純粋自律神経不全症
純粋自律神経不全症 | |
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別称 |
特発性起立性低血圧 Bradbury-Eggleston症候群[1] |
自律神経系の機能. | |
概要 | |
症状 | Orthostatic hypotension and other autonomic symptoms.[2] |
診断法 | Clinical evaluation.[2] |
治療 | Symptomatic treatment.[2] |
分類および外部参照情報 |
純粋自律神経不全症(じゅんすい じりつしんけい ふぜんしょう、pure autonomic failure, PAF)は、進行性の自律神経不全[3]を特徴とする稀な神経変性疾患である。ブラッドベリーとエグルストンにより1925年に報告された[4]。中年期以降に発症し、自律神経不全の中では、心循環系症状としての起立性低血圧または失神を呈し[5]、便秘や過活動膀胱もみられる[6]。多系統萎縮症と異なり残尿・尿閉はほとんどみられない。病理学的にパーキンソン病と同一のレヴィー小体が末梢神経系にみられ[7]、発症10年以降にパーキンソン病やレヴィー小体型認知症に移行する場合がある。
症候
[編集]純粋自律神経不全症 (PAF) 患者の心循環系症状としての起立性低血圧は、頭部挙上試験 (head-up tilt, HUT) または能動的立位の3分以内に、収縮期血圧20 mm Hg以上、または拡張期血圧10 mm Hg以上低下するもので、HUTの方が再現性が高い。PAF患者では、半数に臥位高血圧がみられる[8]。PAFでは膀胱症状としての過活動膀胱[9]もみられるが、多系統萎縮症と異なり残尿・尿閉はほとんどみられない。PAFの半数以上に便秘[10]がみられ、これはパーキンソン病やレヴィー小体型認知症で便秘が高頻度にみられるのと共通の症候といえる[11]。パーキンソン病とPAFでは下半身稀汗型の発汗障害がみられ、上半身に代償性発汗がみられることがある。
病理所見
[編集]PAFの病理学変化は完全には解明されていないが、自律神経に関わる脊髄中間外側核の細胞脱失、交感神経節ニューロンの減少・カテコラミン染色低下などが報告されている。正常での臥位ノルエピネフリン値は300 pg/ml程度であるが、交感神経節後線維が障害されるPAFでは100 pg/ml以下に低下しており、正常でみられる立位時増加がみられない。
治療
[編集]起立性低血圧に対する薬物療法としてフルドロコルチゾン、ミドドリン、アメジニウム、ドロキシドパ、特殊な使用例としてソマトスタチン、エリスロポエチンなどが用いられている。補充療法のうち理学療法として、弾性ストッキングによる鼠径部以下の圧迫や腹帯(血圧が5-8mmHg上昇することが報告されている)、拮抗動作counter maneuverとして立位で脚を交叉させたり、軽い前屈位として腹部に力を入れると、血圧が15mmHg程度上昇することが報告されている。食事療法として、塩分負荷食、500mlの水分摂取で起立性低血圧の改善効果が報告されている。
歴史
[編集]1925年、ブラッドベリーとエグルストンは3例のPAF患者の臨床を報告した。特徴として「立位に伴って失神がみられ(高度の起立性低血圧)、その際、代償性脈拍増加がみられるものの軽度なこと、発汗低下(熱不耐)、基礎代謝の低下、および僅かな付帯神経症候」を記載した。その後の研究により、PAFはパーキンソン病・レヴィー小体型認知症と同様のレヴィー小体病であることが明らかにされ、一方PAF、パーキンソン病、多系統萎縮症が原発性自律神経障害としてもまとめられている。PAFは臥位ノルエピネフリン値低値(末梢節後性障害)が特徴的であるが、経過10年以降、パーキンソン病やレヴィー小体型認知症に移行する例が知られている[12][13]。
別名
[編集]以前ブラッドベリー・エグルストン (Bradbury-Eggleston) 症候群と呼ばれていた。これは1925年のサミュエル・ブラッドベリーとキャリー・エグルストンによる最初の記述による[14]。
脚注
[編集]- ^ “Monarch Initiative”. Monarch Initiative. February 2, 2024閲覧。
- ^ a b c Coon, Elizabeth (July 3, 2023). “Pure Autonomic Failure”. Merck Manuals Professional Edition. February 2, 2024閲覧。
- ^ Kabir, M. Ashish; Chelimsky, Thomas C. (2019). “Pure autonomic failure”. Handbook of Clinical Neurology. Elsevier. p. 413–422. doi:10.1016/b978-0-444-64142-7.00064-3. ISSN 0072-9752
- ^ Bradbury, Samuel; Eggleston, Cary (1925). “Postural hypotension”. American Heart Journal (Elsevier BV) 1 (1): 73–86. doi:10.1016/s0002-8703(25)90007-5. ISSN 0002-8703.
- ^ Thaisetthawatkul, Pariwat (2016). “Pure Autonomic Failure”. Current Neurology and Neuroscience Reports 16 (8). doi:10.1007/s11910-016-0673-2. ISSN 1528-4042.
- ^ Coon, Elizabeth A.; Singer, Wolfgang; Low, Phillip A. (2019). “Pure Autonomic Failure”. Mayo Clinic Proceedings (Elsevier BV) 94 (10): 2087–2098. doi:10.1016/j.mayocp.2019.03.009. ISSN 0025-6196. PMC 6826339 .
- ^ Garland, Emily M.; Hooper, William B.; Robertson, David (2013). “Pure autonomic failure”. Autonomic Nervous System. Elsevier. p. 243–257. doi:10.1016/b978-0-444-53491-0.00020-1. ISSN 0072-9752
- ^ Shannon, John; Jordan, Jens; Costa, Fernando; Robertson, Rose Marie; Biaggioni, Italo (1997). “The Hypertension of Autonomic Failure and Its Treatment”. Hypertension (Ovid Technologies (Wolters Kluwer Health)) 30 (5): 1062–1067. doi:10.1161/01.hyp.30.5.1062. ISSN 0194-911X.
- ^ Coon, Elizabeth A.; Singer, Wolfgang; Low, Phillip A. (2019). “Pure Autonomic Failure”. Mayo Clinic Proceedings (Elsevier BV) 94 (10): 2087–2098. doi:10.1016/j.mayocp.2019.03.009. ISSN 0025-6196. PMC 6826339 .
- ^ Kaufmann, Horacio; Norcliffe‐Kaufmann, Lucy; Palma, Jose‐Alberto; Biaggioni, Italo; Low, Phillip A.; Singer, Wolfgang; Goldstein, David S.; Peltier, Amanda C. et al. (2017). “Natural history of pure autonomic failure: A <scp>U</scp>nited <scp>S</scp>tates prospective cohort”. Annals of Neurology (Wiley) 81 (2): 287–297. doi:10.1002/ana.24877. ISSN 0364-5134. PMC 5323269 .
- ^ Mabuchi, N (July 1, 2005). “Progression and prognosis in pure autonomic failure (PAF): comparison with multiple system atrophy”. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry (BMJ) 76 (7): 947–952. doi:10.1136/jnnp.2004.049023. ISSN 0022-3050. PMC 1739727 .
- ^ Garland, Emily M.; Hooper, William B.; Robertson, David (2013-01-01). Swaab, Ruud M. Buijs and Dick F.. ed. “Chapter 20 - Pure autonomic failure”. Handbook of Clinical Neurology (Elsevier) 117: 243–257. doi:10.1016/b978-0-444-53491-0.00020-1. ISBN 9780444534910. PMID 24095130.
- ^ “Critical review of pure autonomic failure raises awareness for early signs of Parkinson's disease, Lewy body dementia, and Multiple System Atrophy”. ean.org. 2020年9月9日閲覧。
- ^ synd/2102 - Who Named It?
外部リンク
[編集]- Stanford Health Care
- Merck Manual
- 日本神経学会 - (日本学術会議協力学術研究団体)
- 日本自律神経学会 - (日本学術会議協力学術研究団体)