香港97
ジャンル |
固定画面シューティング 実写ゲーム |
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対応機種 | スーパーファミコン |
開発元 |
吉喜軟体公司 (Happy Soft)[1] |
運営元 |
吉喜軟体公司 (Happy Soft) |
デザイナー | クーロン黒沢 |
音楽 | スラポン |
美術 | 小川のり子 |
人数 | 1人 |
メディア | フロッピーディスク |
稼働時期 |
『香港97』(ホンコン97)は、1995年に吉喜軟体公司(Happy Software Ltd.,)が開発した、スーパーファミコン用ゲームソフト。ただし日本では正式な流通ルートを介さない、いわゆるアングラソフトとして位置づけられた。クーロン黒沢が開発に携わったとされる。
ゲーム内容
[編集]システム
[編集]主人公の陳を操り、ひたすら多種多様の敵キャラを撃つシューティングゲームで、かつてX68000で出回っていたアングラ系同人ソフト『ザ・天安門』(1989年)及び『Special天安門』(1990年)[2]の影響が強い。主人公の陳は前面にしか弾を発射できない一方、敵キャラは前からだけでなく左右からも登場する。また撃破時にアイテムとも取れるような弾[3]を撃ち返してくる敵もいる。中国人民や中国共産党員とされる人間型の敵以外にも、中国共産党幹部のリムジンとされる黒塗りの自動車、果ては中国政府の秘密巨大兵器とされる鄧小平の生首までもが襲い掛かってくる。さらに陳は1回でも敵キャラや敵が発射する弾に接触した時点でゲームオーバーとなってしまうため、ゲームとしての難易度は高い。BGMは終始サンプリングされた中国語の歌[4]がひたすら流れる[5]。背景は統一性がなく、風景や毛沢東の写真、中国語のプロパガンダポスター、コカ・コーラや亞洲電視のロゴであったりと様々である。
また事あるごと[6]に日付[7]入りの人間の死体画像が表示される事や差別的[8]かつ不謹慎な世界観など、プレイヤーを不快にする要素も多いため好みが分かれるゲームとなっている。
本ゲームは英語・日本語・中国語(繁体字)の三言語に対応している。
エンディング
[編集]この作品にはエンディングが存在し、中国の総人口分のスコアで見られるとされていたが、後にクーロン黒沢が語るには「最初からエンディングは存在していない」とのことであり[9]、クリア不可能な所謂「無理ゲー」である。ただし、ゲームオーバー後にスタッフロールや吉喜軟体公司からの告知文[10]が流れる。
ストーリー
[編集]香港の中国返還を直前に控えた1997年。中国本土からの中国人の大量流入による治安の悪化などを恐れる香港政庁[11]は、ブルース・リー[12]の親戚でもある殺しのプロ陳[13]に中国人民12億人の抹殺を依頼した。しかしその一方中国では、死亡した鄧小平[14]を巨大兵器に改造する研究が行われていた。
開発
[編集]開発スタッフ
[編集]開発スタッフはクーロン黒沢[15]以外は明確にされていないが、後の雑誌インタビューによるとプログラムは当時某ソフトメーカーに在籍していたと言われるプログラマーが担当しており黒沢が語るには、そのプログラマーが当時手掛けていたゲームソフトのゲームシステムを流用しているとの事[16]。中国語字幕担当は気の弱い中国人男性とクーロン黒沢は語っている[17]。
香港97以降
[編集]黒沢は当作の後にオウム真理教を題材にした『上九一色村物語』をAUMSOFT名義でリリースした[要出典]が、それ以降はアングラゲームソフトリリースは行っておらず[18]、最近のアングラソフトの減少に対して「アングラソフト特有の危険な匂いをGTA等の反社会的内容のゲームが持ち、メーカーから正規リリースされる事によって非正規ソフトであるアングラソフトの(ダークな)インパクトが薄れている」との見解を示している。なお、2010年代では本作程度のゴア表現を有する商用ゲーム作品は、コンピュータゲームのレイティングシステム上は成人向けゲームに分類される欧米の残酷ゲームではごくありふれたものとなっている。
スタッフ
[編集]評価
[編集]もともとこのゲームは正式な流通経路を通していないため入手が難しく、日本ではパソコン通信やインターネットなどの一部で、「不謹慎なゲームがある」と口コミ的な話題となるにすぎない物であった。しかし、1990年代後半より実在の事件・事故を題材にした不謹慎ゲームのひとつとしてマスコミで記事となったり、『ゲームラボ』などアンダーグラウンド的な世界を紹介する雑誌・書籍でたびたび興味本位に紹介された事や、2000年代以降も『The Angry Video Game Nerd』(AVGN)などの日本国内外の著名なYouTuberにより「史上最悪のクソゲー」の一つとして度々紹介されている事などもあり、正式な流通経路を介さないゲームとしては知名度の高いゲームとなった。
なお、雑誌やウェブサイト等で紹介される際には「香港(あるいは東南アジア)で製作された、任天堂非公認のカートリッジソフト」として紹介されることが多い。だが元来は日本国内で開発され、マジコン用フロッピーディスクを媒体として頒布された同人ソフトであり、東南アジア方面で出回るROMカートリッジに焼き付けられたものはデッドコピー品である。これは、このソフトの製作者であるとされるクーロン黒沢の著書に記述が見られる。
少なくとも2015年3月の時点では在庫切れとなっている[21]。
脚注
[編集]- ^ 台湾企業のような名前ではあるが、住所は東京都。この住所は2017年現在は河合塾新宿校となっている。
- ^ 両作とも中国人民解放軍が自機で、天安門に押し寄せる中国全人民や西側諸国の軍を一人残らず撃退するというもので、戦車が自機であるSpecial天安門の方が六四天安門事件の実態に近い内容となっている。なお、ゲームオーバーとなると天安門が民衆に占拠され中国民主化運動が完遂されるという、天安門事件に対する批判が込められているが、一般的には不謹慎ゲームの一つに分類されている。
- ^ 起動時に字幕言語を選択する際のアイコンと同じ物である。なお、陳が一定時間無敵状態となるアイテムもあるが、それは覚醒剤などの麻薬を示すと見られる注射器である。
- ^ 「私の好きな天安門(我愛北京天安門)」のサビ部分がループする。この事はKUSO文化を語る際によく紹介される。w:en:I_Love_Beijing_Tiananmen(英語版ページ)も参照されたい。
- ^ 音楽は黒沢氏の所有していた、中国製の音楽テープからとのこと。
- ^ 陳が攻撃を受けゲームオーバーとなった際や、敵キャラを撃破した際に表示される。なお、敵の撃破時には大気中核実験時の映像から無断借用されたとみられるキノコ雲のアニメーションが表示されてから死体画像が現れる。
- ^ 1992年8月6日との日付表記がある。「新・デスファイルIII」に収録されているボスニア・ヘルツェゴビナ紛争のフィルムの一コマから引用された、同戦争の民間人犠牲者の死体の画像とされている。
- ^ 字幕を英語表記とした際、中国人に対する形容詞に明確にFワードが用いられている等。
- ^ 過去に改造ツールを使ってスコアを変えたユーザーから苦情が来たそうだが、「ズルすると見られない」と誤魔化した。
- ^ 本作を含む同社のゲームソフトを販売する店舗の募集や、同人ゲームの開発者に対して本作同様の流通経路で自身の同人ゲームの販売を行わないかと呼びかける内容である。
- ^ この時陳に依頼を行っている香港政庁側の人物として、最後の香港総督クリストファー・パッテンの写真が無断で借用されている。
- ^ 本作の販売時に制作された販促ポスターとされる画像の他、香港政庁が陳に依頼を行う場面にて、『燃えよドラゴン』主演時のものとみられるリーの写真が無断で借用されている。
- ^ この時陳の人物像として用いられているジャッキー・チェンの立ち絵は、『スパルタンX』と『プロジェクトA』主演時の映像から無断で借用されたものである。
- ^ 英語版では「"Tong Shau Ping"」(トン・シアオピン。本来の英語読みの鄧小平のスペルは「Deng Xiaoping」=ダン・シャオピン)と、北京語読みでのスペルに変名されて翻訳されている。なお、鄧本人は開発当時の1995年現在ではまだ存命中であり、実際の命日は1997年2月12日で、奇しくもゲームの設定年で、香港返還直前に亡くなるというストーリーを予言した形となった。
- ^ 正確にはスタッフロールには、彼の名前そのものは明記されていない。
- ^ ただし、黒沢は何のゲームなのかまでは明言していない。
- ^ その中国人は、本国をネタにしたこのゲーム製作協力にビクビクしていたという。
- ^ 正規のソフトメーカーで企画に加わる事はあった
- ^ シリコングラフィックスあるいは創価学会インタナショナルのことを指しているとみられる。
- ^ クレジット表記による。
- ^ クーロン黒沢のtwitter 2015年3月30日