Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜
ジャンル |
アクションパズル ステルスゲーム |
---|---|
対応機種 |
PC(Windows, MacOS) Nintendo Switch PlayStation 4 Xbox One |
開発元 | House House |
発売元 | Panic |
人数 | 1 - 2人[注 1] |
発売日 |
PC, Switch 2019年9月20日[2][3][4][5] PS4, XBOne 2019年12月17日[6] |
対象年齢 |
CERO:A(全年齢対象)[3] ESRB:E(6歳以上)[4] PEGI:3[5] USK:0[7] |
エンジン | Unity |
売上本数 | 100万本(2019年12月時点)[8] |
『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』(アンタイトルド グース ゲーム いたずらガチョウがやってきた、原題:Untitled Goose Game)は、オーストラリアのゲーム開発会社House Houseが開発しPanicより発売されたゲームソフト。
概要
[編集]プレイヤーはガチョウとなって平和な村を訪れ、住民に対して様々ないたずらを行いながら村の内部を巡っていく。各所の道具や設置物を活用して目標の達成を目指すアクションパズルゲームの要領でゲームが進行するが、人間たちの目をかいくぐりながら行動するステルスゲームの要素も含んでいる。BGMにはシンプルなピアノのメロディが流れ、ガチョウの行動や状況に合わせて変化する。
作品内で用いられている表現は、House Houseのメンバーが子供時代に視聴していたイギリスの子供向けテレビ番組『ぼくブルン』『ポストマン・パット』『ウォレスとグルミット』などの影響があり、メンバーの一人Nico Disseldorpは、典型的で分かりやすい人々のコミュニティがある小さなおもちゃの世界というアイデアが好きだと語っている[9]。
システム
[編集]ガチョウは、鳴く、羽を広げる、かがむ、物を咥えて運ぶといったアクションを行う[10]。一方の人間は、通常はそれぞれ固有の行動パターンをとっているが、ガチョウが近づいたりちょっかいを出したりすると後を追いかけてくる[10]。一部の人間は、ガチョウを見つけると即座にその場から追い出す行動をとる[10]。ガチョウによって場所を移された物や状況が変化した設置物などは、人間の視界に入った際に元の状態へ戻される。
舞台となる村は複数のエリアに分かれている。各エリアには達成目標のToDo(すべきこと)が複数設定されており、一定数達成後に追加される最後のToDoを達成するとエリアのクリアとなって次のエリアに進めるようになる。
制作
[編集]House Houseの開発1作目である2D対戦アクションゲーム『Push Me Pull You』が2016年に発売された後、次回作の方向性について様々な検討が行われ、3Dに移行して『スーパーマリオ64』のような3人称視点の1人用ゲームとすることにメンバーは興味を抱いた。そうした中の同年8月、メンバーの一人Stuart Gillespie-CookがSlackに「これについてのゲームを作ろう」というコメントとともにガチョウの画像を投稿した。これを機に、メンバーは「もしもガチョウになったらどうするか?」というアイデアに夢中になった[11]。
House Houseは設立時点で商業作品の開発経験者はおらず、本作の制作が開始された段階においても、メンバーはゲーム制作に精通していたわけではなく、3Dグラフィックスの導入は本作が初めてだった[12]。 各人が作成したものを、よりよく活用する方法を模索するという方針のもと、制作はボトムアップで行われた。 レベルデザイナーのJake Strasserは、最初のマップを作るにあたり、舞台がイギリスであることを意識しつつも、『ウォレスとグルミット』を主なモチーフとした[12]。同作は美術的な資料だけではなく、ゲーム内で起きるコミカルなイベントのヒントにもなった[12]。
2017年10月、House Houseは初報となるトレーラー映像を公開した[13][14]。この中では当時開発済みだった序盤の庭エリア部分が用いられ、トレーラーの評判が良くなければこの部分のみを発売する準備も進めていたが、映像公開後に思いのほか多くの好意的な反応が寄せられたことから、内容を拡張して製品化することが決まった[11]。予想以上の好評を得た理由について、House Houseは、ガチョウの生息数が少ない地元オーストラリアよりも北半球の人々のほうがガチョウへの馴染みが深いこと、また、残酷すぎず怖すぎない方法で悪さをすることへの魅力があるのではないかと分析している[9]。
本作のタイトルは前述のトレーラー映像の公開直前時点で決まっておらず、暫定的なものとして『Untitled Goose Game』(無題のガチョウゲーム)の名前で公開した。しかし、公開後に話題となったことでタイトルが浸透した上にこれを超えるものが見つからず、一方で、永遠に無題のままということに面白さを見出したため、正式名として据え置かれた[11][15]。
製品化へ
[編集]製品化にあたり、レベルデザイナーのJake Strasserは、ステージの設計に際して「独自性があること」「信憑性があること」「ニュアンスを感じさせること」という3つの目標を立てる[12]。Strasserはオーストラリア在住であり、イギリスに行ったことがなかったため、初期のステージマップをイギリスに住む友人に見せ、イギリスらしさがあるかを問うたところ、「違う」という回答を得る[12]。彼らは、庭の仕切りに用いられた金網フェンスがイギリスでは用いられていないことを指摘した[12]。このフェンスは、Strasserがイギリスのガーデニング用品販売サイトで調べ、「これが売られているということは、イギリスのどこかにはこのフェンスを用いた庭があるはず」という考えの元で採用したものだった[12]。これを受け、Strasserは、「現実にイギリスで販売されていること」と、「それがイギリス的である」ということは必ずしも同一ではないと考える[12]。 加えて、製品版では庭以外にもパブやゴール地点などが作られる予定であり、このような事態が頻発する可能性が出てきたほか、ステージにつなげ方によってはマップ全体に違和感が出る恐れがあった。 このため、StrasserはGoogleを用いた資料集めに乗り出した。まず、彼は「Village Green With Pond」(村 緑 池あり)と、デモ版を表現する言葉を画像検索で検索し、そこから得られた画像から、モデルとなる土地を探すことにした。最初に選んだ場所は店などの必須要素がなかったため、その近隣にあるサクステッドをモデルとすることにした[12]。また、StrasserはGoogleマップの履歴機能で数年分の過去の街並みが保存されていて助かったともGDC2021の中で振り返っている[12]。 Strasserはそれぞれのステージを作成して一つのマップにまとめるが、ステージが奥行きに欠け、プレイヤーの移動方向が制限されるという新たな問題に直面する[12]。これを解決するためにStrasserは、モデルとなる町を探し、サフォークのオーフォードのポンプストリートを見つけた[12]。
音楽
[編集]トレーラーの音楽はダン・ゴールディングが手掛けており、クロード・ドビュッシーのピアノ曲集『前奏曲』の第12曲「ミンストレル」が用いられている。この楽曲は曲中に停止および開始するという構成を含んでいるが、トレーラーの閲覧者はそれがゲーム内の動作に呼応していると誤解し「反応的な音楽」(reactive music)として称賛した。これを受け、House Houseはゲーム内でドビュッシーの楽曲を使うことおよび「反応的な音楽」のシステムをゲームに組み込むことを決めた。ゴールディングは、普通に演奏したものとより低くやわらかに演奏したものの2パターンをレコーディングしてから約400の断片に分け、それらを「ガチョウがただ歩いている状態」「ガチョウが獲物(人間)に近づいている状態」「ガチョウが(人間から)追われている状態」の3つに合わせて調整した[16][17][18]。
2020年3月27日、デッカ・レコードから本作のサウンドトラックが発売された[19]。同サウンドトラックには通常バージョンと静かなバージョンの楽曲が収録されているほか、オリジナル楽曲として、PlayStation 4版のメニュー画面のテーマ曲である"Waltz For House House"と、劇中のラジオから流れる"Untitled Goose Radio"が収録されている[20]。
反響
[編集]本作は好意的に受け入れられ、二次創作の投稿や、特定のキャラクターをガチョウに差し替える他ゲーム用のMODの開発といったファン活動が行われた[21]。
PC版とNintendo Switch版は発売から約2週間で売り上げ10万本を突破し、3か月後の2019年12月には全機種版の売り上げ総計が100万本に到達した[8]。
2019年12月開催のアメリカのゲーム賞イベント「The Game Awards 2019」の中では、人形劇番組『マペット・ショー』のキャラクター・ビーカーが本作内に登場しガチョウと対面するという特別映像が公開された[8]。
評価
[編集]受賞・ノミネート
[編集]年 | 賞 | 部門 | 結果 | 出典 |
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2019 | Golden Joystick Awards | Breakthrough Award | 受賞 | [22] |
Ultimate Game of the Year | ノミネート | |||
Titanium Awards | Indie Game of the Year | ノミネート | [23] | |
The Game Awards 2019 | Best Independent Game | ノミネート | [24] | |
Fresh Indie Game(House House) | ノミネート | |||
2020 | New York Game Awards | Off Broadway Award for Best Indie Game | ノミネート | [25] |
23rd Annual D.I.C.E. Awards | Game of the Year | 受賞 | [26][27] | |
Outstanding Achievement for an Independent Game | 受賞 | |||
Outstanding Achievement in Game Direction | ノミネート | |||
Outstanding Achievement in Character (ガチョウ) | 受賞 | |||
NAVGTR Awards | Animation, Artistic | 受賞 | [28] | |
Gameplay Design, New IP | 受賞 | |||
Game, Puzzle | 受賞 | |||
Use of Sound, New IP | 受賞 | |||
IGF Awards | Seumas McNally Grand Prize | ノミネート | [29] | |
Excellence in Audio | ノミネート | |||
20th Game Developers Choice Awards | Game of the Year | 受賞 | [30] | |
Best Audio | ノミネート | |||
Best Design | ノミネート | |||
Innovation Award | ノミネート | |||
第16回英国アカデミー賞ゲーム部門 | Best Game | ノミネート | [31] | |
Audio Achievement | ノミネート | |||
Family | 受賞 | |||
Original Property | ノミネート | |||
ファミ通・電撃ゲームアワード2019 | ベストインディー | ノミネート | [32] |
論評
[編集]4Gamer.netのgingerは本作の平和な世界観について評価している[10]。 電撃オンラインの滑川けいとは、本作について頭を使う必要があるものの、パズルとアクションの要素が程よいバランスでかみ合っており、どちらかが苦手でも楽しめると評価した[33]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “『Untitled Goose Game』無料アップデートでふたり協力プレイに対応。いたずらガチョウが2羽になってさらに大暴れ!”. ファミ通.com (2020年8月19日). 2020年11月4日閲覧。
- ^ “Untitled Goose Game - いたずらガチョウがやって来た”. Epic Game Store. 2019年9月24日閲覧。
- ^ a b “Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜”. 任天堂. 2019年9月24日閲覧。
- ^ a b “Untitled Goose Game for Nintendo Switch - Nintendo Game Details” (英語). Nintendo of America. 2019年9月24日閲覧。
- ^ a b “Untitled Goose Game|Nintendo Switch download software|Games” (英語). Nintendo UK. 2019年9月24日閲覧。
- ^ “続報:日本語対応を含む人気ガチョウゲーム「Untitled Goose Game」のPS4とXbox One対応が正式アナウンス”. doope! (2019年12月10日). 2019年12月15日閲覧。
- ^ “Untitled Goose Game|Nintendo Switch Download-Software|Spiele” (ドイツ語). Nintendo Deutschland. 2019年9月24日閲覧。
- ^ a b c “いたずらガチョウになるゲーム『Untitled Goose Game』売り上げ100万本突破。発売から約3か月で達成”. AUTOMATON (2019年12月31日). 2019年12月31日閲覧。
- ^ a b “Untitled Goose Game interview” (英語). Red Bull (2018年1月4日). 2019年9月24日閲覧。
- ^ a b c d ginger (2019年10月8日). “インディーズゲームの小部屋:Room#604「Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~」”. www.4gamer.net. Aetas. 2019年10月23日閲覧。
- ^ a b c “Unheadlined Goose Game interview” (英語). gamesindustry.biz (2019年9月19日). 2019年9月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m “[GDC 2021]Google マップから作られた「Untitled Goose Game」のマップは,何を目指したのか”. www.4gamer.net. Aetas (2021年7月24日). 2021年7月25日閲覧。
- ^ “Untitled Goose Game by House House - Pre-Alpha Gameplay”. House House 公式YouTubeチャンネル (2017年10月3日). 2019年9月24日閲覧。
- ^ “かわいいガチョウのいたずらを描く「Untitled Goose Game」のNintendo Switch版が本日発売、ローンチトレーラーも”. doope! (2019年9月20日). 2019年9月24日閲覧。
- ^ “「Hello! インディー」第29回 癒やしのガチョウゲーム『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』”. 任天堂 (2019年9月27日). 2019年9月27日閲覧。
- ^ Gharlie Hall (2017年10月4日). “Watch the funniest, most charming game trailer of the year” (英語). Polygon. 2020年4月19日閲覧。
- ^ Couture, Joel (2020年2月17日). “Road to the IGF: House House's Untitled Goose Game” (英語). Gamasutra. 2020年2月17日閲覧。
- ^ Dami Lee (2019年9月23日). “How Untitled Goose Game adapted Debussy for its dynamic soundtrack” (英語). The Verge. 2020年4月19日閲覧。
- ^ 『大ヒットゲーム『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』サントラ配信』(プレスリリース)ユニバーサルミュージック、2020年4月5日 。2020年4月18日閲覧。
- ^ Mercedez Clewis (2020年3月31日). “Untitled Goose Games’ Soundtrack Hits Streaming Platforms”. Siliconera. 2020年4月18日閲覧。
- ^ Sato, Nobuya (2019年10月21日). “『バイオハザード RE:2』のタイラントを「ガチョウ化」するModが開発中。鳴き声も収録”. AUTOMATON. アクティブゲーミングメディア. 2019年10月23日閲覧。
- ^ “『バイオハザード RE:2』がGOTY!「Golden Joystick Awards 2019」受賞作品リスト ― 生涯功労賞は鈴木裕氏”. Game*Spark (2019年11月16日). 2019年12月31日閲覧。
- ^ “Titanium Awards” (英語). Fun & Serious Game Festival 2019. 2019年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月15日閲覧。
- ^ ““The Game Awards 2019”のノミネート作が発表。Game of The Yearには『デス・ストランディング』や『スマブラSP』、『バイオ RE2』、『SEKIRO』などがノミネート”. ファミ通.com (2019年11月20日). 2019年12月15日閲覧。
- ^ “NY Game Awards ’20! Nominees!” (英語). The New York Videogame Critics Circle. 2020年1月30日閲覧。
- ^ “23rd Annual D.I.C.E. Awards Finalists Revealed” (英語). Academy of Interactive Arts & Sciences. 2020年1月30日閲覧。
- ^ “Untitled Goose Game Wins Top Bill at the 2020 DICE Awards” (英語). USgamer (2020年2月18日). 2020年4月19日閲覧。
- ^ “2019 Winners” (英語). NAVGTR Awards (2020年2月24日). 2020年4月19日閲覧。
- ^ “Mutazione, Eliza, Untitled Goose Game Are Some of the Key Nominees for the 22nd Annual Independent Games Festival” (英語). GlobeNewswire (2020年1月7日). 2020年4月19日閲覧。
- ^ “2020年のGame Developers Choice Awards,Gema of the Yearに輝いたのは「Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~」”. 4Gamer.net (2020年3月19日). 2020年4月19日閲覧。
- ^ “2020英国アカデミー賞ゲーム部門受賞作品発表! Best Gameは『Outer Wilds』”. Game*Spark (2020年4月3日). 2020年4月19日閲覧。
- ^ ““ファミ通・電撃ゲームアワード2019”まとめ。ゲームオブザイヤーは『ポケモン ソード・シールド』、『デススト』4冠、『十三機兵』2冠など”. ファミ通.com (2020年4月18日). 2020年4月19日閲覧。
- ^ “【おすすめDLゲーム】いたずら心をくすぐるACT『Untitled Goose Game いたずらガチョウがやって来た!』”. 電撃オンライン (2019年10月8日). 2019年10月23日閲覧。