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国際地球基準座標系

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ITRFの基準点

国際地球基準座標系[1](こくさいちきゅうきじゅんざひょうけい、英語: International Terrestrial Reference Frame; ITRF)は、ITRSの実現を可能にする三次元直交座標系である。

ITRSとは国際地球基準系(こくさいちきゅうきじゅんけい、英語: International Terrestrial Reference System; ITRS[注釈 1]または国際地球準拠系(こくさいちきゅうじゅんきょけい)[注釈 2]のことで、地球の表面や地表近くの測量で使用するのに適した参照系(英語: reference frames)を作成する手順を記述するものである。

計量標準英語版が一連の手順として標準の現示を記述するのと同等の方法で定義される。ITRSは、SI測定系を使用して、地心座標系を定義している。

座標系の原点は、海と大気を含む地球全体の重心である。新しいITRFの定義は、可能な限り正確にITRSを実現するために、最新の数学技術と調査技術を用いて数年ごとに作成される。観測誤差のため、どのITRFも他のITRFの実現と比べて非常に僅かなずれが生じる。最新のWGS 84と最新の(2006年時点の)ITRFとの誤差は、数センチメートルしかない[8]

ITRSとITRFは、国際地球回転・基準系事業(IERS)によりメンテナンスされている。実用的な衛星測位システムは、一般に、特定のITRFまたはITRFを参照する独自の座標系を参照する。たとえば、Galileo Terrestrial Reference FrameGTRF)はガリレオナビゲーションシステムで使用されているが、現在、ヨーロッパ宇宙機関によりITRF2005として定義されている[9]

ITRFの実現

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1992年以降にITRFから開発されたITRFの実現には、以下のものがある[10]

名称 Epoch EPSG英語版コード 備考
ITRF92 1988.0 4914 ITRSの最初の実現
ITRF93 1988.0 4915
ITRF94 1993.0 4916
ITRF96 1997.0 4917
ITRF97 1997.0 4918
ITRF2000 1997.0 4919 構造プレート運動モデルから自由な制約のない宇宙測地学を組み込んだ最初の策定[11]
ITRF2005 2000.0 4896 観測局の位置と地球の回転パラメータの時系列形式の入力データを使用して構築された[12]
ITRF2008 2005.0 5332 対流圏モデルと改善された解法が含まれている[13]
ITRF2014 2010.0 7789 観測局の非線形な変動に対する拡張モデルから生成された[14]
ITRF2020 2015.0 9988

日本における準拠の状況

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  • 日本の測地系は日本測地系2011(JGD2011、世界測地系(測地成果2011))を用いており、採用しているITRFの版は次のとおりである:
  • 電子基準点の座標解析には準拠座標系としてITRF2014が採用されている[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ 国際地球基準系は国土地理院が用いることがある ITRS の日本語表記である。ITRS と ITRF との両方に同じ日本語表記を用いることもあるが[2][3]国際天文学連合 (IAU)および国際測地学・地球物理学連合 (IUGG) の決議で区別しているこれらの用語を日本語で区別しようとする場合に用いることがある[4][5][6]
  2. ^ 国際地球準拠系は日本天文学会が採用する ITRS の日本語表記である。測地学などでは ITRS と ITRF との両方に同じ日本語表記を用いることがあるが[2][3]、日本天文学会は国際天文学連合 (IAU)および国際測地学・地球物理学連合 (IUGG) の決議で区別しているこれらの用語に別の日本語表記を与えている[7]

出典

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  1. ^ 国土地理院 (2002年1月7日). “世界測地系移行に関する質問集(Q&A)” (html). 国土地理院. 世界測地系移行の概要. 国土地理院. 2024年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月7日閲覧。
  2. ^ a b 田中宏明「測量法の改正」(PDF)『地図』第40巻第4号、日本国際地図学会、東京、2002年4月25日、11-23頁、doi:10.11212/jjca1963.40.4_11ISSN 2185-646X2024年5月9日閲覧 
  3. ^ a b 小山泰弘「4-4 時空標準におけるVLBI 技術の果たす役割」(PDF)『情報通信研究機構季報』第56巻第3,4号、情報通信研究機構、東京都小金井市、2010年、203-212頁、doi:10.24812/nictkenkyuhoukoku.56.3.4_203ISSN 2433-60092024年5月9日閲覧 
  4. ^ 村上真幸「測地成果2000 ―地球重心系への移行に関する世界的な動向―」(PDF)『国土地理院時報』第1999巻第91号、国土地理院、茨城県つくば市、1999年3月31日、16-23頁、ISSN 2436-7370オリジナルの2024年5月1日時点におけるアーカイブ、2024年5月9日閲覧 
  5. ^ 村上真幸「測地成果2000」(PDF)『測地学会誌』第45巻第3号、日本測地学会、東京、1999年10月25日、229-239頁、doi:10.11366/sokuchi1954.45.229ISSN 2185-517X2024年5月9日閲覧 
  6. ^ 辻宏道、田辺正、河和宏、高島和宏、宮川康平、栗原忍、松坂茂「鹿島26m VLBIアンテナの測地学への貢献」(PDF)『国土地理院時報』第2004巻第103号、国土地理院、茨城県つくば市、2004年2月29日、53-63頁、ISSN 2436-7370オリジナルの2024年5月1日時点におけるアーカイブ、2024年5月9日閲覧 
  7. ^ 日本天文学会 (2023年5月13日). “国際地球準拠系” (html). 天文学辞典. 観測技術. 日本天文学会. 2024年5月9日閲覧。
  8. ^ Clynch (February 2006). “Earth coordinates”. GPS Geodesy and Geophysics. James R. Clynch. 24 March 2016閲覧。
  9. ^ Reference Frames in GNSS”. Navipedia. European Space Agency. 2021年12月31日閲覧。
  10. ^ International Terrestrial Reference Frame 2014 (ITRF2014)”. Quality Positioning Services B.V.. 3 October 2019閲覧。
  11. ^ Altamimi, Zuheir; Sillard, Patrick; Boucher, Claude (2002). “ITRF2000: A new release of the International Terrestrial Reference Frame for earth science applications”. Journal of Geophysical Research: Solid Earth 107 (B10): ETG 2-1–ETG 2-19. Bibcode2002JGRB..107.2214A. doi:10.1029/2001JB000561. 
  12. ^ Altamimi, Z.; Collilieux, X.; Legrand, J.; Garayt, B.; Boucher, C. (2007). “ITRF2005: A new release of the International Terrestrial Reference Frame based on time series of station positions and Earth Orientation Parameters”. Journal of Geophysical Research: Solid Earth 112 (B9): B09401. Bibcode2007JGRB..112.9401A. doi:10.1029/2007JB004949. 
  13. ^ Altamimi, Zuheir; Collilieux, Xavier; Métivier, Laurent (3 February 2011). “ITRF2008: an improved solution of the international terrestrial reference frame”. Journal of Geodesy 85 (8): 457–473. Bibcode2011JGeod..85..457A. doi:10.1007/s00190-011-0444-4. 
  14. ^ Altamimi, Zuheir; Rebischung, Paul; Métivier, Laurent; Collilieux, Xavier (2016). “ITRF2014: A new release of the International Terrestrial Reference Frame modeling nonlinear station motions”. Journal of Geophysical Research: Solid Earth 121 (8): 6109–6131. Bibcode2016JGRB..121.6109A. doi:10.1002/2016JB013098. 
  15. ^ 檜山洋平、山際敦史、川原敏雄、岩田昭雄、福﨑順洋、東海林靖、佐藤雄大、湯通堂 亨、佐々木利行、重松宏実、山尾裕美、犬飼孝明、大滝三夫、小門研亮、栗原 忍、木村勲、堤 隆司、矢萩智裕、古屋有希子、影山勇雄、川元智司、山口和典、辻 宏道、松村正一「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う基準点測量成果の改定」(PDF)『国土地理院時報』第122巻、国土地理院、茨城県つくば市、2011年12月28日、55-78頁、ISSN 2436-7370オリジナルの2024年5月1日時点におけるアーカイブ、2024年6月28日閲覧 
  16. ^ 村松弘規、髙松直史、阿部聡、古屋智秋、加藤知瑛、大野圭太郎、畑中雄樹、撹上泰亮、大橋和幸「新しいGEONET解析ストラテジによる電子基準点日々の座標値(F5解・R5解)の公開」(PDF)『国土地理院時報』第134巻、国土地理院、茨城県つくば市、2021年12月28日、19-32頁、doi:10.57499/JOURNAL_134_03ISSN 2436-73702024年6月28日閲覧 

関連項目

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外部リンク

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