絹雲母
絹雲母(きぬうんも、sericite、セリサイト)は、粘土鉱物の一種で、層状珪酸塩鉱物である白雲母の細粒なもの。1997年、国際鉱物学連合の新鉱物および鉱物名委員会に設置された雲母小委員会によって発表された雲母鉱物の命名の最終報告では「雲母様鉱物の微粒集合体」と定義している[1]。
性質
[編集]理想化学組成は白雲母と同じKAl2AlSi3O10(OH)2である。単斜晶系。
産出
[編集]大規模な絹雲母鉱床は、酸性または中性の火山岩類が熱水変質を被って形成されることが多く、絹糸状もしくは粉末状の塊として産出する。主に、長石が変質し、鉄、マグネシウム、カルシウム等が溶脱して形成される。
日本では、第二次世界大戦後の復興期に様々な鉱山がセリサイトの採掘を行ったが、現在でも採掘を続けているのは愛知県北設楽郡東栄町にある粟代鉱山のみである[2]。島根県雲南市三刀屋町にある鍋山鉱山も2012年まで採掘を行っていたが、2012年7月に土砂崩れのため閉山となった。
粟代鉱山では、町内に本社を置く三信鉱工株式会社が「三信マイカ」という商品名で精製後のセリサイトを販売している。高純度かつ不純物が少ないことから、主に化粧品や薬品原料として用いられている。かつて主力の出荷先であった繊維産業や造船業が低迷し、おしろいに似ていることから化粧品メーカーに売り込み、パウダーファンデーションに使われるようになった[2]。
また、鍋山鉱山では、斐川礦業株式会社により「斐川マイカZ20」という商品名で販売されており、工業原料から化粧品原料まで幅広い用途で使用されていた。
用途
[編集]一般には、化粧品のファンデーションやセラミックの素材として用いられている。また、耐熱性のある潤滑材として使用。微粉砕したものは、プラスチックなどの強化材としても使用されている。
脚注
[編集]- ^ 上原誠一郎「雲母の命名―黒雲母は系列名―」『鉱物学雑誌』第28巻 第2号(1999年)83-86頁
- ^ a b [いいね!探訪記]セリサイト鉱山(愛知県東栄町)起死回生 肌も町もキララ輝け『朝日新聞』夕刊2023年5月27日3面(2023年6月3日閲覧)
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- M. Rieder et al. "Nomenclature of the micas", The Canadian Mineralogist, Vol. 36, pp. 41-48, 1998. PDF
- 松原聰・宮脇律郎『国立科学博物館叢書5 日本産鉱物型録』東海大学出版会、2006年、ISBN 978-4-486-03157-4。