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VAN法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

VAN法: VAN method)は、地球電磁気学的手法による地震予知の方法。

概要

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ギリシャアテネ大学物理学者ヴァロツォスPanayotis Varotsos)、アレクソプロス(Caesar Alexopoulos)及びノミコス(Kostas Nomikos)によって提案された地球電磁気学的手法による地震予知の方法である。VANは3名の頭文字である。1985年から予想を始め、1993年3月18日にはピルゴス市のマグニチュード5.7の地震予知に成功した[1]

1981年初頭にアテネ地域を襲った地震を契機として地電位変化の監視に着手した[1]。測定原理は適当な距離で地面に埋められた一対の電極間の地電位差を測定する方法で地電位は、地磁気の変動、降雨、人工の雑音、電極の電気化学的な不安定さ等で常時変化しているので地震前兆信号を検知するためにはこれらのノイズから区別する必要がある[1]。VANグループは正しい地点(sensitive stations)さえ選択すれば、地震前兆の電気信号(SES)が実在することを発見した[1]。sensitive stationsにおいてさえ、観測された信号中わずか0.1%以下が前兆信号で他は全て雑音だったとされる[1]

地震の予知に成功したかどうかを判断する基準は予測された時間スケール内で予測された震央からおよそ100キロメートル以内で、かつ予測したMの大きさのおよそ0.7ユニット以内で発生した場合に、予知は「成功」であったとカウントしていて、マグニチュード5.3以上の60%の予測に成功したとされる[1]。1993年3月5日と26日に、二つの強い地震がギリシャのPirgos市を襲ったが、VAN予知に基づいて市民は準備したために被害は軽減できたとされる[1][2]阪神淡路大震災の6時間半前に前兆現象を捉えていたという報告もある[3]

有効であるかどうかについては諸説あり[4][5][6]、メカニズムの解明に向けて研究が進められつつある[7][8][9]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g 地震予知のVAN法を知っていますか?」『INCEDEニューズレター』第5巻第4号、東京大学生産技術研究所国際災害軽減工学研究センター、1997年1月-3月。 
  2. ^ 上田誠也, 「地震予知に成功した国-ギリシャ」『地震 第2輯』 44巻 Supplement号 1991年 p.391-405, doi:10.4294/zisin1948.44.Supplement_391
  3. ^ Matsumoto Hiroshi; Motoji Ikeya; Chihiro Yamanaka (1998). “Analysis of barber-pole color and speckle noises recorded 6 and a half hours before the Kobe earthquake”. Japanese journal of applied physics 37 (11B). doi:10.1143/JJAP.37.L1409. 
  4. ^ Stavrakakis, George, Panayiotis Varotsos, and Robert J. Geller. 「VAN 法は地震予知か, 単なる予言か」『パリティ』 14.2 (1999): 51-57, NAID 40004595215.
  5. ^ 上田誠也, and 吉田均. 「短期地震予知VAN法の評価」『地震ジャーナル』 26 (1998): 34-43, NAID 40004606530.
  6. ^ 浜田和郎, and P. Varotsos. "ギリシャにおける VAN 法による地震予知-その確率論的有意性-. 地震学会講演予稿集." (1989): 231.
  7. ^ 岡崎登, 「213 金属と岩石の破壊時の電流発生機構試案 : VAN 法 SES 電流の発生機構・鉄と超伝導第 7 報」『学術講演会講演論文集』 45 (1996): p.59-60, NAID 110002285468.
  8. ^ Uyeshima, Makoto, et al. 「地電位差同時連続観測による地震予知研究報告II : 弟子屈の地電位差異以上変化と釧路沖の地震との対応について」『東京大学地震研究所彙報』 64巻 4号 1990年 p.487-515, hdl:2261/13044
  9. ^ 長尾年恭, 「地震予知はできるか? 地電流による地震予知」『混相流』 9巻 2号 1995年 p.98-104, doi:10.3811/jjmf.9.98, 日本混相流学会

参考文献

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  • P.Varotsos and O. Kulhanek(eds.), "Measurements and Theoretical Models of the Earth's Electric Field Variations related to Earthquakes", Tectonophysics, 224, No.1/3, August 30, 1993.
  • M.Hayakawa and Y.Fujinawa(eds.), "Electromagnetic Phenomena Related to Earthquake Prediction", 677pp., Terra Sci. Publ. Co., Tokyo, 1994.
  • Sir James Lighthill(ed.), "A Critical Review of VAN - Earthquake Prediction From Seismic Electrical Signals -", 376pp., World Scientific, Singapole, 1996.
  • R. Geller(ed.), "Debate on VAN", Geophysical Research Letters, 23, No.11, May, 1996.
  • P.Varotsos, K. Eftaxias, M. Lazaridou, K. Nomicos, N. Sarlis, N. Bogris, J. Makris, G. Antonopoulos and J. Kopanas, "Recent Earthquake Prediction Results in Greece Based on the Observation of Seismic Electric Signals", Acta Geophysica Polonica, XLIV, 301-327, 1996.
  • 山田貴敏「地震は予知できる!」『週刊少年サンデー』27・28号、小学館、1995年6月21・28日。 アクシデンツ -事故調クジラの事件簿- 10・12巻に再録
  • Varotsos, P., and M. Lazaridou. "A review of the VAN method." title International Workshop on Seismo Electromagnetics Abstracts International Workshop on Seismo Electromagnetics Abstracts. 1997.
  • 上田誠也, 早川正士, 柴田一成, 「地震予知研究の歴史と現状」『学士会会報』 2007年7月 p.865 (2007), NAID 40015541075

関連項目

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外部リンク

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