ドゥアラ語
ドゥアラ語 | |
---|---|
話される国 | カメルーン |
話者数 | 87,700人 (1982年) |
言語系統 | |
表記体系 | ラテン文字 |
言語コード | |
ISO 639-2 |
dua |
ISO 639-3 |
dua |
Glottolog |
dual1243 Duala[1] |
ドゥアラ語(Duala、Douala、Diwala、Dwela、Dualla、Dwala)はカメルーンに居住するドゥアラ族によって話されている言語である。ドゥアラ語はバントゥー語群に属する言語であり、ドゥアラ諸語と呼ばれる下位グループを構成している。
歴史
[編集]ドゥアラ語が現在のカメルーンで話されるようになったのは1650年のことで、話し手たちはコンゴ地域から後のドゥアラ市となるヴリ川(Wouri River)の河口(参照: en:Wouri estuary)へと移住してきた者たちである[2]。1845年には現在のドゥアラにおいてキリスト教の伝道施設が開設され、1875年までにカメルーンの多種多様な民族間でのリングア・フランカとして機能するようになった[2]。ドゥアラ語は現在カメルーン最大の都市であるドゥアラ市において交易・教会・教育・意思疎通(伝統的なトーキングドラム)といったあらゆる場面で用いられている[2]。
方言
[編集]Lewis, Simons & Fennig (2015) によればドゥアラ語には以下の4種類の方言が存在する。
- Bodiman
- Mungo (別名: Mongo、Mungu、Muungu)
- Oli (別名: Ewodi、Koli、Ouri、Uli、Wouri、Wuri)
- Pongo
正書法および音韻論
[編集]ドゥアラ語の正書法は次に述べるような経緯により成立した。バーゼルの福音主義派の宣教師たちがカール・マインホフ(Carl Meinhof)教授の助けを借りて、主に話し言葉を考慮した簡略化された音声表記を確立し、1901年に刊行した Male ma Peńa で使用して以来この方式が大方踏襲されてきた[3]。その後1955年になって Bete̱sedi ońola tila la bwambo ba Duala〈ドゥアラ語の正書法の規則集〉という仮綴じ本によりいくつかの修正が加えられ、ヨハネス・イットマン(Johannes Ittmann; 1939年にこの言語の文法書を刊行)、マンフレート・ンケンベ(Manfred Nkembe)、マルティン・イトンド(Martin Itondo)、パウル・ヘルムリンガー(Paul Helmlinger; 1972年にこの言語の辞書を刊行)からなる委員会による後の刊行物で確立された[3]。
ドゥアラ語のアルファベットは次の通りである: a、b、c、d、e、e̱、f、g、h、i、j、k、l、m、n、ṅ、ń、o、o̱、p、r、s、t、u、w、y[4]。このうち、
- 母音字 e̱ は /ɛ/、o̱ は /ɔ/ である[4]。
- 子音字 c および j は英語の John や church に見られるような破擦音である[4]。
- 子音字 g はいくつかの借用語を除き、必ず前鼻音化した状態で現れる(/ᵑɡ/)[4]。
- 子音字 ṅ は軟口蓋鼻音 /ŋ/ である[4]。
- 子音字 ń は硬口蓋鼻音 /ɲ/ である[4]。
- 子音字 w や y /j/ は半母音で母音間に見られる場合があるが、音韻には関係しない(例: uwe̱le̱ もしくは ue̱le̱ /ú(w)ɛ̀lɛ̀/〈訊く〉[注 1]; bele̱ye̱ もしくは bele̱e̱ /bèlɛ̀(j)ɛ̀/〈(誰かを) 呼ぶ〉)[4]。
- 母音間で現れる子音字 l は /d/ の異音である(例: judi あるいは juli /d͡ʑúdí/ ([d͡ʑúdí~d͡ʑúlí])〈お腹いっぱい〉)[5]。
Helmlinger (1972) では語ごとに高声調・低声調・上昇調(低-高の組み合わせからなるもの)・下降調(高-低の組み合わせからなるもの)の4種類の声調のいずれかが見られるとされている[5]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ Helmlinger (1972:x) では語釈が 'questionnaire'〈質問書〉とされているが、実際の項目(p. 502)では 'interroger, questionner; prêter, réclamer un dû' とされている。
出典
[編集]- ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Duala”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History
- ^ a b c Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2020). “Duala”. Glottolog 4.3. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History
- ^ a b Helmlinger (1972:ix).
- ^ a b c d e f g Helmlinger (1972:x).
- ^ a b Helmlinger (1972:xi).
参考文献
[編集]英語:
- Lewis, M. Paul; Simons, Gary F.; Fennig, Charles D., eds. (2015). "Duala". Ethnologue: Languages of the World (18th ed.). Dallas, Texas: SIL International.
辞書
[編集]- Dinkelacker, Ernst (1914) (ドイツ語). Wörterbuch der Duala-Sprache. Abhandlungen des Hamburgischen Kolonialinstituts, 16. Hamburg: Friederichsen, De Gruyter & Co.. NCID BA55693646
- Helmlinger, Paul (1972) (フランス語). Dictionnaire duala-français, suivi d’un lexique français-duala. Paris: Klincksieck. NCID BB02156271
- Johannes Ittmann, edited by E. Kähler-Meyer, Wörterbuch der Duala-Sprache, Dictionnaire de la langue duala, Dictionary of the Duala Language, Dietrich Reimer, Berlin, 1976. The preface evaluates 1 as terse, but good, while 2 has missing and erroneous tone marks. NCID BB02149924
関連文献
[編集]ドイツ語:
- Meinhof, Carl (1912). Die Sprache der Duala. Berlin: Dietrich Reimer. NCID BB0986087X
- Ittmann, Johannes (1939). Grammatik des Duala. Berlin: Reimer
関連項目
[編集]- リチャード・ボナ - カメルーン出身のミュージシャン。母語はドゥアラ語である(出典: Spooner, C.W. (2016). Yeah, What Else?: Essays, Memoirs, Poems, and Reviews. Bloomington, IN: iUniverse)。