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狩猟服姿の皇太子バルタサール・カルロス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
狩猟服姿の皇太子バルタサール・カルロス
スペイン語: El príncipe Baltasar Carlos cazador, 英語: Prince Balthasar Charles as a Hunter
作家 ディエゴ・ベラスケス
1635-1636年
種類 キャンバス上に油彩
寸法 191 cm × 103 cm (75 in × 41 in)
収蔵場所 マドリード, プラド美術館

狩猟服姿の皇太子バルタサール・カルロス』(しゅりょうふくすがたのこうたいしバルタサール・カルロス、西: El príncipe Baltasar Carlos cazador: Prince Balthasar Charles as a Hunter)は、スペインバロック絵画の巨匠ディエゴ・ベラスケスが1635-1636年にキャンバス上に油彩で制作した肖像画で、現在、マドリードプラド美術館に所蔵されている[1][2][3][4]フェリペ4世の皇太子バルタサール・カルロス・デ・アウストリアの6歳 (画面下部左側に書き込みがある[1][3][4]) 当時の姿を描いており、『皇太子バルタサール・カルロス騎馬像』 (プラド美術館) に続く皇太子の肖像画である[3]

背景

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フェリペ4世は、ベラスケスに狩猟を主題とした一連の肖像画を描くよう委嘱した。それらの絵画はすべてマドリードに近いエル・パルド英語版の森に建てられた狩猟休憩塔 (トッレ・デ・ラ・パラーダ)英語版を装飾するためのものであった[3][4][5]。離宮もあるエル・パルドの森は、王家の人々が毎年秋になると狩猟を楽しむために必ず訪れた場所であるが、その狩猟の合間の休憩時などに王家の人々が私的に利用する施設が狩猟休憩塔であった[5]。この建物は後にギャラリーに変更され、ピーテル・パウル・ルーベンスとその工房が描いたオウィディウスの『変身物語』を主題とした絵画や古代の哲人像、狩猟や動物の絵画など100点以上の作品により装飾された[3][5]

ベラスケスは、この狩猟休憩塔の「国王の長廊下」と呼ばれる部屋のために狩猟を主題とする2点の他の作品、すなわち『狩猟服姿の枢機卿親王フェルナンド・デ・アウストリア』と『狩猟服姿のフェリペ4世』 (ともにプラド美術館) も描いた[3][6]。本作とこの2作品には共通点があり、すべて縦長の形式で、4分の3正面向きであり、人物が狩猟服を身に着けている。なお、ベラスケスは、狩猟休憩塔のためにこれらの肖像画を含め『イソップ』、『メニッポス』、『軍神マルス』、『バリェーカスの少年』 (すべてプラド美術館) など10点余りの作品を描いている[5]

作品

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本作には数点の複製が知られているが、それらには本作とは違い、3匹目の犬が描かれており[1][3]、元来、本作は皇太子をピラミッド型構図の中心とするより幅の広いサイズであったと思われる[3]。事実、本作の画面右側は切断されており[1]、3匹目の犬が描かれていたはずである[4]

皇太子は帝王教育に不可欠とされた狩猟[1][2]に適した服装をしており、袖のある暗色のコート、幅広のジョッパーズ、灰色の刺繍のあるブラウス、レースのあるカラー、膝までのブーツ、子供用の大きさの銃を身に着けている。絵画には2匹の犬が登場しているが、犬は狩猟の場面には必ず描かれる。そのうちの1匹はとても大きいため、ベラスケスは小さな皇太子の姿を損なわないよう、犬を寝ている格好で表した。犬の耳は大きく、頭部を地面に載せている。もう1匹は画面右端が切断されているため、半身だけ見える小さな犬で、シナモン色のグレイハウンドである。目は生き生きとして、頭部は皇太子の手の高さにある。

生き生きとした表情の皇太子の背後にはオークの木がある。背景には、奔放なバリエーションの豊かな筆遣いで描かれたパルドの森のある広い風景が広がっており、遠景にはグアダラマの青い山並みが望まれる[1][2]。空は銀灰色で、あたかも秋の日のようであり、雲に満ちている。

研究者たちは、皇太子の頭部の描写は画家の技量を示す例だという見解で一致している。また、印象派風の純白のレース飾り、下描き風の筆致による草むらや銀灰色の空は、ベラスケスの様式の新たな段階を伝えている[3]

関連作品

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脚注

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  1. ^ a b c d e f Prince Baltasar Carlos in Hunting Dress”. プラド美術館公式サイト (英語). 2024年1月31日閲覧。
  2. ^ a b c プラド美術館 2009, p. 108.
  3. ^ a b c d e f g h i カンヴァス世界の大画家 15 ベラスケス、1983年、86-87頁。
  4. ^ a b c d モーリス・セリュラス 1980年、118頁。
  5. ^ a b c d プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光 2018年、132頁。
  6. ^ プラド美術館 2009, p. 104.

参考文献

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  • 『プラド美術館ガイドブック』、プラド美術館、2009年刊行、ISBN 978-84-8480-189-4
  • 井上靖高階秀爾編集『カンヴァス世界の大画家 15 ベラスケス』、中央公論社、1983年刊行、ISBN 4-12-401905-X
  • モーリス・セリュラス 雪山行二・山梨俊夫訳『世界の巨匠シリーズ ベラスケス』、美術出版社、1980年刊行 ISBN 978-4-568-19003-8
  • プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光、国立西洋美術館、プラド美術館、読売新聞社日本テレビ放送網、BS日本テレ、2018年刊行 ISBN 978-4-907442-21-7
  • 大高保二郎・川瀬祐介『もっと知りたいベラスケス 生涯と作品』、東京美術、2018年刊行 ISBN 978-4-8087-1102-3
  • Historia general del arte, Tomo XIII, colección Summa Artis, La pintura española del siglo XVII. Autor, José Camón Aznar. Editorial Espasa Calpe S.A. Madrid 1977
  • La pintura en el barroco José Luis Morales y Marín Espasa Calpe S.A. 1998. ISBN 84-239-8627-6
  • Museo del Prado. Pintura española de los siglos XVI y XVII, Enrique Lafuente Ferrari Aguilar S.A. 1964

外部リンク

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