角椀漱
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あらすじ
[編集]その昔、ある年の盆のこと。ある長者のもとを、山奥に住むという武士が訪ね、客を招待するといって20人前の膳椀の借用を申し入れた。長者は相手が武士なので断ったときのことを恐れ、椀を貸した。しかし椀が返却されることはなく、それどころか毎年お盆のたびに武士は椀を借りに来た。
不思議に思った長者は、人を雇って武士の後を追わせた。武士は山奥の池にやって来て、椀を抱えて水の中へと姿を消した。武士を追っていた者は驚きながら長者の元に帰り、事の次第を伝えた。
気味悪く思った長者は、次に武士が椀を借りに来た時に一計を案じ、膳に縫い針を刺して貸し出した。するとそれきり、武士が現れることはなかった。主人はまた人を雇ってあの池を見に行かせたところ、水中には顔が椀の化け物がいたということだった。それ以来、長者たちは決してその池に近づかないようにしたという。
この妖怪譚は妖怪漫画家・水木しげるの著書『水木しげるの憑物百怪』にあるものだが[1]、一次出典となる古典などの名称は挙げられていない。美濃にはこの妖怪譚と酷似した「椀借り武士」という伝説があり、あらすじはほとんど同一だが、池に椀の化け物がいたとの記述はない[2]。
関連項目
[編集]- 「椀貸伝説」-日本各地に伝わる伝承。宴会など大量の膳や椀が必要な際、特定の淵や岩穴、古墳に願えば、何者かが願いどおりに人数分の膳や椀を貸してくれた。だが不心得者が椀を返さなかったので、それ以降は貸してくれなくなった、という話。