ドルビーシネマ
ドルビーシネマ(英: Dolby Cinema)とは、ドルビーラボラトリーズが提唱するプレミアムシネマで、ドルビービジョンやドルビーアトモスといったドルビーが誇るテクノロジーをはじめ、特徴的なエントランスや デザイン上の特徴を兼ね備えている[1][2]。
世界枠での初導入作品は、2015年に発表された『トゥモローランド』であり、日本では2019年に発表された『轢き逃げ 最高の最悪な日』で初導入された。
歴史
[編集]ドルビーシネマが最初に導入されたのは、2014年12月18日にオランダのアイントホーフェンにあるJT(現在はVue)のBioscopen Cinemaであり、続いてスペインのバルセロナにあるCinesa La Maquinistaである[3]。ドルビーラボラトリーズは、Cinesa、Vue Cinemas、AMCシアターズ(2017年初頭までDolby Cinema at AMC、旧Dolby Cinema at AMC Primeとして知られる)[4]、Cineplexx Cinemas、Wanda Cinemas、Jackie Chan Cinema、Reel Cinemas、Odeon Cinemasとパートナー契約を結び[5]、ドルビーシネマを導入している[6]。
2017年5月26日、ドルビーはLes Cinémas Gaumont Pathéと契約を結び、ヨーロッパに新たに10カ所をオープンすると発表した。7カ所はフランスに、3カ所はオランダに設置される[7]。
テクノロジー
[編集]ドルビービジョン(DOLBY VISION)
[編集]従来の映像規格で課題だった黒表示時の光漏れを解決し、深い黒の表現を実現した。従来の劇場では暗い場面の表現で、白いスクリーンが薄明るく見えていたが、その問題を解決した。特に夜景や夜空などの描写で効果を発揮する。
100万:1のコントラスト比を実現するHDR映像規格である。制作機材から劇場のプロジェクターまで一貫してドルビービジョンの要件を満たす必要がある。
ドルビーアトモス(DOLBY ATMOS)
[編集]ドルビーシネマのもう一つの要素は、ドルビーラボラトリーズが開発したオブジェクトベースの立体音響フォーマットのドルビーアトモスである[8][9]。
各スピーカー毎の音声トラックを予め用意するのではなく、再生中に音素材の3次元的な位置関係を元に各スピーカーの出力を決定する。
劇場用と家庭用で様々な規格があるが、ドルビーシネマではDOLBY ATMOS for Theaterを採用する。このシステムは、観客の没入感を高めるため、最大64個のスピーカーを使用し、最大で128chのオーディオトラックを、各chの3次元パン情報とスピーカー位置を元にして音をミキシングして、劇場内のスピーカーに出力する[10]。
他のプレミアムシアターの規格よりもスピーカーの本数が多いため、定位の正確さは最高水準にある。
この新しい規格を採用した最初の作品は、2012年に公開されたディズニーとピクサーのアニメーション映画『メリダとおそろしの森』である[10]。
オーディオ・ビジュアル・パスウェイ(AVP)
[編集]ほとんどのドルビーシネマは、スクリーンへの入場口に映画に合わせた映像が表示されるようになっている。映像に表示されるのは、映画スタジオが特別に用意した映像で、映画が始まる前から鑑賞者を映画体験に没入させることを目的としている[11]。 映像は、エントランスの天井にある複数のプロジェクターを使用して映し出され、専用のソフトウェアを使用して、壁に沿ってさまざまな映像をマッピングしている。同様に、音声は入口の天井に設置されたスピーカーを使用して再生される[12]。
導入劇場
[編集]グローバルでは22社が採用し、400スクリーン程度が稼働している[2]。
日本
[編集]2018年11月23日にT・ジョイ博多に導入されたのを皮切りに2019年には4館が開業し、2024年4月時点では全国に10館が営業しているが、導入は都市部の映画館に限られ、非常に限られた数しかない。
長らく国内のドルビーシネマはティ・ジョイ系・松竹マルチプレックスシアターズ系の映画館が独占していたが、2023年にはTOHOシネマズも導入した。
以下の導入館のうち、T・ジョイ横浜とTOHOシネマズ ららぽーと門真、すすきの は設計の段階から導入を考え作られた劇場であるが、基本的に既存の通常スクリーンを改造した上で導入されている。
No. | 映画館名 | スクリーン 番号 |
所在地 | 運営 | 定員 | スクリーンサイズ | 導入日 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年 | 月日 | |||||||
1 | TOHOシネマズ すすきの | 10 | 北海道札幌市 | TOHOシネマズ | 263(2) | 非公開 | 2023年 | 11月30日 |
2 | MOVIXさいたま | (11) | 埼玉県さいたま市 | 松竹マルチプレックスシアターズ | 292(2) | 13.92m×5.80m | 2019年 | 4月26日 |
3 | 丸の内ピカデリー | (3) | 東京都千代田区 | 255(2) | 15×7.13m | 2019年 | 10月4日 | |
4 | 新宿バルト9 | 6 | 東京都新宿区 | T・ジョイ | 387+ (4) | 非公開 | 2022年 | 12月1日 |
5 | T・ジョイ横浜 | 4 | 神奈川県横浜市 | 325+(2) | 非公開 | 2020年 | 6月24日 | |
6 | ミッドランドスクエアシネマ | 5 | 愛知県名古屋市 | 中日本興業 松竹マルチプレックスシアターズ |
163(2) | 11.95m × 5.0m | 2019年 | 12月20日 |
7 | MOVIX京都 | (10) | 京都府京都市 | 松竹マルチプレックスシアターズ | 306(4) | 12.38m × 5.18m | 2020年 | 3月6日 |
8 | T・ジョイ梅田 | 1 | 大阪府大阪市 | T・ジョイ | 376+(2) | 非公開 | 2019年 | 6月28日 |
9 | TOHOシネマズ ららぽーと門真 | 6 | 大阪府門真市 | TOHOシネマズ | 234(2) | 非公開 | 2023年 | 4月17日 |
10 | T・ジョイ博多 | 9 | 福岡県福岡市 | T・ジョイ | 346+(2) | 非公開 | 2018年 | 11月23日 |
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “ドルビーシネマ: 完全なシネマ体験” (英語). www.dolby.com. 2020年2月24日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b 株式会社インプレス (2019年10月1日). “初のドルビーシネマ専用劇場、丸の内ピカデリー披露。4日オープン”. AV Watch. 2020年2月24日閲覧。
- ^ “Dolby launches advanced cinema experience”. Film Journal International. (3 December 2014). オリジナルの17 December 2014時点におけるアーカイブ。 17 December 2014閲覧。
- ^ “Dolby Cinema at AMC” (英語). www.amctheatres.com. 3 March 2017閲覧。
- ^ Archer, John (13 June 2018). “7 Dolby Cinema Sites To Open In The UK”. Forbes. 2023年7月9日閲覧。
- ^ “Dolby Cinema: The Total Cinema Experience”. www.dolby.com. 2016年6月4日閲覧。
- ^ “Dolby Cinema Expands in Europe With Les Cinemas Gaumont Pathe Deal | Hollywood Reporter”. www.hollywoodreporter.com (26 May 2017). 2023年7月9日閲覧。
- ^ Pino, Nick (August 28, 2017). “Dolby Atmos: The ins, outs and sounds of the object-based surround system”. TechRadar. December 27, 2017閲覧。
- ^ “Dolby Atmos Audio Technology”. www.dolby.com. 2016年6月4日閲覧。
- ^ a b “Dolby's Atmos technology gives new meaning to surround sound, death from above”. Engadget. 2016年6月4日閲覧。
- ^ “Dolby Cinema: The Total Cinema Experience”. Dolby.com (2015年7月17日). 2015年7月23日閲覧。
- ^ Sarah Mock (2016-04-12), Dolby Cinema AMC Prime Video Wall 2016年6月4日閲覧。