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発生論の誤謬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

発生論の誤謬英語: Genetic fallacy)とは、現在の意味や状況を無視してその出典出自だけを根拠として結論を導くこと。論点のすり替えの一種。「発生論的誤謬」や「発生論的虚偽」[1]とも訳され、しばしば「出自に訴える論証」(英語: appeal to origin)の別称ともされる。現在の状況の変化を見過ごして、過去の状況における肯定的または否定的評価をそのまま保持するものである。

したがって、この誤謬は主張の価値を評価できない。よい論証の第一の評価基準は、前提から主張の真偽性に対して結論を導き出せるかである[2]。たとえ問題の起点部分に限れば真実であり、問題がなぜ現在のような形になったのかを解明する助けになったとしても、論議全体の価値とは無関係である[3]

Oxford Companion to Philosophy によれば、この用語の起源は Morris Cohenアーネスト・ナーゲルの著書 An Introduction To Logic and Scientific Method である。

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Attacking Faulty Reasoning(T. Edward Damer、第三版、p.36)の一節:

"You're not going to wear a wedding ring, are you? Don't you know that the wedding ring originally symbolized ankle chains worn by women to prevent them from running away from their husbands? I would not have thought you would be a party to such a sexist practice."

(訳)「よもや結婚指輪をはめようとしていないだろうね? 結婚指輪ってのは本来、妻が夫から逃げようとするのを防ぐ足かせを象徴していたのを知らないのか? 君がそんな性差別的習慣に染まっているとは思わなかった」 この主張は結婚指輪をしたがらない人々がいる理由の説明にはなるかもしれないが、このような疑わしい起源の話にのみ基づいてカップルが結婚指輪の交換をしないというのは論理的に不適当であろう。

With Good Reason: An Introduction to Informal Fallacies(S. Morris Engel、第五版、pg.196)の一節:

America will never settle down; look at the rabble-rousers who founded it.

(訳)アメリカは決して落ち着くことはないだろう。建国に関わった扇動者たちを見よ。

脚注

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  1. ^ 大淵和夫・上原隆執筆「発生論的虚偽」、思想の科学研究会編『新版 哲学・論理用語辞典』三一書房、1995年4月、p.316
  2. ^ Attacking Faulty Reasoning: A Practical Guide to Fallacy-Free Arguments (Third Edition) by T. Edward Damer, chapter II, subsection "The Relevance Criterion" (pg. 12)
  3. ^ With Good Reason: An Introduction to Informal Fallacies (Fifth Edition) by S. Morris Engel, chapter V, subsection 1 (pg. 198)

外部リンク

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