米を食べるとバカになる
米を食べるとバカになる(こめをたべるとバカになる)は、昭和の日本で提唱された栄養の概念。日本で米離れが起きたきっかけであった[1]。
内容
[編集]慶應義塾大学医学部の教授である林髞が1958年に著した書籍である、『頭脳―才能をひきだす処方箋』の中で提唱されていた。この書籍は発売から3年で50刷にもなったほどの当時のベストセラーであった。この書籍によると日本が欧米に劣っているのは米を食べているからということであった[2]。だからせめて子供の主食だけはパンにした方が良いとしていた。大人は米で育てられてしまっており悪条件が重なっているのだから諦めようとしていたが、子供たちの将来だけは我々とは違って頭が良く働くようになり、アメリカ人やソ連人と対等に話ができるように育てようと呼びかけていた[3]。
林によると頭の働きにはどうしてもたんぱく質が必要であり、そのたんぱく質を分解する眠りによる回復にはどうしても炭水化物が必要とのことであった。当時に分かってきたことというのは脳髄が働くにはたんぱく質が分解してできる窒素化合物であるプラス物質とマイナス物質が必要であり、プラス物質が生じるにはビタミンB類が必要とのことであった。そしてもしビタミンB類が欠乏すれば頭の正しい働きができなくなるとのことであった。ビタミンB類があっても白米を食べたならばその消費に用いられてしまうために脳の方で用いるのに不足する。このため日本ではいつもビタミンB類が不足した働きしかできない頭脳のまま成長しているために大人になってから不都合なことが起こっていたとのことであった[4]。
有坪民雄は、彼の説が大きな影響を与えて、昭和30年代にパンが普及した裏で米に対するネガティブキャンペーンが行われていたとしている[5]。当時の小麦食品業界は林を活用して「米を食べると馬鹿になる」というパンフレットを作成して数十万枚も配布するということもしていた[6]。高野孟は、戦後の厚生省がGHQの主張した「欧米的な食生活は日本のそれよりも優秀だ」という言質を無批判に受け入れ、林の主張を援用する形で「栄養改善運動」を実施したと主張している[7]。
脚注
[編集]- ^ “「コメを食べると頭が悪くなる」 “コメ離れ”をあおったベストセラー本の驚くべき中身 急速な“洋食化””. テレビ愛知(Locipoへの転載) (2024年7月14日). 2024年11月24日閲覧。
- ^ 中島茂信 (2024年10月11日). “米不足で露呈した「日本の農政」の異様さ…「日本の米に未来はない」と専門家が断言する、衝撃の理由”. 現代ビジネス (4/6ページ). 2024年11月24日閲覧。
- ^ 鈴木宣弘 (2022年11月24日). “「米を食うとバカになる」と洗脳された…日本人の食生活を激変させた洋食推進運動の恐ろしすぎる内容”. プレジデントオンライン. 2024年11月24日閲覧。
- ^ 高野孟 (2024年9月18日). “「米を食べるとバカになる説」を真に受けて稲作文化をバカにした「令和の米騒動」の真犯人 (4/4ページ)”. まぐまぐニュース!. 2024年11月24日閲覧。
- ^ 有坪民雄 (2011年4月15日). “煽りマーケティングで世界に霜降り肉を売ってみる あなたの知らない農業の世界(5)”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2024年11月24日閲覧。
- ^ “【BOOK】「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活”. 神戸東洋医学研究会 (2019年8月19日). 2024年11月24日閲覧。
- ^ 高野孟 (2024年9月18日). “「米を食べるとバカになる説」を真に受けて稲作文化をバカにした「令和の米騒動」の真犯人 (3/4ページ)”. まぐまぐニュース!. 2024年11月24日閲覧。