雪男
雪男(ゆきおとこ)は、雪深い山中にいると言われている人とも獣ともつかないUMA(未確認動物)の総称である[1]。 語源はイエティの英訳のabominable snowman(忌まわしき雪男)からきたものという説を、登山家の根深誠が唱えている[2]。また、この他にも日本の妖怪で雪男という名称のものが存在する[3]。富山県に伝わる、雪の降る夜に現れる大入道だという[3]。 新潟県小千谷市には、良い子になっていないと大きな雪男が出てきてさらっていくという昔話がある[4]。
概要
[編集]ヒマラヤ山脈のイエティ、ロッキー山脈のビッグフットなどを指すことが多い。日本国内では中国山地のヒバゴンも雪男とされる[5]。なお、「雪男」と訳されるが、本来性別は限定されていない[6]。また雪女は全く別物である[7]。中国では「野人」と呼ばれる。それぞれの雪男の共通点として、人里離れた山奥に住む、全身毛むくじゃら、直立二足歩行するという特徴が挙げられる。体色については、白、茶色、灰色など諸説あり、共通認識とはなっていない[8]。
目撃証言はあるが、ヒグマやハイイログマ(グリズリー)等の見間違いも多いとされている。それ以外の説としては、毛皮を着た猟師や猿人、ギガントピテクス(アジアに生息していた巨大類人猿の化石種)の生き残り、未発見の生物などが挙げられる[9]。ゴリラがヨーロッパでは(ギリシア時代からの記録がありながら)19世紀末まで架空の生物だと思われていたという例もあるので、雪男についても実在を強く信じる人間は少なからずいる[10]。
シェルパは雪男のことを見たものは病気で寝込んでしまう「イエティ」という死神として恐れてきた[1] 一方、ヒマラヤ地域のシェルパが、ヒグマを「イエティ」と認知していたことが判明している(詳細は「イエティ」を参照)[11]。ブータンで「雪男」を指すとされた「メギュ」[12]、チベットでの「テモ」もヒグマを指す名称だった[13]。
しかし、2011年にロシアのケメロヴォ州で開かれた雪男に関する国際会議では、ケメロヴォ州に95%の確率で実在するとの結論が出された[14]。
関連項目
[編集]- アルマス - ロシアなどの未確認生物[8]。
- 山男 - 日本の山に住む姿の似た妖怪[15]
- 異獣 - 越後国に出現した妖怪[16]
- 獣人雪男 - 雪男を題材とした映画。
- ムック (キャラクター) - 雪男の子という設定のキャラクター。
脚注・出典
[編集]- ^ a b 健部伸明『知っておきたい 伝説の魔族・妖族・神族』西東社、2012年、22頁。ISBN 9784791683123 。
- ^ “Web東奥・特集/ヒマラヤの雪男の謎を解明する/根深誠さんの手記(5)”. www.toonippo.co.jp (東奥日報). (2004年5月18日). オリジナルの2007年3月18日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b 村上健司『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、356頁。ISBN 4-620-31428-5。
- ^ 平澤洋一 1984, p. 74.
- ^ 根岸真理『PEAKS 2018年2月号 No.99』橋口優、マイナビ出版、2018年、61頁 。
- ^ 根深誠 2001, p. 34.
- ^ 高橋千劔破 2011, p. 168.
- ^ a b 羽仁礼 2001, p. 193.
- ^ 荒俣宏 2021, p. 66.
- ^ 小崎雄 & 入澤宣幸 2012, p. 63.
- ^ 山北篤 & 細江ひろみ 2020, p. 131.
- ^ Joseph P. Laycock & Natasha L. Mikles 2021, p. 111.
- ^ International Association for Tibetan Studies. Seminar & Charles Ramble 2007, p. 140.
- ^ “「ロシアに雪男いる確率95%」 国際会議で結論”. asahi.com (朝日新聞社). (2011年10月12日). オリジナルの2011年10月13日時点におけるアーカイブ。
- ^ 山口敏太郎 2014, p. 223.
- ^ 荒俣宏 & 應矢泰紀 2021, p. 66.
参考文献
[編集]- 平澤洋一「ユキの意味と方言形式」『日本語研究』第7号、首都大学東京・東京都立大学日本語・日本語教育研究会、1984年、70-75頁、ISSN 03866084、NCID AN00189571、国立国会図書館書誌ID:000000030925、2022年8月22日閲覧。
- 根深誠「雪男伝説⑦ラマ=ゲシの話」『グリーン・パワー』2001年1月、森林文化協会、2001年、34頁、ISSN 03890988。
- 羽仁礼 (2001). 超常現象大事典. 成甲書房. p. 193. ISBN 9784880861159
- International Association for Tibetan Studies. Seminar; Charles Ramble (2007). Contemporary Tibetan Literary Studies. ブリル (出版社). p. 140. ISBN 9789004155169
- 高橋千劔破 (2011). 花鳥風月の日本史. 河出書房新社. p. 168. ISBN 9784309410869
- 小崎雄; 入澤宣幸 (2012). 知ってびっくり!世界のなぞ・ふしぎ物語. 学研プラス. p. 63. ISBN 9784059158134
- 山口敏太郎 (2014). 大迫力!日本の妖怪大百科. 西東社. p. 223. ISBN 9784791621200
- 山北篤; 細江ひろみ (2020). 1日3分読むだけで一生語れるモンスター図鑑. すばる舎. p. 131. ISBN 9784799108925
- Joseph P. Laycock; Natasha L. Mikles (2021). Religion, Culture, and the Monstrous. Lexington Books. p. 111. ISBN 9781793640253
- 荒俣宏 (2021). 普及版世界大博物図鑑 5 哺乳類. 平凡社. p. 66. ISBN 9784582518658
- 荒俣宏; 應矢泰紀 (2021). アラマタヒロシの日本全国妖怪マップ. 秀和システム. p. 49. ISBN 9784798065076