memset
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memsetとは、標準Cライブラリのヘッダー <string.h> (文字列操作関数群) で定義されているC言語の関数である。
指定されたポインタが指すオブジェクトの先頭から、指定されたバイト数分に、指定した文字データを書き込むはたらきをする。 つまり、ポインタが指しているメモリブロック先頭から指定されたサイズの連続領域において、1バイトごとに文字をセットする。
形式
[編集]#include <string.h>
void *memset(void *s, int c, size_t n);
memset
関数は、c
の値をunsigned char
型に変換し、s
が指すオブジェクトの最初の n
文字にそれぞれコピーする。
利用例
[編集]次の例は、char型配列(文字列)を文字'@'
で埋めるプログラムである。
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#define STR_BUF_SIZE 10
int main(void) {
char a[STR_BUF_SIZE];
memset(a, '@', STR_BUF_SIZE); /* 配列の要素全てを文字'@'で埋める */
a[STR_BUF_SIZE - 1] = '\0';
printf("a = \"%s\"\n", a);
return 0;
}
配列や構造体のメモリブロックをゼロで埋める際は、以下の様にmemset
を用いる。
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <string.h>
#define STR_BUF_SIZE 100
int main(void) {
char *s = NULL;
s = (char*)calloc(STR_BUF_SIZE, sizeof(char));
strcpy(s, "password1");
printf("s = \"%s\"\n", s);
/* メモリ領域から古いパスワードの痕跡を完全にクリアして空文字列化する。 */
memset(s, 0, STR_BUF_SIZE);
/* 新しいパスワードをコピーする。 */
strcpy(s, "pass2");
printf("s = \"%s\"\n", s);
/* 単純にゼロ終端文字列で空文字列を実現する場合、先頭にNUL文字を代入するか、空文字列をコピーするだけでもよいが、痕跡が残る。 */
#if 0
s[0] = '\0';
#else
strcpy(s, "");
#endif
printf("s = \"%s\"\n", s);
printf("s[1] = '%c'\n", s[1]);
memset(s, 0, STR_BUF_SIZE);
free(s);
return 0;
}
ただしmemset呼び出しはコンパイラ最適化によって除去されることもある。機密性の高い情報をメモリからクリアするなど、セキュリティ脆弱性の解消を目的とする場合は、C11オプション関数のmemset_sや、Windows APIのSecureZeroMemoryなどを使用する。処理系によってはvolatile
型修飾子を使用することで最適化を抑止し、memset呼び出しが削除されることを防ぐ方法もあるが、移植性はない[1][2][注釈 1]。
実装例
[編集]memsetを自前で定義したい場合は、以下の様に実装する。
/* memsetと区別するため、大文字を使用 */
void *MemSet(void *buf, int c, size_t num) {
unsigned char *ptr = (unsigned char *)buf;
const unsigned char ch = (unsigned char)c;
while (num--)
*ptr++ = ch;
return buf;
}
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^
volatile
の詳細はC言語の規格では規定されておらず、処理系に委ねられている。
出典
[編集]関連項目
[編集]参考文献
[編集]外部リンク
[編集]memset(3)
– JM Project Linux Library Functions マニュアル