コンテンツにスキップ

領海警備

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

領海警備(りょうかいけいび、territorial waters security)とは、民間人を装った武装集団工作船の侵入など、外国の公船・官船や外国籍の商業船による領海侵犯への警戒監視を指して使用される[1][2]

日本での対応[編集]

日本の領海においては、外国漁船などが違法操業を行った場合は外国人漁業の規制に関する法律違反、外国の民間船舶が正当な理由なく領海内を徘徊し続けた場合は領海等における外国船舶の航行に関する法律違反が成立する。また、外国の公船が領有権を主張したり情報収集活動をするために領海内を徘徊することは国連海洋法条約第19条の「沿岸国の防衛又は安全に影響を与えることを目的とする宣伝行為」「沿岸国の防衛又は安全を害することとなるような情報の収集を目的とする行為」「調査活動又は測量活動の実施」が成立し、無害通航ではない航行となる。ただし、国際法で外国の管轄権からの免除を有しているため、臨検や拿捕などの措置を採ることはできない[3]

外国の公船や民間船舶の場合は海上保安庁水産庁が対処し、外国の軍艦に対しては海上自衛隊が対処することとされている。海上自衛隊のP-3C哨戒機などが、不審船を発見した場合は、直ちに海上保安庁に通報する体制が整えられている。不審船が強力な武器を装備して高速で逃亡する場合には、海上保安庁の能力を超える事態と判断され、閣議による合意に基づき内閣総理大臣による承認を得て防衛大臣海上警備行動を発令する。

海上保安庁では、領海侵犯を行っている、もしくは領海侵犯の疑いのある外国船舶を発見した場合、あるいは海上自衛隊等から通報を受けて現場に急行した場合には、漁業法や外国人漁業規制法のほか、出入国管理法、領海外国船舶航行法などの法令に基づき拡声器無線による多言語、旗りゅう信号発光信号汽笛などによる音響信号により停船もしくは退去命令を出す[4]。停船した場合は海上保安官が外国船舶への臨検を行って船籍・目的地・航行の目的・積荷・無通報の理由などを聴取し、場合によっては逮捕する。船舶が停船命令を無視して逃走を続ける場合は、警告弾の投擲を行うほか、強行接舷移乗により海上保安官が臨検し、立入検査忌避罪等の容疑で逮捕する[5]

場合によっては、海上保安庁法第20条に基づき射撃警告、上空や海面への威嚇射撃、船体射撃を行う。海上保安庁法第20条によると、危害射撃が可能な基準は警察官職務執行法第7条を準用し、正当防衛緊急避難、重大凶悪犯罪(懲役3年以上)を犯した疑いのある者等の検挙時に犯人が逃走・抵抗を図り、これを防ぐために他に採る手段がない場合のみ海上保安官が武器を使用して相手に危害を加えた場合に違法性が阻却される。また、1999年に発生した能登半島沖不審船事件を受けて改正された海上保安庁法第20条2項によると、外国船舶の領海内における航行が重大凶悪犯罪を犯す準備のために行われている疑いを払拭することができず、将来繰り返し行われる蓋然性があると海上保安庁長官が認定した場合も危害射撃が可能である。

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ デジタル大辞泉『領海警備』 - コトバンク
  2. ^ 領海警備等”. 海上保安庁. 2016年6月27日閲覧。
  3. ^ 防衛省・自衛隊|平成26年版防衛白書|コラム|<Q&A>海洋にかかる国際ルールについて”. 防衛省. 2016年6月27日閲覧。
  4. ^ 菅原成介「「北朝鮮スパイ工作船事件」の顛末」『世界の艦船』第593号、海人社、2002年3月、150-151頁。
  5. ^ 中国漁船船長を逮捕 長崎で漁業法違反の疑い”. 日本経済新聞. 2016年6月27日閲覧。

関連項目[編集]