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計算物理学

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計算物理学(けいさんぶつりがく、英語: computational physics)は、解析的に解けない物理現象の基礎方程式を計算機(コンピュータ)を用いて数値的に解くことを目的とする物理学の一分野である。

概要

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計算物理学では、ナヴィエ・ストークス方程式[1][2][3][4]マクスウェル方程式[5][6][7]のような物理学での基礎方程式を計算機を用いてひたすら数値的に解く、という手法が用いられる。

流体力学でのナヴィエ・ストークス方程式やプラズマ物理学での磁気流体方程式のような微分方程式では、解析解が得られることはきわめてまれであり[8][9]理論物理学では多くの場合断熱過程線形性など近似を用いて物理現象を説明する。

ここ100年ほどの計算機とアルゴリズムの発達により、それほど大胆な近似を導入せずに、数値的な手段を用いて近似された方程式を解くで物理系の大まかな振る舞いを調べることがしだいに可能となってきた[10]。この計算機を用いて得られた数値的な近似解から新たな物理的な知見を得ることがこの分野の目指すところである。このような現象を数値的な手段を用いて模倣することは一般に「(数値)シミュレーション」などと呼ばれる。

この分野は一般には、理論物理学に属すると考えることもできるが、他方で、このような数値的な解析を「計算機実験」と称することもあるように、実験的な側面も存在する。このため、物理学における理論、実験以外の第三の分野として、この「計算物理学」を捉える考え方も存在する。たとえば、さまざまな条件下で基礎方程式を解くことで、新たな現象、効果の存在が示唆されることもあり、理論物理学者はそこから理論モデルを構築する。一方で大規模な物理実験を行う際には実際の物理実験を行なうのに先だってまず数値シミュレーションが行なわれてそれで得られた結果と,実際の実験結果とを比較して検討するようなことが普通に行なわれるようになってきた。特に現実には実験を行うことが困難またはほとんど不可能な現象であってもシミュレーションを行うことが可能な場合がある。

脚注

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  1. ^ Temam, R. (2001). Navier-Stokes equations: theory and numerical analysis (Vol. 343). American Mathematical Soc..
  2. ^ Marion, M., & Temam, R. (1998). Navier-Stokes equations: Theory and approximation. Handbook of numerical analysis, 6, 503-689.
  3. ^ Girault, V., & Raviart, P. A. (2012). Finite element methods for Navier-Stokes equations: theory and algorithms (Vol. 5). Springer Science & Business Media.
  4. ^ Moser, R. D., Moin, P., & Leonard, A. (1983). A spectral numerical method for the Navier-Stokes equations with applications to Taylor-Couette flow. Journal of Computational Physics, 52(3), 524-544.
  5. ^ Monk, P. (2003). Finite element methods for Maxwell's equations. Oxford University Press.
  6. ^ Makridakis, C. G., & Monk, P. (1995). Time-discrete finite element schemes for Maxwell's equations. ESAIM: Mathematical Modelling and Numerical Analysis, 29(2), 171-197.
  7. ^ Cockburn, B., Li, F., & Shu, C. W. (2004). Locally divergence-free discontinuous Galerkin methods for the Maxwell equations. Journal of Computational Physics, 194(2), 588-610.
  8. ^ Constantin, P., & Foias, C. (1988). Navier-stokes equations. University of Chicago Press.
  9. ^ Foias, C., Manley, O., Rosa, R., & Temam, R. (2001). Navier-Stokes equations and turbulence (Vol. 83). Cambridge University Press.
  10. ^ Brezinski, C., & Wuytack, L. (2012). Numerical analysis: Historical developments in the 20th century. Elsevier.

参考文献

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洋書:

  • Thijssen, Jos (2007): Computational Physics, Cambridge University Press, ISBN 978-0-52183346-2.
  • Landau, Rubin H.; Páez, Manuel J.; Bordeianu, Cristian C. (2015): Computational Physics: Problem Solving with Python, John Wiley & Sons.
  • Landau, Rubin H.; Paez, Jose; Bordeianu, Cristian C. (2011): A survey of computational physics: introductory computational science. Princeton University Press.
  • Steven E. Koonin (1986): Computational Physics, en:Addison-Wesley.
  • T. Pang (2010): An Introduction to Computational Physics, Cambridge University Press
  • B. Stickler, E. Schachinger (2013): Basic concepts in computational physics, Springer-Verlag ,ISBN 9783319024349.

和書:

  • 藪下信:「計算物理(Ⅰ)」、地人書館、ISBN 978-4-8052-0159-6(1982年9月).
  • 藪下信:「計算物理(Ⅱ)」、地人書館、ISBN 978-4-8052-0181-7(1983年5月).
  • Wm. G. Hoover:「計算統計力学」、森北出版、ISBN 978-4-627-84091-1 (1999年5月25日).
  • ハーベイ・ゴールド、ジャン・トポチニク:「計算物理学入門」、ピアソン・エデュケーション、ISBN 978-4-89471-318-5 (2000年12月20日).
  • Rubin H. Landau、Manuel José Páez Mejía:「計算物理学:基礎編」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-13086-7 (2001年4月20日).
  • Rubin H. Landau、Manuel José Páez Mejía:「計算物理学:応用編」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-13087-4 (2001年4月20日).
  • 夏目雄平、小川建吾:「計算物理Ⅰ」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-13713-2 (2002年3月15日).
  • 夏目雄平、上田毅:「計算物理Ⅱ」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-13714-9 (2002年6月15日).
  • 夏目雄平、小川建吾、鈴木敏彦:「計算物理Ⅲ」 、朝倉書店ISBN 978-4-254-13715-6 (2002年11月1日).
  • J.M.ティッセン:「計算物理学」、シュプリンガー・フェアラーク東京、ISBN 978-4-431-71058-5 (2003年11月7日).
  • アレジャンドロ・ガルシア:「MATLAB/C++で学ぶ 物理学のための数値法(上):常微分方程式・データ解析」、ピアソン・エデュケーション、ISBN 978-4-89471-762-6 (2003年11月30日).
  • アレジャンドロ・ガルシア:「MATLAB/C++で学ぶ 物理学のための数値法(下):偏微分方程式・確率論的手法」、ピアソン・エデュケーション、ISBN 978-4-89471-763-3 (2004年7月1日).
  • R.H. Landau、M.J. Paez、C.C. Bordeianu:「計算物理学Ⅰ:数値計算の基礎/HPC/フーリエ・ウェーブレット解析」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-12892-5 (2018年4月20日).
  • R.H. Landau、M.J. Paez、C.C. Bordeianu:「計算物理学Ⅱ:物理現象の解析・シミュレーション」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-12893-2 (2018年4月20日).
  • 野本拓也、是常隆、有田亮太郎:「実践計算物理学:物理を理解するためのPython活用法」、共立出版、ISBN 978-4-320-03576-8 (2023年1月15日).
  • 大槻純也:「Pythonによる計算物理」、森北出版、ISBN 978-4-627-17081-0 (2023年9月21日).
  • 計算物理 春の学校 2023 (YouTube Channel)

計算力学

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計算力学も計算物理学の一つの分野である。

  • 日本機械学会(編):「計算力学ハンドブック I:有限要素法 構造編」、日本機械学会、ISBN 978-4-88898-085-2 (1998年7月).
  • 日本機械学会(編):「計算力学ハンドブック II:差分法・有限体積法 熱流体編」、日本機械学会、ISBN 978-4-88898-117-0 (2006年3月).
  • 矢川 元基・宮崎 則幸(編):「計算力学ハンドブック」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-23112-0 (2007年5月25日).
  • 日本機械学会(編):「計算力学ハンドブック III:原子/分子・離散粒子のシミュレーション」、日本機械学会、ISBN 978-4-88898-187-3 (2009年9月).
  • E. スタイン・R. ドウボースト・T. ヒューズ(編)、田端 正久、萩原 一郎(監訳):「計算力学理論ハンドブック」、朝倉書店、ISBN 978-4-254-23120-5(2010年6月15日).

関連記事

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