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移動体識別用特定小電力無線局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

移動体識別用特定小電力無線局(いどうたいしきべつようとくていしょうでんりょくむせんきょく)は、特定小電力無線局の一種のパッシブ型RFIDのことである。

定義

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総務省令電波法施行規則第6条第4項第2号(10)に、

移動体識別(設備規則第24条第15項に規定する移動体識別をいう。)用で使用するものであつて、次に掲げる周波数電波を使用するもの
(一) 915MHzを超え930MHz以下の周波数(屋内において使用する場合に限る。)
(二) 2,400MHzを超え2483.5MHz以下の周波数

と定義している。

2012年(平成24年)12月5日[1]現在

促音の表記は原文ママ、設備規則は無線設備規則の略

総務省告示周波数割当計画では別表9-10に規定 [2] している。

概要

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特定小電力無線局として共通の特徴は、特定小電力無線局#概要を参照。

パッシブ型電子タグシステムに用いられるものであり、同周波数帯の同用途に、最大空中線電力1Wの構内無線局が、同250mWの陸上移動局があるところから、移動体識別用特定小電力無線局は小電力電子タグシステムと通称される。 この周波数帯はアクティブ型RFIDも利用するが、これについてはテレメーター用、テレコントロール用及びデータ伝送用特定小電力無線局の一種として規定される。

電波産業会(略称ARIB)(旧称、電波システム開発センター(略称RCR))が、無線設備規則第49条の14第6号、第9号及び第10号並びに関連告示の技術基準を含めて、標準規格

  • RCR STD-29 特定小電力無線局2.4GHz帯移動体識別用無線設備[3]
  • ARIB STD-T81 特定小電力無線局周波数ホッピング方式を用いる2.4GHz帯移動体識別用無線設備[4]
  • ARIB STD-T107 特定小電力無線局920MHz帯移動体識別用無線設備[5]

を策定している。

技術基準

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2.4GHz帯
  周波数ホッピング方式 周波数ホッピング方式以外
周波数 2.44175GHz 2.448875GHz
指定周波数帯 2400MHz~2483.5MHz 2427.00MHz~2470.75MHz
電波型式 スペクトラム拡散方式 N0N、A1D、AXN、F1D、F2D、G1D
空中線電力 2400MHz以上2427MHz未満又は

2470.75MHzを超えて2483.5MHz以下

平均電力10mW/1MHz以下でかつ総電力260mW以下

10mW以下
2400MHz以上2483.5MHz以下、

但し2427MHz以上2470.75MHz以下を含む

平均電力3mW/1MHz

空中線 規定しない 絶対利得は原則として3dB以下
条件により不足分をアンテナで補うことは可
混信防止機能

識別信号の送受による制御
使用者による周波数切替および発射停止

920MHz帯
指定周波数帯

916.8MHz、918.0MHz、919.2MHz

920.4MHz~923.4MHzで200kHz間隔

電波型式 N0N、A1D、AXN、H1D、R1D、J1D、F1D、F2D、G1D
空中線電力 250mW以下
空中線 絶対利得は原則として3dB以下
条件により不足分をアンテナで補うことは可
混信防止機能

送信時間制御
キャリアセンス機能

無線チャネル
920MHz帯単位チャネル
番号 中心周波数
5 916.8MHz
11 918.0MHz
17 919.2MHz
23 920.4MHz
24 920.6MHz
25 920.8MHz
26 921.0MHz
27 921.2MHz
28 921.4MHz
29 921.6MHz
30 921.8MHz
31 922.0MHz
32 922.2MHz
33 922.4MHz
34 922.6MHz
35 922.8MHz
36 923.0MHz
37 923.2MHz
38 923.4MHz
チャネル23以上は最大5隣接単位チャネルまで動作可

旧技術基準による機器の使用期限

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無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準の改正[6]により、旧技術基準に基づき認証された適合表示無線設備に使用期限が設定[7] された。 但し2.4GHz帯周波数ホッピング方式は除外[8]される。

対象となるのは、2.4GHz帯(定義(二)のもの)周波数ホッピング方式以外で、

  • 「平成17年11月30日」[9]までに認証された適合表示無線設備
  • 経過措置として、旧技術基準により「平成19年11月30日」までに認証された適合表示無線設備[10]

である。

この期限は、後にコロナ禍により[11]「当分の間」延期 [12]された。

詳細は特定小電力無線局#旧技術基準による機器の使用期限を参照。

技適未取得機器を用いた実験等の特例

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免許を要しない無線局#第4条の2も参照

電波法施行規則第6条の2の4に規定する機器は、技術基準適合証明を取得していなくても届出から180日以内[13]は、実験等無線局として使用できる。 但し同一目的での期間延長はできない。

移動体識別用の対象は、920MHz帯(定義(一)のもの)である。

沿革

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1992年(平成4年)

  • 特定小電力無線局の一種として制度化[14]
    • 周波数は2.4GHz帯、空中線電力は最大10mW
    • 周波数ホッピング方式とそれ以外のものとがあった。
    • 呼出名称記憶装置の搭載が義務付けられていたが、メーカー記号と製造番号を送信するもので具体的な使用者を特定できるものではなかった。
  • RCRが「RCR STD-29」を策定[3]

1998年(平成10年)- 呼出名称記憶装置の搭載が廃止、混信防止機能の搭載が義務付け [15]

2002年(平成14年)- ARIBが「RCR STD-T81」を策定[4]

2003年(平成15年)- 周波数ホッピング方式が2441.75MHz、それ以外は2448.875MHzに [16]

2005年(平成17年)

  • 電波の利用状況調査で、770MHzを超え3.4GHz以上の特定小電力無線局を含む免許不要局の出荷台数を公表[17]
    • 以降、三年周期で公表

2006年(平成18年)- 950MHz帯が周波数953.5MHzとして割当て[18][19]

2010年(平成22年)

  • 950MHz帯の周波数が953.5MHzが954.8MHzとなり、周波数幅が拡張[20][21]
    • 改正前の950MHz帯で認証を受けた適合表示無線設備は「平成30年3月31日」で使用不可に[22]

2011年(平成23年)

  • 920MHz帯が割り当てられ、これに伴い950MHz帯の使用は「平成30年3月31日」までに[23][24]
  • 2.4GHz帯の周波数ホッピング方式以外の空中線電力が最大250mWに緩和[25]

2012年(平成24年)- 電波の利用状況調査の周波数の境界が770MHzから714MHzに変更 [26]

2017年(平成29年)- ARIBが「RCR STD-T107」を策定[5]

2018年(平成30年)- 950MHz帯は廃止[23]

2020年(令和2年)- 技適未取得機器を用いた実験等の特例の対象に[27]

2022年(令和4年)- 電波の利用状況調査で、714MHz超の免許不要局の出荷台数を公表

  • 以降、二年周期で公表[28]

出荷台数

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出荷台数
周波数帯 平成13年度 平成14年度 平成15年度 出典
2.4GHz帯 38 637 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[29]

注 上段は周波数ホッピング式、下段は周波数ホッピング式以外

215 1,022 912
周波数帯 平成16年度 平成17年度 平成18年度 出典
950MHz帯 88 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[30]
2.4GHz帯 3,992 7,592 6,825
周波数帯 平成19年度 平成20年度 平成21年度 出典
950MHz帯 1.420 1,237 1,756 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[31]
2.4GHz帯 66,292 5,096 5,006
周波数帯 平成22年度 平成23年度 平成24年度 出典
950MHz帯 321 2,310 22,876 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[32]
2.4GHz帯 276 199 115
周波数帯 平成25年度 平成26年度 平成27年度 出典
920MHz帯 4,053 2,550 5,845 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[33]
2.4GHz帯 1,535 550 73
周波数帯 平成28年度 平成29年度 平成30年度 出典
915MHz超 930MHz以下 17,033 41,815 196,646 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[34]
2,400MHz超 2,483.5MHz以下 602 16,538 107,717
周波数帯 令和元年度 令和2年度 出典
915MHz超 930MHz以下 250,199 233,253 第2章 電波利用システムごとの調査結果(免許不要局)[35]
2,400MHz超 2,483.5MHz以下 235 627

廃止

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950MHz帯の廃止時点の情報を参考として掲げる。 チャネル番号はARIB STD-T90 特定小電力無線局950MHz帯移動体識別用無線設備(廃止済み)[36]による。

周波数 954.8MHz
指定周波数帯 952.0MHz~957.6MHz
電波型式 N0N、A1D、AXN、H1D、F2D、R1D、J1D、G1D
空中線電力 10mW以下
空中線 絶対利得は原則として3dB以下
条件により不足分をアンテナで補うことは可
混信防止機能 送信時間制御

キャリアセンス機能

単位チャネル
番号 中心周波数
7 952.2MHz
8 952.4MHz
9 952.6MHz
10 952.8MHz
11 953.0MHz
12 953.2MHz
13 953.4MHz
14 953.6MHz
15 953.8MHz
16 954.0MHz
17 954.2MHz
18 954.4MHz
19 954.6MHz
20 954.8MHz
21 955.0MHz
22 955.2MHz
最大3隣接単位チャネルまで同時に動作可

920MHz帯への移行促進の為、新たにこの周波数帯を携帯電話業務に使用するソフトバンク(旧称ソフトバンクモバイル)が期限内に無線機を取り替える費用を負担する「終了促進措置」を実施していた[37]

脚注

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  1. ^ 平成24年総務省令第99号による電波法施行規則改正
  2. ^ 令和2年総務省告示第411号による周波数割当計画全部改正
  3. ^ a b 標準規格概要(STD-29) ARIB - 標準規格等一覧
  4. ^ a b 標準規格概要(STD-T81) ARIB - 標準規格等一覧
  5. ^ a b 標準規格概要(STD-T107) ARIB - 標準規格等一覧
  6. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
  7. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
  8. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第2項第2号
  9. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
  10. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第4項
  11. ^ 無線設備規則の一部を改正する省令の一部改正等に係る意見募集 -新スプリアス規格への移行期限の延長-(総務省報道資料 令和3年3月26日)(2021年4月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  12. ^ 令和3年総務省令第75号による無線設備規則改正の令和3年8月3日施行
  13. ^ 電波法施行規則第6条の3第2項
  14. ^ 平成4年郵政省令第21号による電波法施行規則改正
  15. ^ 平成10年郵政省令第86号による電波法施行規則改正
  16. ^ 平成15年総務省告示第432号による平成元年郵政省告示第42号改正
  17. ^ 「平成16年度電波の利用状況調査の調査結果(暫定版)」の公表及び「平成16年度電波の利用状況調査の評価結果の概要(案)」に対する意見の募集(総務省 報道資料 平成17年3月7日))(2007年8月8日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  18. ^ 平成18年総務省告示第42号による周波数割当計画改正
  19. ^ 平成18年総務省令第9号による電波法施行規則改正
  20. ^ 平成22年総務省告示第203号による周波数割当計画改正
  21. ^ 平成22年総務省令第62号による電波法施行規則改正
  22. ^ 平成22年総務省令第63号による無線設備規則改正附則第2項
  23. ^ a b 平成23年総務省告示第512号による周波数割当計画改正
  24. ^ 平成23年総務省令第162号による電波法施行規則等改正
  25. ^ 平成23年総務省告示第516号による平成元年郵政省告示第42号改正
  26. ^ 平成24年総務省令第100号による電波の利用状況の調査等に関する省令改正
  27. ^ 令和2年総務省令第4号による電波法施行規則改正
  28. ^ 令和2年総務省令第36号による電波の利用状況の調査等に関する省令改正
  29. ^ 「平成16年度電波の利用状況調査の調査結果(暫定版)平成17年3月」p.390 (「平成16年度電波の利用状況調査の調査結果(暫定版)」の公表及び「平成16年度電波の利用状況調査の評価結果の概要(案)」に対する意見の募集 別紙1(総務省 報道資料 平成17年3月7日))(2007年8月8日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  30. ^ 「平成19年度電波の利用状況調査の調査結果 平成20年5月」p.342(「平成19年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成19年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見の募集 別添(総務省 報道資料 平成20年5月2日))(2009年7月22日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  31. ^ 「平成22年度電波の利用状況調査の調査結果(770MHzを超え3.4GHz以下の周波数帯)平成23年6月」p.401(「平成22年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成22年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙1(総務省 報道資料 平成23年6月7日)(2011年6月8日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  32. ^ 「平成25年度電波の利用状況調査の調査結果(714MHzを超えて3.4GHz以下の周波数帯)平成26年3月」p.443(「平成25年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成25年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙2(総務省 報道資料 平成26年3月20日))(2014年4月2日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  33. ^ 「平成28年度電波の利用状況調査の調査結果(714MHzを超え3.4GHz以下の周波数帯)平成29年5月」p.537(「平成28年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「平成28年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙2(総務省 報道資料 平成29年5月12日))(2017年6月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  34. ^ 「令和元年度電波の利用状況調査の調査結果(714MHz超3.4GHz以下の周波数帯)令和2年5月」p.2-1(「令和元年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「令和元年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集(総務省 報道資料 令和2年5月29日)(2020年6月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  35. ^ 「令和3年度電波の利用状況調査の調査結果 714MHz以上の周波数帯 令和4年5月」p.2-1(「令和3年度電波の利用状況調査の調査結果」の公表及び「令和3年度電波の利用状況調査の評価結果(案)」に対する意見募集 別紙2(総務省 報道資料 令和4年5月19日))(2022年6月2日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  36. ^ 標準規格概要(STD-T90) ARIB - 標準規格等一覧
  37. ^ 900MHzに関する情報(ソフトバンク - 公開情報) - ウェイバックマシン(2018年5月27日アーカイブ分)

関連項目

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外部リンク

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