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etaoin shrdlu

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ETAOIN SHRDLUから転送)
1903年のニューヨークタイムズの紙面に登場したetaoin shrdlu(下から3行目)
1916年のデイ・ブック英語版の紙面における、etaoin shrdluを意図的に使用した例

etaoin shrdlu ([ˈɛtiɔɪn ˈʃɜːrdl][1], [ˈtɑːn ʃrədˈl][2]) とは、鋳造活字英語版組版を行なっていた時代に、組版職人の慣習から、英語の印刷物にしばしば登場した意味のないフレーズである。オックスフォード英語辞典ランダムハウスウェブスター完全版辞典英語版に掲載されている。これは、英語における文字の出現頻度の高い順に並べたものとほぼ一致する[3]

概要

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ライノタイプのキーボード。etaoin / shrdlu / cmfwyp / vbgkqj / xzという配列が2回(左側の黒いキーは小文字、右側の白いキーは大文字)現れる。その間の青いキーは記号と数字用である。
キーボードの左側(小文字側)を拡大したもの。etaoin / shrdluという配列が左端にあるのが見える。

組版鋳造機のキーボード(ライノタイプやインタータイプなど)上の文字配列は、動作の効率化のために、左上から出現頻度の高い順に並んでいた。そのため、概ねどのメーカーの鋳造機でもキーボードの左側から1列目・2列目が小文字のe-t-a-o-i-ns-h-r-d-l-uとなっていた。

打鍵操作をすると、ストックから活字の母型が、缶飲料の自動販売機のように垂直の筒の中を落ちてきて、一定の位置に順次置かれていく。1行分の組版が終わると鋳造部に移動し、活字合金が流し込まれて1行分が一体鋳造された版が出来る。使用済みの母型は解版されて、各文字のストックに自動的に戻される。このとき母型の側面に刻まれた形状によって機械は自動的に文字を判別するようになっている。母型はレールに沿って移動し、対応する文字の箇所を通過するときにストックに戻される。

入力ミスをしたとき、その場で訂正しようとすると、組版鋳造機の動作をいったん止めて、組み上がった母型の間違った部分を外して、母型を手動でストックに戻す、という一連の作業が必要になる。一字でも間違えれば訂正のために煩雑な手順を踏まねばならず、それよりも、行を改めたうえで一から正しく入力し直して原稿を完成させ、後から誤った行の活字だけを破棄した方が早くて楽だった。誤った行を終わらせる際に、キーの列に沿って指を走らせて、行の右端まで意味のない(しかし順序の決まった)文字列で埋めると、入力が簡単で、校正者が見つけやすいパターンとなる。そのような行は校正の際に取り除かれることになっていたが、見落とされて誤って印刷されてしまうことも時々あった。

ニューヨーク・タイムズ』の印刷工程における鋳造活字の使用の終焉(1978年7月1日)とコンピュータの導入を記録した、デイヴィッド・ローブ・ワイス (David Loeb Weiss) によるドキュメンタリー映画のタイトルはFarewell, Etaoin Shrdlu(さよならEtaoin Shrdlu)だった[2][4]

組版以外での用例

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このフレーズは、組版とは無関係の文脈でも時折用いられる。以下にその例を挙げる。

コンピュータ

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文学

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メディア

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音楽

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脚注

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注釈

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  1. ^ 日本語での訳題は、「エタオイン・シュルドゥル」(稲葉明雄訳、ハヤカワ・SF・シリーズ『わが手の宇宙』[9])、「諸行無常の物語」(小西宏訳、創元SF文庫『天使と宇宙船』[10])、「エタオインさわぎ」(星新一訳、サンリオSF文庫『フレドリック・ブラウン傑作集』[11])。
  2. ^ 日本語訳では「SHRDLUよ、人の巧みの慰みよ」

出典

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  1. ^ "etaoin shrdlu". Merriam-Webster. Encyclopædia Britannica. 2018年12月21日閲覧
  2. ^ a b Weiss, David Loeb (July 1, 1978). “Farewell, Etaoin Shrdlu”. New York Times. December 21, 2018閲覧。
  3. ^ Stoddard, Samuel. “Letter Frequencies”. Fun With Words. RinkWorks. December 21, 2018閲覧。
  4. ^ Farewell, Etaoin Shrdlu (Motion picture). New York City: Educational Media Collection/University of Washington. 2018年12月21日閲覧
  5. ^ Winograd, Terry. “How SHRDLU got its name”. Stanford University. December 21, 2018閲覧。
  6. ^ Courtois, Jr., Garth (August 7, 2008). “Am I old enough to remember keypunch cards? Umm, yeah...”. ababsurdo.com. December 21, 2018閲覧。
  7. ^ Weasel, Yah (February 12, 2014). “Let's Play Mavis Beacon Teaches Typing”. YouTube. December 21, 2018閲覧。
  8. ^ a b c Quinion, Michael. “etaoin shrdlu” (英語). World Wide Words. December 21, 2018閲覧。
  9. ^ フレドリック・ブラウン「エタオイン・シュルドゥル」『わが手の宇宙』早川書房編集部(編)、東京:早川書房〈ハヤカワ・SFシリーズ〉、1964年。55-87頁。全国書誌番号:64006365doi:10.11501/1672032、国立国会図書館/図書館送信参加館内公開。
  10. ^ フレドリック・ブラウン、小西宏(訳)「諸行無常の物語」『天使と宇宙船』、東京:東京創元社〈創元SF文庫〉、1993年。ISBN 9784488605025NCID BA3761075X。 注記:別題『Angels and spaceships』
  11. ^ フレドリック・ブラウン、ロバート・ブロック(編)星新一 (訳)「エタオインさわぎ」『フレドリック・ブラウン傑作集』、サンリオ 〈サンリオSF文庫〉、1982年。全国書誌番号:82021015NCID BA37834054
  12. ^ Authors : Killus, James P : SFE : Science Fiction Encyclopedia”. www.sf-encyclopedia.com. 2020年8月27日閲覧。 “……"Son of ETAOIN SHRDLU: More Adventures in Type and Space" for Asimov's with Sharon N Farber, Susanna Jacobson and Dave Stout in June 1981…… (Asimov's =New York : Davis Publications 発行の雑誌 "Isaac Asimov's Science Fiction"。)”
  13. ^ Branden, Bruno van (2018年1月5日). “Etaoin & Shrdlu — How a publisher found its name.” (英語). Medium. 2020年8月27日閲覧。 “……In 1942 Fredric Brown used the term for the title of his pulp sci-fi about a sentient Linotype Machine. A few years later, in The Naughty Princess by Anthony Armstrong……”
  14. ^ Scholz, Carter. “Radiance: A Novel”. December 21, 2018閲覧。
  15. ^ Finney, Charles G. (1935). The Circus of Dr. Lao. Viking Press. ISBN 4-87187-664-0 
  16. ^ Pynchon, Thomas (1964) (English). The secret integration. London: Aloes Books. ISBN 978-0-85652-049-5. OCLC 896687678. https://www.worldcat.org/title/secret-integration/oclc/896687678?referer=br&ht=edition 
  17. ^ Etain Shrdlu”. The New Yorker. December 21, 2018閲覧。
  18. ^ It Can't Etaoin Shrdlu.”. The New Yorker (October 31, 1936). December 21, 2018閲覧。
  19. ^ Shulman, Max (1944). Barefoot Boy with Cheek. Bantam Books 
  20. ^ Shrdlu - An Affectionate Chronicle. Washington, DC: National Press Club. (1958). オリジナルの2015-10-25時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151025220157/http://pressblog.org/shrdlu/ 2018年12月21日閲覧。 
  21. ^ The Complete Crumb Comics”. December 21, 2018閲覧。
  22. ^ Etaoin performed by Dallas Roberts”. Popisms. December 21, 2018閲覧。
  23. ^ Songs and music featured in House of Cards S2 E10 Chapter 23”. Tunefind (February 14, 2014). December 21, 2018閲覧。

関連項目

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