ジスルフィラム
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
胎児危険度分類 |
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薬物動態データ | |
代謝 | 肝臓においてジエチルチオカルバミン酸 |
半減期 | 60-120時間 |
データベースID | |
CAS番号 | 97-77-8 |
ATCコード | N07BB01 (WHO) P03AA04 (WHO) |
PubChem | CID: 3117 |
DrugBank | APRD00767 |
KEGG | D00131 |
化学的データ | |
化学式 | C10H20N2S4 |
分子量 | 296.543 g/mol |
ジスルフィラム(Disulfiram)とは、硫黄を含む有機化合物である。ゴムの加硫に使用されるほか[1]、アルコールを摂取すると二日酔いに似た不快感をもたらす抗酒薬である。
別名、テトラエチルチウラムジスルフィド[1]。抗酒薬としての商品名はノックビン、欧米ではアンタビュース(Antabuse, Antabus)の名で市販されており、日本ではこちらの名称でも知られている。
歴史
[編集]1881年に初めて合成されたことが報告された。当初は、ゴムを溶けにくくする加硫加工に広く使われていた。ゴム製造工場の作業員たちが酒に弱くなることが1937年に報告され、1948年に実験などを通してアルコールに弱くなる性質が明らかになった[2][3][4]。
効能・効果
[編集]慢性アルコール中毒に対する抗酒療法。本剤の効果は、服用後、少なくとも14日間は持続し、長期服用で耐性獲得することはなく逆にアルコールに対して敏感になる[5]。
基本的にはシアナミドの効果が現れないアルコール依存症患者への適用となる。
- アルコール依存症以外への研究
作用機序
[編集]本剤はアルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害するので肝臓におけるエタノール(エチルアルコール)代謝を抑制し、悪酔いの原因となるアセトアルデヒドを体内に蓄積させる。このため少量の酒でも苦しい目に遭い、断酒、節酒の効果がもたらされる。
なお、ジスルフィラムはアルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害する代表的な物質として知られており、ジスルフィラム以外の物質による同じ阻害作用をジスルフィラム様作用という。
注意事項
[編集]本剤を服用時は、嗜好品である酒を飲まなくても、奈良漬や酢のようなエタノールを含む食品や、少量の薬用酒を摂取した程度でも、悪酔いすることがある。また、アルコールを含む化粧品などに対しても反応を起こす可能性がある[5]。
この治療では、アルコールを飲むために断薬してしまう傾向があるため、患者や家族などの同意と認識が重要となる[14]。
まれに視神経に障害を起こすが、服用を中止するとゆっくり回復し、最終的には完治する[15]。
カフェインの代謝が阻害される効果も報告されている[16]。
出典
[編集]- ^ a b “職場のあんぜんサイト:化学物質:テトラエチルチウラムジスルフィド(別名:ジスルフィラム)”. 厚生労働省 anzeninfo.mhlw.go.jp. 2023年2月21日閲覧。
- ^ “From Disulfiram to Antabuse: The Invention of a Drug”. Bulletin for the History of Chemistry 33 (2): 82–88. (2008) .
- ^ Clair, H. R. St (1991). “25 Disulfiram (Antabuse)” (english). Recognizing Alcoholism and Its Effects: 82–83. doi:10.1159/000420390 .
- ^ 小片 重男「柿の実のアルコール酩酊への効果」『日本釀造協會雜誌』第71巻第7号、1976年、488–495頁、doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.71.488、ISSN 0369-416X。
- ^ a b “Antabuse® (disulfiram tablets USP) IN ALCOHOLISM”. dailymed.nlm.nih.gov. 2023年2月21日閲覧。
- ^ Jiao, Yang; N. Hannafon, Bethany; Ding, Wei-Qun (2016-10-03). “Disulfiram';s Anticancer Activity: Evidence and Mechanisms” (英語). Anti-Cancer Agents in Medicinal Chemistry 16 (11): 1378–1384. doi:10.2174/1871520615666160504095040 .
- ^ Shirley, Debbie-Ann (2021年). “Drug Repurposing of the Alcohol Abuse Medication Disulfiram as an Anti-Parasitic Agent”. Frontiers in Cellular and Infection Microbiology. doi:10.3389/fcimb.2021.633194/full. 2023年2月21日閲覧。
- ^ “Drug Used to Treat Alcoholism Shows Promise for Anxiety, Study Results Show” (英語). Pharmacy Times. 2023年2月21日閲覧。
- ^ “アルコール依存症治療薬「ジスルフィラム」が抗不安様作用を示すことを発見~新たな作用機序を有する新規治療薬の実現に期待~|東京理科大学”. 東京理科大学. 2023年2月21日閲覧。
- ^ Rasmussen, Thomas A.; Lewin, Sharon R. (2016-07). “Shocking HIV out of hiding: where are we with clinical trials of latency reversing agents?” (英語). Current Opinion in HIV and AIDS 11 (4): 394–401. doi:10.1097/COH.0000000000000279. ISSN 1746-630X .
- ^ “A key to restoring sight may be held in a drug that treats alcoholism” (英語). URMC Newsroom. 2022年4月13日閲覧。
- ^ “Retinoic acid inhibitors mitigate vision loss in a mouse model of retinal degeneration”. Science Advances 8 (11): eabm4643. (March 2022). Bibcode: 2022SciA....8M4643T. doi:10.1126/sciadv.abm4643. PMC 8932665. PMID 35302843 .
- ^ “A drug once used to treat alcoholism may cure retinal degeneration” (英語). interestingengineering.com (2022年3月19日). 2022年4月13日閲覧。
- ^ Wright, Curtis (1990年6月). “Disulfiram treatment of alcoholism” (英語). The American Journal of Medicine. pp. 647–655. doi:10.1016/0002-9343(90)90534-K. 2023年2月21日閲覧。
- ^ Watson, C. P. (1980年7月19日). “Disulfiram neuropathy”. Canadian Medical Association Journal. pp. 123–126. 2023年2月21日閲覧。
- ^ Beach, Cynthia A; Mays, Dennis C; Guiler, Robert C; Jacober, Cynthia H; Gerber, Nicholas (1986-03). “Inhibition of elimination of caffeine by disulfiram in normal subjects and recovering alcoholics”. Clinical Pharmacology and Therapeutics 39 (3): 265–270. doi:10.1038/clpt.1986.37. ISSN 0009-9236 .
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 国際化学物質安全性カード ジスルフィラム (ICSC:1438) 日本語版(国立医薬品食品衛生研究所による), 英語版