M809 5tトラック
M809 Series 5t Truck | |
---|---|
M813カーゴトラック | |
種類 | 6輪駆動 5tトラック |
原開発国 | アメリカ合衆国 |
運用史 | |
配備期間 | 1970年~ |
配備先 | アメリカ軍、他 |
開発史 | |
製造業者 | AMゼネラル社 |
諸元 (M813 Truck Cargo w/ Winch) | |
重量 | 9,530 kg |
全長 | 8.10 m |
全幅 | 2.49 m |
全高 | 2.97 m |
| |
エンジン |
カミンズ社製 NHC-250 6気筒ディーゼル |
懸架・駆動 | リーフスプリング式、6輪駆動 |
行動距離 | 560 km |
速度 | 84 km/h |
M809 5tトラックシリーズは、1970年代にアメリカ合衆国で開発・運用された、6×6輪駆動の5tトラックである。
概要
[編集]M809 5tトラックシリーズは、1970年代に、M54 5tトラックシリーズをベースに開発された、6×6輪駆動の積載量5tクラスの軍用トラックである(オフロードで約5トン、舗装道路では10トン近くの積載量を持つ)。1950年代、1960年代に生産されたM54シリーズの多くがベトナム戦争を通じて損耗・消耗しており、これらの代替として、M54トラックシリーズを生産していたAMゼネラル社によって開発、生産された。基本的な構造はM54シリーズとほとんど同じであるが、相違点として、エンジンはM54A2系のマルチフューエルエンジンから、カミンズ社製NHC-250ディーゼルエンジンに換装されている。このエンジンは民間向けのトラックで既に使用され、定評のあるものであった。加えて、ブレーキの強化やパワーステアリングなどにより、車体重量は、M54系に比べ500Kgほど増加しているものの、全体としてM54系よりも扱い易く改良されている。外観的には、エンジン換装に伴い、エンジンフード中央部およびフロントグリルが前方に約18cm延長され、M54では右フェンダー上に装備されていたエアクリーナーが左フェンダーに移っている。フロントグリル自体のデザインも初期にはほとんどM54系と同じであったが、後期にはパイプフレームを装着した独特のスタイルとなった。
M809シリーズは1970年から生産が始まり、1980年からは後継のM939 5tトラックが登場したが、併行して引き続き生産、運用が続けられ、1988年末までにアメリカ軍向けだけで38,000台を生産、さらに輸出向けに1992年まで生産が続けられ、総生産数は92,000台以上となっている。M809シリーズにはM54シリーズと同様、レッカー型やダンプ型などの派生型が存在する他、輸出先でも様々な派生車両が開発され、運用された。
1980年には、AMゼネラル社、ホワイト・モーター社による改良パックである、EMS(Enhanced Mobility System, 機動力強化システム)が開発された。主な内容としては、タイヤ空気圧の自動調整装置と、そのためのパイピングシステム、および14.00×R20の大径ラジアルタイヤの装着で、路面の状態によって運転席から自動でタイヤの空気圧を4段階に変更出来るという物であった(適用により、後輪はダブルタイヤからシングルタイヤになる)。この改良パックは1983年頃からキット形式で部隊に配布され、既存のM809シリーズに適用されテストされた。その結果、1989年頃からは海兵隊向けM809の新規生産分、およびM939シリーズに組み込まれ、M939シリーズについては同時にエンジン換装などが行われ、M939A2"ビッグフット"シリーズとしてリリースされたが、M809シリーズについては、改良パックを適用した車両でも形式番号は変更されておらず、単にEMSパック装着車と呼称されている。
形式
[編集]トラックシャーシ
[編集]荷台(車体後部)を装備していない、車台とキャブ(運転席)のみの形式である。
- M809 Truck Chassis
- 179インチ(4.5m)、ロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。
- M809A1 Truck Chassis
- 179インチ(4.5m)、ロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。
- M810 Truck Chassis
- 179インチ(4.5m)、ロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。
- M811 Truck Chassis
- 179インチ(4.5m)、ロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。
- M811A1 Truck Chassis
- 179インチ(4.5m)、ロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。
- M811A2 Truck Chassis
- 215インチ(5.5m)、エクストラロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。
- M812 Truck Chassis
- 215インチ(5.5m)、エクストラロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。
- M812A1 Truck Chassis
- 215インチ(5.5m)、エクストラロングホイールベースのトラックシャーシ。荷台の無い、キャブとシャーシのみの状態での制式番号。この車台は、ロケットランチャー型のベースとして使用された。
カーゴトラック型
[編集]- M813 Truck Cargo
- 179インチ(4.5m)、ロングホイールベースのカーゴトラック型。シリーズの実質的な基本型に相当する。
- M813A1 Truck Cargo
- 179インチ(4.5m)、ロングホイールベースのドロップサイドカーゴトラック型。荷物の積み下ろしの際、荷台の側板を倒す事が可能。
- M814 Truck Cargo
- 215インチ(5.5m)、エクストラロングホイールベースのカーゴトラック型。
-
M813 カーゴトラック
-
M814 カーゴトラック
その他の派生型
[編集]- M815 Truck Bolster
- 179インチ(4.5m)のロングホイールベース。M54シリーズのM748と同様、長尺資材を載せて運搬する為に、シャーシ後部に梁が装着されている。全てウィンチ装備。
- M816 Truck Wrecker Medium
- 179インチ(4.5m)のロングホイールベース。M54シリーズのM62、M543と同様に、大型クレーンを搭載したレッカー型。全てウィンチ装備。
- M817 Truck Dump
- 167インチ(4.2m)のショートホイールベース。M54シリーズのM51と同様の、ダンプトラック型。荷台にはベンチシートおよび幌を装着可能で、兵員輸送用途にも使用された。
- M818 Truck Tractor
- 167インチ(4.2m)のショートホイールベース。M54シリーズのM52と同様の、牽引用トラクター型。セミトレーラー等の牽引に使用された。
- M819 Truck Tractor Wrecker
- 215インチ(5.5m)のエクストラロングホイールベース。M54シリーズのM246と同様の、トラクター/レッカー兼用型。トラクター用牽引装置と、回転式のクレーンを両方装備している。全てウィンチ装備。
- M820 Van Expansible
- 215インチ(5.5m)のエクストラロングホイールベース。M54シリーズのM291と同様の、荷台がパネルバンタイプのトラック。側板上部には窓がある。ウィンチは未装備。
- M820A1 Van Expansible
- 215インチ(5.5m)のエクストラロングホイールベース。M820とほとんど同じだが、側板上部に窓が無い。ウィンチは未装備。
- M820A2 Van Expansible
- 215インチ(5.5m)のエクストラロングホイールベース。M820とほとんど同じだが、後部にハイリフト・ゲートが装備されている。ウィンチは未装備。
- M821 Truck Bridging, Stake Transporter
- 215インチ(5.5m)のエクストラロングホイールベース。M54シリーズのM139と同様の、架橋用資材の運搬に使用される工兵隊向け車両。全てウィンチ装備。
-
M815 ボルスタートラック
-
M816 レッカー
-
M817 ダンプトラック
-
M818 トラクタートラック
-
M819 トラクター/レッカー
-
M820 パネルバントラック
-
M821 フラットベッドトラック
画像
[編集]-
浮航橋を積載したM809系トラック。リフォージャー演習時のアメリカ軍車両、1978年。
-
ザイールに派遣されたアメリカ軍のM818。1994年。前の車両は後期型、後ろの車両は前期型のフロントグリル。
-
ソルタムM71 155mm榴弾砲を牽引する、イスラエル国防軍の長車体型M814カーゴトラック。。
-
オーストラリア軍のM816レッカー。
-
ピナトゥボ火山の大噴火後、瓦礫処理にあたるM817ダンプトラック。1991年。
-
ハワイで船舶を牽引するM818トラクター。フロントグリルにパイプフレームを装着した後期型。
-
台湾軍のM809系トラック。2011年。多連装ロケットランチャーを搭載した派生車種。
-
韓国軍のM809系トラック。1998年。多連装ロケットランチャーを搭載した派生車種。
-
M812車台にローランド対空ミサイルを搭載した車両。1984年、アメリカ軍。
使用国
[編集]参考文献
[編集]- MVJ Military Vehicle Journal Vol.11, 1997年7月, 大塚康生,
- TM_9-2320-260-20 アメリカ軍の技術資料
- M809 Technical Manuals アメリカ軍の技術資料
関連項目
[編集]- M54 5tトラック - M809の前身にあたる、アメリカ軍の5tトラック
- M939 5tトラック - M54、M809から改良された、アメリカ軍の5tトラック
- ローランド対空ミサイル - ドイツ/フランスで共同開発された地対空ミサイル。アメリカ軍ではM812車台に搭載され、少数が配備された。
- ケーレス - イスラエル空軍で運用された自走式対レーダーミサイルランチャー。M809の車体にAGM-78スタンダードのイスラエル向け廉価版である"パープルパンチ"の3連装発射機を搭載している。
外部リンク
[編集]