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貨物機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
貨物機(ボーイング747F)

貨物機(かもつき)とは、貨物の輸送に特化した航空機

人や貨物の輸送を主用途とする航空機を用・間用ともに輸送機という。民間用輸送機は、旅客の輸送を目的とする旅客機と、貨物の輸送を目的とする貨物機に区分される[1]。軍用機については輸送機を参照。

英語では「freighter」[2]「airlifter」「cargo aircraft」などと称される。貨物機を運行して航空貨物輸送業務を行う企業を貨物航空会社という。

概要

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スイングテールを開くボーイング747LCF
ノーズドアから貨物を積み降ろす様子(ボーイング747)

初期の貨物機は、専用の設計で作られたものは少なく、郵便輸送など貨物便として用いられた機体はあったものの、旅客・貨物の双方の輸送が行えるものが主流であった。

貨物機が発達したのは、第二次世界大戦後のことである。これは、航空輸送が活発となって航空機が大型となったことと、民間分野においても航空機による大型貨物や大量の物資の輸送に対する需要が出てきたことに加え、旅客機は整備されたキャビンを持つようになってきたこともあり、貨物を運ぶにあたっては、機内を専用設計としたほうが有利であったことによる。

現代の貨物機は旅客機を改設計し、機内を改装したものが多い。機種にもよるが、外見的にはキャビン窓や非常用脱出口がない代わりに荷物積み降ろし用の大型のカーゴドアを持つといった程度の違いしかない。構造的には、重い荷物に対応するためメインデッキの床が強化され、またペイロードを増やすために主翼付け根部分(翼胴接合部)の強化およびそれに伴う着陸重量の増加に見合う降着装置の強化などが行われる。軍用輸送機では、積み下ろしの利便性から高翼配置が主流となっているが、民間貨物機では旅客機ベースの設計のため低翼配置が主流となっている。

また、ボーイング747 の一部や A300-600ST ベルーガなどのように機首部分がチルトアップする「ノーズドア」を持つものや、カナディアCL-44ボーイング747-LCF などに見られる胴体後部が横方向に折れて開く「スイングテール」を持つものが存在する。

貨物機は旅客機より多くのペイロード[3]を積載するため、

  • 燃料消費が多くなる
  • 最大ペイロードの限界まで積載した場合、最大離陸重量を超過しないよう、機種によってはタンク容量の半分程度しか燃料を搭載できない

という理由(相乗効果)により、一般に旅客機よりも航続距離が短い。このため、例えば極東 - 欧州路線では、現在ほとんどの旅客機が体制崩壊後のロシア上空を経由して 13 - 14 時間のフライトを実現しているが、貨物機ではこの距離をノンストップで飛行することが難しい(最新型機747-8F では一部可能となった)。したがって現在でも極東 - 欧州路線の貨物機はアンカレッジ給油を行う旧来のルートが健在である。

旅客機のメインデッキに大型のドアを追加して貨物機としても利用できようにした貨客混載機は『コンビ機』などと呼ばれ、旅客や貨物専用機では採算の取れにくい地方路線などで使用されている。

旅客機のロワーデッキにユニット・ロード・デバイスを積んで輸送する混載(コンビネーションキャリア)も行われている[4]

貨物機は復路が空荷となる可能性が多いことや、航空輸送の需要が主貨物室に入れる必要がある高さのある貨物(家電半導体製造装置など)から高さが必要が無い「軽薄短小」の貨物(電子部品など)に移行したことで、貨物機の保有を辞めコンビネーションキャリアのみとした航空会社もある[4]

貨物機の一覧

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脚注

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  1. ^ 平凡社 世界大百科事典 第2版の区分による
  2. ^ 頭文字"F"から、民間貨物機は型式の末尾に"F"を付けて表される傾向がある
  3. ^ ボーイング747貨物型で貨物重量100トン以上、これは旅客機における乗客、手荷物、機内食や飲料 / 便所の水などの合算重量の2倍を超える。
  4. ^ a b 貨物機はすべて処分しているのに…JALが貨物特需で2000億円を稼ぎ出せた「床下の秘密」 ANAとは正反対の「ローリスク・ハイリターン」”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2022年9月21日). 2022年9月22日閲覧。
  5. ^ 旅客型の開発・納入の遅延による影響で2007年3月に航空会社からの発注を全て失い、現在は開発が中断され、実機は製造されていないが航空会社からの発注は受け付けている。しかしながら2019年2月14日にエアバス社が2021年をもって基本型であるA380-800型機の生産終了を発表したことにより、計画で終わる見込みである。

関連項目

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