綾羅イルカ館
綾羅イルカ館 | |
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各種表記 | |
チョソングル: | 릉라곱등어관 |
漢字: | 綾羅곱등어館 |
発音: | ルンナコプトゥンオグァン |
日本語読み: | りょうらいるかかん |
英語: |
Rungra Dolphinarium Rungra Dolphin Aquarium |
綾羅イルカ館(ルンナイルカかん)は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の平壌市内にあるイルカの水族館(ドルフィナリウム)。北朝鮮で初となるイルカショー施設であり、2012年に竣工した。綾羅島の綾羅人民遊園地内にある。
建設の沿革
[編集]2011年7月に綾羅イルカ館の建設が決定した[1]。11月16日、朝鮮中央通信が平壌市にイルカ館、スケート場、公衆浴場が建設中であると報道した[2]。このドルフィナリウムは、インターネット上で建設工事中の映像が公開された[3]。
2012年、北朝鮮の指導者・金正恩は「綾羅人民遊園地は、朝鮮労働党より平壌市民への贈り物となる」と語った[4]。また、金正恩は竣工前や開園前に施設の視察も行っている[5][6]。西側の報道では、イルカ館は国家の威信を高めるためのプロジェクトの一環であると捉えた報道もある[7]。
このような結果、2012年7月25日に竣工した[8]。
著述業の北岡裕によれば、日本の地方議員の協力もあり、日本から多くの水族館に関する資料が送られた他、イルカショーの導入を推奨されたとしている[9]。
建物
[編集]イルカの水族館は北朝鮮では初めてである[8]。
建物には朝鮮語で「릉라곱등어관」と書かれているが、「곱등어」は北朝鮮では「イルカ」の意である。日本のメディアは「綾羅イルカ館」という名称を用いることもある[10]。
建築関係者や場内案内者の話によれば、建物の敷地面積は5,900平方メートル余りで[2]、ほぼ3,000立方メートルの体積を持つ公演水槽、二階建ての1,492席[8]の地上観覧ホールと、16の補助水槽[6]、海水を貯える海水予備タンク、自動水循環ろ過システムがあるという[2]。
海水は、海に面した南浦から平壌へパイプラインで運ぶ[9]。この「南浦 - 平壌海水パイプライン」はその長さは50キロメートル[11]とも、100キロメートル[12]とも言われ、イルカ館のほかに中央動物園水族館や、浄水システムなどに使われる[13]。
展示
[編集]イルカショーを行う。
2015年現在、全て北朝鮮付近の海域に生息するマダライルカを使用している[注釈 1]。イルカのトレーナーによれば、開業に向けて、マダライルカの「平壌1号」(この施設ではイルカは地名+番号で区別される[9])を、中華人民共和国の海南島で、トレーナー自身が馴致訓練をしたと述べている[12]。北朝鮮では、イルカのトレーナーも国内初の職業であり、調教師は約7か月間、海外で研修を受けたとも報じられている[1]。なお、2012年10月の朝鮮新報の報道によれば、イルカ館に在籍する調教師10人全てが現役の金日成総合大学の学生であると報じている[1]。
各ホールと通路には関連写真、解説などの電光板が設置されている[8]。また、資料室があり、パソコンが並べられている[9]。科学技術普及室には、海洋動物の剥製、標本などが展示されている[8]。
2012年現在、営業時間は10時から20時。公演は1日3回(11時、15時、19時)。公演時間は約20分[8]。
脚注
[編集]注釈
出典
- ^ a b c 周未來「〈ピョンヤン探訪②〉イルカ館、第一歩を切り開く若者たち 国内初、調教師たちの挑戦」『朝鮮新報』2012年10月19日。
- ^ a b c 石丸次郎「<北朝鮮>平壌に大規模イルカショー施設建設 金総書記の指導で」『アジアプレス・ネットワーク』2011年11月18日。オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。2023年5月30日閲覧。
- ^ KCNA (Dolphin Aquarium under Construction in Pyongyang) - YouTube NORTH KOREA TODAY (DPRK NEWS CHANNEL) 2011年11月12日公開[リンク切れ]
- ^ 「北朝鮮 朝鮮労働党が人民へ贈り物」『ロシアの声』2012年5月1日。オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。2023年5月30日閲覧。
- ^ KCTV (Kim Jong Un and his wife Ri Sol Ju Visits Rungna People′s Pleasure Ground) - YouTube - NORTH KOREA TODAY (DPRK NEWS CHANNEL) 2012年7月25日公開[リンク切れ]
- ^ a b “金正恩同志、完工段階の綾羅人民遊園地と建設中の乳腺腫瘍研究所を現地指導”. 朝鮮中央通信. (2012年7月2日)
- ^ ティム・ネビル「北朝鮮 高級スキー場で見えてくるもの」「国家の威信を高めるためのプロジェクト」、『Swissinfo』2014年3月28日。2023年5月30日閲覧。
- ^ a b c d e f 李相英「市民に大人気の綾羅人民遊園地」『朝鮮新報』2012年8月22日。2023年5月30日閲覧。
- ^ a b c d 綾羅(ルンラ)イルカ館で見た、小さなサプライズ―外国人観光客との距離感にも変化? 北岡 裕 ダイナミックワールド 一般財団法人霞山会 2015年1月15日[リンク切れ]
- ^ 「綾羅イルカ館を参観する飯島氏」『時事通信』(朝鮮通信)2013年5月17日。オリジナルの2015年7月14日時点におけるアーカイブ。2023年5月30日閲覧。
- ^ リュウ&ネコのフー&ミー (2012年3月21日). “人道支援要求しながらの壮大な無駄使い 北朝鮮”. Livedoorブログ. 北の国から猫と二人で想う事 livedoor版. 2023年5月30日閲覧。
- ^ a b Maclean, Rory (2014年5月15日). “A day in the life of a dolphin trainer at North Korea's Pyongyang dolphinarium” (英語). ガーディアン 2023年5月30日閲覧。
- ^ 李相英「塩水で淡水消毒システム、南浦-平壌海水輸送管」『朝鮮新報』2012年8月11日。2023年5月30日閲覧。
- ^ 「北朝鮮で大うけ、CNNカメラマンによる「フラフープ外交」の顛末記」『CNN』2015年7月12日、2面。2023年5月30日閲覧。
- ^ “RUD-SA-E1201” (英語). Captive Cetacean Database. Cetacean Cousins (2015年7月14日). 2015年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月30日閲覧。
- ^ “RUD-SA-E1202” (英語). Captive Cetacean Database. Cetacean Cousins (2015年7月14日). 2015年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月30日閲覧。
- ^ “RUD-SA-E1203” (英語). Captive Cetacean Database. Cetacean Cousins (2015年7月14日). 2015年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月30日閲覧。
- ^ “RUD-SA-E1204” (英語). Captive Cetacean Database. Cetacean Cousins (2015年7月14日). 2015年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月30日閲覧。
外部リンク
[編集]- 노동신문이 선전하는 능라곱등어관 모습 建物の外観[リンク切れ]
- Rungna Dolphinarium DPRK 360 : The North Korea Photography Project (建物の内観)
- Rungna Dolphinarium - YouTube NORTH KOREA TODAY (DPRK NEWS CHANNEL) 2013年の映像(朝鮮語)[リンク切れ]
- 2013年のショーの取材映像 時事通信