許萬元
人物情報 | |
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生誕 |
1933年 日本(現・ 韓国) 済州道 |
死没 | 2005年8月25日(72歳没) |
居住 | 日本 |
国籍 | 朝鮮 |
出身校 |
中央大学 東京都立大学 |
学問 | |
研究分野 |
ヘーゲル哲学 弁証法 |
研究機関 |
東京都立大学 立命館大学 |
博士課程指導教員 | 寺沢恒信 |
学位 | 文学博士(東京都立大学・1968年) |
主要な作品 |
『ヘーゲル弁証法の本質』 『認識論としての弁証法』 (以上、『弁証法の理論』の上下巻) 『ヘーゲルにおける現実性と概念的把握の論理』 |
学会 | 日本ヘーゲル学会 |
許萬元(ホ・マンウォン[注釈 1]、朝鮮語: 허만원、1933年 - 2005年8月25日[1])は、日本の哲学研究者。弁証法を専門とした。元立命館大学文学部教授。
経歴
[編集]1933年、朝鮮済州道生まれ。東京都立朝鮮人高等学校在学中、林光徹校長にすすめられ、中央大学文学部哲学科で学ぶ。東京都立大学大学院人文科学研究科に進み、寺沢恒信教授を指導教員として指導を受ける。1968年、博士課程を修了。東京都立大学に博士論文を提出し、文学博士号を取得。東京都立大学では初めての哲学分野での文学課程博士であった。
卒業後は東京都立大学助手になる。東京都全体としては初めての在日韓国・朝鮮人からの任用となった[注釈 2]。1983年に立命館大学へ移る。
人物
[編集]研究内容・業績
[編集]弁証法
[編集]弁証法を三つの法則 (「量から質への転化、またはその逆」・「対立物の相互浸透」・「否定の否定」)に集約する見方(唯物弁証法)や正反合の図式を批判し、弁証法の本質論として、内在主義・歴史主義・総体主義の三位一体論を提起した。
許萬元の弁証法の理論には次のような特徴がある。
1 弁証法の三大特色
ヘーゲルが弁証法の創始者としてゼノン・ヘラクレイトス・プラトンをあげていること(『哲学史講義』)に着目して、ヘーゲルは出自の異なる三つの弁証法(内在的弁証法・生成の弁証法・総体性の弁証法)を一つに統一したと考え、弁証法の三大特色として、内在主義・歴史主義・総体主義を指摘した。
内在主義とは対象を自己運動として把握すること、歴史主義とは過程・否定性に真理をみること、総体主義とは有機的体系・肯定性に真理をみることである。三つの特色はヘーゲルにもマルクスにも共通するが、内容は異なっている。
2 弁証法の二大機能
「論理的なものの三側面」の規定(ヘーゲル『小論理学』)に着目して、弁証法の二大機能として、理性の否定作用と理性の肯定作用を指摘した。理性の否定作用が歴史主義の原理である。また、理性の肯定作用が総体性の原理である。
3 矛盾論
概念の自己運動と矛盾の同等性を主張し、矛盾に2種類あることを指摘した。否定的理性の必然性にもとづく「闘争矛盾」と肯定的理性の必然性にもとづく「調和矛盾」である。
4 ヘーゲルとマルクスの弁証法の違い
ヘーゲルとマルクスの弁証法の違いは、観念論か唯物論かという前提だけでなく、内的な構造にも違いがあることを指摘した。前提の違いは、内在主義の内容の違いに対応する。内的構造の違いは、歴史主義と総体主義の統一の仕方の違いに対応する。
ヘーゲル弁証法の統一構造は、「論理的なものの三側面」に示され、「絶対的総体主義にもとづく歴史主義」である。これに対して、マルクスの弁証法は「絶対的歴史主義にもとづく総体主義」である。
5 即かつ対自的考察法
「即自→対自」の論理には、存在の潜在態と顕在態という存在論的意味だけでなく、対象の内在的考察という認識論的意味があることを指摘した。即かつ対自的考察法は、弁証法における学的認識の重要な特徴である。これが、レーニンの「認識論としての弁証法」という問題を解く鍵である。
6 概念の自己運動
概念の自己運動は、現実の動的・必然的性格と対応する。これは、ヘーゲルにおいてではなく、反映論的同一性の立場に立つ唯物論において、はじめて実現されると指摘した。
著作
[編集]- 主著は『弁証法の理論』(創風社 上下巻 1988年。ISBN 4915659178)。上(ヘーゲル弁証法の本質)では、ヘーゲル、エンゲルス、マルクスの弁証法がとりあげられている。また、下(認識論としての弁証法)では、レーニンや見田石介・松村一人・武市健人の弁証法の理論が検討されている。
- 『増補版 ヘーゲルにおける現実性と概念的把握の論理』(大月書店、ISBN 4-272-43034-3、1988/01/21)初版は1968年