自動コンテンツ認識
自動コンテンツ認識 (英: Automatic content recognition、略称: ACR) とは、スマートテレビやスマートフォンといった端末上で再生される音声・動画・画像などのコンテンツを識別する技術である[1]。こうしたコンテンツが再生されると、ACR側のライブラリにある情報と照合し、何がユーザーの端末上で再生されているのかを識別できる[2]。ストリーミング配信だけでなく、DVDやBlu-rayといった固定媒体であっても再生されたコンテンツをACRで捕捉できる[2]。ユーザーの個人情報保護法令遵守の観点から、ユーザーはオプトアウト (データ捕捉拒否) を選択することができるものの、2022年時点でスマートテレビ利用者の9割が拒否せずに視聴データをACR側に提供しているとの報告もある[2]。
活用領域
[編集]元来はコンテンツの視聴者の利用状況を捕捉・分析するために開発された技術であるが、その後は広告へと活用範囲が拡大している[1]。ACRを用いてコンテンツの視聴時間、スキップしたコンテンツ、再視聴したコンテンツなどを分析することで、そのユーザー向けにカスタマイズした広告をリアルタイムで配信できる[1]。
またユーザー投稿型動画サービスのYouTubeでは、著作権侵害コンテンツの投稿検知にACRの一種であるContent IDを2007年より導入している[3] (「コンテンツID」の日本語名が用いられることもある)。音楽を例にとると、音楽業界から著作権保護下にある楽曲をYouTubeに提供してもらい、ライブラリ (データベース) を作成する。YouTubeの一般ユーザーが楽曲などのコンテンツをYouTubeに投稿すると、Content IDのライブラリと照合し、著作権侵害のアラートを発出する仕組みである[3][4]。著作権者側 (上記の例では音楽レーベルなど) はアラートが発出されると通知を受け、このユーザーの投稿をブロックできるだけでなく、事後的に許諾して広告収入の一部を還元してもらう「マネタイズ」を選択することも可能である[3]。ただしライブラリのデータ精度、そして照合の精度が必ずしも高いとは言えず、合法的なコンテンツ投稿にも誤ってアラートが発出されることがある[5]。
市場規模と主なプレイヤー
[編集]2022年のACR世界市場規模は230億米ドル程度に達しているとの推計があり、2027年までに年平均16%以上の成長が見込まれている[6]。ACRの主要プレイヤーはApple社傘下のShazamのほか、Audible Magic、Digimarc、ACRCloud、Microsoft傘下のNuance Communicationsが知られている[7]。ACRは市場集中度が高いと言われている[8]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c "What Is Automatic Content Recognition? | ACR in Advertising" [自動コンテンツ認識とは何か? | 広告業界におけるACR]. AXINSIGHTS (英語). AUDIENCEX. 12 September 2024. 2024年12月11日閲覧。
- ^ a b c Peterson, Tim (3 January 2022). "WTF is automatic content recognition?" [自動コンテンツ認識とは一体何なのか?] (英語). Digiday. 2024年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月11日閲覧。
- ^ a b c Bridy 2020, p. 330.
- ^ Graves, Franklin; Lee, Michael (2017). "The Law of YouTubers: The Next Generation of Creators and the Legal Issues They Face" [YouTuberに適用される法令: 次世代クリエイターが直面する法的課題]. First oublished in Landslide, Vol. 9, No. 5, May/June 2017, by the American Bar Association and reproduced (英語). American Bar Association. 2024年12月11日閲覧。
- ^ Bridy 2020, p. 346.
- ^ "Automatic Content Recognition Market by Component, Content, Technology, Applications (Broadcast Monitoring and AD Targeting & Pricing), Deployment Mode, Organization Size, Vertical and Region - Global Forecast to 2027" [自動コンテンツ認識市場規模 - 製品セグメント別、コンテンツ別、技術種別、用途別、実装手法別、企業規模別、国・地域別 - 2027までの世界市場展望] (英語). Markets and Markets. 2024年12月11日閲覧。
- ^ "Automatic Content Recognition Market Size & Share Analysis - Growth Trends & Forecasts (2024 - 2029)" [自動コンテンツ認識の市場規模とシェア分析 - 2024年から2029年の成長トレンドと予測] (英語). Mordor Intelligence. 2024年12月11日閲覧。
- ^ Bridy 2020, p. 354.
引用文献
[編集]- Bridy, Annemarie (アイダホ大学法学部教授) (2020). “The Price of Closing the Value Gap: How the Music Industry Hacked EU Copyright Reform [バリュー・ギャップを埋める代償: 音楽業界はいかにしてEUの著作権法改革に切り込んだのか]” (英語) (PDF). Vanderbilt Journal of Entertainment & Technology Law (Vanderbilt University) 22 (2) .