プロジェクトEGG
プロジェクトEGG(プロジェクトエッグ、Engrossing Game Gallery)とは、かつて販売されたテレビゲームやパソコンゲームをWindows上でエミュレートさせて動作可能な状態に復刻しダウンロード販売を行っている会員制のサービスである。
2001年11月24日よりボーステック運営でサービスが開始された。2004年3月3日よりD4エンタープライズへ事業譲渡され、同社運営のサイト”アミューズメントセンター”の一サービスとして提供されている。
プロジェクトEGGを利用するには月額¥500(税抜き)の会員登録が必要である。
マスコットキャラクターは『EGGY』(ボーステックが1985年に発売した作品。Project EGGのほかバーチャルコンソールでも配信された)。参入メーカーは60社にも及ぶ。
また、派生事業として、ゲーム音楽の配信サービスであるEGG-MUSICがある[1]。
2023年9月28日(欧米市場では10月12日から[2][3])からはNintendo Switch向けに『EGGコンソール for Switch』[注釈 1]として買い切り配信が開始されている[6]。
沿革
[編集]背景
[編集]パソコン用ゲームソフトの開発・販売を行ってきたボーステックは、本サービスの運営開始前からレトロゲームに注目しており、『ハイドライド』や『妖怪探偵ちまちま』といった往年のパソコン用ゲームソフトを携帯電話用ゲームアプリとして移植・配信してきた[1]。 当時ボーステックの社員だった鈴木直人は小学生のころからパソコンに親しんできており、ユーザーがレトロゲームを遊ぶためには自分でエミュレーターを導入するが必要であるという現状を変え、メーカーから正式に許諾を得たレトロゲームをユーザーに提供したいと考えていた[1]。
その頃、同様のパソコンゲーム復刻を考え、北海道のゲームメーカーであるZOOMの作品や、ボーステックの『レリクス』のゲームソフトの配布を実現していた高木啓多との出会いがあった。当時、レトロパソコンの情報サイト「RetroPC Network」を運営し、書籍や雑誌記事などの執筆も行っていた高木は国産のレトロパソコンエミュレータの開発者たちと交流し、独自に販売サイトを立ち上げる計画を進めていたのである[7]。
そこで、鈴木は当時ボーステックが正会員として所属していた日本コンピュータゲーム協会に赴き、ほかの正会員に自社のレトロゲームの許諾が下りないか相談したところ、多くの正会員が二つ返事で快諾した[1]。また、ユーザー側からも「メーカーがきちんと合法的にコンテンツを提供してもらえれば応援する」という声も寄せられた[1]。
サービス開始
[編集]当時、エミュレーターを商売道具として使う企業はあまりなく、鈴木自身にも抵抗があったため[1] 、『マイコンBASICマガジン』の創刊者として知られる電波新聞社の大橋太郎や、コンピュータソフトウェア著作権協会の専務理事である久保田裕に、「我々ボーステックが、過去のゲームソフトの著作権を保護するという観点から、エミュレーターを活用した形で事業を展開しても大丈夫か」と相談し、彼らからの全面協力を取り付けることに成功した[1]。 かくして、サービスの立ち上げが決定し、高木が当時所属していた株式会社ペガシスが開発を担当することになった[7]。
PC-8801のエミュレーターが安定していたことから、最初に配信する50作品は、日本コンピュータゲーム協会員が過去に販売した同プラットフォーム向けのゲームソフトを中心に選定された[1]。 かくして、本サービスは2001年11月に開始した[1]。
D4エンタープライズへの事業譲渡、EGG MUSIC設立
[編集]MSXの企画・設計を手掛けた西和彦の協力により、2002年には正規BIOSを実現するなど、プロジェクトEGGは恵まれた環境の中にあったものの、ボーステックによる運営が困難であるということが判明した[1]。 このため、本サービスはボーステックからガイアックスへと事業譲渡され、2004年に鈴木が立ち上げたD4エンタープライズが運営に携わることになった。[8]さらにその後、2007年にガイアックスから事業譲渡され、D4エンタープライズの単独運営となる[9]。
D4エンタープライズの代表となった鈴木は、ゲームの開発に参加した作曲家たちが再び活躍できるようにしたいと考え、彼らに配信を持ち掛けた[1]。 そして2005年、ダウンロード配信サービスEGG MUSICが開始された[1]。 サービス開始直後の時点で配信した作曲家ら10人程度だったが、2019年5月の時点では100人を超える作曲家の作品が配信されている[1]。
供給ソフトの拡大、家庭用ゲーム機への進出
[編集]もともと本サービスはすべてのプラットフォームのゲームを供給するというつもりであり、パソコン向けゲームを配信した後はPCエンジン用ソフトの配信に乗り出した[10]。
パソコンと家庭用ゲーム機に使われているアーキテクチャーには同じものが多く、短期間で移植ができてしまうこともあることから、パズルのように組み合わせていく形で供給ソフトを増やしていった[10]。
鈴木は2024年のインタビューの中で、全力でPCエンジン用のエミュレータを作ったというよりはむしろ、すでに出来上がっているところはあるので後は権利調整をしてから発売しようという感じだったと語っている[10]。
その後「i-revo」立ち上げがきっかけでバーチャルコンソールにかかわった[10]。バーチャルコンソールがWii Uの代で終わった後、D4エンタープライズはNintendo Switch向けのレトロゲーム復刻サービスは『EGGコンソール for Switch』を全世界に向けて展開する[10]。
配信
[編集]本サービスにおいては、メーカーからの協力を得られたタイトルを優先して配信しているほか、ユーザーからの要望を受けて配信したケースもある[11]。 鈴木は、こちらから譲渡をお願いする姿勢はとっていないとしつつも、状況の変化によってメーカー側から譲渡したいという声が寄せられたことがあったと、ゲーム文化保存研究所とのインタビューの中で振り返っている[11]。
一方、許諾問題[注釈 2]で移植を見送った例もあった[12]。それ以外の例としては、許諾を得られてもゲームデータが見つからなかったり、エミュレータに対応していない[注釈 3]といったことが挙げられる[10]。
基本的に他社から許諾を得た作品の無料配信は行わない方針が取られている一方、ボーステックの『レリクス』は鈴木をはじめとするD4エンタープライズのスタッフたちにとって思い入れがある作品だったことから、真っ先に無料配信が行われたケースもある[11]。
一部のゲームは完全には再現されず、音が一部無音・実機より音や表示が遅れる等の問題がある。それらの再現性の問題があるゲームのサポートサイトが一部閉鎖している為注意が必要となる 以下の作品はボーステックの旧公式サイトで対策パッチが公開されていた。
- 「夢幻戦士ヴァリス COMPLETE スターター」アップデートパッチ Ver1.02
- 「ディーヴァ・クロニクル スターター」アップデートパッチ Ver1.01
- 「レリクスアンソロジー スターター」アップデートパッチ Ver1.01
主な作品
[編集]日本国内でプロジェクトEGGで配信されているタイトルについては以下の各項目を参照。
- パラケルススの魔剣
- 魔晶伝紀ラ・ヴァルー
- ジェネシス
- アグニの石
- ABYSS
- THE PALMS
- ザ・ナイトオブワンダーランド
- あーくしゅ
- 東京トワイライト・バスターズ
- 時空の花嫁
- ナビチューン・ドラゴン航海記
- アルギースの翼
- サイキックウォー
- 覇邪の封印
- パワードール
- サブナック
- 原宿AFTERDARK
- コズミックソルジャー
- スタートレーダー
- アステカ
- イースシリーズ
- Category:プロジェクトEGG対応ソフト - 配信されているタイトルのうち、ウィキペディア日本語版に記事が存在するタイトルの一覧(五十音順)。
参加企業
[編集]- ANMA
- BPS
- Bugtaro
- dB-SOFT
- G-mode
- HOT-B
- I'MAX
- IPM
- IRI
- NCS/extreme
- SNK
- T&E SOFT
- Tozai Games
- ZOOM
- アートディンク
- アイレム
- アルシスソフトウェア
- ウィンキーソフト
- エス・ピー・エス
- エンターブレイン
- ガイナックス
- カルチャーブレーンエクセル
- キャリーラボ
- クエイザーソフト
- クリスタルソフト
- ゲームアーツ
- コスモスコンピュータ
- コナミ
- コロンバスサークル
- コンパイル
- サンソフト
- ジーエーエム
- システムサコム
- システムソフト
- ジャレコ
- シンキングラビット
- スクウェア・エニックス
- スタジオWING
- テンキー
- パオン・ディーピー
- ハドソン(2005年3月31日で販売終了)
- ハミングバードソフト
- パンサーソフト
- バンダイナムコエンターテインメント
- ファミリーソフト
- ヘルツ
- ボーステック
- ホクショー
- ポプコムソフト
- マイクロキャビン
- マイクロネット
- マイクロビジョン
- ミリオン
- メディアワークス
- モオソフト
- もものきはうす
- ランダムハウス
- リバーヒルソフト
- ろまんてっく
- 呉ソフトウェア工房
- 工画堂スタジオ
- 創現
- 日本クリエイト
- 日本テレネット
- 日本ファルコム
- 日本物産
- 風雅システム
アクティベーション
[編集]EGGランチャーでのアクティベーション
[編集]ゲームの購入、ゲームの認証をするには有料会員になる必要がある。そのため、再認証・ゲーム権利の移動・PCクラッシュ時の再登録・PC環境が変化した際などに再認証費用(月額会員料金¥550)が発生する可能性がある。完全な売りきりではなく、その都度サポート費用がかかる可能性があるため、注意が必要となる。退会後にもサポート費が発生する可能性があるので、「退会後も無料で使用できます」との公式説明は問題があるのではないかとする批判もある。
アクティベーション方法の詳細
[編集]ゲームはそのゲーム用として登録した1台のPCにしかダウンロードできないが、複数のPCを登録できる。
ゲームの登録(生成)時にPC環境と認証キーを合わせ実行ファイルが生成される。よって、そのゲームを別のPCにコピー・移動させてもプレイする事は出来ない。他のPCにゲームを移動させる際には、登録したPCから「ゲーム権利の移動」機能を使う必要がある。
- PCが故障したが、会員IDとパスワードを保管できている場合
- サポートに電話にて問い合わせ個人情報の確認が必要。登録時の決済方法(biglobe、nifty、goo、Yahoo決済)の場合は各事業会社に問い合わせる事で対応。
- PCが故障し、会員IDとパスワードが解らなくなってしまった場合
- 再認証は不可。
動作環境
[編集]動作環境は元対応機種によって異なる。
- PC-6001/PC-8801/PC-9801/X1/FM77シリーズタイトル
- OS:Windows 95/98/Me/NT/2000
- CPU:Celeron500MHz以上(800MHz以上推奨)(必要スペックはゲームによって異なる)
- Sound:DirectX5以降対応のサウンドカード
- グラフィック:16ビットカラー・640×480ドットの表示が可能なビデオカード
- MSXタイトル
- OS:Windows 98/98SE/Me/2000/XP
- CPU:Celeron500MHz以上(800MHz以上推奨)
- Sound:DirectX5以降対応のサウンドカード
- グラフィック:16ビットカラー・640×480ドットの表示が可能なビデオカード
- その他:ジョイパッド対応
- X68000タイトル
- OS:Windows 98/98SE/Me/2000/XP
- CPU:1GHz以上
- Sound:DirectX5以降対応のサウンドカード
- グラフィック:16ビットカラー・640×480ドットの表示が可能なビデオカード
- その他:ジョイパッド対応
- メガドライブタイトル
- OS:Windows 95/98/Me/NT/2000
- CPU:Celeron600MHz以上(800MHz以上推奨)
- Sound:DirectX5以降対応のサウンドカード
- グラフィック:16ビットカラー・640×480ドットの表示が可能なビデオカード
- PCエンジンタイトル
- OS:Windows 98/Me/NT/2000/Me/XP
- CPU:Pentium III/800MHz以上(1GHz以上推奨)
- メモリ:[98/Me]64MB以上(128MB以上推奨)[2000/XP]128MB以上(256MB以上推奨)
- グラフィック:DirectX7.0a以降対応のビデオカード(VRAM16MB以上推奨)
- Sound:DirectX7.0a以降完全対応のサウンドカード(VRAM16MB以上推奨)
- その他:ディスプレイモニター解像度640×480ドット以上必須(High Color以上)
- ファミリーコンピュータ、スーパーファミコンタイトル
- OS:Windows XP SP3,Windows Vista,Windows 7
- CPU:最低233MHzのPentium(推奨1GHz以上)
- メモリ:[98/Me]64MB以上(128MB以上推奨)[2000/XP]128MB以上(256MB以上推奨)
- グラフィック:DirectX7.0a以降対応のビデオカード(VRAM16MB以上推奨)
- Sound:DirectX9.0c以降完全対応のサウンドカード(VRAM16MB以上推奨)
- その他:ディスプレイモニター解像度800×600ドット以上必須(High Color以上)、Microsoft .NET Framework version2.0必須
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 3月24日の発表当初は『プロジェクトEGG for Switch(仮)』で[4]、9月2日にサービス名変更が発表された[5]。
- ^ 鈴木はゲーム文化保存研究所とのインタビューの中で、法人格が消滅している会社の作品の許諾を得ることの難しさについて語っており、法務局で書類を取得したうえで弁護士と相談したケースや、過去のことを思い出したくない関係者から拒否されたケースや、当時の契約書が存在しないケースもあったことを明かしている[12]
- ^ 鈴木は2024年のインタビューの中で、プロジェクトEGG以外の作品であった例として、複数のプラットフォートへのコンバートを要したり、エミュレータとスクラッチ半々ということもあったという[10]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m “D4エンタープライズ15周年記念インタビュー 「プロジェクトEGGとゲーム保存について」前編(1ページ目)”. ゲーム文化保存研究所 (2019年5月17日). 2020年2月8日閲覧。
- ^ https://www.nintendo.com/us/store/products/eggconsole-relics-pc-8801-switch/
- ^ https://www.nintendo.co.uk/Games/Nintendo-Switch-download-software/EGGCONSOLE-RELICS-PC-8801-2463653.html
- ^ “<News>任天堂SwitchにMSXなどのゲームが続々と登場!『プロジェクトEGG for Switch(仮)』始動!|株式会社D4エンタープライズのプレスリリース”. PRTIMES (2023年3月24日). 2023年3月24日閲覧。
- ^ “プロジェクトEGG 21周年 ~ プロジェクトEGG”. D4エンタープライズ (2023年9月2日). 2023年9月6日閲覧。
- ^ ““プロジェクトEGG”がSwitchで展開。第1弾『レリクス』が本日(9/28)より配信開始、今後登場予定のタイトルも明らかに”. ファミ通.com (2023年9月28日). 2023年10月2日閲覧。
- ^ a b 『プロジェクトEGG公式ガイドブック』プラネット出版、2002年8月8日。ISBN 4-939110-17-6。
- ^ “ガイアックス、「プロジェクト EGG」「ストーンエイジ」運営権を取得” (2005年4月4日). 2020年5月15日閲覧。
- ^ “株式会社D4エンタープライゼス ブログアーカイブ” (2007年4月11日). 2020-05-15閲覧。
- ^ a b c d e f g ““EGGコンソール”インタビュー。Switch向けに名作PCレトロゲームを配信。“名作を後世に残したい”という思いに突き動かされて | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com”. ファミ通.com (2024年1月19日). 2024年1月20日閲覧。
- ^ a b c “D4エンタープライズ15周年記念インタビュー 「プロジェクトEGGとゲーム保存について」前編(2ページ目)”. ゲーム文化保存研究所 (2019年5月17日). 2020年2月8日閲覧。
- ^ a b “D4エンタープライズ15周年記念インタビュー 「プロジェクトEGGとゲーム保存について」後編(1ページ目)”. ゲーム文化保存研究所 (2019年5月24日). 2020年2月8日閲覧。
外部リンク
[編集]- プロジェクトEGG
- EGGコンソール
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