオワ大学]]、[[ノースウェスタン大学]]、[[ウィスコンシン大学]]、[[シカゴ大学]]にも拡散し、計量革命の中心となった{{Sfn|杉浦|1984|p=420}}。


ワシントン大学では、{{仮リンク|ウィリアム・ギャリソン (地理学者)|en|William Garrison (geographer)|label=ウィリアム・ギャリソン}}とその門下の大学院生{{Efn|[[ブライアン・ベリー]]、リチャード・モリル<!--[[:en:Richard L. Morrill]]とは別人-->、{{仮リンク|デュアン・マーブル|en|Duane Marble}}、ジョン・ニスティーン<!-- John Nystuen -->、{{仮リンク|ワルド・トブラー|en|Waldo R. Tobler}}などがいた。}}により計量地理学の研究が始められた{{Sfn|杉浦|1986|pp=193-194}}。彼らは、経済学など他分野の研究成果を用いて数理的、理論的な研究を行い、アメリカ合衆国に計量的手法を紹介した{{Sfn|杉浦|1986|p=194}}。これらの研究は、以降発展していく[[空間分析]]および[[行動地理学]]の研究の先駆となった{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。ワシントン大学で博士号を取得した大学院生は他大学の教員となり、計量革命を拡散させていく{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。
ワシントン大学では、{{仮リンク|ウィリアム・ギャリソン (地理学者)|en|William Garrison (geographer)|label=ウィリアム・ギャリソン}}とその門下の大学院生{{Efn|[[ブライアン・ベリー]]、リチャード・モリル<!--[[:en:Richard L. Morrill]]とは別人-->、{{仮リンク|デュアン・マーブル|en|Duane Marble}}、ジョン・ニスティーン<!-- John Nystuen -->、{{仮リンク|ワルド・トブラー|en|Waldo R. Tobler}}などがいた。}}により計量地理学の研究が始められた{{Sfn|杉浦|1986|pp=193-194}}。彼らは、経済学など他分野の研究成果を用いて数理的、理論的な研究を行い、アメリカ合衆国に計量的手法を紹介した{{Sfn|杉浦|1986|p=194}}。例えば、ギャリソンは、[[グラフ理論]]や[[多変量解析]]、[[線形計画法]]などを用いた分析方法を開発し、ネットワーク分析や圏域設定、交通インパクト研究、輸送配分問題などの実証研究で適用させた{{Sfn|村山|2013|p=42}}。このほか、門下生の中には買物などのトリップ行動の分析を行う者もおり{{Sfn|杉浦|1986|p=194}}、ギャリソンおよび門下生の研究は、以降発展していく[[空間分析]]および[[行動地理学]]の研究の先駆となった{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。ワシントン大学で博士号を取得した大学院生は他大学の教員となり、計量革命を拡散させていく{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。


ベリーは[[シカゴ大学]]に赴任し、計量的手法に基づく[[都市地理学]]・[[経済地理学]]を教授した{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。その一方、ワシントン大学時代とは異なり、伝統的地理学との親和性の高い研究を行っていた{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。このときに、地理学的な標本抽出法、[[地理行列]]の考案などを行っていた{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。
ベリーは[[シカゴ大学]]に赴任し、計量的手法に基づく[[都市地理学]]・[[経済地理学]]を教授した{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。その一方、ワシントン大学時代とは異なり、伝統的地理学との親和性の高い研究を行っていた{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。このときに、地理学的な標本抽出法、[[地理行列]]の考案などを行っていた{{Sfn|杉浦|1986|p=195}}。
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*{{Cite book|和書|editor=日本地誌研究所|year=1989|title=地理学辞典|publisher=二宮書店|isbn=4-8176-0088-8|ref={{SfnRef|日本地誌研究所|1989}}}}
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* {{Cite book|和書|author=村山裕司|author-link=村山裕二|year=2013|chapter=計量革命|pages=42-43|editor=人文地理学会|title=人文地理学事典|publisher=丸善出版|isbn=978-4-621-08687-2|ref={{SfnRef|村山|2013}}}}

==外部リンク ==
*[https://doi.org/10.4157/grj.49.427 地理学における「計量革命」の意味] - [[高橋潤二郎]]・斎野岳廊・石川純<!--既存記事の人物とは別人-->・石塚耕治・[[杉浦章介]] (1976) 地理学評論 49(7) pp.427-738


{{人文地理学}}
{{人文地理学}}

2023年12月2日 (土) 17:05時点における版

計量革命(けいりょうかくめい、英語: quantitative revolution)とは、数理科学的・統計学的な手段を用いて地理学のモデルを作成したり、地理学的な諸現象の説明を行ったりしようとした運動のことである[1]。計量革命は1950年後半から1960年代前半に欧米で発生・進行し[2]、1960年代のアメリカ合衆国の地理学界に大きな影響を及ぼしたほか、全世界に拡大した[3]

背景

1950年代前半までの地理学は個性記述的な学問という意見が強かったが、1950年代後半になると、フレッド・シェーファー英語版などにより、地理学を自然科学のように法則定立的な学問に変えようとする運動が起こった[4]。シェーファーは「空間の科学としての地理学」を主張したほか、論理実証主義を地理学に取り入れようとした[4]。その後、地域科学英語版の成立、コンピュータの技術進歩、地理学における空間分析の手法の導入などにより、計量革命が起こった[5]

動向

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、1950年代末にワシントン大学にて計量革命が始まった[6]。その後、アイオワ大学ノースウェスタン大学ウィスコンシン大学シカゴ大学にも拡散し、計量革命の中心となった[6]

ワシントン大学では、ウィリアム・ギャリソン英語版とその門下の大学院生[注釈 1]により計量地理学の研究が始められた[7]。彼らは、経済学など他分野の研究成果を用いて数理的、理論的な研究を行い、アメリカ合衆国に計量的手法を紹介した[8]。例えば、ギャリソンは、グラフ理論多変量解析線形計画法などを用いた分析方法を開発し、ネットワーク分析や圏域設定、交通インパクト研究、輸送配分問題などの実証研究で適用させた[9]。このほか、門下生の中には買物などのトリップ行動の分析を行う者もおり[8]、ギャリソンおよび門下生の研究は、以降発展していく空間分析および行動地理学の研究の先駆となった[10]。ワシントン大学で博士号を取得した大学院生は他大学の教員となり、計量革命を拡散させていく[10]

ベリーはシカゴ大学に赴任し、計量的手法に基づく都市地理学経済地理学を教授した[10]。その一方、ワシントン大学時代とは異なり、伝統的地理学との親和性の高い研究を行っていた[10]。このときに、地理学的な標本抽出法、地理行列の考案などを行っていた[10]

他方、ノースウェスタン大学ではエドワード・ターフェ (Edward J. Taaffe)と門下の大学院生により計量分析の研究が進められていた[11]。さらに、ギャリソンがノースウェスタン大学に着任した後、ギャリソンの門下生だったワシントン大学出身者も着任し、計量地理学の研究の拠点機能が高まった[12]

ウィスコンシン大学では、ウィリアム・バンギ英語版がシェーファーの主張を引き継ぎ、『理論地理学』[注釈 2]スウェーデンルント大学から出版した。他に、アーサー・H・ロビンソン英語版により地図パターンの相関分析が行われた[12]

アイオワ大学では、シェーファーが『地理学における例外主義』[注釈 3] にて「空間の科学としての地理学」を主張し、リチャード・ハーツホーンを批判した[13]。ハロルド・ハル・マッカーティ (Harold Hull McCarty)は、空間的関連 (spatial association)の分析において相関分析や回帰分析を利用したほか、空間的関連の有無が空間スケールの大小により異なることを指摘した[14]

影響

計量革命によりアメリカ合衆国では、三大地理学雑誌[注釈 4]や地理学の博士論文において、計量的な方法を利用した論文が増加した[3]。さらに、アメリカで留学や研究を行ったイギリス人によって、アメリカでの計量革命はイギリスにも伝わり、欧米の地理学界全体で計量革命が拡大した[15]。ただ、日本で計量的な地理学研究が活発化したのはアメリカでの計量革命より10年以上遅れている[16]

こうした計量的な地理学は、日本の地理教育にも多大な影響を与え、高等教育での地理学の研究・授業はもちろんの事、中等・初等教育の社会科における地理の授業にも波及した。

問題点など

しかし、こうした計量的なデータへの傾倒は新たな問題も生じさせた。つまり、こうした計量的な数理データの収集・分析が既に地理学の手段ではなく、すでに目的となっているという問題である[要出典]。こうした批判から、地理学に新たな問題が生じた。また、こうした計量的な手法が普及したのは、人文地理学では計量革命付近からであるが、自然科学の範疇である自然地理学ではそれより以前から用いられていたものでもあったが、自然地理学でも主流となった。こうした、計量的な方法のみでは人間を扱う人文地理学が解明しきれないという反発から、現在では個人の主体的観念に着目した人文主義地理学などの他の考え方が主流となってきている[要検証]

脚注

注釈

  1. ^ ブライアン・ベリー、リチャード・モリル、デュアン・マーブル英語版、ジョン・ニスティーン、ワルド・トブラー英語版などがいた。
  2. ^ バンジ,B. 著,西村嘉助訳 1970.『理論地理学』大明堂. Bunge, W. 1962. Theoritical Geography. Lund: C. W. K. Gleerup.
  3. ^ Schaefer, F. K. 1953. Exceptionalism in Geography: A Methodological Examination. Annals of the Association of American Geographers. 43: 226-249. doi:10.2307/2560876
  4. ^ Annals of the Association of American GeographersEconomic GeographyGeographical Reviewの3雑誌

出典

  1. ^ 杉浦 1989, p. 5.
  2. ^ 日本地誌研究所 1989, p. 181.
  3. ^ a b 杉浦 1989, p. 6.
  4. ^ a b 杉浦 1989, p. 4.
  5. ^ 杉浦 1989, pp. 8–13.
  6. ^ a b 杉浦 1984, p. 420.
  7. ^ 杉浦 1986, pp. 193–194.
  8. ^ a b 杉浦 1986, p. 194.
  9. ^ 村山 2013, p. 42.
  10. ^ a b c d e 杉浦 1986, p. 195.
  11. ^ 杉浦 1986, p. 196.
  12. ^ a b 杉浦 1986, p. 197.
  13. ^ 杉浦 1986, p. 198.
  14. ^ 杉浦 1986, p. 199.
  15. ^ 杉浦 1989, pp. 6–7.
  16. ^ 杉浦 1989, p. 7.

参考文献

  • 杉浦芳夫「地理学における数理的手法の発達」『地学雑誌』第93巻第7号、1984年、420-427頁、doi:10.5026/jgeography.93.7_420 
  • 杉浦芳夫 著「計量革命と統計学」、野上道男、杉浦芳夫 編『パソコンによる数理地理学演習』古今書院、1986年、187-216頁。ISBN 4-7722-1366-X 
  • 杉浦芳夫『立地と空間的行動』古今書院〈地理学講座〉、1989年。ISBN 4-7722-1231-0 
  • 日本地誌研究所 編『地理学辞典』二宮書店、1989年。ISBN 4-8176-0088-8 
  • 村山裕司 著「計量革命」、人文地理学会 編『人文地理学事典』丸善出版、2013年、42-43頁。ISBN 978-4-621-08687-2