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紫微斗数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

紫微斗数(しびとすう)は、占いの一種。末からの時代にかけての有名な仙人であった陳希夷が創始したと伝えられている。紫微斗数の名前は、北極星太一天皇大帝)である紫微[1]を主とする星々から運命(=)を量る枡(=)を意味している。

中国台湾ではよく知られており、子平(八字、四柱推命)と併用されることもある。日本ではあまり知られていなかったが、最近は徐々に知られるようになって来ている。もっとも日本において第二次大戦以前から阿部泰山が紫微斗数の講習を行っており、これは香港や台湾における紫微斗数の流行に先駆けている。現代の紫微斗数は幾つかの流派に分かれているが、どれも嘉靖29年(1550年)に出版された『紫微斗数全書』を原典として、その上に各派独自の解釈を加えている。『紫微斗数全書』の著者である羅洪先は陳希夷18代の子孫から紫微斗数を解説した書籍を伝授されたとしている。また一部には紫斗数の表記[2]を採用している流派がある。

ただし、北派紫微斗数、道蔵紫微斗数あるいは術天機太乙金井紫微斗数、十八飛星策天紫微斗数等と呼ばれる占術は、紫微斗数の名前を共有していても本項の紫微斗数とは全く異なる技術体系を持っている。そこで本項の紫微斗数を北派紫微斗数と区別するために、南派紫微斗数と呼ぶことがある。

英語圏でも知られるようになってきており、紫微斗数の読みそのままのZi Wei Dou Shuや紫微星をもじったPurple Star Astrologyと呼ばれている。

概要

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太陰太陽暦をもとにした占術。主に生年月日時を基にして個人の特性や巡ってくる運勢を占う、いわゆる命占術の一つ[3]

配置は異なっているが、西洋占星術のハウスと同じ概念の十二宮へ暦から算出される星を配置し、その星の吉凶象意から占う。星の配置にあたっては、天体の実際の位置は考慮されない[4]

紫微斗数では多くの『星』を使用して占う[5]が、それらの『星』は重要度を基準とした分類がなされている。重要度の高い『星』のほとんどが実在する天体に起源を持っていると考えて良く、実在する天体としての星と同じ名前を持っている。

なお紫微斗数で使用する星の性格付けに商周革命で活躍する人物を使用する流派があった影響で、紫微斗数と封神演義に関連があるとする説を見かけることがあるが、『紫微斗数全書』には『封神演義』とのつながりを推測させる記述は一切ない。

紫微斗数では特に北斗七星南斗六星が重要視されており、特に重視される甲級星の大多数はこの2つの星座に起源を持っている。甲級星のいくつかと実際の星の対応は以下のようになっている。

  • 紫微垣
    • 北極星 - 紫微(甲級主星)
  • 北斗七星
    • 大熊座α星 - 貪狼(甲級主星)
    • 大熊座β星 - 巨門(甲級主星)
    • 大熊座γ星 - 禄存(甲級星)
    • 大熊座δ星 - 文曲(甲級星)
    • 大熊座ε星 - 廉貞(甲級主星)
    • 大熊座ζ星 - 武曲(甲級主星)
    • 大熊座η星 - 破軍(甲級主星)
  • 南斗六星
    • 射手座ζ星 - 天府(甲級主星)
    • 射手座τ星 - 天梁(甲級主星)
    • 射手座σ星 - 天機(甲級主星)
    • 射手座φ星 - 天同(甲級主星)
    • 射手座λ星 - 天相(甲級主星)
    • 射手座μ星 - 七殺(甲級主星)
  • 中天
    • 太陽 - 太陽(甲級主星)
    • 太陰 - 太陰(甲級主星)

北斗七星の中で実際に等級が低い禄存、文曲の2星は、甲級ではあっても輔星となっている。結局、紫微、貪狼、巨門、廉貞、武曲、破軍、天府、天梁、天機、天同、天相、七殺、太陽、太陰の14星が甲級主星と呼ばれており、紫微斗数において最も重要な働きをする。特に「どのような」といった象意の主要な部分と吉凶の判断は甲級主星から判断することになる。

なお、北斗七星がかたどる杓の柄を構成する廉貞、武曲、破軍の3星は死の使いとされていた[6]が、紫微斗数においても、廉貞、武曲、破軍の3星は軍事との関わりがあって、破軍は特にその傾向が強い。これは紫微斗数で使用する星々が、位置は実在天体の位置と無関係に暦から計算されるものであっても、同じ名前の実在天体当てはめられた象徴を受け継いでいることの証左となるだろう。

紫微斗数の星々が元の実天体の性質を受け継いでいるという事象は、太陽・太陰でより顕著で、例えば太陽は夜明けに対応する卯宮にあるとき品位が最上のとなる。また紫微斗数において太陽が持つ基本的な象意は公明正大であって、これは西洋占星術等での実太陽の象意と共通する部分がある。

従って紫微斗数では実在天体の位置を考慮しないことをもって、紫微斗数で使用する星は『虚星』であって実在しないなどという主張は端的に言って間違いである。

脚注

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  1. ^ 北極星が紫微星と呼ばれていたのに対応して、北天における北極星周辺の区域には紫微垣の名前がある。
  2. ^ ただし紫薇は植物である百日紅の別名である。百日紅は中国では地上の紫微垣である宮廷によく植えられた植物である。そのため百日紅に紫薇の別名がある。
  3. ^ ただし、個々の問題について占う卜占術や、風水への応用も伝承されている。
  4. ^ ただし太陰太陽暦の日付には月相とそれなりの対応があるので、実際の太陽と月の間の角度が反映されていると言えないことはない。
  5. ^ 100個を越える星があり、流派によって使用する星の数が異なることがある。
  6. ^ 後には北斗七星全体が死の星座とされ、さらには南斗六星が対を成す形で生の星座と見なされるようになる。