7Cs COMPASS MODEL
7Cs COMPASS MODEL(ナナシー・コンパスモデル)は、「共生マーケティング」のフレームワークの一つで、マーケティングミックス[1][2]要因を7つのC (Corporation, Commodity, Cost, Communication, Channel, Consumer, Circumstances) とコンパスのNWSE (Consumer: Needs, Wants, Security, Education, Circumstances: National and International, Weather, Social and Cultural, Economic) で説明するというもの。
発想の出発点は1972年度の早稲田大学の修士論文に清水公一によって[3]に書かれたマーケティングミックスの4Cである。その後7Cs Compass Modelに発展し、1979年に日本商業学会で発表され、1981年に日経広告研究所報80号にコ・マーケティングのフレームワークとして位置づけられた[4]。提唱された当時は高度成長時代であり、関心を持つ人は殆どいなかったが、共生時代の今日になって急浮上してきた。
7Cs COMPASS MODEL はウィキペディア他言語版(英、独、仏、西、中、韓、タイ語、クメール語(カンボジア)、アラビア語、マジャール語(ハンガリー)、チェコ語、ポーランド語)でも「マーケティングミックス」の中で3番目のモデルとして掲載されている[5][6]。今日、アメリカ、中国、韓国、台湾でも7Cs COMPASS MODELを紹介した書物が読まれ、関心を持たれている[7][8][9]。日本でもある菓子メーカーの副会長は講演で、これからは4Pよりもこのモデルの中心を成す4C(commodity、cost、channel、communication)が重要であると言っている[10]。アメリカ等ではブライアン・ソリス等がこのモデルを引用紹介している[11][12][13][14]。
概要
[編集]経済の低成長時代においては、売上げと利益を最優先するのではなく7つのCとコンパスの針が示す4方位(NWSE)で始まるキーワードを遂行することで「信頼」を得れば、利益は後からついてくるという経営哲学に基づいたマーケティング・モデルである。このモデルは4重の同心円からなり、中心に企業があり、2番目の円が4等分され4Cが配置されている。その外側に消費者、一番外側に外部環境がある。そして、消費者と外部環境にはそれぞれコンパスの針が4方位を指し、針の先にN,W,S,Eと表示してある。
7Cs COMPASS MODEL (図参照 Courtesy: © Koichi Shimizu)
- 第1C:同心円の中心には、マーケティング活動の当事者としてのCorporation(企業、団体)があり、C-O-Sつまり、Competitor(競合他社)、Organization(組織)、Stakeholder(株主や愛顧顧客といった利害関係者)を踏まえて共生マーケティングを遂行する。企業目標は信頼を利益に優先させ、共生と競争を調和させること。
- 第2C~第5C(4C):その外周には4等分されたマーケティングミックスの4Cがある。
- Commodity(商品:ラテン語で「共に便利な」「共に快適な」の意味があることから消費者と共に創る「共創商品やサービス」。造って売り出すというProduct outではなく、消費者から出発するoutside in型商品も含めた共創(Co-creation)商品やサービス。だから信頼が得られる。2010年に流行ったコモディティ化(Commoditization)によって「コモディティ」は単なる日用品から一般商品へとその意味を拡大した。
- Cost(トータルマーケティングコスト)値段(Price)だけでは狭い。生産コスト、販売コスト、そして広くは地球環境コストも含める。
- Channel(流通経路)場所(place)より、運河canal)から来た、チャネルのほうが、メーカー・卸・小売のダイナミックな流れで「繋ぐ」を表している。ネットとリアルの融合もチャネルなら説明できる。
- Communication(コミュニケーション、マーケティング・コミュニケーション)広告のホリスティック・アプローチから見ても「広告はコミュニケーション」というのが広告の立場。コミュニケーションであればIMCをマーケティングミックスに位置づけることができる。マーケティングの立場で使っている4PのPromotionでは売るためのメッセージといった狭い意味になってしまう。マーケティングコミュニケーションには広告、販売促進、パブリシティ、PR,CI,ダイレクトマーケティング、企業内コミュニケーション、IMC,SNS等がある。
- 第6C:その外側にConsumer(消費者、生活者)が企業活動を見張る形で存在し、さらにその外側には企業にとって統制不可能な第7のC、Circumstances(外部環境)がある。これらはそれぞれ4方位を示すコンパスの針N.W.S.Eで始まるキーワードで考慮要件を示している。消費者へのコンパス、NWSEは、
- 第7C:外部環境のコンパス、NWSEは、
以上の7Cs COMPASS MODELは、"con,com,co"つまり「共に」で始まるキーワードで組み立てられており、これら7つのCを足すと、「信頼」(Confidence)が得られ、成功するというもので、これは企業の社会的責任(CSR)や顧客満足(CS)を重視する共生マーケティングのチェックリストとして今日利用できる。このモデルの中心となる4C理論は、このモデルの20年後にノースカロライナ大学のロバート・ローターボーン(1993)[15]も、IMCをマーケティングミックスに位置づけるために別の形(Consumer, Cost, Communication, Convenience)であるが提唱している。7Cs Compass Modelは国連で決めたSDGsにも対応している共創推進モデルである。
脚注
[編集]- ^ Neil H. Borden and Martin V. Marshall,(1959), "Advertising Management--Text and Cases," revised edition, Richard D. Irwin, Inc., pp.23-24.
- ^ E.Jerome McCarthy(1960)"Basic Marketing,"Richard D.Irwin,Inc.
- ^ 清水公一「広告媒体モデルにおける露出処理の開発」1972年度早稲田大学商学研究科修士論文。
- ^ 清水公一(1981)「コ・マーケティングにおける広告、CI等の位置づけ」、『日経広告研究所報』VOL80、第15巻第5号、日経広告研究所、16-23ページ。
- ^ 胡暁云他訳(2005年)「广告理論与戦略」(第十三版)中国語版、北京大学出版社、清水公一著、p.62-79.ISBN 7-301-08666-0
- ^ 清水公一(1998年)『ビジュアル-広告の基本』日経文庫、朝鮮語版(1998年)ISBN 89-956207-1-4.
- ^ 胡暁云、張健康著(2007年)「現代広告学」中国版、浙江大学出版社、p.353、ISBN 978-7-308-05219-1.
- ^ 劉宗其、劉光雄訳(2001年)「廣告理論與戦略」第九版(台湾版)、亞太出版社,清水公一著1,p.86-102.ISBN 957-8264-65-8.
- ^ 黄振家、張永慧訳(2008)「広告理論與戦略」第14版(台湾版)、亞太出版社,清水公一著、p.82-102、ISBN 978-986-7809-47-6.
- ^ 日経広告研究所(2006年)「広告に携わる人の総合講座、平成18年版」、日本経済新聞社、P.307-321。「菓子メーカーの副社長がこれからは4Pよりも4Cが重要と言っている」
- ^ Brian Solis(2011) 「Engage!: The Complete Guide for Brands and Businesses to Build, Cultivate, and Measure Success in the New Web」John Wiley & Sons, Inc.pp.201-202.
- ^ Ross Gordon (2012)"Re-thinking and re-tooling social marketing mix, "Australasian Marketing Journal 20,pp.122-126.
- ^ Meliesa Florentin Gunawan and Leo Aldianto (2013)"Box for Living Business Strategy 7Cs Compass Model Analysis and the Implementation of Business Model Canvas," The Indonesian Journal of Business Administration, pp.1263-1288.
- ^ Jeff French, Ross Gordon (2015)"Strategic Social Marketing,"SAGE Publications Inc.,p.90.
- ^ Don E. Schullz, Stanley I. Tannenbaum, Robert F. Lauterborn(1993)“Integrated Marketing Communications,”NTC Business Books, a division of NTC Publishing Group.
参考文献
[編集]- 日経広告研究所編(1993)「広告を知るための百冊の本」日本経済新聞社,p.28-29.ISBN 4-532-64014-8
- 小林太三郎監修、嶋村和恵・石崎徹共著(1997)「日本の広告研究の歴史」電通刊,p56,p.266.ISBN 4-88553-097-0
- 清水公一著(2019)『広告の理論と戦略』、第19版、創成社、ISBN 978-4-7944-2435-8 C3034
- 清水公一著(2022)『サステナブル時代のコ・マーケティング 7Cコンパスモデル』五絃舎、ISBN 978-4-86434-156-1