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PCK2

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
PCK2
識別子
記号PCK2, PEPCK, PEPCK-M, PEphosphoenolpyruvate carboxykinase 2, mitochondrial
外部IDOMIM: 614095 MGI: 1860456 HomoloGene: 3356 GeneCards: PCK2
遺伝子の位置 (ヒト)
14番染色体 (ヒト)
染色体14番染色体 (ヒト)[1]
14番染色体 (ヒト)
PCK2遺伝子の位置
PCK2遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点24,094,053 bp[1]
終点24,110,598 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
14番染色体 (マウス)
染色体14番染色体 (マウス)[2]
14番染色体 (マウス)
PCK2遺伝子の位置
PCK2遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点55,777,723 bp[2]
終点55,788,699 bp[2]
遺伝子オントロジー
分子機能 ヌクレオチド結合
GTP binding
血漿タンパク結合
carboxy-lyase activity
プリンヌクレオチド結合
金属イオン結合
リアーゼ活性
phosphoenolpyruvate carboxykinase activity
phosphoenolpyruvate carboxykinase (GTP) activity
manganese ion binding
細胞の構成要素 ミトコンドリアマトリックス
ミトコンドリア
細胞質基質
生物学的プロセス 糖新生
positive regulation of insulin secretion
リポ多糖への反応
cellular response to tumor necrosis factor
oxaloacetate metabolic process
pyruvate metabolic process
NADH oxidation
デキサメタゾンへの反応
cellular response to glucose stimulus
propionate catabolic process
cellular response to insulin stimulus
脂質への反応
飢餓反応
glyceroneogenesis
hepatocyte differentiation
デキサメタゾン刺激に対する細胞応答
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001018073
NM_001291556
NM_001308054
NM_004563

NM_028994

RefSeq
(タンパク質)

NP_001018083
NP_001278485
NP_001294983
NP_004554

NP_083270

場所
(UCSC)
Chr 14: 24.09 – 24.11 MbChr 14: 55.78 – 55.79 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

PCK2(phosphoenolpyruvate carboxykinase 2, mitochondrial、PEPCK-M)は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PCK、PEPCK)のアイソザイムの1つであり、ヒトでは14番染色体に位置するPCK2遺伝子によってコードされる。この遺伝子は、グアノシン三リン酸(GTP)の存在下でオキサロ酢酸(OAA)からホスホエノールビルビン酸(PEP)への変換を触媒するミトコンドリア酵素をコードする。細胞質基質型のアイソザイム(PCK1英語版)は異なる遺伝子によってコードされ、こちらは肝臓での糖新生に重要な酵素である。選択的スプライシングによるバリアントが記載されている[5]

構造

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PCK2遺伝子はミトコンドリア型のPCKをコードし、PCK1遺伝子とのDNA配列の同一性は68%、細胞質基質型PCK1とのアミノ酸配列の同一性は70%である[6][7]。さらに、PCK1PCK2には構造的相同性がみられ、共通した祖先遺伝子に由来する遺伝子であることが示唆される[6]。どちらの遺伝子も10個のエクソンと9個のイントロンを持つが、イントロンのサイズは約2 kbも異なり、PCK2の最大のイントロンは2.5 kbにわたる。PCK2遺伝子の全長は約10 kbである。他の差異としては、PCK2のイントロンにはPCK1に存在しないAlu配列が存在する[6]。また、PCK2のN末端には18残基のミトコンドリア標的化配列が存在する[7]PCK2の転写開始部位の1819 bp上流には、5個のGCボックス英語版と3個のCCAATボックス英語版を含む推定調節エレメントが存在する[8]。さらに、近位プロモーター領域にはATF4英語版が結合する2つのATF/CRE配列が存在すると推定される[9]

機能

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PCK2はGTPによって駆動され、糖新生の律速段階であるOAAからPEPへの変換を触媒する。この変換段階は、ミトコンドリアにおいて解糖系TCA回路を橋渡しする段階として機能する[6][9]。膵臓のβ細胞では、PCK2はスクシニルCoAシンテターゼ英語版によって産生されたGTPをリサイクルすることで、グルコース刺激によるインスリン分泌を調節する。PCK2の活性は、クエン酸シンターゼへ向けてアセチルCoAを供給するためにピルビン酸形成のためのPEPを供給し、TCA回路を駆動する[9]。PEPの上流とグルコース-6-リン酸の下流の解糖系反応のほぼ全てが可逆的であるため、PCK2によるPEPの合成は、セリン合成、グリセロール合成、ヌクレオチド合成など複数の生合成過程を加速する可能性がある[10]。特に、PCK2は乳酸に由来するOAAを選択的に変換するため、低グルコース条件下でも生合成を促進することができる[6][9][10]。結果として、PCK2の活性は細胞成長とストレス下での生存に寄与する[9]

PCK1が主に肝臓腎臓で発現しているのに対し、PCK2はさまざまな細胞種で普遍的に発現している。白血球神経細胞のほか、膵臓心臓など糖新生を行わない組織でも発現がみられる。さらに、PCK1の発現は糖新生と関係するホルモンや栄養素によって調節されているのに対し、PCK2は恒常的に発現している。これらの差異は、PCK2が糖新生以外の機能も果たしている可能性を示唆している[6][9]

臨床的意義

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PCK2は肺がんなどいくつかのがんと関係しており、その糖新生機能によって腫瘍形成を促進する[9][10]。低グルコース条件下では、小胞体ストレスによってATF4がアップレギュレーションされ、それによってPCK2がアップレギュレーションされる[9]。PCK2はTCA回路の中間体を解糖系の中間体に変換する代替的カタプレロティック経路の利用を可能にするため、PCK2の活性はグルコースレベルの低下に直面した腫瘍細胞の生存を促進する可能性がある[9][10]

PCK2は糖新生機能を持つため、PCK2の欠乏はグルコースの恒常性を破壊し、低血糖を引き起こすことが予想される。2件の症例が記載されているものの、その後の研究からはPCK2の欠乏が主因ではないことが示唆されている[7][11]

出典

[編集]
  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000100889、ENSG00000285241 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000040618 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ PCK2 phosphoenolpyruvate carboxykinase 2 (mitochondrial)”. NCBI Entrez Gene database. 2022年3月26日閲覧。
  6. ^ a b c d e f “Human mitochondrial phosphoenolpyruvate carboxykinase 2 gene. Structure, chromosomal localization and tissue-specific expression”. The Biochemical Journal 333 ( Pt 2) (2): 359–66. (July 1998). doi:10.1042/bj3330359. PMC 1219593. PMID 9657976. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1219593/. 
  7. ^ a b c “Molecular cloning, sequencing and expression of the cDNA of the mitochondrial form of phosphoenolpyruvate carboxykinase from human liver”. The Biochemical Journal 315 ( Pt 3) (3): 807–14. (May 1996). doi:10.1042/bj3150807. PMC 1217278. PMID 8645161. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1217278/. 
  8. ^ “Cloning and reporter analysis of human mitochondrial phosphoenolpyruvate carboxykinase gene promoter”. Gene 338 (2): 157–62. (September 2004). doi:10.1016/j.gene.2004.06.005. PMID 15315819. 
  9. ^ a b c d e f g h i “Mitochondrial phosphoenolpyruvate carboxykinase (PEPCK-M) is a pro-survival, endoplasmic reticulum (ER) stress response gene involved in tumor cell adaptation to nutrient availability”. The Journal of Biological Chemistry 289 (32): 22090–102. (August 2014). doi:10.1074/jbc.M114.566927. PMC 4139223. PMID 24973213. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4139223/. 
  10. ^ a b c d “PCK2 activation mediates an adaptive response to glucose depletion in lung cancer”. Oncogene 34 (8): 1044–50. (February 2015). doi:10.1038/onc.2014.47. PMID 24632615. 
  11. ^ “Fasting hyperglycemia is not associated with increased expression of PEPCK or G6Pc in patients with Type 2 Diabetes”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106 (29): 12121–6. (July 2009). doi:10.1073/pnas.0812547106. PMC 2707270. PMID 19587243. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2707270/. 

関連項目

[編集]