346型レーダー
346型レーダーのアンテナ部 (052C型駆逐艦の搭載機) | |
種別 | 3次元レーダー |
---|---|
目的 | 多機能 (捜索・捕捉・追尾) |
開発・運用史 | |
開発国 | 中国 |
就役年 | 2004年 |
送信機 | |
形式 | 半導体素子 |
周波数 | |
アンテナ | |
形式 | アクティブ・フェーズドアレイ (AESA; 4面固定式) |
探知性能 | |
探知距離 |
346型レーダー(中国語: 346型雷达、制式名: H/LJG-346)は、中国人民解放軍海軍で採用されている3次元レーダー(フェーズドアレイレーダー)。駆逐艦や航空母艦の多機能レーダーとして搭載されている。
来歴
[編集]中国人民解放軍海軍は、053K型フリゲート(江東型)に搭載した381型レーダーにより、3次元レーダーの艦上運用に着手した[2]。同機はその後、旅大型駆逐艦の一部にも搭載されたが[2]、性能的には不足だったのか、2000年代以降に就役した艦隊防空ミサイル搭載のミサイル駆逐艦では、ロシア製のフレガートMAE-5(あるいはその山寨版の382型)が搭載された[3]。
一方、これと並行して、国産の多機能レーダーとして開発されたのが本機である[1]。中国では、1989年より、当時アメリカ合衆国で建造されていたアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦に搭載されたAN/SPY-1を技術指標としてフェーズドアレイレーダーの技術論証に着手、1994年にはSバンドを使用した送受信(T/R)モジュールの開発に成功し、1995年には艦載用フェーズドアレイレーダーの開発を正式に要求した[4]。しかしモジュールの小型化やその最適配置、冷却などの技術的課題が山積しており、初の搭載艦となる052C型駆逐艦「蘭州」の建造は2000年から開始されたものの、レーダーの完成はその7年後となった[4]。
設計
[編集]052C型駆逐艦(蘭州級)で、4面固定式のアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナを用いた多機能レーダーとして搭載されたのが346型であった[1]。アンテナ1面は、Sバンドのマイクロ波を送受信する捜索用の部分(4メートル四方)と、その両側に配置されてCバンドのマイクロ波を送受信する火器管制用の部分(縦4メートル×横0.2メートル)で構成されており、火器管制用の部分はHHQ-9艦対空ミサイルの誘導を担当していた[1]。また、これら全体がカバー(レドーム)で覆われていたが[1]、冷却系が空冷式であったことから、その効果を得られるように、カバーの中央部が盛り上がったかまぼこ型の形状となっていた[5]。レーダー最大距離は400キロメートル以上とされる[1]。ただしそれでも、動作中にアレイ面を均一に冷却できないという問題があり、探知距離や動作時間に制限が生じたとされる[4]。
052D型駆逐艦(昆明級)では、発展型の346A型が搭載された[1]。これは送受信モジュール数を増加するとともに、冷却系を液冷へと変更することで、送信出力を増大している[1]。また液冷化に伴い、AESAアンテナを覆うカバー(レドーム)も平面に近い単純な外観となった[5]。
055型駆逐艦(南昌級)ではアンテナ面積を40パーセント拡大した346B型が搭載されており、探知距離は(ステルス機を標的とする場合も含めて)60パーセント延伸されたとされる[6]。アメリカ海軍では、総合的にみて自軍のAN/SPY-6よりも優れている可能性を指摘している[7]。
-
052D型駆逐艦の上部構造物。艦橋構造物の四方に346A型レーダーのアンテナが固定設置されている。
採用国と搭載艦
[編集]脚注
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- Caldwell, Daniel; Freda, Joseph; Goldstein, Lyle J. (2020), “China's Dreadnought? The PLA Navy's Type 055 Cruiser and Its Implications for the Future Maritime Security Environment”, China Maritime Report (U.S. Naval War College) (No.5)
- Friedman, Norman (1997), The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998, Naval Institute Press, ISBN 9781557502681
- 大塚好古「055型駆逐艦 (特集 中国海軍) -- (注目の中国軍艦)」『世界の艦船』第945号、海人社、94-97頁、2021年4月。 NAID 40022501808。
- 薗田浩毅「アーレイ・バーク級のライバル 中華イージスを分析する(特集 アーレイバーク・ファミリー)」『世界の艦船』第1028号、海人社、102-105頁、2024年11月。
- 多田智彦「現代の艦載兵器(第23回)レーダー(その3)」『世界の艦船』第959号、海人社、148-155頁、2021年11月。 NAID 40022709075。
- 陸易「中国軍艦のコンバット・システム」『世界の艦船』第748号、海人社、94-97頁、2011年10月。 NAID 40018965309。
- 陸易「中国 (特集 最新の洋上防空システム)」『世界の艦船』第889号、海人社、98-101頁、2018年12月。 NAID 40021712982。