超伝導サブミリ波リム放射サウンダ
超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(ちょうでんどうサブミリはリムほうしゃサウンダ、Superconducting Submillimeter-Wave Limb Emission Sounder, SMILES) は、国際宇宙ステーションの日本実験棟(きぼう)曝露部に設置された日本の大気観測装置であり、4 K(ケルビン)(-269℃)に冷却した超伝導検出器によって、これまでにない高精度の大気観測を行った。
概要
[編集]SISミキサーを用いたサブミリ波受信機を搭載しており、地球大気のリム放射を仰角方向に走査しながら624-651 GHz帯を用いて分子の回転振動遷移輝線を放射分光観測した。オゾンや塩化水素などの多種分子の濃度の高度分布を全球に渡って長期観測することが期待された。
SMILESのサイズは、1.85 m×1 m×0.8 m、475 kgであり、日本時間2009年9月11日2時1分46秒にH-IIBロケットの一号機で打上げられた宇宙ステーション補給機(HTV1)に搭載されて打ち上げられた。きぼうの船外実験プラットフォームに設置された後、2009年11月6日に定常観測に移行し、サブミリ波局部発振器系の機能不全により、日本時間2010年4月21日18時頃待機モードに移行するまでデータが取得された。
2011年1月19日、JAXAおよびNICTは宇宙開発委員会で故障の原因を回路のショートと断定、復旧を断念したと報告した[1]。宇宙飛行士の船外活動で部品を交換する案も検討されたが、コストが数億円かかり、さらに修理も1年以上先となるため断念された[1]。 その後は後期運用として、4K級極低温冷凍機の技術実証を目的とした運用を継続していたが、2014年3月末で運用を終了。2015年9月にこうのとり5号機の曝露パレットに移され[2]、9月30日にこうのとり本体とともに南太平洋上で大気圏に再突入し燃え尽きた[3][4]。
SMILESの開発費は約35億円[1]。
開発機関
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c “ISSの大気観測装置、復旧断念 費用と年月かかり”. asahi.com (2011年1月19日). 2011年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年1月19日閲覧。
- ^ “曝露パレットの収納完了 新着情報:宇宙ステーション補給機(HTV) - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター”. JAXA. (2015年9月16日) 2016年11月18日閲覧。
- ^ “Weekly Recap From the Expedition Lead Scientist (Highlights: Week of March 24, 2014)”. NASA. (2014年4月1日) 2014年4月6日閲覧。
- ^ “「こうのとり」5号機が大気圏再突入、ミッション完遂! ファン!ファン!JAXA!”. JAXA. (2015年9月30日) 2016年11月18日閲覧。
外部リンク
[編集]- 超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES) JAXA ウェブサイト
- 超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES) NICT HP
- 「きぼう」船外実験プラットフォーム利用ミッション超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES:スマイルズ)による観測データの一般向け公開開始について 2012年3月5日JAXA/NICT
- 4K級メカニカル冷凍機 住友重機械工業
- 第23回「きぼう」利用勉強会資料 超伝導サブミリ波リム放射サウンダ「SMILES」~4K級機械式極低温冷凍機、不具合から得た知見と今後の運用~ (PDF) [リンク切れ] ( アーカイブ 2013年5月24日 - ウェイバックマシン ) 2012年03月09日 JAXA