産後クライシス
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産後クライシス(さんごクライシス)とは、出産後から2 - 3年ほどの間に、夫婦仲が悪化するという現象を指し[1]、2012年にNHKが提唱した用語である。
「産後クライシス」提唱の契機
[編集]「出産後に、急激に夫婦仲が悪化する現象」というのは、古今東西、広く知られていた[2]。また、家族社会学などの分野では昔から研究されており、長年の研究蓄積がある[3]。従来、出産の後の母親側の問題に焦点を当てた「育児ノイローゼ」や「産後ブルー」という概念は従来からあったが、産後の夫婦関係の悪化しやすいという現象は、日本の一般社会では、これを直視することは避けられ、あまり語られなかった[3]。
そういった状況において、2012年9月にNHKのテレビ番組『あさイチ』の中で『夫婦を壊す?!“産後クライシス”』というテーマの特集が放送され[4]、反響を呼んだ。2013年11月には、この語を標題とした書籍2冊が相次いで出版され、改めて雑誌記事やネット上でも話題として取り上げられた[1]。
要因
[編集]「産後クライシス」は、さまざまな要因によって複合的に引き起こされる。ホルモンバランス、体調不良、子育てに対する不安、ライフスタイルの変化など、心身両面でのさまざまな原因によって引き起こされている。例えば、母乳の分泌を促進するプロラクチンというホルモンには、「敵対的感情」を煽る効果があることが知られている[2]。
一方、産後クライシスのひとつの原因として、NHKのスタッフからは、出産後の妻が、子育てや家事への夫の関与について、強く不満を抱くことになりやすいことが指摘された[3]。岡野あつこは、2010年ころから育児を厭わない「イクメン」という広く認知されるようになったこと、(それによって、ついつい「それが当然」などと思い込んでしまって、感謝を失ってしまったことが)妻側の不満を増す原因になっているとも指摘している[5]。
なお、産後クライシスの原因が、夫の育児・家事への無関与・無理解のみとするのは、NHKの恣意的なデータ解釈で誤りだ、という指摘もある[2][6]。同記事では、夫の育児・家事への関与の多寡とは関係ない、と指摘されている。そのため、いくら夫が育児、家事をどんなにがんばっても、産後クライシスが起こりうる。また、産後クライシスは、夫婦の関係を発展させる上で必要なもので、「原因は夫にある」などと一方的に悪者扱いしても問題解決にはならず逆効果だ、としている[2]。
出典・脚注
[編集]- ^ a b “ザ・世論〜日本人の気持ち〜 夫婦を襲う「産後クライシス」 出産後、妻の夫への愛情はなぜ薄れるのか”. ダイヤモンド社. 2014年1月4日閲覧。
- ^ a b c d “産後クライシスは夫婦を最強のチームにする訓練 妻を「母親」としか見られなくなると、産後クライシスはこじれやすい”. 日経DUAL (2014年1月7日). 2014年3月17日閲覧。
- ^ a b c 坪井健人; 内田明香:NHK「あさイチ」取材班 (2013年11月11日). “日本人を襲う「産後クライシス」の衝撃”. 東洋経済新報社. 2014年1月4日閲覧。
- ^ “夫婦を壊す?! “産後クライシス””. 日本放送協会 (2012年9月5日). 2014年1月4日閲覧。
- ^ 江畑佳明 (2013年12月17日). “特集ワイド:第1子誕生は離婚の危機! 無神経な夫にイラ立つ妻”. 毎日新聞・東京夕刊: p. 2 - 毎索にて閲覧
- ^ “産後クライシスには意味がある”. おおたとしまさ (2013年12月28日). 2014年3月17日閲覧。
関連文献
[編集]- 内田明香、坪井健人『産後クライシス』ポプラ社〈ポプラ新書〉、2013年11月6日。ISBN 978-4591136775。
- 岡野あつこ『産後クライシス = After Giving Birth Crisis : なぜ、出産後に夫婦の危機が訪れるのか』角川学芸出版〈角川フォレスタ〉、2013年11月23日。ISBN 978-4046539335。
関連項目
[編集]- イクメンプロジェクト
- 残念な夫。 - 2015年のテレビドラマ。この現象により仲の悪化した夫婦をめぐるホームコメディだが、番組宣伝では「産後危機」という言葉で説明されている。
外部リンク
[編集]- 産後クライシス NHK「あさイチ」取材班 - 東洋経済 ONLINE
- Father's Eyes - 育児・教育ジャーナリスト、おおたとしまさのブログ:「産後クライシス」に関するエントリー複数がある