V級潜水艦 (イギリス海軍・2代)
V級潜水艦 V-class submarine | |
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1945年11月に撮影されたV級潜水艦「ヴォレイシャス」(HMS Voracious, P78) | |
基本情報 | |
種別 | 潜水艦 |
運用者 |
イギリス海軍 フランス海軍 ギリシャ海軍 デンマーク海軍 ノルウェー海軍 |
計画数 | 42隻 |
建造数 | 22隻 |
前級 | U級潜水艦 |
次級 | アンフィオン級潜水艦 |
要目 | |
排水量 |
545トン(基準), 658トン(満載、水上) 740トン(水中) |
長さ | 204 ft 6 in (62.33 m) |
幅 | 16 ft 1 in (4.90 m) |
吃水 | 15 ft 3 in (4.65 m) |
主機 |
ディーゼル・エレクトリック2基2軸 パックスマン・リカルド・ディーゼルエンジン2基 + 電動機 615 馬力 (460 kW), 825 馬力 (615 kW) |
速力 | 11.25ノット (20.84 km/h; 12.95 mph)(水上)、10ノット (19 km/h; 12 mph)(水中) |
航続距離 |
4,700海里 10ノット時(水上) 30海里 9ノット時(水中) |
潜航深度 | 95m |
乗員 | 33名 |
兵装 |
21インチ(533mm)魚雷発射管×4門(艦首・魚雷8本搭載) 3インチ単装高角砲×1基 7.7mm単装機銃×3基 |
V級潜水艦(Vきゅうせんすいかん、V-class submarine)、公式には1941-42計画U級長船体型(U-Class Long hull 1941–42 programme)は、第二次世界大戦中に22隻が建造されたイギリス海軍の小型潜水艦[1]。「ヴァンパイア」(HMS Vampire, P72)をネームシップと見做して、ヴァンパイア級と呼ばれることがある[2]。
設計と開発
[編集]第二次世界大戦に突入すると、U級潜水艦だけでは必要な潜水艦の隻数を満たせなくなった。そこで、U級潜水艦をベースに量産性向上などの改設計を加えた艦級が本級である[3]。
1941年から1943年度戦時急造計画で42隻がこの設計で発注され、全艦がヴィッカース・アームストロングのバロー=イン=ファーネスまたはウォーカー・オン・タイン造船所で建造されることになっていたが、実際に完成したのは22隻であった。一般的にV級の艦級名で呼ばれるものの、U級との連続性から7隻は頭文字がUで始まる艦名が付けられていた(逆に、U級のうち4隻はVで始まる艦名が付けられている)。
U級と同様に単殻構造である点は変わらないものの、改良点として艦体を完全溶接化し、内殻を厚さ1/2インチから3/4インチに増厚することで安全潜航深度を95メートルに増大している。また、推進器の水中放射雑音低減のため艦尾形状がシャープな形に変更された[3]。
艦名一覧
[編集]いずれも大戦後半に就役したため、完成した22隻に戦没艦はなかった。本級のうち、「ヴェンチャラー」(HMS Venturer, P68)は1945年2月9日、双方が潜航状態のまま「U-864」を魚雷で撃沈し「双方が潜航中の状況で敵潜水艦撃沈に成功した唯一の潜水艦」という記録を残している。
最初の8隻は1941年12月5日に発注された。
- ヴェンチャラー(HMS Venturer, P68) - 戦後ノルウェー海軍の「ウトシュタイン」(HNoMS Utstein, P302)となる。
- ヴァイキング(HMS Viking, P69) - 戦後ノルウェー海軍の「ウトヴァール」(HNoMS Utvaer, P303)となる。
- ヴェルト(HMS Veldt, P71) - ギリシャ海軍の「ピピノス」(Pipinos, Y8)として竣工。
- ヴァンパイア(HMS Vampire, P72) - 1950年解体。
- ヴォックス(HMS Vox, P73) - 1946年解体。
- ヴィガラス(HMS Vigorous, P74) - 1949年解体。
- ヴァーチュー(HMS Virtue, P75) - 1946年解体。
- ヴィジゴス(HMS Visigoth, P76) - 1950年解体。
1942年5月21日に18隻が追加発注されたが、そのうち6隻は1944年初頭にキャンセルされた。
- ヴィヴィッド(HMS Vivid, P77) - 1950年解体。
- ヴォレイシャス(HMS Voracious, P78) - 1946年解体。
- ヴァルパイン(HMS Vulpine, P79) - 戦後デンマーク海軍の「ストレン」(HDMS Støren)となる。
- ヴァーン(HMS Varne, P81) - 1958年解体。
- アップショット(HMS Upshot, P82) - 1949年解体。
- アーティカ(HMS Urtica, P83) - 1950年解体。
- ヴィンヤード(HMS Vineyard, P84) - フランス海軍の「ドリス」(Doris, P84)として竣工。
- ヴァリアンス(HMS Variance, P85) - ノルウェー海軍の「ウートシーラ」(HNoMS Utsira, S301)として竣工。
- ヴェンジフル(HMS Vengeful, P86) - 1945年にギリシャ海軍の「デルフィン」(Delfin, Y-9)として移管。
- ヴォーテックス(HMS Vortex, P87) - フランス海軍の「モース」(Morse, P87)として竣工。1946年返還後1947年デンマーク海軍の「セーレン」(HDMS Sælen)となる。
- ヴァイルレント(HMS Virulent, P95)- 戦後ギリシャ海軍の「アルゴナフティス」(Argonaftis, Y15)となる。
- ヴォラタイル(HMS Volatile, P96) - 戦後ギリシャ海軍の「トリアイナ」(Triaina, Y14)となる。
以下はキャンセルされた。
- ヴィトー(HMS Veto, P88)- 船台上で解体。
- ヴィリル(HMS Virile, P89)- 船台上で解体。
- ヴィジタント(HMS Visitant, P91)- 未起工。
- ユーパス(HMS Upas, P92)- 船台上で解体。
- ユーレックス(HMS Ulex, P93)- 未起工。
- ユートピア(HMS Utopia, P94)- 未起工。
1942年11月17日にさらに6隻が発注されたが、そのうち4隻は1944年1月23日にキャンセルされた。
- ヴォータリー(HMS Votary, P29) - 戦後ノルウェー海軍の「ウートハウグ」(HNoMS Uthaug, S304)となる。
- ヴァガボンド(HMS Vagabond, P18) - 1950年解体。
以下はキャンセルされた。
- ヴァンテージ(HMS Vantage)- 未起工。
- ヴィーアメント(HMS Vehement, P25)- 未起工。
- ヴェノム(HMS Venom, P27)- 未起工。
- ヴァーヴ(HMS Verve, P28)- 未起工。
1943年計画でさらに10隻が発注されたが、1943年11月20日に全艦キャンセルされた。このうち8隻は命名されなかった。
- アンブライドレッド(HMS Unbridled, P11)- 未起工。
- アップワード(HMS Upward, P16)- 未起工。
- 名前のない8隻
出典
[編集]- ^ Conway's All the World's Fighting Ships 1922–46
- ^ “V Class submarines”. Battleships-Cruisers. 18 April 2020閲覧。
- ^ a b 世界の艦船 1997, p. 96.