羊蹄トンネル
羊蹄トンネル(ようていトンネル)は、北海道倶知安町とニセコ町にまたがる全長9750 mの鉄道トンネル。2024年現在も建設中。地質上の問題(後述)で、完成の目処が立っていない。
概要
[編集]北海道旅客鉄道(JR北海道)が運行する北海道新幹線のために掘削されているトンネルで、建設発注者は鉄道建設・運輸施設整備支援機構。名前の由来は羊蹄山によるもの。トンネルの総延長は9750 m。倶知安町側の比羅夫工区(延長5569 m)、ニセコ町側の有島工区(延長4221 m)で工事が進められた。
地質の問題
[編集]比羅夫工区では、奥村組・日本国土開発・札建工業・山田組JVが施工主体となり2019年から工事が始められた[1]。羊蹄山麓の地質は複雑で、火山灰が広がり水が噴き出しやすいことからシールド工法とNATM工法を組み合わせた「SENS工法」が採用。順調に掘削が行われたが、2021年7月に抗口から3,468 mの地点で巨大な岩塊に遭遇してシールドマシンが停止[2][3]。岩塊は硬く切端面だけでは破砕することができなかったため、迂回トンネルを設けて岩塊の除去にあたった[4]。さらに岩塊の上部(土かぶり厚約21 m)では陥没が生じるなど地質の不安定さが露見した[5]。これら工事に時間を要し、トンネル本体の掘削は約1年半にわたり停止を余儀なくされた[6]。2023年、岩塊の破砕が終了。約2年5か月ぶりにトンネルの掘削が再開された[7]が、2024年には再び巨大な岩塊に遭遇し、年単位で計画の見直しをすることが余儀なくされている[8]。
施工管理の問題
[編集]2023年5月、鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、有島工区の施工業者が生コンクリートの品質試験を巡り、虚偽の報告をしていたことを発表。コンクリートの水分量や強度を測定する試験を必要な回数、箇所数で行わておらず、コンクリートの強度が基準に達していない可能性がある[9]として調査が行われた。
脚注
[編集]- ^ “道新幹線羊蹄トンネル比羅夫工区が着工 100人が安全祈願”. 北海道建設新聞社 (2019年3月27日). 2023年5月2日閲覧。
- ^ “北海道新幹線のトンネル工事が岩塊で中断、除去に1年半以上”. 日経クロステック (2022年2月18日). 2023年5月2日閲覧。
- ^ “新幹線札幌延伸最大の難所 羊蹄トンネル、巨岩撤去は終盤戦 工期4年遅れ、巻き返しなるか”. 北海道新聞 (2023年2月25日). 2023年5月2日閲覧。
- ^ “北海道新幹線、羊蹄トンネル(比羅夫)工区の工事状況について”. 鉄道・運輸機構 (2022年2月8日). 2023年5月2日閲覧。
- ^ “シールド機停止中の北海道新幹線トンネルで地表陥没”. 日経クロステック (2022年4月25日). 2023年5月2日閲覧。
- ^ “北海道新幹線の札幌延伸へ「最大の難所」、トンネル内の巨岩を1年がかりで破壊”. 読売新聞 (2023年3月12日). 2023年5月2日閲覧。
- ^ “北海道新幹線の札幌延伸、2年5か月ぶりに羊蹄トンネルの掘削再開…工事4年遅れで「工期短縮へ調整」”. 読売新聞 (2023年11月28日). 2024年11月4日閲覧。
- ^ “北海道新幹線 また“岩塊” 見つかり工事ストップ トンネル難工事 突破の秘策は「地上からの撤去」 現場にカメラ初潜入”. UHB (2024年6月19日). 2024年11月4日閲覧。
- ^ “北海道新幹線「羊蹄トンネル」、強度不足の可能性…熊谷組がコンクリート試験で虚偽報告”. 読売新聞 (2023年5月3日). 2023年5月2日閲覧。