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2019年6月米朝首脳会談

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
米朝韓首脳会談から転送)
2019年6月米朝首脳会談
2019 Koreas–United States DMZ summit
2019년 6월 북미정상회담
アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長との会談前に韓国の文在寅大統領も加え談笑する3人。
開催国 大韓民国の旗 大韓民国
日程 2019年6月30日 (2019-06-30)
会場 板門店
自由の家
参加者 アメリカ合衆国の旗 第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ
朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮国務委員会委員長朝鮮労働党委員長金正恩
前回 2019年2月米朝首脳会談

2019年6月米朝首脳会談(2019ねん6がつべいちょうしゅのうかいだん、英語:2019 Koreas–United States DMZ summit、朝鮮語:2019년 6월 북미정상회담)は、2019年6月30日に第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプ北朝鮮第3代最高指導者金正恩国務委員会委員長朝鮮労働党委員長)が板門店にておこなった面会の通称である。

本会談では大韓民国第19代大統領文在寅が立会人として参加した。

この会談について

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これを首脳会談と解釈するなら3回目の米朝首脳会談となるが、アメリカ政府は「首脳会談でも交渉でも無く両首脳が面会しただけ」と主張している他[1]、北朝鮮側も2ヶ月後の2019年8月にトランプに宛てた親書の中で第3回目の米朝首脳会談の開催を呼びかけたとされており[2]、両国ともこれが米朝首脳会談であったという見解は示していない。

これに先立つ顔合わせの際にトランプは現職の大統領として初めて南北軍事境界線を越えて北朝鮮側に入国し[3]、そして米朝両国は「停滞している米朝実務者協議を早期に再開する」と同意した[4]

経緯

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2019年2月にベトナムハノイで開催された首脳会談が物別れに終わって以来両国間の非核化に向けた動きはストップする形となったが[注釈 1]、6月に入ってトランプ大統領と金正恩委員長は書簡をやりとりし、双方が良好な関係をアピールした[12]。一方でアメリカのホワイトハウスは大阪府大阪市でのG20大阪サミット開催の数日前にトランプがG20終了後に韓国を訪問する際に北朝鮮との首脳会談を行う予定は無いとしていた[13]他、トランプ自身も直接会談では無く別の形で対話する可能性を示唆した。[14]

しかし6月29日にG20サミットに出席していたトランプは自身のツイッターで金正恩と板門店で会うことを提案した。更にG20の一環で行われたサウジアラビアムハンマド皇太子との朝食会の場でも「もし彼(金)が非武装地帯にいたら、可能であれば2分間我々は会うだろう」と語り[15]、これに北朝鮮の崔善姫外務第一次官が「興味深い提案」と前向きな反応を示した[16]

G20サミットを終えたトランプは韓国を訪問し、翌30日午前に青瓦台大韓民国第19代大統領文在寅との米韓首脳会談を終えた後の共同記者会見でも「昨日、ここ(大韓民国)まで来るのだから金委員長にあいさつをしたらどうかという考えが頭に浮かんだ」と発言した[17][18]。しかし、当時アメリカのジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官が著した自身の回顧録によれば、文在寅の参加は当初想定されておらず、アメリカ側の数度の拒否にもかかわらず韓国が米朝首脳の対面に割って入った形になったとしている(後述)。

この後米韓両首脳は京畿道坡州市非武装地帯に位置する国連軍基地の訪問と軍事境界線への視察[19]を経て板門店へ移動し、トランプと金が面会した。その際にトランプは軍事境界線のブロックを超え、現職の大統領として初めて北朝鮮に入国した[3]。トランプ大統領の北朝鮮入国後に米朝両首脳は韓国入りし、会談場前で文在寅大統領と合流し、史上初めてアメリカ合衆国・韓国・北朝鮮の3首脳が一堂に会した。前日の朝食会でトランプ大統領は「会談時間は2分間しか無いだろう」と発言していたが[15]、実際には53分間に渡って金正恩委員長との会談を行った[20]

米朝首脳会談は前任のオバマ大統領の時代から調整が進められていたとトランプが発言した。なお金正恩委員長はバラク・オバマ大統領との首脳会談を拒否していたという[4]

文在寅参加についての論争

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2020年6月に発売されたジョン・ボルトンの回顧録『The Room Where It Happened:A White House Memoir』(それが起きた部屋:ホワイトハウス回想録)によれば、当初トランプは金正恩と2人だけで統一閣で会うつもりだった。

ところが6月30日の米韓首脳会談の場で文在寅が「自分がいなければ不自然に見えるだろう」と参加する意向を伝え、可能であれば3者会談にすることまで望んだという[21][22]。トランプは文在寅が近くにいないことを望んでおり、アメリカ側は前日の夜に北朝鮮側に文在寅の参加を打診したが北朝鮮側が拒否したため参加は認められないと主張したが文在寅は納得せず、なおも食い下がった[23]。トランプは警護上の理由で再度拒否し、米朝首脳で面会した後、烏山空軍基地で再び会談しても良いと妥協案を示したが、文在寅は結局DMZ内までトランプと同行し、トランプと金正恩を韓国側にある自由の家に案内することとなった[24]

ボルトン自身は米朝首脳の対面そのものに乗り気では無かったが、トランプだけで無く金正恩も文在寅との対面を望んでいないと見ていたため、文在寅の割り込みによって台無しになる微かな希望を抱いていたとも明かしている[22]

この回顧録の中身が明らかとなって青瓦台はボルトンに対する猛反発を見せ、韓国の鄭義溶国家安全保障室長は首席秘書官を通じて、回顧録はかなりの部分の事実が大きく歪曲されていると反論[25]。一方で野党の未来統合党からは対北政策の失敗が立証されたと文在寅政権への批判が行われた[26]


脚注

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注釈

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  1. ^ 米朝交渉が中断した理由としては、ハノイでの米朝首脳会談決裂を受けて北朝鮮が体制引き締めに注力していた。例えば、北朝鮮国務委員会の対米特別代表金革哲が米朝首脳会談決裂の責任を問われ、スパイ内通者)容疑で銃殺されたとする報道があった他[5][6]、朝鮮労働党副委員長兼統一戦線部長の金英哲、首脳会談で金正恩の発言を正しく通訳できなかったと伝えられた女性通訳のシン・ヘヨン[7][8]、首脳会談に同行した金の実妹で朝鮮労働党中央委員会第一副部長の金与正が一時期粛清・謹慎処分を受けていたとされる。なお、金英哲や金与正については健在が確認されており[9][10]、金革哲も健在との報道もある[11]が、通訳のシン・ヘヨンは政治犯収容所送りになったと報じられている[8]

出典

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  1. ^ “板門店での米朝首脳対面 米政府「首脳会談ではない」”. 聯合ニュース. (2019年7月10日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190710001400882 2019年7月10日閲覧。 
  2. ^ “金正恩氏の秘密親書「トランプ、平壌に来い…3回目の首脳会談しよう」”. 中央日報. (2019年9月16日). https://web.archive.org/web/20190927054839/https://japanese.joins.com/article/599/257599.html 2019年9月16日閲覧。 
  3. ^ a b “トランプ大統領、金正恩氏と面会 北朝鮮側に足を踏み入れる”. AFPBB News. フランス通信社. (2019年6月30日). https://www.afpbb.com/articles/-/3232897 2019年7月2日閲覧。 
  4. ^ a b “米朝首脳、非核化協議再開で一致 3度目の会談”. 日本経済新聞. (2019年6月30日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46779520Q9A630C1MM8000/ 2019年7月16日閲覧。 
  5. ^ 北朝鮮、対米担当者を処刑か 韓国大手紙”. 日本経済新聞 (2019年5月31日). 2019年7月16日閲覧。
  6. ^ “North Korea 'executes envoy to US' after Trump summit failures – report”. The Guardian. ガーディアン. (2019年5月31日). https://www.theguardian.com/world/2019/may/31/north-korea-executes-envoy-to-us-after-trump-summit-failures 2019年5月31日閲覧。 
  7. ^ 北、米朝会談物別れで実務交渉者を更迭”. 産経新聞 (2019年4月6日). 2019年7月16日閲覧。
  8. ^ a b 北朝鮮が対米特別代表を「処刑」、米朝会談決裂で 韓国紙”. AFP通信 (2019年5月31日). 2019年7月16日閲覧。
  9. ^ “粛清説の金英哲氏、正恩氏の公演鑑賞に同席 北朝鮮メディア”. AFP通信. (2019年6月3日). https://www.afpbb.com/articles/-/3228088 2019年6月3日閲覧。 
  10. ^ “与正氏も健在確認=正恩氏とマスゲーム観覧-北朝鮮”. 時事ドットコム. 時事通信社. (2019年6月4日). https://web.archive.org/web/20190611074648/https://www.jiji.com/jc/article?k=2019060400238&g=int 2019年6月4日閲覧。 
  11. ^ “北朝鮮“強制労働”報道の金英哲氏が健在”. 日テレNEWS24. 日本テレビ放送網. (2019年6月3日). http://www.news24.jp/nnn/news162132217.html 2019年6月4日閲覧。 
  12. ^ 米大統領、初の南北軍事境界線越え 正恩氏と板門店で握手 - 毎日新聞、2019年6月30日 15時50分(最終更新:6月30日16時55分)
  13. ^ トランプ大統領、訪韓時の米朝首脳会談予定なし”. 読売新聞(2019年6月25日作成). 2019年7月1日閲覧。[リンク切れ]
  14. ^ “トランプ氏、訪韓中の正恩氏との会談は否定「別の形で」”. 朝日新聞. (2019年6月27日). https://www.asahi.com/articles/ASM6W25CTM6WUHBI00B.html 2019年7月2日閲覧。 
  15. ^ a b トランプ氏、正恩氏に会談呼びかけ G20後の訪韓時”. 朝日新聞(2019年6月29日作成). 2019年7月1日閲覧。[リンク切れ]
  16. ^ トランプ大統領、金正恩委員長に非武装地帯での握手を呼び掛け - ブルームバーグ、2019年6月29日9時20分(最終更新:6月29日14時39分)
  17. ^ トランプ氏板門店へ「私と正恩氏、良いケミストリー」 米韓首脳会見要旨”. 毎日新聞(2019年6月30日作成). 2019年7月1日閲覧。
  18. ^ “トランプ米大統領が訪韓、Kポップ「EXO」が出迎え”. CNN.co.jp. CNN. (2019年6月30日). https://www.cnn.co.jp/world/35139231.html 2019年7月2日閲覧。 
  19. ^ 韓国、望外展開に高揚 米朝 板門店会談”. 東京新聞. 2019年7月1日閲覧。[リンク切れ]
  20. ^ 【動画】米朝、2~3週間内に実務協議 両首脳、53分間会談”. 産経新聞(2019年6月30日作成). 2019年7月1日閲覧。
  21. ^ “「当初、北側統一閣で2人だけ会おうとしていた米朝…韓国が阻んだ」”. 中央日報. (2020年6月23日). https://web.archive.org/web/20200728035312/https://japanese.joins.com/JArticle/267332 2020年6月23日閲覧。 
  22. ^ a b “【独自】「米朝板門店会談時、トランプも金正恩も文在寅の同行を望まなかった」(1)”. 朝鮮日報. (2020年6月23日). オリジナルの2020年6月23日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2020-0623-1657-05/www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/06/22/2020062280085.html?ent_rank_news 2020年6月23日閲覧。 
  23. ^ “【独自】「米朝板門店会談時、トランプも金正恩も文在寅の同行を望まなかった」(2)”. 朝鮮日報. (2020年6月23日). オリジナルの2020年6月23日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2020-0623-1715-44/www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/06/22/2020062280085_2.html 2020年6月23日閲覧。 
  24. ^ “【独自】「米朝板門店会談時、トランプも金正恩も文在寅の同行を望まなかった」(3)”. 朝鮮日報. (2020年6月23日). オリジナルの2020年6月23日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2020-0623-1716-53/www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/06/22/2020062280085_3.html 2020年6月23日閲覧。 
  25. ^ “韓国国家安保室長、ボルトン氏の回顧録に反発…真実ゲーム(1)”. 中央日報. (2020年6月23日). https://web.archive.org/web/20200625161431/https://japanese.joins.com/JArticle/267326 2020年6月23日閲覧。 
  26. ^ “韓国国家安保室長、ボルトン氏の回顧録に反発…真実ゲーム(2)”. 中央日報. (2020年6月23日). https://web.archive.org/web/20200623164212/https://japanese.joins.com/JArticle/267327 2020年6月23日閲覧。 

外部リンク

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