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重言

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
馬から落馬から転送)

重言(じゅうげん、じゅうごん)は、日本語の「から落馬する」「頭痛が痛い」のように、同じ意味の語を重ねる表現である。多くは誤用と見なされるが、意味を強調したり語調を整えるため[1]、あるいは理解を確実にさせるため[2]に、修辞技法として用いられる場合もある。二重表現重複表現ともよばれる[注釈 1]

「びっくり仰天」「むやみやたら」[4]「好き好んで」などは、意味の重複が語呂の良さを伴うことから敢えて用いられる。

その一方、「違和感を感じる」のように辞書類では問題の無い表現[注釈 2]とされながら、問題のある表現[注釈 3]とされる場合もあり、使用の是非について一致した見解が持たれていない表現もある[5]

えんどう豆」[6]青海湖」「しし肉」などは、語源的には重複表現だが、慣用的に誤用とは見なされない[注釈 4]

外来語においてはあまり馴染みのない語の性質を表すために意図的に用いられることもある。例えば日本語ではアム・ダリヤ(ダリヤは大河の意)を「アムダリヤ川」とすることで川であることを簡潔に示し、英語では荒川を指して "Arakawa river" などと表現することがある。

日本語における重言

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日本語の重複

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  • 馬から落馬する[注釈 5]
  • 頭痛が痛い
  • 満天の星空
  • 学校へ登校する
  • 電車に乗車する
  • アメリカへ渡米
  • 訃報のお知らせ
  • 事前予約、事前予想、事前予測、事前予知、事前予報、事前予習など - 「予」は、「事前に」という意味である。
  • 暇の合間
  • 犯罪を犯す
  • 一番最初
  • 元旦の朝[7] - 「元旦」は元日の朝を指す。
  • まだ未定
  • 従来から[8] - 「従来」のみで「以前から」を意味する。
  • あとで後悔する
  • 射程距離[9] - 「程」は、「距離」という意味である。

日本語と外来語の重複

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  • 排気ガス - 気はガスという意味である。排気、排ガス、排出ガスが正しい。
  • 太平洋ベルト地帯 - ベルトと帯が同義。
  • チゲ鍋 - チゲは朝鮮語で「鍋」の意。
  • ハングル文字 - グルは朝鮮語で「文字」の意。
  • クーポン券 - クーポン(フランス語: coupon)に「券」の意味がある。
  • アイヌ人 - アイヌはアイヌ語で「人」の意。
  • ニポポ人形 - ニポポはアイヌ語で「人形」の意。
  • 3人トリオ - トリオには3という意味を含む。ほかにも「4人カルテット」、「5人クインテット」、「6人セクステット」、「2人デュオ」、「2人ペア」、「1人ソロ」など。
  • 世界的パンデミック - pan- は、「全ての」という意味の接頭辞であり、感染症の世界的大流行をパンデミックという。世界的でない流行はパンデミックではない。
  • サハラ砂漠 -サハラはアラビア語で「砂漠」の意。
  • 二条城 - 英語の案内図やホームページのURLなどで「NIJO-JO CASTLE」と表記されておりこれを訳すと「二条城城」となってしまう。
  • ゴビ砂漠 - ゴビはモンゴル語で「砂漠」の意。

外来語と外来語の重複

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固有名詞における重言

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商標など

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地名など

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「Higashioji-dori Avenue」という表記の看板

漢語における重言

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漢語において、同じ漢字を重ねた「堂々」「悠々」などの熟語を、畳語の意で重言という。これは日本語でいう重複表現とは異なる。

また、類義の漢字を重ねて意味を明確化することもよくあり、本項で多く用いてきた「重複」もこれに当たる。

また、荘子は、自著『荘子』にて寓言中国語版、重言、巵言という3つの文章術を提示したが、ここでいう重言とは古の偉人の言葉を引用して説得力を増す話法を指し、同義語の重複表現とは無関係である。

英語圏における重言

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頭字語などの略語や熟語を使うときに、元の言葉の一部である単語を重ねて使ってしまうことが、RAS症候群として揶揄されている。RASは「Redundant Acronym Syndrome(冗長頭字語症候群)」の略である。

なお、英語では例えば「dream」自体、夢を見るという自動詞であるが、「腹痛が痛い」にあたるような「dream a dream」のような言い回しも誤用ではない。

日本語と同様、外来語でその単語の中に含まれている意味を重複することはある。例としてcongaコンガ、djembeジャンベ、bongoボンゴはいずれもdrum(太鼓)としての意味があるが、conga drum、djembe drum、bongo drumsと表記される。

脚注

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注釈

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  1. ^ 有名な重言としては長嶋茂雄が引退時に述べた「我が巨人軍は永久に不滅です」がある[3][出典無効]
  2. ^ 『明鏡国語辞典』3版(大修館出版)や『三省堂国語辞典』8版は、意味を強調するための表現とする説を採っている。
  3. ^ 文化庁・文化審議会国語分科会「新しい『公用文作成の要領』に向けて」(2021年)では、冗長さを避けるために「むやみに用いないようにする」表現とされる。
  4. ^ きつねうどん」のように、地域によって意味が重複するかどうかの認識に差がある場合もある
  5. ^ 浄瑠璃鑓の権三重帷子(やりのごんざかさねかたびら)』(近松門左衛門作、1717年初演)で重言という言葉が使われる。この作品に何度か出てくる「馬から落ちて落馬」というフレーズは有名で、典型的な重言の例として頻繁に言及される。

    の駒にもけつまづき、馬から落ちて落馬いたしたと、片言やら重言やら

    これが現代にも伝わり、「古の昔、武士の侍が―」と頭に挿入される言葉遊びになった。

出典

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  1. ^ 『日本語大辞典(第二版)』
  2. ^ 『新版日本語学辞典』
  3. ^ 私のタイガース《番外編》1998.10.3【祝・続投!長嶋さんはエライ/スポーツえらい人グランプリ】[リンク切れ] 0分58秒当たりから「丁寧だからエライ」を参照
  4. ^ 『日本語解釈活用事典』
  5. ^ 文字にすると違和感が増す「違和感を感じる」”. 毎日ことばWEB. 毎日新聞社 (2022年1月4日). 2023年2月3日閲覧。
  6. ^ 『広辞苑(第5版)』
  7. ^ 知っておきたい「元旦」と「元日」の違い”. FUJISOFT. 2021年1月1日閲覧。
  8. ^ 「従来から」→「従来」「以前から」”. 毎日ことば. 毎日新聞社 (2020年8月19日). 2021年2月2日閲覧。
  9. ^ 【日本語メモ】「射程距離」は重言です”. 産経新聞社 (2019年3月31日). 2021年5月25日閲覧。
  10. ^ 国立国会図書館サーチR100000002-I000011113831

関連項目

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