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DSダイアグラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

DSダイアグラム(DS-diagram)[注 1]は、数学における3次元多様体の表現方法の一つ。3次元多様体を一個の多面体(3次元球体の境界)の面同士を貼合せたものとして表現するとき、その貼合せ写像の特異点(分岐点)を球面上の3-正則グラフとして表現したものである[3]

DSダイアグラムは、曲面(コンパクトな2次元多様体)をその辺同士の貼合せとして表示する基本多角形の3次元的なアナロジーとなっている。基本多角形が記号列によって内容を一意に表現可能であるのと同様に、DSダイアグラムにおいてもEサイクルに注目することによって記号列で表現することが可能である。

定義

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Simple polyhedron

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2次元の有限多面体は、その任意の点に以下のの開部分集合に同相な近傍が有るならば、simple polyhedron(又はclosed fake surface[4])と呼ばれる[5][6][7]

及びに対応するの点(特異点)の集合をにより表す。その中で、特にに対応するの点(頂点)の集合をにより表す。

DSダイアグラム

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に埋め込まれた3-正則グラフとする。 あるsimple polyhedron が存在して、以下の意味で局所的な同相写像が存在するとき(の頂点の集合を表す)、DSダイアグラムという[5]として特に頂点が無く辺しか存在しないもの(hoop)も認める。

Eサイクル

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DSダイアグラムに対し、サイクルの2つの連結成分とする。は以下を満たすときEサイクル(E-cycle)と呼ばれる[注 2][8][5]

  1. はそれぞれ全単射

Eサイクルが存在し具体的に指定されたDSダイアグラムを、Eサイクル付DSダイアグラム(DS-diagram with an E-cycle)と呼び、等と表す。

Eサイクル上の各頂点に、それが張り合わされる頂点がのどちらに存在するかに応じて+/-の符号を付すことで、Eサイクル付DSダイアグラムを復元可能な記号列を作ることができる[注 3]。この記号列をのarrangementと呼び、等と表す。

3次元多様体との関係

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Fig. 1. を表すDSダイアグラム。

DSダイアグラムに対し、の定義域をに自然に拡張することで、一つの閉3次元多様体が対応する。

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  • が空グラフのときは、DSダイアグラムはを表す。
  • Fig. 1は頂点がなく辺のみを有するグラフに対するDSダイアグラムで、を表す[5]

関連概念

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3次元多様体のブロック数

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Eサイクル付DSダイアグラムのarrangementにおいて、連続する+符号の頂点の部分列で、その両端は-符号の頂点に接しているものを正ブロック(positive block)と呼ぶ。の異なる全ての正ブロックの個数をのブロック数(block number)と呼び、により表す[5]

同じ多様体を表す全てのEサイクル付DSダイアグラムのブロック数の内、最小のものをその多様体のブロック数と定義する[5]。即ち

ブロック数は明らかに多様体の位相不変量であり、更にを除いてHeegaard種数に一致することが知られている[9]

脚注

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注釈

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  1. ^ ’DS’は’Dehn-Seifert’[1]又は’developed shape’の略とされる[2]
  2. ^ ’E’はequatorに因む。
  3. ^ Whitneyの定理により3-正則グラフの球面への埋め込みは、球面のisotopyを除いて一意である。

出典

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  1. ^ Ishii, I., Ishikawa, M., Koda, Y. et al. (2023). “Positive flow-spines and contact 3-manifolds”. Annali di Matematica. doi:10.1007/s10231-023-01314-1. 
  2. ^ 山下正勝「DS-diagram と Heegaard diagram(低次元トポロジーの諸問題と最近の成果)」『数理解析研究所講究録』第636巻、京都大学数理解析研究所、1987年12月、91-107頁、CRID 1050001335635897856hdl:2433/100121ISSN 1880-2818 
  3. ^ Ikeda, Hiroshi; Yoshinobu, Inoue (1985-12). “Invitation to DS-diagrams” (PDF). Kobe journal of mathematics (神戸大学) 2: 169-186. CRID 1571980077480491648. ISSN 02899051. http://www.ams.org/mathscinet-getitem?mr=87i:57010&return=pdf. 
  4. ^ H. Ikeda. Acyclic fake surfaces, Topology 10 (1971) 9–36. https://doi.org/10.18910/3551. 
  5. ^ a b c d e f ENDOH, Mariko; ISHII, Ippei (2005). “A new complexity for 3-manifolds”. Japanese journal of mathematics. New series (日本数学会) 31 (1): 131-156. CRID 1390282680235459584. doi:10.4099/math1924.31.131. ISSN 02892316. https://doi.org/10.4099/math1924.31.131. 
  6. ^ Matveev S. (2003). Algorithmic topology and classification of 3-manifolds, Algorithms and Computation in Mathematics, 9.. Springer-Verlag, Berlin 
  7. ^ Benedetti, R. and Petronio, C. (2006). Branched Standard Spines of 3-manifolds. Lecture Notes in Mathematics. Springer Berlin Heidelberg. ISBN 9783540683452. LCCN 97-7250 
  8. ^ IKEDA, H. (1986). “DS-diagrams with E-cycle” (PDF). Kobe J. Math. 3: 103-112. CRID 1571980075208942592. http://www.ams.org/mathscinet-getitem?mr=88f:57017&return=pdf. 
  9. ^ Yuya, Koda (2007-05). “Branched spines and Heegaard genus of 3-manifolds”. manuscripta mathematica (Springer Science and Business Media LLC) 123 (3): 285-299. CRID 1360292618894334208. doi:10.1007/s00229-007-0097-z. ISSN 0025-2611. https://doi.org/10.1007/s00229-007-0097-z. 

外部リンク

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