ペンタン
ペンタン | |
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別称 Quintane;[2] Refrigerant-4-13-0 | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 109-66-0 |
PubChem | 8003 |
ChemSpider | 7712 |
UNII | 4FEX897A91 |
EC番号 | 203-692-4 |
国連/北米番号 | 1265 |
DrugBank | DB03119 |
MeSH | pentane |
ChEBI | |
ChEMBL | CHEMBL16102 |
RTECS番号 | RZ9450000 |
バイルシュタイン | 969132 |
Gmelin参照 | 1766 |
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特性 | |
化学式 | C5H12 |
モル質量 | 72.15 g mol−1 |
外観 | 無色の液体 |
匂い | ガソリンのような臭気[3] |
密度 | 0.626 g/mL; 0.6262 g/mL (20 °C) |
融点 |
−130.5 - −129.1 °C |
沸点 |
35.9 - 36.3 °C |
水への溶解度 | 40 mg/L (20 °C) |
log POW | 3.255 |
蒸気圧 | 57.90 kPa (20.0 °C) |
kH | 7.8 nmol Pa−1 kg−1 |
酸解離定数 pKa | ~45 |
塩基解離定数 pKb | ~59 |
λmax | 200 nm |
磁化率 | -63.05·10−6 cm3/mol |
屈折率 (nD) | 1.358 |
粘度 | 0.240 mPa·s (at 20 °C) |
熱化学 | |
標準生成熱 ΔfH |
−174.1~−172.9 kJ mol−1 |
標準燃焼熱 ΔcH |
−3.5095~−3.5085 MJ mol−1 |
標準モルエントロピー S |
263.47 J K−1 mol−1 |
標準定圧モル比熱, Cp |
167.19 J K−1 mol−1 |
危険性 | |
GHSピクトグラム | |
GHSシグナルワード | DANGER |
Hフレーズ | H225, H304, H336, H411 |
Pフレーズ | P210, P261, P273, P301+310, P331 |
NFPA 704 | |
引火点 | −49.0 °C (−56.2 °F; 224.2 K) |
発火点 | 260.0 °C (500.0 °F; 533.1 K) |
爆発限界 | 1.5–7.8%[3] |
許容曝露限界 | TWA 1000 ppm (2950 mg/m3)[3] |
半数致死量 LD50 |
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半数致死濃度 LC50 | 130,000 mg/m3 (マウス, 30分) 128,200 ppm (マウス, 37分) 325,000 mg/m3 (マウス, 2時間)[4] |
関連する物質 | |
関連するアルカン | |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ペンタン(英: pentane)とは、炭素数5つの直鎖状のアルカンである。天然ガスや石油エーテル、ガソリン等に含まれている。
名称
[編集]ペンタンも含めて、直鎖状のアルカンをノルマルアルカンと総称する[5]。ペンタンには分枝した構造異性体が2つ、つまり、イソペンタンとネオペンタンが存在し、構造異性体を含めた総称として、俗に「ペンタン」と呼ぶ場合もある。そこで、これらと区別する際に、n-ペンタン(ノルマルペンタン)と呼ぶ場合がある。
しかしながら、IUPAC命名法でペンタンと言えば、直鎖状のn-ペンタンを指す。なお、構造異性体であるイソペンタンをIUPAC名で言えば2-メチルブタンであり、ネオペンタンをIUPAC名で言えば2,2-ジメチルプロパンと、きちんと区別できる。その上に、IUPAC名は化合物の構造を言い表している。
よって本稿では、これ以降、IUPAC名に従って記載する。
物理化学的性質
[編集]常圧でのペンタンの沸点は36 ℃であり[6]したがって、常温・常圧でペンタンは液体として存在する。常圧での沸点が常温を上回る、最短の炭素鎖の直鎖状アルカンが、ペンタンである[6][7][注釈 1]。なお、液体であっても色は無い。また、ペンタンの揮発性は比較的高く、揮発してきたペンタンを、ヒトの嗅覚は感知できる。
アルカンは一般に可燃物であり、酸素と化合して燃焼し、水と二酸化炭素に変化する。この反応は発熱反応であるため、アルカンの燃焼反応は、アルカンと酸素が供給され続ける限り、外部からエネルギーを与えずとも、勝手に持続し得る[8]。ペンタンもまた可燃物であるだけでなく、さらに、揮発性が高く、引火点が-49 ℃と引火し易いため、その取り扱いには注意が必要である。
日本では消防法に定める第4類危険物の特殊引火物に該当し、法規制されている。
利用
[編集]ペンタンには多くの利用法が知られており、以下に、その例の一部を記載する。
発泡剤
[編集]熱媒体
[編集]安価な低沸点の流体として、地熱発電の1種であるバイナリー発電に於いて、蒸気タービンを回すための媒体として用いる場合がある。水より低温でも沸騰して蒸気になるため、水では沸騰しない低い温度の熱源を利用できるためである。
要するに、比較的低い温度の熱源に、液化したペンタンを曝して沸騰させて気体にし、液体から気体になった際に体積が急激に膨張した圧力で、蒸気タービンを回し、その回転を利用して発電機を駆動するのである。なお、蒸気タービンを回した後は、何らかの方法で再びペンタンを液体に戻して、ペンタンは循環させて使用する[注釈 2]。
九州電力の八丁原発電所には日本国内初のバイナリー発電施設があり、2006年からペンタンを利用したバイナリー発電を実施している。
有機溶媒
[編集]室温で液体として存在する直鎖状アルカンの中では、ペンタンが最も揮発性が高いため、実験室では蒸発させ易い溶媒として利用される場合がある。液相クロマトグラフィーの溶媒としても使われる場合がある。
ペンタンは多くの非極性溶媒(有機塩素化合物、芳香族、エーテルなど)と自由に混和する。しかし、ペンタンは非極性で官能基が無いため、非極性でアルキル鎖に富んだ化合物しか溶かせない。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 参考までに、1気圧において、融点が25 ℃を上回る最短の炭素鎖の直鎖状アルカンは、オクタデカンである。つまり、オクタデカンよりも炭素鎖の長い直鎖状アルカンは、常温常圧で固体として存在する。逆に、本文から論理的に自明なように、ブタンよりも炭素鎖の短い直鎖状アルカンは、常温常圧で気体として存在する。
- ^ 熱媒体として使い方が行われ得るのは、ペンタンだけではない事を、念のために断っておく。例えば、アルカンであれば、プロパンが冷凍庫での熱媒体として用いられる場合がある。また、蒸気タービンを回す熱媒体としては、他に、アンモニアなども利用され得る。
出典
[編集]- ^ International Union of Pure and Applied Chemistry (2014). Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013. The Royal Society of Chemistry. p. 59. doi:10.1039/9781849733069. ISBN 978-0-85404-182-4
- ^ Hofmann, August Wilhelm Von (1 January 1867). “I. On the action of trichloride of phosphorus on the salts of the aromatic monamines”. Proceedings of the Royal Society of London 15: 54–62. doi:10.1098/rspl.1866.0018.
- ^ a b c NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0486
- ^ “n-Pentane”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH). 2024年12月25日閲覧。
- ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.40、p.42 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
- ^ a b Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.50 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
- ^ T.W.Graham Solomons、Craig B. Fryhle 著、花房 昭静、池田 正澄、上西 潤一 監訳 『ソロモンの新有機化学 (上巻) (第7版)』 p.149 廣川書店 2002年10月5日発行 ISBN 4-567-23500-2
- ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.58、p.59 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
外部リンク
[編集]- 国際化学物質安全性カード n-ペンタン (ICSC:0534) 日本語版(国立医薬品食品衛生研究所による), 英語版
- モデルMSDS n-ペンタン(中央労働災害防止協会)