GAUSS (企業)
種類 | 株式会社 |
---|---|
本社所在地 |
日本 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-10-7 新大宗ビル1号館 3階[3] |
設立 | 2017年5月2日[3][4] |
法人番号 | 2020001121337 |
事業内容 | AIソフトウェアの販売、受託開発 |
代表者 | 宇都宮綱紀[注釈 1] |
資本金 | 100,000,000円(2020年9月現在)[3][注釈 2] |
従業員数 | 25名(2020年9月現在)[3] |
決算期 | 3月31日[3] |
関係する人物 |
社外取締役 - 進藤圭[11][注釈 3] 技術顧問 - 浅川伸一[13][注釈 4] |
外部リンク | https://gauss-ai.jp/ |
株式会社GAUSS(ガウス)は人工知能(AI)を扱う日本の企業。競馬予想を行う「SIVA」や、アパレルEC向けの画像認識、タグ付け、編集システム「ATS」、動画編集システム「Zooom」、資格試験問題予想AI「未来問」を展開。AI開発支援プラットフォームのクラウドサービス「GAUSS Foundation Platform」や受託開発も手掛ける。2017年5月に創業したスタートアップ企業(ベンチャー)で、富士通を退社して創業した宇都宮綱紀[注釈 1]が代表取締役を務める。人工知能学会賛助会員[16]、日本ディープラーニング協会正会員[13]。
沿革
[編集]2016年の秋頃に、富士通在職の宇都宮綱紀[注釈 1]が競馬予測ソフト「SIVA」の開発を開始[17][8]。富士通で新規事業として提案して採択されるが、1か月後にプロジェクトスタートというの待ち時間に耐え切れず宇都宮は同社を退職。projectSIVAとして2017年2月にサービスを開始する[8]。同年4月の時点では10月に創業予定であったが、結局2017年5月2日に開業した[8]。
知人の紹介をきっかけに、ディップ株式会社がAI企業を対象に始めたアクセラレータプログラムの支援を受ける[11]。アパレル会社のANAPと連携し、「ATS」を開発。ANAPオンラインショップに適用する[18]。12月にはこのディップやANAPら3社から1.7億円の資金調達を果たし[10]、2018年1月10日には、フジテレビのホンマでっか!?TVにSIVAが取り上げられている[19]。
2018年2月には渋谷区に本社を移転[4]。3月にピザハットとの連携を開始し、5月15日からは広くAIに対する相談に対応する「実証レポートサービス」を開始[20]。8月31日にはATSの技術をもとに動画編集システム「Zooom」をリリース開始し[21]、月には東京大学発のAIスタートアップ企業であるBusiness Hubとも、業務提携も合意が成立した[22]。2018年10月には「Gauss Foundation Platform」を展開し[23]、2019年1月にはMatrixFlow社が「Autoflow」をこのプラットフォームで提供することを発表した[24][25]。
2019年4月に「AI競馬 SIVA」は「スポニチ AI競馬予想 SIVA」に名称変更し、運営は株式会社CYMES[注釈 5]に移行。GAUSSは共同開発という立場になる[26][27][28]。また、同年4月には物体検知AI「Grapick」と文字認識AI「G-OCR」の開発を発表し[29][30]、同8月には名古屋テレビ・ベンチャーズの出資を受けている[31]。また、同年8月末から9月にかけて日本ディープラーニング協会が主催したCDLEハッカソンではメンターやリリーススポンサーを務め、キックオフ時の会場も提供している[32][注釈 6]。
技術・サービス
[編集]GAUSSは形態素解析やチャット・ボットなどを用いる自然言語処理、強化学習やベイズ推定などを用いる予想・予測、ディープラーニングやデータ・クラスタリングなどを用いた画像認識の技術を持ち、
- Galileo(ガリレオ) - 予測エンジン
- Goeth(ゲーテ) - 自然言語エンジン
- Gogh(ゴッホ) - 画像認識エンジン
として実装している[20]。これらは後述の製品・サービスに応用するとともに、人工知能の実証研究レポートや、電力需要予測などの受託開発に活用されている[20]。
また、GAUSSはピザハットとビッグデータ解析の共同研究に取り組んでおり、宅配ピザの販売データから待ち時間短縮や売上増につなげことを目指している[35][17]。2018年10月からはAI開発支援プラットフォーム「GAUSS Foundation Platform」というクラウドサービスを開始しており、その基盤技術としてOracle Cloud Infrastructureを採用している[36][23]。
SIVA
[編集]SIVAは競馬場の芝とインドの神様であるシヴァに由来する[38]。競馬の勝馬投票券の予測をするウェブアプリケーション、モバイルアプリケーションで、言葉で問いかけるインターフェースに特徴がある。以前から馬券をやっていた人よりも、新しく競馬をやってみようという人を増やすことを意図している[37][39]。JRA(日本中央競馬会)のデータ、およびウェブ上の情報から学習する。また、「SIVA PRESS」というサイトも設けている[39]。
開発のきっかけは創業者である宇都宮の父親が競馬好きだったこと、AIの応用としてデータが充実してわかりやすかったことがあげられる[11][39]。宇都宮が富士通に在籍していたときから開発を始め、同社で事業提案して採択されていたが、1か月の待ち時間に宇都宮が耐え切れず、富士通を退職して2017年2月からサービス開始、GAUSSの創業に至っている[11][8]。2017年のジャパンカップでは3連複(三連勝複式)を的中させたという[9]。
インド競馬を対象とした海外展開も検討しており[8]、2019年2月にはユーザー数が8万人を突破した[40]。2019年4月から運営元を毎日新聞とスポーツニッポンが出資する株式会社CYMESに移行。サービス名を「スポニチ AI競馬予想 SIVA」に変更し、スポニチアネックスの競馬記事も配信するようになった[26][27][28](4月5日から5月9日まではβ版として無料リリース[26])。
ATS(Auto Tagging System)
[編集]画像の中からキーワードに対応したファッションアイテムを見つけ出し、タグ付けするシステム。株式会社ANAPの子会社ATLABとの共同研究で開発している。実際にANAPオンラインショップで活用され、業務効率の改善が確認されている[41][42][18]。
アイテムの認識にはディープラーニングの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN、Convolutional Neural Network)を用いている[41]。さらに背景から特定のアイテムを切り離すために、独自開発の特許出願技術を用いて高精度化を果たしている[41]。
Zooom
[編集]ATSの技術の発展形にあたる動画編集システム。動画の中から指定したファッションアイテムの服を抽出し、拡大して表示できる。システムに画像をアップロードし、アイテムを指定すると10秒程度で処理が終わる。アパレル系のECサイトでは画像が多く、編集に手間のかかる動画はあまり用いられていなかったが、Zooomを用いれば簡単かつ安価に動画で「質感」などより多くの情報を伝えることができる[21][42][43]。
未来問
[編集]回帰型ニューラルネットワークの一種であるLSTMを用いた時系列学習で、カテゴリー分けした宅地建物取引士試験問題を過去の試験問題から予測する。90を超えるカテゴリー分けは連携先の株式会社サイトビジットが行っており、1989年以降の試験問題データで学習させた。開発段階では2017年度問題を7割的中させた実績を持ち、サイトビジットが運営する「資格スクエア」で2018年の予想問題が同年10月9日から提供されている[44][45]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ a b c 宇都宮 綱紀(うつのみや つなき)。高校卒業は鉄筋工として就職。ライブドア事件を契機にプログラミングの勉強を開始し、IT企業を経て富士通に入社。社内外のハッカソンで活躍し、富士通内でも新規事業を手掛けた[5][6][7][8][9]。
- ^ 2017年12月の時点では、約1億7千万円になっていた[10]。
- ^ 進藤 圭(しんどう けい)は株式会社ディップで出資を担当するとともに、人工知能に関するメディア「AINOW」も手がける[11][12]。著書に『いちばんやさしいRPAの教本 人気講師が教える現場のための業務自動化ノウハウ』 インプレス〈いちばんやさしい教本シリーズ〉、2018年10月、ISBN 978-4295004936 がある。
- ^ 浅川 伸一(あさかわ しんいち)は日本の心理学者、早稲田大学博士(文学)[14]。著書に『ディープラーニング、ビッグデータ、機械学習 ― あるいはその心理学』(ISBN 9784788514225)、『Pythonで体験する深層学習 ― Caffe,Theano,Chainer,TensorFlow』(ISBN 9784339028515)があり、学会誌でもディープラーニングに関する解説を著している[15]。
- ^ 株式会社CYMESは毎日新聞社が50%、スポーツニッポン新聞社が50%を出資して2018年10月に設立された[46]。
- ^ CDLEはシードルと読み、「Community of Deep Learning Evangelists」のメンバーを対象にしていることに由来する[32]。審査委員にはGAUSS技術顧問の浅川伸一も加わっていた[32]。同ハッカソンは第2回「日本オープンイノベーション大賞」で日本経済団体連合会会長賞を受賞し、日本ディープラーニング協会理事長の松尾豊を筆頭に、宇都宮も受賞者に名を連ねている[33][34]。
出典
[編集]- ^ “株式会社ガウス”. 2018年9月29日閲覧。
- ^ “粉末射出成型 ガウス株式会社 GAUSS”. 2018年9月29日閲覧。
- ^ a b c d e “企業概要”. 株式会社GAUSS. 2020年9月19日閲覧。
- ^ a b “本社移転のお知らせ” (プレスリリース). 株式会社ガウス (2018年2月20日) 2018年9月29日閲覧。
- ^ “宇都宮 綱紀氏 株式会社GAUSS 代表取締役CEO”. QUM. 2018年9月28日閲覧。
- ^ 高橋ちさ、指田昌夫 (2015年6月18日).“「ハンダ女子」現役大学生も参戦! IoTハッカソンで披露されたクラウド活用アイデア(1/3), (3/3)”. ダイヤモンド・オンラインIT&ビジネス【第90回】. ダイヤモンド・オンライン. 2018年9月28日閲覧。
- ^ 明豊 (2016年10月20日).“大日本印刷やスズキも参加したハッカソン「FUJI HACK」とは ― 富士通が抱える3万人のSEにオープンイノベーション魂を ―”. 日刊工業新聞 (2016年9月27日) 2018年9月28日閲覧。
- ^ a b c d e f “きっかけは「ホリエモン」――元鉄筋工から富士通、そして競馬AIアプリで起業した男【Re:Framing the Flame】”. 実践事例. Filament. 2018年9月27日閲覧。
- ^ a b AINOW編集部 (2017年11月27日).“AI特化型アクセラレーター「AI.Accelerator」第2期デモデイを開催!”. AINOW. 2018年9月27日閲覧。
- ^ a b “総額1.7億円の資金調達を実施。上場企業3社から。” (プレスリリース). 株式会社GAUSS (2017年12月20日) 2018年9月29日閲覧。
- ^ a b c d e “INTERVIEW 進藤 圭 田中 仁 宇都宮 綱紀 ― 鉄筋工・コンビニ店長からAI起業家に!? AI acceleratorから成功する人工知能スタートアップは生まれるか? ―”. FASTGROW (2018年2月23日). 2018年9月28日閲覧。
- ^ asta vision 編集部 (2017年9月27日). “AI技術の需給双方をメディアデータベース化して出会いやすい状況をつくる ―ディップ株式会社 dip AI. Lab 室長 進藤 圭さん”. asta vision. 2018年9月29日閲覧。
- ^ a b 株式会社GAUSS (2018年9月20日).“AIスタートアップ「GAUSS」、日本ディープラーニング協会(JDLA)に正会員として参画”. (プレスリリース). PRTIMES. 2018年9月27日閲覧。
- ^ 浅川伸一『ニューラルネットワークの破壊実験によって表現された神経心理学的モデルの考察』早稲田大学〈博士学位論文(乙第1836号)〉、2003年12月16日、NAID 500000270779。
- ^ 浅川伸「深層学習をめぐる最近の熱狂」、『基礎心理学研究』第35巻第2号、2017年、149-162頁。
- ^ “賛助会員”. 人工知能学会. 2018年9月26日閲覧。
- ^ a b “ピザハット、宅配待ち時間削減へAIベンチャーのGAUSSとデータ解析の取り組みを開始”. ITmediaマーケティング (2018年3月14日) 2018年9月27日閲覧。
- ^ a b マスメディアン編集部. “GAUSS、AIを活用したEC販売のタグ付け業務効率化する画像検索技術を開発”. 特集・業界ニュース. MASSMEDIAN. 2018年9月28日閲覧。
- ^ “GAUSS、日本ピザハットとマーケティングデータ解析の共同開発開始”. Media Incubate (2018年3月14日) 2018年9月30日閲覧。
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- ^ “GAUSS社と業務提携し、機械学習アルゴリズムの選定・パラメータチューニングを自動化するサービス「AutoFlow」を提供”. MatrixFlow. 2019年6月1日閲覧。
- ^ AINOW編集部 (2019年1月31日).“AIの民主化を推進するMatrixFlowとGAUSS社と業務提携ー機械学習アルゴリズムの選定・パラメータチューニングを自動化するサービス「AutoFlow」を提供ー”. AINOW. 2019年6月1日閲覧。
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- ^ “GAUSS社独自の画像認識技術を用いた物体検知AI「Grapick」と文字認識AI「G-OCR」とは?!”. AI研究所. (2019年10月9日) 2019年10月17日閲覧。
- ^ NSN編集部 (2019年8月25日).“名古屋テレビ・ベンチャーズが独自AIエンジン開発のGAUSSに出資”. 名古屋スタートアップニュース. 2019年10月17日閲覧。
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- ^ eiicon編集部 (2020年2月20日). “総理大臣賞は”知能ロボットコントローラ”が受賞――「第2回 日本オープンイノベーション大賞」に選ばれた14の取組・プロジェクトとは?”. eiicon. 2020年6月27日閲覧。
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- ^ a b c 大久保歩 (2018年6月29日).“的中率50%! 勝ち馬を予測する人工知能「SIVA」が競馬界の勝利の女神となる”. mewcket 2018年9月27日閲覧。
- ^ “DL数が1年で2万→8万に?AI競馬予測アプリ『SIVA』のマーケティング施策”. Growth Hack Journal. (2019年3月21日) 2019年6月1日閲覧。
- ^ a b c d ECのミカタ編集部 (2018年2月9日).“類似画像からタグを抽出・付与する先進AI『ATS』が提供開始へ”. 2018年9月28日閲覧。
- ^ a b c ECのミカタ編集部 (2018年7月14日). “AIの画像解析でファッションECを身近に。「GAUSS」が先行予約開始”. ECのミカタ. 2018年9月27日閲覧。
- ^ a b “GAUSS ファッションサイト向けにAIによる動画編集システムを提供”. The AI Times (2018年7月13日). 2018年9月26日閲覧。
- ^ “GAUSSとサイトビジット、「宅建士試験出題予測AI」を共同開発”. ICT教育ニュース (2018年10月9日) 2018年10月12日閲覧。
- ^ “宅建士試験の問題を予測するAIをGAUSSが開発、予想問題を無償提供”. @IT (2018年10月9日) 2018年10月12日閲覧。
- ^ “デジタル新会社「株式会社CYMES」の事業開始について(2018/10/1)”. 毎日リリース. 毎日新聞社. (2018年10月1日) 2020年6月27日閲覧。
外部リンク
[編集]- 株式会社GAUSS - 公式サイト
- 株式会社GAUSS -- AI-スタートアップ -- (@gauss_inc) - X(旧Twitter)
- 株式会社GAUSS -- AIスタートアップブログ -- - はてなブログ
- 株式会社GAUSS - Qiita
- SS - YouTubeチャンネル(人工知能SIVA)