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遭難自動通報局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

遭難自動通報局(そうなんじどうつうほうきょく)は、無線局の種別の一つである。

定義

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総務省令電波法施行規則第4条第1項第10号に「遭難自動通報設備のみを使用して無線通信業務を行なう無線局」と定義している。 この遭難自動通報設備とは、第2条第1項において

  • 「携帯用位置指示無線標識」を第37号の7に「人工衛星局の中継により、及び航空機局に対して、電波の送信の地点を探知させるための信号を送信する遭難自動通報設備であつて、携帯して使用するもの」
  • 「衛星非常用位置指示無線標識」を第38号に「遭難自動通報設備であつて、船舶が遭難した場合に、人工衛星局の中継により、及び航空機局に対して、当該遭難自動通報設備の送信の地点を探知させるための信号を送信するもの」
  • 捜索救助用レーダートランスポンダ」を第39号に「遭難自動通報設備であつて、船舶が遭難した場合に、レーダーから発射された電波を受信したとき、それに応答して電波を発射し、当該レーダーの指示器上にその位置を表示させるもの」
  • 「捜索救助用位置指示送信装置」を第39号の2に「遭難自動通報設備であつて、船舶が遭難した場合に、船舶自動識別装置又は簡易型船舶自動識別装置の指示器上にその位置を表示させるための情報を送信するもの」

と定義している。

引用の送り仮名、促音の表記は原文ママ

概要

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従前は船舶に搭載する遭難自動通報設備、すなわち非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)及び捜索救助用レーダートランスポンダ(SART)として免許されてきた。 個人用の携帯用位置指示無線標識(PLB)のニーズが高まったことにより、遭難自動通報設備に追加された。 移動局の一種でもある。

定義に見る通り、EPIRB又はSARTのいずれか又は両者は、これらを搭載する船舶に免許される。

搭載するのは小形の内航船舶が主である。 変わったものとしては、陸上に常備する津波救命艇 [1] [2] がある。

船舶の無線局でもある。(免許も参照)

一方、PLBは個人に免許される。免許申請にあたっては申請者以外の連絡先を2ヶ所以上要する。

免許

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無線局の免許人として外国籍の者が原則として排除されることは、電波法第5条第1項に欠格事由として規定されているが、例外として第2項に

引用の促音の表記は原文ママ

があり、遭難自動通報設備は電気通信業務用ではないので外国人や外国の会社・団体でも遭難自動通報局を開設できる。

種別コードDS。有効期間は免許の日から5年間。 EPIRB及びSARTは無線機器型式検定規則による「検定合格機器」、PLBは特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則による適合表示無線設備でなければならない。 無線局免許手続規則第2章第1節の2に規定する簡易な免許手続により予備免許落成検査も無く免許される。

  • 自衛隊の艦船については、自衛隊法第112条第1項により免許を要しない。総務省の無線局数統計にも含まれない。
用途

局数の推移に見る通り、一部を除き救難用である。

周波数
  • EPIRB、PLBは、406.025MHz、406.028MHz、406.037MHz及び406.04MHzのいずれか[3]が必須で航空機ホーミング用の121.5MHz[4]を付加したものもある。
  • SARTは9350MHz[5]である。
無線局免許状の備付け

電波法施行規則第38条第1項により無線局免許状は無線局に備え付けるものとされるが、同条第3項によりPLBのみのものについては常置場所に備え付ければよい。

表示

検定合格機器には検定マークとEPIRB及びSARTを表す記号の表示を要する。 EPIRB及びSARTを表す記号は、検定番号および機器の型式名の1-2字目にあり、種別毎に次のとおり[6]である。

種類 記号
EPIRB SE又はSS
SART LT

適合表示無線設備には技適マークと技術基準適合証明番号又は工事設計認証番号の表示を要する。 PLBを表す記号は、技術基準適合証明番号の4-5字目のTI[7]である。 従前は工事設計認証番号にも表示を要した。

技適マーク#沿革を参照。

旧技術基準の機器の使用

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無線設備規則スプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正 [8] により、旧技術基準に基づく無線設備が免許されるのは「平成29年11月30日」まで [9]、 使用は「平成34年11月30日」まで [10] とされた。

対象となるのは、EPIRB又はSARTで、

  • 「平成17年11月30日」[11]までに検定合格
  • 経過措置として、旧技術基準により「平成19年11月30日」までに検定合格[12]

したものである。

新規免許は「平成29年12月1日」以降できないが、使用期限はコロナ禍により[13]「当分の間」延期[14]された。

但し、検定合格機器は設置が継続される限り検定合格の効力は有効[15]とされるので、既設局では設置され続ける限り再免許可能。

無線局#旧技術基準の機器の使用も参照。

運用

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無線局運用規則第3章 海上移動業務、海上移動衛星業務及び海上無線航行業務の無線局の運用による。

機能試験

無線局運用規則第8条の2および電波法施行規則第38条の4により、EPIRB及びSARTについては1年以内の期間ごとに、告示 [16] に規定する方法により機能試験をして、結果を2年間保存することが義務付けられている。 これは、他の種別の局にあっても同様である。

操作

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電波法施行規則第33条の無線従事者を要しない「簡易な操作」の第8号に「その他に別に告示するもの」があり、これに基づく告示 [17] に遭難自動通報設備があり、無資格で使用できる。

検査

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  • 落成検査は、上述の通り簡易な免許手続が適用され行われない。
  • 定期検査は、電波法施行規則第41条の2の6第9号により、PLBのみのものを除き行われる。周期は別表第5号第11号により次の通り。
(1) 船舶安全法により遭難自動通報設備の備付けを要する船舶に開設するもの 2年
(2) (1)に該当しないもの 船舶安全法により遭難自動通報設備の備付けを要する船舶に開設するもの 5年
一部を除き登録検査等事業者等による検査が可能で、この結果に基づき検査が省略される。
  • 変更検査は、落成検査と同様である。
  • 自衛隊の艦船については、自衛隊法第112条第1項により電波法の検査に関する規定が除外される。

沿革

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1960年(昭和35年) - 電波法施行規則に定義、遭難自動通報設備も「A1電波2,091kc[18]を使用し、船舶が重大且つ急迫な危険に陥つた場合に即時の救助を求める通報を自動的に送信する無線設備」と定義[19]、検定合格機器によるので簡易な免許手続の対象に[20]

1961年(昭和36年) - 遭難自動通報設備が「A1電波2,091kc又はA2電波若しくはA2H電波2,182kcを使用し、船舶が重大且つ急迫な危険に陥つた場合に即時の救助を求める通報を自動的に送信する無線設備」と定義変更[21]

1964年(昭和39年) - 遭難自動通報設備のみの局は無線業務日誌の備付けが不要に[22]

  • 以後、遭難自動通報設備の変更があっても同様とされた。

1972年(昭和47年)- 遭難自動通報設備は「A1電波2,091kHz又はA2電波若しくはA2H電波2,182kHzを使用し、船舶が重大且つ急迫な危険に陥つた場合に即時の救助を求める通報を自動的に送信する無線設備」と定義変更[23]

1983年(昭和58年)- 遭難自動通報設備は「A1A電波2,091kHz又はA2A電波若しくはH2A電波2,182kHzを使用し、船舶が重大且つ急迫な危険に陥つた場合に即時の救助を求める通報を自動的に送信する無線設備」と定義変更[24]

1991年(平成3年)- 遭難自動通報設備にかえて「非常用位置指示無線標識」が「遭難自動通報設備であつて、A1A電波2,091kHz又はA2A電波若しくはH2A電波2,182kHzを使用し、船舶が遭難した場合に、遭難自動通報設備の送信の地点を探知させるための信号を送信させる無線設備」と定義、「衛星非常用位置指示無線標識」が「遭難自動通報設備であつて、船舶が遭難した場合に、人工衛星局の中継により、当該遭難自動通報設備の送信の地点を探知させるための信号を送信するもの」として、「捜索救助用レーダートランスポンダ」が定義[25]、すべて検定合格機器によるので簡易な免許手続の対象に[26]

引用の促音の表記は原文ママ

1993年(平成5年)- 電波利用料制度化、料額の変遷は下表参照

1999年(平成11年)

  • 非常用位置指示無線標識が削除[27]
  • 船舶の無線局が規定され、外国籍の者が一部の船舶に遭難自動通報局を開設できることに[28]

2006年(平成18年)- 衛星非常用位置指示無線標識の定義が現行のものに[29]

2010年(平成22年)- 捜索救助用位置指示送信装置が定義[30]、検定合格機器によるので簡易な免許手続の対象に[31]

2015年(平成27年)- 携帯用位置指示無線標識が定義[32]、適合表示無線設備によるので簡易な免許手続の対象に[32]

2018年(平成30年)- 携帯用位置指示無線標識のみのものの無線局免許状は常置場所に備え付ければよいことに[33]

2022年(令和4年)- 船舶の無線局の規定が現行のものとなり、外国籍の者が船舶に遭難自動通報局を開設できることに[34]

局数の推移
年度 総数 救難 出典
平成11年度末 132 129 地域・局種別無線局数[35] 平成11年度第4四半期末
平成12年度末 127 125 平成12年度第4四半期末
平成13年度末 122 121 用途別無線局数[36] H13 用途・業務・免許人・局種別
平成14年度末 115 115 H14 用途・局種別無線局数
平成15年度末 101 100 H15 用途・局種別無線局数
平成16年度末 101 100 H16 用途・局種別無線局数
平成17年度末 102 102 H17 用途・局種別無線局数
平成18年度末 91 91 H18 用途・局種別無線局数
平成19年度末 95 93 H19 用途・局種別無線局数
平成20年度末 84 83 H20 用途・局種別無線局数
平成21年度末 75 74 H21 用途・局種別無線局数
平成22年度末 65 64 H22 用途・局種別無線局数
平成23年度末 58 57 H23 用途・局種別無線局数
平成24年度末 48 46 H24 用途・局種別無線局数
平成25年度末 46 44 H25 用途・局種別無線局数
平成26年度末 47 44 H26 用途・局種別無線局数
平成27年度末 74 74 H27 用途・局種別無線局数
平成28年度末 384 383 H28 用途・局種別無線局数
平成28年度末 623 621 H28 用途・局種別無線局数
平成30年度末 765 764 H30 用途・局種別無線局数
令和元年度末 1,218 1,216 R01 用途・局種別無線局数
令和2年度末 1,417 1,415 R02 用途・局種別無線局数
令和3年度末 1,300 1,297 R03 用途・局種別無線局数
令和4年度末 1,456 1,453 R04 用途・局種別無線局数
令和5年度末 1,471 1,469 R05 用途・局種別無線局数
注 救難用以外は、海上水上運輸用またはスポーツ・レジャー用
電波利用料額

電波法別表第6第1項の「移動する無線局」が適用される。

年月 料額
1993年(平成5年)4月[37] 600円
1997年(平成9年)10月[38]
2006年(平成18年)4月[39]
2008年(平成20年)10月[40] 400円
2011年(平成23年)10月[41] 500円
2014年(平成26年)10月[42] 600円
2017年(平成29年)10月[43]
2019年(令和元年)10月[44] 400円
2022年(令和4年)10月[34]
注 料額は減免措置を考慮していない。

その他

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非常時のみ使用する為、再免許を怠ることがあるが、これは不法無線局となるので注意を要する。

脚注

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  1. ^ 高知県に配備される津波救命艇に対し全国で初めて無線局の免許 ≪衛星を使用して津波救命艇の位置情報を伝達≫ 四国総合通信局 報道資料 平成26年7月15日(2014年8月5日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  2. ^ 焼津市の津波救命艇に管内初の無線局免許 東海総合通信局 報道資料一覧 平成27年1月23日(2015年2月13日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  3. ^ 周波数割当計画第2 周波数割当表 第2表 27.5MHz-10000MHz 周波数の使用に関する条件
  4. ^ 同上 脚注J44
  5. ^ 同上 周波数の使用に関する条件
  6. ^ 無線機器型式検定規則別表第8号
  7. ^ 特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則様式7
  8. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
  9. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項および平成19年総務省令第99号による同附則同条同項改正
  10. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
  11. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
  12. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第2項
  13. ^ 無線設備規則の一部を改正する省令の一部改正等に係る意見募集 −新スプリアス規格への移行期限の延長−(総務省報道資料 令和3年3月26日)(2021年4月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  14. ^ 令和3年総務省令第75号による無線設備規則改正の令和3年8月3日施行
  15. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第1項ただし書き
  16. ^ 平成4年郵政省告示第142号 無線局運用規則第8条の2第1項の規定に基づく遭難自動通報局の無線設備の機能試験の方法(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  17. ^ 平成2年郵政省告示第240号 電波法施行規則第33条の規定に基づく無線従事者の資格を要しない簡易な操作 第3項第1号(4)(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  18. ^ kcはキロサイクル
  19. ^ 昭和35年郵政省令第18号による電波法施行規則改正
  20. ^ 昭和35年郵政省令第19号による無線局免許手続規則改正
  21. ^ 昭和36年郵政省令第12号による電波法施行規則改正
  22. ^ 昭和39年郵政省告示第800号による昭和35年郵政省告示第1017号改正
  23. ^ 昭和47年郵政省令第25号による電波法施行規則改正
  24. ^ 昭和58年郵政省令第9号による電波法施行規則改正
  25. ^ 平成2年郵政省令第45号による電波法施行規則改正の施行
  26. ^ 平成2年郵政省令第46号による無線局免許手続規則改正の施行
  27. ^ 平成10年郵政省令第105号による電波法施行規則改正の施行
  28. ^ 平成11年法律第47号による電波法改正
  29. ^ 平成18年総務省令第132号による電波法施行規則改正
  30. ^ 平成21年総務省令第118号による電波法施行規則改正の施行
  31. ^ 平成21年郵政省令第119号による無線局免許手続規則改正の施行
  32. ^ a b 総務省令第70号による電波法施行規則等改正
  33. ^ 平成30年総務省令第4号による電波法施行規則改正
  34. ^ a b 令和4年法律第63号による電波法改正
  35. ^ 地域・局種別無線局数(総務省情報通信統計データベース - 分野別データ - 平成12年度以前のデータ)(2004年12月13日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  36. ^ 用途別無線局数(総務省情報通信統計データベース - 分野別データ - 電波・無線)
  37. ^ 平成4年法律第74号による電波法改正の施行
  38. ^ 平成9年法律第47号による電波法改正
  39. ^ 平成17年法律第107号による電波法改正の施行
  40. ^ 平成20年法律第50号による電波法改正
  41. ^ 平成23年法律第60号による電波法改正
  42. ^ 平成26年法律第26号による電波法改正
  43. ^ 平成29年法律第27号による電波法改正
  44. ^ 令和元年法律第6号による電波法改正

関連項目

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外部リンク

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総務省電波利用ホームページ

全国船舶無線協会