風俗の歴史
『風俗の歴史』は、エドゥアルト・フックスによって書かれたヨーロッパの民衆史である。庶民を中心とする風俗を、その時代の絵画資料を使って紹介している。ドイツ資本主義の全盛時代が生んだ、国宝的な古典であるとされる[1]。
特徴
[編集]本書の特徴については、翻訳者の安田徳太郎が、次のように記している。
フックスはこの本で、ヨーロッパ民衆の歴史を、それこそ民衆の言葉で生きいきと述べるのを目的としたから、集められた絵画は庶民的なものや、時代の政治や風俗の本質をついた漫画や風刺画がひじょうに多く、その意味でヨーロッパでもはじめての民衆の歴史であった。—安田徳太郎訳『風俗の歴史』、第1巻、7頁
原書
[編集]原題は、Illustrierte Sittengeschichte vom Mittelalter bis zur Gegenwart であり、全6巻である。 1909年から1912年にかけてAlbert Langen (Verlag für Literatur und Kunst, München)によって出版された。しかし、ヒトラーにより発禁本とされ、焼かれたという経緯がある。
本書の構成は、以下の通りである。
第一巻:Renaissance
第二巻:Ergänzungsband Renaaissance
第三巻:Die galante Zeit
第四巻:Ergänzungsband Die galante Zeit
第五巻:Das bürgerliche Zeitalter
第六巻:Ergänzungsband Das bürgerliche Zeitalter
「ルネサンス」、「ギャラントの時代」、「ブルジョア時代」に分かれ、それぞれに、補足がつく構成となっている。
日本語訳
[編集]安田徳太郎が日本語に翻訳している。
最初の翻訳は、1953年(昭和28年)から1959年(昭和34年)にかけて、光文社から出版されたが、絶版になった。その後、1966年(昭和41年)から1967年(昭和42年)にかけて、同じく光文社から全10巻で出版された。この構成は、第1巻から第3巻が「ルネサンス」、第4巻から第6巻が「ギャラントの時代」、第7巻から第9巻が「ブルジョア時代」であり、最後の第10巻は、画集である。
1971年(昭和46年)に角川文庫から全9巻で文庫本として出版された。この版では、前回翻訳されなかった「補遺」の部分も翻訳されたが、その分、画像は大幅に減っている。この版は1990年(平成2年)に復刊された。
出典
[編集]- ^ 安田徳太郎、『風俗の歴史』第1巻、1頁