第2回世界遺産委員会
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第2回世界遺産委員会(だい2かいせかいいさんいいんかい)は、1978年9月5日から8日の間、アメリカ合衆国のワシントンD.C.で開催された。
この回から世界遺産リストへの登録が始まり、文化遺産8件、自然遺産4件の計12件が登録された。
委員国
[編集]委員国は以下の13か国である[1][注釈 1]。地域区分はUNESCO に従っている。
地域 | 委員国 | 特記事項 |
---|---|---|
議長国 | アメリカ合衆国 | 議長はデヴィド・ヘイルス (David F. Hales)[2] |
アジア・太平洋 | イラン | 副議長国[2] |
オーストラリア | ||
アラブ諸国 | エジプト | 副議長国[2] |
イラク | ||
チュニジア | ||
アフリカ | ナイジェリア | 副議長国[2] |
ヨーロッパ・北アメリカ | フランス | 副議長国[2] |
ポーランド | 報告担当国[2] | |
カナダ | ||
西ドイツ | ||
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国 | ||
カリブ・ラテンアメリカ | エクアドル | 副議長国[2] |
登録物件
[編集]以下の自然遺産4件、文化遺産8件の計12件が世界遺産リストに登録された。
自然遺産
[編集]画像 | 登録名 | 登録基準[注釈 2] | 登録ID[注釈 3] | 保有国 |
---|---|---|---|---|
ガラパゴス諸島 | (7), (8), (9), (10) | 1 | エクアドル | |
Galapagos Islands | ||||
Iles Galapagos | ||||
ガラパゴス諸島は火山活動によって生まれた島々で、今なお火山活動が続いている[3]。島ごとに多様な亜種が棲息し、チャールズ・ダーウィンの進化論研究に不可欠の影響を与えた[4]。 | ||||
シミエン国立公園 | (7), (10) | 9 | 社会主義エチオピア | |
Simien National Park | ||||
Parc National du Simien | ||||
シミエン国立公園は1969年に「アフリカの屋根」の異名をとるシミエン山地に設定された国立公園である[5]。厳しい環境のために生物層は限定的だが、その中には固有種などの希少生物たちが含まれている[6]。 | ||||
ナハニ国立公園 | (7), (8) | 24 | カナダ | |
Nahanni National Park | ||||
Parc national Nahanni | ||||
ナハニ国立公園は、サウスナハニ川が作り出した地形が広がる地域で、地球生成の歴史を刻んでいるとともに[7]、自然美を呈している[8]。 | ||||
イエローストーン | (7), (8), (9), (10) | 28 | アメリカ合衆国 | |
Yellowstone | ||||
Yellowstone | ||||
イエローストーンは1872年に指定された世界初の国立公園である。火山活動や間欠泉などの熱水現象が多彩な地形を作り上げてきた場所で、生物相も非常に豊かである[9]。2006年に登録名が「イエローストーン国立公園」(Yellowstone National Park / Parc national de Yellowstone) と改名された[10]。 |
文化遺産
[編集]画像 | 登録名 | 登録基準 | 登録ID | 保有国 |
---|---|---|---|---|
キトの市街 | (2), (4) | 2 | エクアドル | |
City of Quito | ||||
Ville de Quito | ||||
キトは先住民の町を破壊したスペイン人がその上に築いた都市で、「アメリカ大陸の修道院」の異名をとるほどに相次いで聖堂や修道院が建てられ、アメリカ大陸での伝道においても重要な役割を果たした[11]。 | ||||
アーヘン大聖堂 | (1), (2), (4), (6) | 3 | 西ドイツ | |
Aachen Cathedral | ||||
Cathédrale d'Aix-la-Chapelle | ||||
アーヘン大聖堂は8世紀末から9世紀にかけて建造されたカロリング・ルネサンス期の大聖堂で[12]、10世紀から16世紀には歴代神聖ローマ皇帝の戴冠式が行われた[13]。 | ||||
ランス・オ・メドー国定史跡 | (6) | 4 | カナダ | |
L’Anse aux Meadows National Historic Site | ||||
Lieu historique national de L’Anse aux Meadows | ||||
ランス・オー・メドー国定史跡はニューファンドランド島に残る考古遺跡で、11世紀ごろにヴァイキングが築いた居住地跡である[8]。彼らが、北アメリカに到達した最初のヨーロッパ人とされている[14]。 | ||||
ラリベラの岩窟教会群 | (1), (2), (3) | 18 | 社会主義エチオピア | |
Rock-Hewn Churches, Lalibela | ||||
Églises creusées dans le roc de Lalibela | ||||
ラリベラの岩窟教会群は、ザグウェ朝のラリベラ王が築いた11の聖堂群で、12世紀から13世紀にアクスム王国をはじめとする諸地域の様式を取り入れて作り上げられたものである[15]。 | ||||
ゴレ島 | (6) | 26 | セネガル | |
Island of Gorée | ||||
Île de Gorée | ||||
ゴレ島はかつて大西洋奴隷貿易の拠点として使われていた島で、しばしば負の世界遺産の一つに挙げられている[16][17]。 | ||||
メサ・ヴェルデ | (3) | 27 | アメリカ合衆国 | |
Mesa Verde | ||||
Mesa Verde | ||||
メサ・ヴェルデはアメリカ先住民が断崖に築いた住居などを含む考古遺跡が残る地域で、国立公園となっている[18]。2006年に世界遺産登録名が「メサ・ヴェルデ国立公園」(Mesa Verde National Park / Parc national de Mesa Verde) に改名された[19]。 | ||||
クラクフ歴史地区 | (4) | 29 | ポーランド | |
Cracow's Historic Centre | ||||
Centre historique de Cracovie | ||||
クラクフはかつてポーランド王国の首都だったことがある古都で、中世以来の様々な歴史的建造物群が残っている[20]。2013年に英語・仏語の登録名が Historic Centre of Kraków / Centre historique de Kraków と変更された[21]。 | ||||
ヴィエリチカ岩塩坑 | (4) | 32 | ポーランド | |
Wieliczka Salt Mine | ||||
Mines de sel de Wieliczka | ||||
ヴィエリチカ岩塩坑は、かつてポーランド王国の財源の3分の1を占めたとされる岩塩の採掘所で、坑内には様々な彫刻や礼拝堂などが残っている。2013年に登録対象を拡大し、「ヴィエリチカとボフニャの王立岩塩坑」(Wieliczka and Bochnia Royal Salt Mines / Mines royales de sel de Wieliczka et Bochnia) と改称した。 |
登録の見送り
[編集]推薦されていて登録が見送られた物件には、以下のものがある[22]。その中には、続く第3回世界遺産委員会(1979年)、第4回世界遺産委員会(1980年)で登録されたものも少なからず含まれる。なお、エチオピアが推薦していた物件には、現エリトリア領内に存在するものも含まれている。
画像 | 推薦名 | 推薦国 | 正式登録年 |
---|---|---|---|
ゴンダール地方のファジル・ゲビ | 社会主義エチオピア | 1979年 | |
Fasil Ghebbi, Gondar region | |||
Fasil Ghebbi, région de Gondar | |||
アワッシュ川下流域 | 社会主義エチオピア | 1980年 | |
Lower Valley of the Awash | |||
Basse Vallée de l'Aouache | |||
オモ川下流域 | 社会主義エチオピア | 1980年 | |
Lower Valley of the Omo | |||
Basse Vallée de l'Omo | |||
アクスム | 社会主義エチオピア | 1980年 | |
Aksum | |||
Axoum | |||
ティヤ | 社会主義エチオピア | 1980年 | |
Tiya | |||
Tiya | |||
アドゥリス | 社会主義エチオピア | ― | |
Adulis | |||
Adoulis | |||
メルカ=コントゥレ | 社会主義エチオピア | ― | |
Melka-Kontoure | |||
Melka-Kontoure | |||
マタラ | 社会主義エチオピア | ― | |
Matara | |||
Matara | |||
イェハ | 社会主義エチオピア | ― | |
Yeha | |||
Yeha | |||
ジュッジ鳥類国立公園 | セネガル | 1981年 | |
Djoudj National Bird Sanctuary | |||
Parc national des oiseaux de Djoudj | |||
イシュケル国立公園 | チュニジア | 1980年 | |
Ichkeul National Park | |||
Parc national d'Ichkeul | |||
ゼンブラ・ゼンブレッタ群島国立公園 | チュニジア | ― | |
Zembra and Zembretta Islands National Park | |||
Parc national des Iles de Zembra et Zembretta | |||
アウシュヴィッツ - 強制収容所 | ポーランド | 1979年[注釈 4] | |
Auschwitz - concentration camp | |||
Auschwitz - camp de concentration | |||
ワルシャワ歴史地区 | ポーランド | 1980年 | |
Historic centre of Warsaw | |||
Centre historique de Varsovie | |||
ビャウォヴィエジャの森 | ポーランド | 1979年[注釈 5] | |
National Park of Białowieska | |||
Forêt de Białowieska |
危機遺産
[編集]第2回世界遺産委員会の時点では、危機にさらされている世界遺産(危機遺産)リストに登録された物件は存在しない。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ “2nd session of the Committee”. 2014年3月5日閲覧。そこでは、第1回世界遺産委員会と同じ14か国が挙げられているが、ここでは当時の報告書 (UNESCO 1978b)に基づいている
- ^ 当時は文化遺産と自然遺産で別個の登録基準が適用されていた。ここでは煩瑣になるのを避けるため、世界遺産センターに倣い、2006年以降の統合された基準で示す。
- ^ IDは登録当初のもの。後の拡大登録などでIDにbisなどがついている場合がある(たとえばガラパゴス諸島の2013年の第37回世界遺産委員会終了時点のIDは1bis)。
- ^ 2007年に「アウシュヴィッツ=ビルケナウ ナチス・ドイツの強制絶滅収容所(1940年-1945年)」に名称変更された。
- ^ 1992年の拡大で、ベラルーシと共有する国境を越える世界遺産となった。
出典
[編集]- ^ UNESCO 1978b, p. 1
- ^ a b c d e f g UNESCO 1978b, p. 3
- ^ 古田 & 古田 2013, p. 170
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 372
- ^ 古田 & 古田 2013, p. 7
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 341
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 345
- ^ a b 古田 & 古田 2013, p. 165
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, pp. 368–369
- ^ “30COM 8B.17 Changes to Names of Properties (Yellowstone National Park)”. 2014年3月5日閲覧。
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 313
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 134
- ^ 古田 & 古田 2013, p. 126
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 290
- ^ 世界遺産検定事務局 2012a, p. 309
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 233
- ^ 古田 & 古田 2013, pp. 13–14
- ^ 古田 & 古田 2013, p. 161
- ^ “30COM 8B.16 Changes to Names of Properties (Mesa Verde National Park)”. 2014年3月5日閲覧。
- ^ 世界遺産検定事務局 2012b, p. 116
- ^ “37COM 8B.4 Changes to names of properties inscribed on the world heritage list : Historic Centre of Kraków”. 2014年3月5日閲覧。
- ^ UNESCO 1978a
参考文献
[編集]- UNESCO (1978a), List of nominations to the World Heritage List and of requests for technical cooperation (CC-78/CONF.010/07)(English / français)
- UNESCO (1978b), Final Report (CC-78/CONF.010/10 Rev)
- 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典〈上〉』マイナビ、2012年3月30日。ISBN 978-4-8399-4163-5。(世界遺産アカデミー監修) (2012a)
- 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典〈下〉』マイナビ、2012年3月30日。ISBN 978-4-8399-4164-2。(世界遺産アカデミー監修) (2012b)
- 古田陽久; 古田真美『世界遺産事典 - 2014改訂版』シンクタンクせとうち総合研究機構、2013年。ISBN 978-4-86200-179-5。