Izumo (タンパク質)
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Izumo(いずも)は、受精の際の卵子と精子の形質膜の融合のために必要とされる分子のうち、精子側で発現するべきものの一つとして報告されたタンパク質であり、その発現は精子に特異的である。アミノ酸配列的には免疫グロブリンスーパーファミリーに属する、ということが示されている。
背景
[編集]受精は複数のステップにより仲介されるわけだが、卵子と精子が表面で結合してから接合体形成へと至るのに必要なステップである膜の融合のメカニズムについては未解明部分が多く、関連するタンパク質もなかなか見つかってこなかった。卵子側では2000年に報告されたCD9タンパク質があるが、融合に必要なタンパク質として精子側のものは、2005年に日本の研究者により報告されたこのIzumoが世界初のものである。Izumoはまずマウスで同定されたが、ヒトにもオルソログが存在することが示されている。Izumoに特異的な抗体やIzumoの遺伝子に対するノックアウト法を用いるなどしてIzumoタンパク質が正常に働けないようにすると、メスでは影響が出ないがオスでは不妊になる(また、精子自体も運動性や形態的には正常で、膜融合だけができない)という現象が起きる。
命名
[編集]語感から察せられるように、このいずもは出雲に由来している。卵子と精子を結びつけるという機能を、縁結びのご利益で知られる出雲大社にもじった命名である。他の多くのタンパク質の命名に見られるようなアクロニムではない。
応用
[編集]不妊治療や、新しい避妊法の開発のためのターゲットとしての可能性が示唆されている。
参考文献
[編集]- Naokazu Inoue, Masahito Ikawa, Ayako Isotani, Masaru Okabe "The immunoglobulin superfamily protein Izumo is required for sperm to fuse with eggs" Nature434, 234 - 238 (10 Mar 2005) Letters to Nature
- Richard Schultz, Carmen Williams "Developmental biology: Sperm-egg fusion unscrambled" Nature434, 152 - 153 (10 Mar 2005) News and Views
関連項目
[編集]日本語にちなんで命名された遺伝子
- Shugoshin(Sgo) :減数分裂のときに染色体を保護する。「染色体の守護神」から。
- nou-darake(ndk) :神経細胞への分化を誘導する。プラナリアでは、この遺伝子の異常で脳が複数できて「脳だらけ」になることから。
- Pokemon :癌原遺伝子の一つ。
- tonsoku(Tsk) :シロイヌナズナの細胞周期を制御する遺伝子の一つ。この遺伝子の異常で根や茎が短くなり「豚足」のようになることから。
- Musashi :癌原遺伝子の一つ。この遺伝子の異常で、ショウジョウバエの体毛が1本生えるところに2本生えることから、二刀流の宮本武蔵にちなんで。
- kai :日周期の制御に関わる。時間の「回」転から。
- Harakiri(Hrk) :アポトーシスを誘導する遺伝子の一つ。アポトーシス=細胞の自殺=腹切り、から。
- fushitarazu :体節形成に関与する。体節の数が少なくなり、「節足らず」となることから。