空飛ぶ豚
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空飛ぶ豚(そらとぶぶた)は英語では、現実にはまったくありえないことを示す修辞技法(アデュナトン)の慣用句である。
「飛べる豚」"pigs fly"、「豚が飛ぶ時には」"when pigs fly" 、「豚に翼がある時には」 "when pigs have wings" 、などと使われ、ある事柄が不可能であることを意味するのに使われる[1]。
同様な意味をもつ慣用句には「地獄が凍ったときに」"when hell freezes over"とか「古ローマ暦のついたちまでに」"to the Greek calends,"とか「樽から猿が出てきたら」"and monkeys might fly out of my butt"などがある。
古いスコットランドの話から来ているといわれているが、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の中にも現れている[2]。
- "Thinking again?" the Duchess asked, with another dig of her sharp little chin.
- "I've a right to think," said Alice sharply, for she was beginning to feel a little worried.
- "Just about as much right," said the Duchess, "as pigs have to fly...." (第9章)
1909年11月4日にイギリスのパイロット、ジョン・ムーア=ブラバゾンが「豚も飛べる」ことを証明するために、飛行機にくくりつけたバスケットに子豚をいれて飛行した。
他の国の同様の表現
[編集]- ドイツ語では "Wenn Schweine fliegen könnten!" (「豚がとぶことができた時」)や"Wenn Schweine Flügel hätten, wäre alles möglich" (「豚に翼があるなら、何でも可能だ」)などが使われる。
- フィンランド語では "sitten kun lehmät lentävät" (「牛が飛ぶなら」)とか "jos lehmällä olisi siivet, se lentäisi" (「牛に翼があるなら、飛べるだろう」)などが使われる。
- フランス語でも"Quand les vaches auront des ailes" (「牛に翼があるなら」)も使われるが、最も一般的には"quand les poules auront des dents" (「鶏に歯があるなら」)が使われる。
- ポルトガル語では、"quando a cobra fumar " (「蛇がタバコをすったら」)が、第二次世界大戦中に、ブラジル大統領ジェトゥリオ・ドルネレス・ヴァルガスがブラジル軍が決して戦争に参加しないこと表明するのに用いられた。その後に連合軍にブラジル軍が参加した時、部隊のマークにパイプを咥えたコブラのマークを採用した。
- ラテン語 cum mula peperit(ラバが子供を産んだ時)
関連項目
[編集]- ピンクフロイド『アニマルズ』:アルバムのジャケットに、翼を持った豚が登場する。アルバムの最初と最後に「翼を持った豚」という楽曲が配置されており、重要なモチーフとなっている。また翼を持った豚の人形はライブにも登場し、会場を飛び回るという大掛かりな演出が行われる。
- 紅の豚 - 主人公が豚のパイロットで、対義語である「飛ばない豚」に言及することで空飛ぶ豚はただの豚以上の存在だと自負する台詞がある[3]が、宮崎駿自身は冗談ぐらいの意味でしかなかった、と語っている[4]。
脚注
[編集]- ^ 藤野ひろのぶ & 小林弘幸 2021, p. 25.
- ^ ルイス・キャロル & 佐野真奈美 2015, p. 152.
- ^ 佐々木隆 2010, p. 69.
- ^ 宮崎駿 2013, p. 69.
参考文献
[編集]- 佐々木隆 (2010). 謎解き!宮崎・ジブリアニメ ~『借りぐらしのアリエッティ』までの成長の軌跡~. ベストセラーズ. p. 69. ISBN 9784584122921
- 宮崎駿 (2013). 風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡. 文藝春秋. p. 37. ISBN 9784168122026
- ルイス・キャロル; 佐野真奈美 (2015). 不思議の国のアリス 新訳. ポプラ社. p. 152. ISBN 9784591146538
- 藤野ひろのぶ; 小林弘幸 (2021). 自律神経が整う幸せを呼ぶ切り絵. 西東社. p. 25. ISBN 9784791685547