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萬田正治

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
萬田正治

萬田 正治(まんだ まさはる、1942年4月23日 - )は、日本の農学者、専門は畜産学。鹿児島大学名誉教授。日本での持続可能な農業を研究提言するなかで、自らも萬田農園[1]を開設し、合鴨農法[2]による無農薬米の生産方法を確立・全国に普及させるなどの実績を持つ実践者でもある。放送大学客員教授、鹿屋体育大学理事、鹿児島大学経営協議会委員、鹿児島大学稲盛アカデミー特任教授、等を兼任。

職歴

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  • 1942年4月23日 佐賀県鳥栖市生まれ。福岡県北九州市で育つ。

   鹿児島大学農学部卒、東北大学大学院終了、酪農学園大学講師

  • 2001年 鹿児島大学副学長
  • 2003年 定年を5年残して退職。鹿児島大学名誉教授着任
  • 2004年 霧島市溝辺町竹子(たかぜ)に萬田農園を開設。
  • 2008年 鹿児島大学経営協議会委員
  • 2015年 鹿児島大学稲盛アカデミー特任教授

人物・エピソード

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  • 鹿児島大学時代、屋久島での猿による農作物被害防止に尽力。電気柵を中心にした対策をうちたてる。
  • 1992年から全国合鴨水稲会の代表世話人として、無農薬稲作の合鴨農法の普及に尽力、鹿児島県内の多くの農家がその恩恵を受けている。
  • 農村と農業の改革を目指して「竹子農塾(たかぜのうじゅく)」を開設、同主宰。招待講師による理論学習(座学)を行っている。
  • 農村と都市住民の交流・協力により、美しい景観と治山治水の役割を果たしている棚田や自然環境をまもることを目的に「田主の会[3]」を開設。
  • 2013年、棚田の一角に小水力発電機を設置し、その電気を利用した小型電力自動車で、地元の物産館「きらく館」からお年寄りに宅配。
  • 2014年 奄美の瀬戸内町の瀬戸内徳州会病院院長の高野良裕氏が開設した(株)奄美有機農業研究所に、2匹のヤギと15羽の萬田黒鶏[4]を贈呈。高野良裕氏は萬田正治の農業・農村政策に共鳴し、同病院にほど近い休校中の節子小中学校の跡地(校庭)を活用し農場を開園した。
  • 2015年3月、庭先養鶏の会を設立。産業としての農業が行きづまる今、生活農業(自給のための農)の側面で農業を見直し、先ずは手頃な鶏を庭先で飼い、家庭の生ごみを餌として与えれば、卵と肉になって戻ってくる循環農業となる。近隣のグループでも庭先養鶏が始まる。
  • 2015年11月、大規模農業だけでは日本農業は救えないと、小農(生活農業や兼業農家)の大切さを全国に提起し、小農学会を設立、共同代表を務める。

著書

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単著

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  • 「アイガモ 飼育技術の基礎」(1997農山漁村文化協会)
  • 「新特産シリーズ ヤギ」(2000年 農山漁村文化協会 ISBN 9784540991370
  • 「ヤギの絵本」(2000 農山漁村文化協会 ISBN 9784540991363
  • 「生活農業の時代 竹子農塾講義録」(2010 南方新社 ISBN 978-4861241840

共著

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  • 「農業技術体系、畜産編、中小家畜、ヤギ 1-27」(1980 農山漁村文化協会)
  • 「畜産全書 共著 第1章 ヤギの飼育管理 6巻 21-47」(1983 農山漁村文化協会)
  • 「新畜産学 第4章 B 家畜排泄物の利用 105−112 第9章 家畜の管理と畜舎 239-270」(1985 朝倉書店)
  • 「畜産の近未来 第2章 第1項(8)山羊の現状と課題 101−105」(1991 川島書店)
  • 「最新 酪農用語解説集」(1993 デーリイ・ジャパン社)
  • 「新編 畜産大辞典 ヤギ」(1996 養賢堂 ISBN 978-4842596013
  • 「最新 畜産学 9 家畜の管理と畜舎」(1998 朝倉書店 ISBN 978-4-254-45015-6
  • 「わが家でつくる合鴨料理」(2000 農山漁村文化協会 ISBN 9784540983955
  • 「家禽学 特用家畜・アイガモ」(2000 朝倉書店 ISBN 978-4-254-45017-0
  • 「農的生活のすすめ」(2007 南方新社 ISBN 9784861241130

注釈

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  1. ^ 萬田農園:萬田正治氏が経営する萬田農園は、鹿児島県のほぼ中央部を流れる網掛川源流域の竹子地区の棚田に位置し、遠くに霧島連山を仰ぎ見る。合鴨農法を基軸にした小規模な有畜複合経営をめざしている。
  2. ^ 合鴨農法:水田に合鴨の雛を放ち、合鴨が除草・除虫を行うとともに、合鴨の糞が追肥となり、濁水、刺激効果など稲に多面的な効果をもたらす。水田から引き上げた合鴨は肉となり、ごはんと一緒に食卓を豊かにする。無農薬米を初めて実現させた自然環境をまもる農法であり、有畜複合経営の典型である。
  3. ^ 田主の会:会員は、1区画の水田(1区画当たり平均200㎡)で、土日祝日に、合鴨農法による田植え、草とり、稲刈り、脱穀などの農作業を体験し、収穫の喜びを実感することができる(収穫米は持ち帰ることができる)。そのほかの作業は萬田農園が行う。農村と都市住民の交流・協力により、美しい景観と治山治水の役割を果たしている棚田や自然環境をまもることを目的とする。20区画の水田(20人の会員分)が用意されている。
  4. ^ 萬田黒鶏:主に家族の暮らしのために鶏を飼うことを庭先養鶏という。昔から、農家を問わず、家の周辺の空き地を利用して、家庭で鳥を飼い、貴重な動物蛋白源として自給し、来客があれば鶏をつぶしてふるまった。このような鶏の食文化と長閑な風景を取り戻すためには、卵もよく産み肉も美味しい鶏でなければならない。しかし、近代の鶏は、商品化生産により、レイヤー(卵)とブロイラー(肉)の専用種に二分され、兼用種はいなくなってしまった。萬田正治は庭先養鶏向きの兼用種である萬田黒鶏を5年以上の歳月をかけて開発し、この新品種を鹿児島地域の特産としても普及に尽力している。

外部リンク

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